高市早苗による台湾有事発言
高市早苗の台湾有事答弁を報じた朝日新聞X投稿に対する中国外交官の斬首示唆引用投稿を契機に発生した日中外交紛争
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高市早苗による台湾有事発言(たかいちさなえによるたいわんゆうじはつげん)は、2025年11月7日の第219回国会・衆議院予算委員会において、当時内閣総理大臣だった高市早苗が台湾有事について述べた一連の発言である。

高市は、中華人民共和国が台湾を支配下に置く目的で台湾に対して戦艦[注釈 1]による武力行使を行った場合、それは明らかに日本の存立危機事態になり得るという考えを示した[2]。
この発言に対して中国側は「一つの中国」の原則[注釈 2]に反しており内政干渉に当たるとして反発し、日中間の対立の引き金となった[3]。本項では、台湾有事発言に起因する日中間の外交的な緊張関係についても述べる。
概要
2025年11月7日、高市は予算委員会における立憲民主党の岡田克也との質疑の中で、以下のような発言を行った。
この発言に対して、11月8日、中国・大阪総領事の薛剣がX上で「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 認定なら武力行使も」と題された朝日新聞の投稿[6]を引用したうえで以下のようにポストした[7][8]。薛の反応は、中国ネット世論の影響や、党への忠誠を示すものであるとする指摘がある[9][10]。
勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか。 — 薛剣、2025年11月8日のXポスト
中国が台湾に武力攻撃を行った場合、日本がどのような対応を取るかということは従前より、「あいまい戦略」として明確にされてこなかった部分であり、日経新聞は「存立危機事態」となる具体的な場合を挙げることは「手の内を明かす発言だ」と批判[11]、前首相の石破茂は「断定を避けてきた」とこれに苦言を呈した[12]。高市は答弁後に「つい言い過ぎた」と漏らしたものとされる[13]。
中国政府は「台湾海峡への武力介入の可能性をほのめかしたことは、中国の内政に対する乱暴な干渉であり『一つの中国』原則[注釈 2]に深刻に反する」として批判し、発言の撤回を求めている[14]。しかし日本政府が中国の要求に応じなかったため、水産物の禁輸措置、渡航自粛、日中韓首脳会談見送りなどの対応をとった[15]。また、中国は日本の外務省が日本の軍国主義が過去、「存立危機」を理由に満洲などで侵略を繰り返したこと等を引き合いに、SNSなどで発言を非難、撤回を求めた[16]。
岡田克也は質問の意図について、「存立危機事態」は法律上も過去の国会答弁上も制限がかかっている一方で過去の総裁選等でその枠を踏み越えた発言をしてきた高市に対して、従来の政府見解を踏襲するか確認したものだとしている[17]。そして高市が「(従来の政府見解よりより緩い方向へ)踏み出してしまった」と感じて、その後の質疑では内容を少しずらして、これ以上まずい答弁が出ないようにしたと語っている[18]。立憲民主党は、3日後の予算委員会質疑において、「外圧によって撤回となるより、国会で撤回する方が良い」として大串博志が代表して撤回を要求したが、高市はこれを受け入れていない[19]。
高市政権は答弁を撤回しない一方で、11月25日、公明党の質問主意書に対して「従来の政府見解を完全に維持」しているとの見解を閣議決定している[20]。高市自身も11月26日、就任後初の党首討論で、存立危機事態を認定する事例を「具体的に言及したいとは思わなかった」として政府の公式見解を継承する考えを明確にし、中国との良好な関係を構築することが自身の責任であるとした[21]。
存立危機事態条文
存立危機事態は武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(事態対処法)第二条四項において明文化されている。この条項は2015年(平成27年)に第3次安倍内閣が提出した法案により改正・追加され、その条文は下記の通りである。
平成十五年法律第七十九号
- 武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
- (定義)
第二条
- 四 存立危機事態 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。
台湾等の地域は他国に含まれるか
岡田と高市の質疑応答において言及された台湾に関して、正規の国交がない「地域」は当該条文の「他国」に含まれるかどうか、日本政府は2015年に見解を示している[22]。2015年7月10日付で参院議員水野賢一により提出された「存立危機事態に関する質問主意書」[注釈 4]に対し、安倍晋三総理大臣による答弁書を次の通りの文面において送付した[24]。
- 参議院議員水野賢一君提出存立危機事態に関する質問に対する答弁書
一及び二について
(中略)ここにいう「我が国と密接な関係にある他国」については、一般に、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものと考えており、我が国が外交関係を有していない国も含まれ得るが、お尋ねの「国とみなされている地域」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。 — 内閣総理大臣 安倍晋三(2015年7月21日)
以上のように、台湾に関しては「お答えすることは困難である」ことが行政の解釈するところであり、行政の長による答弁書であった。岡田が台湾有事を懸念し高市に質問しているのは、政府の中で役所・役人ではない政府与党の自民党から台湾有事と日本有事を結び付ける声があるからである。行政の考えを質問者に伝え、国民に伝えるための国会答弁において、高市は答弁資料にはない持論を混合して岡田に回答し、日中外交問題に発展した。
台湾有事発言騒動のさなか、高市の旧知のライバルである辻元清美参院議員は11月20日に3通の質問主意書を政府に提出した[25]。辻元からの「我が国と密接な関係にある他国」に関する質問(第219回国会・質問第48号)に対する高市の答弁書には、「同盟国である米国は、基本的に「我が国と密接な関係にある他国」に当たるものと考えている。他方、米国以外の外国が、これに当たる可能性は、現実には、相当に限定されると考えられる」と述べられた。辻元からの「高市内閣総理大臣答弁について、答弁の原稿は存在するか。存在する場合、答弁の原稿を作成した担当府省はどこか」という質問(第219回国会・質問第49号)に対しては「主に内閣官房において答弁資料を作成した」と述べ、辻元に資料を開示した。それにより、当初からアドリブと指摘されていた「どう考えても存立危機事態になり得る」が、開示資料にはなく実際アドリブであったことが判明した。「総理の発言は持論を展開されたものであり、責任は重い」と辻元は高市の責任を追及している[26]。
質疑抜粋

下記に2025年11月7日の衆議院予算委員会における台湾有事関連の質疑を抜粋し、引用する。存立危機事態に関する法案が安倍内閣から提出された2015年当時、岡田克也代表率いる民主党は法案に反対していた。法制局関係者や憲法学者から法案の違憲性が疑われるなかでのことであった。そこで岡田はまず、限定的な局面でのみ行使されるべき集団的自衛権についての認識を高市に確認する。日本の集団的自衛権は第二次世界大戦後、行使できないものという憲法解釈がなされてきたが、2014年に第2次安倍内閣が「戦後レジームからの脱却」のもと憲法解釈を変更し、限定的ではあるものの行使できるように閣議決定をしている。
岡田克也: さて、二番目の存立危機事態について、少し時間をかけて議論したいというふうに思っています。実は、十年前にこの法律ができたときに、私は野党の代表でした。(中略)多くの法制局長官経験者とか著名な憲法学者が、違憲ではないかというふうに疑義を呈されました。そういう中で、私たちもこの法案には反対をしたということであります。(中略)そこで、総理にまず確認したいのは、この存立危機事態、いわゆる限定した集団的自衛権の行使ですね、これ以外の集団的自衛権の行使、つまり、限定のない集団的自衛権の行使は違憲である、これは従来の政府の考え方だったと思いますが、そういう考え方は維持されていますか。高市早苗: (中略)先ほど来、存立危機事態における武力の行使についてお話がございましたが、これも、限定された集団的自衛権の行使、すなわち、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置としての武力の行使に限られていて、集団的自衛権の行使一般を認めるものではなく、他国を防衛すること自体を目的とする集団的自衛権の行使は認められないという政府の見解に変更はございません。
岡田克也: (中略)
高市早苗: (中略)
存立危機事態の条文が成立した2015年当時、安倍政権は中東のホルムズ海峡での機雷除去を存立危機事態の想定事例として具体的に挙げ[注釈 5]、存立危機事態とは武力攻撃を受ける事態等とニアリーイコールというのが政府見解であった。2024年の自民党総裁選において高市は中国による台湾の海上封鎖について存立危機事態の可能性に言及した。そこで岡田は、迂回で対応でき得る海上封鎖レベルの事案においてどのように存立危機事態になるのか、具体的な想定事例を高市に問い質す。
岡田克也: それでは次に、平成二十七年九月十四日の当時の公明党の山口代表と安倍総理、法制局長官との特別委員会におけるやり取り、ここに持ってまいりました。(中略)つまり、これは、存立危機事態と武力攻撃事態というのはほぼ重なり合うということを言っているわけですね。こういう法制局長官の当時の答弁ですが、法制局長官にお聞きしたいと思いますが、現在でもこの答弁を維持されていますか。岩尾信行政府特別補佐人: (中略)いわゆるホルムズ海峡の事例のように、他国に対する武力攻撃それ自体によって国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことになるという例外的な場合が考えられるということは否定できませんが、実際に起こり得る事態というものを考えますと、存立危機事態に該当するのにかかわらず武力攻撃事態等に該当しないということはまずないのではないかと考えられると述べております。このように承知しておりますが、これらの答弁で述べられました見解に変わりはございません。
岡田克也: (中略)今、法制局長官は答弁を維持しているというふうにおっしゃったわけですが、総理も同じですね。
高市早苗: 法制局長官が述べられたとおり、平成二十七年九月十四日の委員会で当時の長官が述べられた見解について、変わりはございません。
岡田克也: (中略)例えば、失礼ですが、高市総理、一年前の総裁選挙でこう述べておられるんですよ。中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われて、存立危機事態になるかもしれないと発言されました。私も、絶対ないと言うつもりはないんです。だけれども、これはどういう場合に存立危機事態になるというふうにお考えだったんですか。お聞かせください。
高市早苗: 台湾をめぐる問題というのは、対話により平和的に解決することを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。その上で、一般論として申し上げますけれども、今、岡田委員も、絶対にないとは言えないとおっしゃっておられました。いかなる事態が存立危機事態に該当するかというのは、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して判断しなければならないと考えております。存立危機事態の定義については、ここで申し述べますと時間を取りますが、事態対処法第二条第四項にあるとおりでございます。
岡田克也: (中略)例えば、台湾とフィリピンの間のバシー海峡、これを封鎖されたという場合に、でも、それは迂回すれば、何日間か余分にかかるかもしれませんが、別に日本に対してエネルギーや食料が途絶えるということは基本的にありませんよね。だから、どういう場合に存立危機事態になるのかということをお聞きしたいんですが、いかがですか。
高市は、台湾は「国」というよりは「地域」であるとの認識を示したうえで、存立危機事態となり得る海上封鎖について具体的状況を述べる。事態対処法における存立危機事態の条文の文言は「国」に限られ、「地域」には言及していない。しかし高市はこの後の答弁で「他の地域」である台湾を条文の「他国」に当てはめる(法解釈)[注釈 6]。そして高市は岡田の問いに対し、「どう考えても存立危機事態になり得る」等の答弁を行う。また高市はそれが想定される最悪の事態として理論上の解であるということを明示した。
高市早苗: これはやはり他国に、台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのときはたしか台湾有事に関する議論であったと思います。その台湾に対して武力攻撃が発生する、海上封鎖というのも、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には、武力行使が生じ得る話でございます。例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかのほかの武力行使が行われる、こういった事態も想定されることでございますので、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかということの情報を総合的に判断しなければならないと思っております。単に民間の船を並べてそこを通りにくくするといったこと、それはそういった存立危機事態には当たらないんだと思いますけれども、実際に、これがいわゆる戦争という状況の中での海上封鎖であり、またドローンも飛び、いろいろな状況が起きた場合、これはまた別の見方ができると考えます。岡田克也: 今の答弁では、とても存立危機事態について限定的に考えるということにはならないですよね。非常に幅広い裁量の余地を政府に与えてしまうことになる。だから、私は懸念するわけですよ。(中略)例えば、自民党副総裁の麻生さんが昨年一月にワシントンで、中国が台湾に侵攻した場合には存立危機事態と日本政府が判断する可能性が極めて高いという言い方をされています。安倍さん自身も、台湾有事は日本有事。ここで有事ということの意味がよく分かりませんけれども、何か非常に軽々しく私は問題を扱っているんじゃないかというふうに思うんですね。(中略)それを軽々しく、なるかもしれないとか、可能性が高いとか、そういう言い方が与党の議員やあるいは評論家の一部から、自衛隊のOBも含むんですが、述べられていることは極めて問題だと私は思うんですが、総理、いかがですか。
高市早苗: 麻生副総裁の発言については内閣総理大臣としてはコメントいたしませんが、ただ、あらゆる事態を想定しておく、最悪の事態を想定しておくということは非常に重要だと思います。先ほど有事という言葉がございました。それはいろいろな形がありましょう。例えば、台湾を完全に中国、北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それはいろいろなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。実際に発生した事態の個別具体的な状況に応じて、政府が全ての情報を総合して判断するということでございます。実に武力攻撃が発生したら、これは存立危機事態に当たる可能性が高いというものでございます。法律の条文どおりであるかと思っております。
岡田克也: (中略)
高市早苗: (中略)
岡田克也: (中略)だから、余り軽々に武力行使、武力行使と私は言うべきじゃないと思うんですが、いかがですか。
高市早苗: (中略)軽々に武力行使、武力行使と言うとおっしゃいますけれども、最悪の事態も想定しておかなければならない。それほどいわゆる台湾有事というものは深刻な状況に今至っていると思っております。実際に発生した場合にどういうことが起こっていくのか、そういうシミュレーションをしていけば、最悪の事態というものはこれは想定しておかなきゃいけないということでございます。即これを存立危機事態だと認定して、日本が武力行使を行うということではございません。
経過
中国

- 11月7日、朝日新聞の『高市首相、台湾有事「存立危機事態になりうる」認定なら武力行使も』というXの記事を配信。その後「認定なら武力行使も」の部分を「武力攻撃の発生時」と修正。
- 11月8日、修正が反映される前の記事を引用しながら、在大阪総領事の薛剣が高市早苗に対する首刈り発言をXに投稿[10][9]。
- 11月10日、中華人民共和国外交部の副報道局長は「日本の指導者が国会で公然と台湾に関する誤った言論を発表し、台湾海峡への武力介入の可能性を示唆した」「中国の内政への乱暴な干渉であり、『一つの中国』原則などに対する重大な違反だ」と指摘した[29]。
- 11月13日、中国政府は駐中大使の金杉憲治を呼び出して抗議した[30]、
- 11月14日、中国政府は日本に対して強く抗議するとともに、国民に対して日本への渡航を控えるよう呼びかけた[31]。
- 11月14日、駐日中国大使の呉江浩は日本の外務省高官と会談し、「中国の内政に著しく干渉し、中国の越えてはならない一線を越えた」と述べた[32]。
- 11月14日、中国人民解放軍の公式報道アカウント「China Military Bugle」は「日本側が歴史の教訓を深く汲み取らず、あえて危険な賭けに出たり、更には軍事的に台湾海峡情勢に介入したりすれば、必ず中国人民解放軍の鉄壁の前で粉骨砕身になり、多大な代償を払わなければならない。」とつづった画像を投稿した[33]。なお、「粉骨砕身」は一般に「一生懸命に働く」という意味で用いられる[33]。ただし、中国語では「粉身碎骨」と表記して「徹底して敵をやっつけよう」「散々に打ち砕かれる」という意味でも用いられる[34][35]。
- 11月18日、中国国連大使の傅聡は国連総会で高市の国会答弁を非難し、日本は「安保理常任理事国入りを要求する資格は全く無い」と主張した[36]。
- 11月19日、中国軍広報は高市が「火遊び」し、炎から出た魔物に襲われそうになる風刺画をXに投稿した。20日にも、地獄のような火の海に囲まれた道を高市が靖国神社に向かって歩く姿を描き、「自ら墓穴を掘り、戻れない道へ進む」と中国語と英語で記した風刺画を投稿した。別の投稿では、「台湾問題は核心で、越えてはならないレッドラインだ。火遊びする外部勢力は自滅の結末を迎える」と英文で警告した[37][38][39]。
- 11月21日、国連大使の傅聡は国連事務総長のアントニオ・グテーレス宛てに書簡を送付した。書簡において中国政府の立場を説明し、「誤った発言を撤回すべきだ」「国際法や国際関係の規範への重大な違反」「日本の侵略を受けたアジア諸国への公然たる挑発」などの見解を示した[40]。
- 11月21日駐日中国大使館は、「『国際連合憲章』には『敵国条項』が設けられており、ドイツ・イタリア・日本などのファシズム/軍国主義国家が再び侵略政策に向けたいかなる行動を取った場合でも、中・仏・ソ・英・米など国連創設国は、安全保障理事会の許可を要することなく、直接軍事行動を取る権利を有すると規定している」と投稿[41]、これに対して日本の外務省が応戦した(後述)。
- 11月22日から23日のG20(第20回20か国・地域首脳会合)においては、中国首相・李強との接触の有無が注目された[42]。一方で、ここでは日中間の接触はなく、高市は「会話する機会はなかった」とした[43][44]。
- 11月24日、米中首脳が電話会談[45]、25日には日米首脳電話会談が行われ[46]、米大統領のドナルド・トランプは「日中関係の状況悪化を望まない」として、中国を刺激しないように促した[47][48][注釈 8]。
- 12月1日、傅聡国連大使が高市答弁の撤回を求めグテーレス国連事務総長宛てに再び書簡を送付[57]。
- 12月2日、 在日本中国大使館はサンフランシスコ講和条約に対し「不法かつ無効な文書」だとX(旧Twitter)での投稿で主張した[注釈 9]。 これは、11月26日の党首討論にて高市が日本が1952年発効のサンフランシスコ講和条約で台湾に関するすべての権利を放棄した点に触れた事に対する批判である[58]。
12月3日、王毅共産党政治局員兼外相は訪中中のフランスのマクロン大統領に同行しているバロ外務大臣と北京で会見した。王毅は「日本が台湾問題を利用してもめ事を起こし、歴史の失敗を繰り返すことを決して許さない」と批判を述べた。また、両国は戦勝国であるとし、第二次世界大戦の勝利の成果を共に守るべきだと呼び掛けた。これに対しバロ外務大臣は、国連安全保障理事会の常任理事国として「建設的な方法で世界平和を共に守る責任がある」と述べた[59]。
王毅 共産党政治局員兼外相 - 12月4日、習近平総書記がマクロンとの会談にて「中国とフランスは歴史の正しい側に立つべきだ」と述べた[60]。
- 12月4日、外務省の林剣副報道局長は記者会見にて「ごまかしており受け入れられない」と、台湾に関する日本政府の立場は1972年の日中共同声明から変更はないと高市が国会で説明したのに対し拒否をし、国会答弁の撤回を重ねて求めた。また「なぜ日本は約束と法的義務を明確に説明しようとしないのか」と述べ、日本側が中国と国際社会に対して説明責任を果たすべきだと批判をした [61]。
- 12月13日、南京事件から88年のこの日に江蘇省南京市の南京大虐殺記念館で国家追悼式典が例年通り執り行われた。中国共産党政治局員の石泰峰は演説で「軍国主義復活の企てや、戦後国際秩序への挑戦、世界の平和と安定を破壊するいかなる行為も必ず失敗する」と宣告し、名指しを避けながら高市の台湾有事答弁をけん制した [62]。
- 12月15日、傅聡国連大使が国連安保理で高市答弁の撤回を要求した[63]。
- 12月17日、中国外務省はフィリピンやシンガポールなどの東南アジア諸国連合を含む東南アジア各国を呼び出し、日本に対して批判をした上で中国側を支持するように求めた[64]。
- 12月18日、傅聡国連大使が国連総会で高市答弁の撤回を要求した[65]。
- 12月19日、翌月末に中国へ返還される見通しの上野動物園のパンダについて環球時報は「日本の動物園からパンダがいなくなれば、その責任は日中関係を破壊した人物にある」と高市を批判した[66]。
- 12月30日、北京で開かれたシンポジウムで王毅外相は「日本の現職指導者が公然と中国の領土主権に挑戦した」と述べ、台湾有事は存立危機事態になり得るとした国会答弁を念頭に高市を批判した。王毅は「侵略戦争を発動した日本は反省するどころか、戦後の国際秩序に挑戦している」とも主張。日本の軍国主義復活を警戒すべきだと強調した[67]。
- 2026年2月9日、 中国外務省報道官の林剣は第51回衆議院議員総選挙での与党の圧勝を受け 「軍国主義の過ちを繰り返すのでなく、平和発展の道を歩むことを促す」と発言の撤回を求めた[68]。
- 2月10日、林剣は記者会見で「実際の行動で対話に向けた誠意を見せるべきだ」と述べた。また、「口では対話を叫びながら(中国に対して)対抗することに忙しい。このような対話は誰も受け入れないだろう」と再度発言の撤回を求めた[69]。
- 2月11日、中国国務院台湾事務弁公室で報道官の朱鳳蓮は「台湾問題は非常に敏感だと十分に認識し、慎重に対処すべきだ」と避難した[70]。また、第51回衆議院議員総選挙での自由民主党の勝利に際して、台湾の頼清徳総統の高市早苗に対する祝意について「日本が植民地時代に犯した重罪を顧みず、こびを売る姿勢は恥ずべきだ」と非難した[70]。
- 3月19日、林剣は記者会見で、高市の発言について「重要な転換点」と記した 米国家情報長官室の年次報告書に対して、 「国際社会が、高市発言の悪辣な性質と影響をますますはっきりと(問題を)認識するようになっている。」や「台湾問題は中国の内政であり、どのように解決するかは完全に中国人が決めることだ。」として外部干渉を許さないと表明した[71]。米国に対しては、中国脅威論等の発言は慎むようにと述べた[71]。また、日本政府の態度は一貫しているという説明に対しては、 「つじつまを合わせることはできず、(日本は)アジアの隣国と国際社会の信用を得られない。」と批判した[71]。
- 3月20日、 林剣は記者会見で、20日の日米首脳会談で高市が中国との対話に前向きな件に対して 「日本が心から中日関係を改善したいのであれば、台湾に関する発言をできるだけ早く撤回すべきだ。」と述べた[72]。また、両首脳の台湾問題の安全に対する認識を共有した事に対して 「台湾問題は中国の内政だ。解決は中国人自身の問題だ」と発言した[72]。
香港
日本
- 11月10日、高市は衆院予算委員会で「今後、特定のケースを想定したことをこの場で明言することは慎む」と述べた[29]。一方で、発言自体については「政府の従来の見解に沿ったもの」として撤回しない意向を示した。
- 11月11日、参議院議員の蓮舫が自身のX上にて、「外交には礼節が必要です。他国の首脳への不当な発言は、信頼を損なう行為です。互いの敬意を忘れず、品格ある外交を取り戻すべきだと考えます。」とした上で、中国語で「貴国総領事によるわが国の首相に対する極めて不適切な発言に対し、強く抗議する」と書き込んだ[76]。また同じく立憲民主党前代表泉健太も「とんでもない暴言。こんな総領事は日本に必要ない。政府は早期にペルソナノングラータで中国に帰任させよ」と投稿した[77]。
- 同日、公明党代表の斉藤鉄夫も、同じくXにて「極めて遺憾です。外交官としてあるまじき言動であり、党代表として強く抗議します」と投稿し、党として駐日中国大使館に「率直な懸念」を伝える考えを示した[76]。
- 11月12日、日本維新の会は上記投稿に対し、「外交官として著しく品位に欠け、任国であるわが国および行政府の長に対する明白な侮辱および脅迫である」として、日本政府に断固たる対応を求める申し入れ書を首相官邸に提出した[78]。
- 11月13日、前内閣総理大臣の石破茂はTBSラジオ『荻上チキ・Session』で「台湾の問題について『この場合はこう』と断定することを歴代政権は避けてきた」と指摘。「『台湾有事は日本有事だ』と言っているのに近い話だ」「個々のケースを想定して、この場合は存立危機事態、防衛出動が発令されるというのはその時々の状況によって違う。歴代政権は『こういう場合は日本有事だ』と限定していなかった」と述べた[12]。
- 11月14日、日本政府は駐日大使の呉江浩を呼び出して抗議した[79]。
- 11月15日、外務大臣の茂木敏充は、なんら国際法には抵触しないことであり、撤回の必要はないと言う考えを示した[80]。
- 11月15日、YouTuberの破綻国家研究所が「大判焼外交部ジェネレーター」を公開した。これにより複数のユーザーらが「中国外交部報道官風」の画像を作成してネタ投稿を行った[33][81]。
- 11月15日、中国共産党傘下の英字紙であるチャイナデイリーに「琉球は旧琉球国で、今も日本に非ず。」と掲載されている[82]。
- 11月17日、経団連会長の筒井義信は首相官邸での取材において「色々な分野で意思疎通や対話を重ねて双方が解決に向けて進むことに尽きる」「経済交流の前提は政治の安定だ」と述べた[83]。
- 11月18日、外務大臣の茂木敏充は記者会見で「懸案や意見の相違があるからこそ、官民双方で幅広い分野での重層的な意思疎通をはかることが重要だ」と述べ、日中間の人的交流は継続させるべきだという認識を示した[84]。
- 同日、大阪総領事のある大阪市議会が、薛剣の上記投稿に対し謝罪を求める決議を全会一致で可決した[85]。
- 日本国内の複数のメディアは、中国軍のXへの風刺画投稿を念頭に、中国政府が高市への個人攻撃を展開していると報じた[86][87][88]。
- 毎日新聞は、11月18日に開かれた外務省の局長会議において、劉勁松が両手をポケットに入れている様子を中国国営中央テレビが報じた理由について、中国側が主導権を握っていることを訴えかける宣伝戦の一環であると解説している[89]。
- 11月19日、自民党内の保守系グループである日本の尊厳と国益を護る会は、総領事のペルソナ・ノン・グラータ(国外退去)を求める方針を決定[90]、一方自民党外交部会・外交調査会は国外退去を強調せず、「中国と意思疎通を図るべきだ」との考えを強調した[91]。
- 11月21日、内閣官房長官の木原稔は記者会見で「誤解を招くようなことがあれば、今後は極めて慎重に対応しなければいけない」「米側とは意思疎通が十分に図られている」と述べた[92]。同日、中国は「敵国条項」により、安保理の許可不要で軍事行動を起こす権利を持つと発言し[93]、中国共産党中央委員会の機関紙で人民日報系の環球時報に「日本軍が琉球王宮に侵入し琉球国王を追放、琉球併合を強行した。」が掲載され[94]、更には、中国は日本を軍事攻撃することは可能であるとし、尖閣諸島は中国であり沖縄が日本であるのは遺憾であると発言している[95]。
- 11月23日、外務省は、駐日中国大使館による「旧敵国条項」の投稿に対し、反論。1995年の国連総会における死文化決議、2005年の国連首脳会合において国連から「敵国」への言及を削除する決議の採択のいずれにも中国自身が賛成しているとし、「死文化した規定が未だ有効であるかのような発信は、国連において既に行われた判断と相容れないものです」と投稿した[41][96]。
- 日中関係の悪化が始まった11月中旬以降に実施された世論調査では、内閣支持率は10月の調査と比べ、ほぼ横ばいか上昇となった。高市の台湾有事をめぐる答弁については各調査会社によって質問が異なる。毎日新聞の「台湾有事が日本の集団的自衛権を行使できる『存立危機事態になり得る』とした高市首相の国会答弁について」は、「問題があった」が25%、「問題があったとは思わない」が50%となった[97]。産経新聞の「台湾有事の際に『存立危機事態』と認定し、集団的自衛権を行使できる可能性に言及した国会答弁について」は「適切だ」が61.0%となった[98]。ANNの「日本が集団的自衛権に基づいて武力行使に踏み切ること」については、「必要だ」が33%、「必要ない」が48%となった[99]。
- 産経新聞11月24日発信分によると、中国のSNS「小紅書」にて「琉球有事は中国有事」の言葉が4万件以上投稿されたとのことである[100]。
- 11月25日、高市の答弁撤回を求める「官邸前緊急行動」が首相官邸前で行われた[101]。
- 11月26日、東海日中関係学会会長の川村範行は「2012年の尖閣諸島国有化問題で日中両国が全面対立に陥って以来の関係悪化になる可能性がある」と述べ、全国の学会で初めて日中関係の悪化について早急な関係修復を求める声明を発表した[102]。
- 11月26日、高市は就任後初の党首討論で、存立危機事態を認定する事例を「具体的に言及したいとは思わなかった」と述べた[21]。その上で政府の公式見解を継承する考えを明確にし、中国との良好な関係を構築することが自身の責任であるとした。高市の答弁について立憲民主党の野田佳彦は「従来の見解を上書きするような答弁だった。事実上の撤回をしたと受け止めた」と評した[103][注釈 10]。
- 11月28日、大阪府議会は在大阪総領事の薛剣のSNS投稿に対し不適切と非難し、大阪維新の会、公明党、自民党の3会派が議会に提出をした。その後、謝罪を求める決議を全会一致で可決した[105]。
- 11月28日、衆議院外務委員会において外務大臣茂木敏充は7日に高市へ質疑した岡田について「曖昧戦略を変えるようなことをした」と批判する[106]。
- 12月5日、岡田克也は「存立危機事態に関する質問主意書」を内閣に提出した。これは11月7日衆院予算委の高市答弁および11月28日衆院外務委の茂木答弁に関する質問文書である。12月16日に発せられた総理大臣の答弁書は11月7日答弁の内容には踏み込まず「個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得る全ての情報を総合して客観的かつ合理的に判断」の一点張りであった(茂木答弁に関しては「お答えすることは困難」)[107]。
- 12月8日、辻元清美の質問主意書に対する答弁書により、台湾有事発言は高市の持論・アドリブと判明[26]。
- 12月9日、核を搭載することが可能とされる中国軍爆撃機とロシア軍爆撃機が、威嚇目的で東京方面へ飛行していた[108]。
- 2026年2月9日、高市は記者会見にて「意思疎通を継続し、国益の観点から冷静に、適切に対応する」と中国との外交についての考えを表明した[69]。
- 3月20日、高市は日米首脳会談中のトランプ大統領との対話において、中国と対話に対して常に「オープン」な状態だと考えを示した[72]。
日中以外の反応
中国政府は各国政府に対して「日本批判」を行うように呼びかけたものの、同調して公に日本を批判したのは少数であり、中国の宣伝戦・経済的威圧の効果は限定的と見られている[109]。
事実として、中国と関係が深いパキスタンは日本との経済連携強化を模索し[110]、中央アジア諸国は呼びかけの翌月に「中央アジア+日本」対話・首脳会合を開催した[111]。
台湾
- 11月10日、中華民国総統府は薛の発言について「脅し文句で、明らかに外交儀礼から外れた」と非難した[112]。
- 11月13日、台湾の政治経済メディアである風傳媒は、南京大学の研究員である燕志華の考えを紹介し、高市がこれ以上踏み込まないであろうこと、米中双方とも衝突を望んでいないこと、米国ランド研究所が現状維持が最善と提言していること、中華民国総統府(民進党)が積極的な発信を避ける一方で、野党国民党主席の鄭麗文が馬場町刑場跡地の「白色テロ」追悼式に参加するなど台湾全体が「緩和シグナル」を発していることを挙げ、これ以降は緩和に向かうだろう報じた[9]。
- 元総統で中国国民党の馬英九は「高市早苗氏が台湾海峡に介入する態度は、日本の右翼軍国主義復活を想起させざるを得ない」「台湾海峡両岸の問題は外国に委ねるのではなく、海峡両岸自らが話し合わなければならない。高市早苗氏の軽率な言動に対して、われわれは立場を表明しなければならない。それこそが、台湾民衆の利益を真に守ることだ」と述べた。
- 中国国民党の洪秀柱は「高市早苗氏は台湾海峡での衝突を公然と日本の『存立危機事態』と結び付け、両岸関係の性質を曖昧にして、架空の軍事シナリオを想定し、さらには日本が武力介入する可能性を示唆している。これは露骨な歴史的傲慢と政治的干渉である。台湾を戦火の瀬戸際に追い込もうとする者には、それが誰であれ、われわれは立ち上がって大声で『許せない』と訴えなければならない」と述べた[114]。
- 11月18日、民主進歩党の公式Xが上記の大判焼外交ジェネレーターを使用し、「中国は大国としての責任を示し、地域の『トラブルメーカー』にならないように自制すべきだ」とつづり、署名には頼清徳総統の名前が添えられた[116]。
- 11月20日、中国国民党の凌涛は「党幹部の高市早苗氏への批判に対し、私は強く反対する」と、党内の一部による批判を「狂気の沙汰」という強い言葉で牽制した。また、「国民党も含め、台日関係をいかに深化させるかを訴えるべきだ」と主張した[117]。
- 11月20日、中華民国総統の頼清徳は鹿児島産のブリと北海道産のホタテを食べる写真をXに投稿した。台湾有事発言を巡り、中国政府が日本産水産物を事実上輸入停止としたことに対抗し、日本を支援する姿勢を示したものとされている[118]。
- 11月20日、中華民国外交部長の林佳龍は「中国共産党が経済的な脅迫や軍事的な威嚇で他国をいじめる例は数え切れない」と台湾メディアの記者団に述べたほか、同日の立法院で「台湾の人は高市首相への支持を示してほしい」と述べた[118]。
- 11月21日、民主進歩党の主に高雄市選出の立法委員(邱議瑩・許智傑・黄捷・李柏毅・林楚茵)は、高雄市の略称「高市」を掛け「高市挺高市(高雄市が高市早苗を支持)」と題する記者会見を立法院で開き、台湾人に対し、日本への旅行などの具体的な行動で日本を支援するよう呼びかけた[119]。
- 11月24日、中華民国外交部は、中国と台湾が衝突した際に台湾防衛に協力するかどうかは不透明であるとの見方を示した[120]。
アメリカ
- 11月14日、アメリカ合衆国国務省も明確な反応を避け、「中国と台湾のいずれの側からの一方的な現状変更にも反対する」とする認識を示した[122][123]。その上で「対話を支持し、対立が強制によらず、平和的な手段で両岸の人々が受け入れることができる方法で解決されることを期待する」とした。
- 11月15日、米駐日大使のジョージ・グラスは、「呉江浩駐日中国大使、薛剣駐大阪中国総領事におかれましては、揺るぎない日米の絆を一層深めるためのご尽力、まことにお疲れさまでございます」とXに投稿した[124]。これに対して中国報道官の毛寧は「外交官の身分や職責に違反」「他国の核心的利益を害すべきでない」と反発する声明を出した[125]。
- 11月17日、アメリカ海軍作戦部長のダリル・コードルは日本経済新聞などの取材に対して、明確な評価は避けて「驚いているとは言えない」「存立危機が何を意味するかははっきりとは言えない」としつつ、「(高市氏が台湾有事について)非常に懸念するという立場は理解できる」と述べた[126]。
- 11月24日、トランプ大統領は習近平総書記と電話会談を行った。会談後トランプはトゥルース・ソーシャルの投稿で、習近平と非常に良い電話をしており、米中関係は「非常に強い」と述べた。ウクライナ戦争やアメリカのフェンタニル危機、中国による米国の農産物購入など他の多くを話し合ったと付け加えた[127]。トランプは投稿においては台湾問題については触れなかった一方で[127]、翌25日には高市早苗と電話会談を行い、台湾問題について中国を刺激しないように促した[47][注釈 8]。
- 12月17日、アメリカ合衆国上院議員で外交委員会に所属しているピート・リケッツ(共和党)とクリス・クーンズ(民主党)は「中国による日本への経済的・軍事的・外交的威圧を非難し、日米同盟への揺るぎない支持を表明する」とした共同決議案を提出した[128][129][130]。下院の外交委員会でもヤング・キム(共和党)やアミ・ベラ(民主党)など3人による連名で同様の決議案が同月19日に出されている[131][132]。
ロシア
その他
- 11月12日、北朝鮮外務省は、日本が「中国を挑発し続けている」と述べた。また、同国が「独自の政治外交目標を達成するためのツールである「インド太平洋戦略」の実施において米国に味方するための手段として台湾問題を利用している」と非難し、「地域の安全保障上の懸念と国家間の不和を引き起こすだけだ」と述べた[135]。
- 11月18日、日中両政府は北京市で外務省の局長協議を開いた。協議にはアジア大洋州局長の金井正彰やアジア局長劉勁松らが出席し、高市の発言や在大阪総領事の薛剣のSNS投稿などに関する議論を行った[136]。協議に際し、中国側の局長である劉勁松がポケットに両手を入れたまま話す様子を、劉勁松が日本側の局長である金井正彰を「説教」するような構図として中国国営中央テレビが報じた。他の中国メディアの中には、「頭を低くして中国外務省を去る日本の高官」との見出しで報じるものもあった[137]。また、この動画を素材として日本のインターネットユーザーがミーム動画を作成した[138]。
- 11月20日、日米欧の国会議員約300人を中心に構成する対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)は、高市の答弁は「挑発ではなく、慎重で戦略的な判断に基づく」と分析し、日本への支持を表明。薛剣の不適切投稿については「威圧的発言を強く非難する」との声明を出した[139]。
影響
中国政府が日本への渡航を控えるよう注意喚起したこともあり、民間での人的交流にも影響が出ている。例えば、言論NPOが11月22日から北京市で3日間にわたり開催予定だったイベント「東京―北京フォーラム」が延期された。中国側の共催相手から書簡があり、「台湾問題に関して挑発的な発言と武力威嚇を行い、中国側が厳重に抗議した後も誤った立場を撤回しなかった」と説明されたという[144]。
経済
- 11月から再開したばかりの中国への日本産水産物の輸出が事実上停止したことが同月19日に判明した[145][146][147][148]。農林水産省によると、東京電力福島第一原子力発電所から放出される処理水の安全性を証明する資料に不足があるとする伝達があったという。これは高市の発言に反発した対応とみられている。
- 株式市場では観光や小売関連の株価が下落した[149]。三越伊勢丹ホールディングスの株が11月17日に12%近く下落したほか、髙島屋やユニクロ、日本航空、全日空、オリエンタルランドなど、訪日客の影響を受けやすい業種で株価が下落した。
- 中国人旅行客のホテルキャンセルが相次いでおり、先行きが不透明な状況となっている[150]。例えば、大阪府では中国人の宿泊予約のうち5割から7割がキャンセルされた[151]。また、愛知県蒲郡市の蒲郡ホテルでは約2,000人分のキャンセルが発生し、同ホテル取締役は「政治リスクを見越した運営にしているので、当面は乗り越えられる」としつつも「長期化すると厳しい」「地方のうちみたいなホテルにとっては完全に脱中国依存とはいきにくい」と述べた。
- 11月27日から11月30日にかけて広東省珠海市で開催されるアジア汎用航空ショー(AERO Asia 2025[152]、参考:中国国際航空宇宙博覧会)において、日本の来賓出席や一部を除くメディア取材が認められないこととなった[153]。高市の発言を踏まえて「最近の政治と外交上の理由で入場を拒否するよう上層部から指示があった」としている[注釈 11]。
- 一方で高市の発言直後の11月27日に湖南省長沙市でイオンモール運営[注釈 12]のショッピングモール「イオンモール長沙湘江新区」が、12月6日に上海市でFOOD & LIFE COMPANIESが中国資本企業との合弁会社で運営する回転寿司店「スシロー」がそれぞれオープンしたが、特に大きな混乱は発生しなかった[156][157][158][159]。また、12月時点で中国政府自ら国民に対して、日本製品の不買運動を呼び掛ける動きも見られていない[160]。
- 1月には、軍民両用製品の対日輸出が禁止され、その対象にはレアアースも含まれていた。日本はレアアースの約7割を中国からの輸入に依存しているため、この措置は国内産業に影響を及ぼす可能性がある[161]。
エンターテインメント
- 映画では『はたらく細胞』[注釈 13]、『クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』、『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』、『8番出口』などの中国国内での公開が延期となった[162][163]。香港でも食をテーマにした映画イベントにて予定されていた『かもめ食堂』や『タンポポ』などの日本映画3本の上映を取りやめた[164]。
- 吉本興業は11月下旬に中国国内で開催予定だったお笑いイベントの公演を中止にした[165][166]。
- 男性アイドルグループ「JO1」のファンイベントの他、高中正義やKOKIA、MINMI、ゆず、GACKTなど中国にて開催予定だった日本人アーティストの公演が急遽取り止めになる事例が相次いでいる[167][168][169][170][171]。
- イーキン・チェンが12月5日に東京で開催予定だったコンサート〈Ekin Cheng Live In Tokyo 2025〉は中止となった[169]。
- 香港でも11月からテレビ局のRTHKにて放映が開始されたばかりのテレビアニメ『はたらく細胞』の放送を急遽中止にした[172]。
- ミュージカル『セーラームーン』の「"Pretty Guardian Sailor Moon" The Super Live北京公演」が中止となることが発表された。中止となるのは12月19日から12月21日に予定していた北京公演全5回で、公式サイトでは理由に関して「やむを得ない事情により、現地の判断に従って」と説明している[173]。その後、11月28日から11月29日に上演を予定していた、杭州公演全3回も中止となることが発表された[174]。
- リスアニ!のアニメソングイベント「リスアニ!LIVE SHANGHAI 2025」は開催前日の11月28日に急遽中止が発表された[175]。
- 歌手の浜崎あゆみは11月29日に上海市にて公演を予定していたが、前日の28日に中止すると自身のInstagramのストーリーズにて発表。28日午前に中止の要請がされ、ファンやスタッフらに対して「言葉になりません。申し訳ありません」と謝罪し、「自分の知識が無い部分へ口出しするつもりはありません」とコメントしている[注釈 14][177]。また、アジアツアーファイナルを来年1月10日にマカオで公演する予定であったが、12月9日に中止することを発表している[178]。
- 11月28日から上海市の西岸ドームアートセンターにて開催されたキャラクターイベント「バンダイナムコフェスティバル2025」では当初アニソン歌手やももいろクローバーZ、ASH DA HEROらによるライブイベントが予定されていたが[179]、同月30日までに開催途中での中止となった[180]。開催初日に登場した大槻マキのパフォーマンス中には、突如照明が暗転して演奏が停止し、スタッフに促される形で大槻がステージから退場する事態も発生した[181][182]。
- 12月6日~8日にME HUB IIVE HOUSE、蜚声上海PHASE LIVEHOUSEにて開催予定であったアイドルフェス「流明Fes vol 8.0 in 上海」が日本の全出演予定グループ(lonlium、鳴ル神、椎名ひかり、戦国アニマル極楽浄土、てのひらえる、YUGUREMI)が「突発的な事由」のために出演が不可能となり7日、8日の開催が中止となった[183]。
- 『響け!ユーフォニアム』シリーズのコンサートとして12月6日に上海交通銀行前滩31文化芸能センター 大劇場で開催を予定していた「『響け!ユーフォニアム』公式吹奏楽コンサート 北宇治高校吹奏楽部 上海演奏会〜10周年記念公演〜」は同月1日に中止が発表された[184]。
- 女優の椛島光は12月14日に上海市にてファンミーティングイベントを開催予定していたが、11日にマネージャーが運用するインスタグラムを通じて不可抗力による事由から中止することを発表した[185]。
- 12月14日に上海市にてLE SSERAFIMの『SPAGHETTI』サイン会を開催予定だったが、同月13日に中止が発表された。LE SSERAFIMは韓国・K-POPのガールズグループではあるが、メンバーの中に日本人[注釈 15]が含まれているためと推測されており、中国で開催されている他のK-POPイベントでも日本人メンバーを除外したり、イベント自体を中止にしたりしている[186][187][188]。
- 12月18日から2026年3月1日まで上海市にて開催予定だった初音ミクの展示会「初音未来・未来幻响」について、無期限の延期にすることを2025年12月4日に運営チームが発表した[189][190]。
- 12月25日から約10か月間にわたって広東省広州市にて開催予定だったスタジオジブリの展覧会が同月8日に急遽延期となった[191][192]。
- 2026年1月に上海市にて予定されていたポケモンカードゲーム大会について、2025年12月10日に開催延期が告知された[190]。
- 2026年1月16日と17日に上海市のメルセデス・ベンツアリーナで開催を予定していたバンドリ!「Roselia」のアジアツアー「Neuweltfahrt」は中止となり、大阪市のZepp Osaka Baysideにて代替公演を行うことを2025年12月18日に発表した[193]。
運輸・観光
- 航空アナリストの李漢明によると、中国から日本に向かう航空券のうち少なくとも約50万席がキャンセルされたという[194]。
- 日本行きの航空便の欠航率が20%を超えており、11月24日時点で12の航空路線[注釈 16]で全便が欠航となっている[195]。
- 12月の発着数について、関西国際空港は中国方面便の34%、全体の約1割が運休する見通しだとした[196]。また、中部国際空港は中国方面便の21%が運休する見通しである[197]。
- 中国の航空各社は12月5日、日本路線の航空券の取り消しや変更に無料で応じる期限を同月31日から2026年3月28日に延長すると発表した[198]。
- 中国便の減少による座席不足の影響を受ける形で日本人による中国旅行者数が大幅に減少している。特に日本人団体旅行のキャンセルは影響が大きく、2026年5月時点で上海を訪問した日本人客数は前年比7割減となっている[199]。
学術
スポーツ
- 2026年3月20日から22日まで中国にて開催を予定していた『Mitsubishi Electric Automation Women's Open』を共催者からの申し出により、中止にしたことを2025年12月25日に日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が発表した[201][202]。
「戦艦」という用語について
発言の中にある「戦艦」については該当する艦種は中国人民解放海軍をはじめ現代の各国の海軍では現役の艦艇としては使用されておらず、「軍艦」の言い間違えなのではないかと言う指摘が各所から寄せられた。これに対して日本政府は2025年12月2日、広辞苑の記述を元に、文脈によっては戦艦とは特定の艦種だけではなく軍艦や戦闘艦を広く指すものとし、艦種としての戦艦以外の軍艦や戦闘艦にも使用したとしても言い間違いでは無いという答弁書を閣議決定した。 これにより艦種としての「戦艦」以外の軍艦・戦闘艦にも戦艦という語句が使用できることが可能なことが日本政府の公式見解となった[203]。
評価
高市早苗について
国会議員
その他
- デイリー新潮によれば、高市には「間違ったことは言っていない」という認識があり、内閣官房参与の今井尚哉を中心に「熱狂的な支持者を失わない」軟着陸を目指しているとされた[206]。
- 九州大学准教授の前原志保は、「曖昧戦略から一方踏み込んだ具体例を示す必要があったのかには疑問が残る」としつつ、その後の対応については「高市氏の迅速な修正は妥当な判断だったといえる」とした[207]。また、ネット上で一部の左派・リベラルが中国政府の主張をそのまま無批判に受け入れていた[注釈 17]ことがとりわけ遺憾であったとして、リベラルが掲げる「普遍的価値」とは何なのかということを今一度冷静に立ち止まり、基本的な知識を元に議論を進めていくことを期待したいとした[207]。
- ITOMOS研究所所長の小倉健一は、高市の愛国的態度には敬意を表しているとしつつも「首相の発言は、武器どころか、日本の国益を傷つける凶器となってしまった」と指摘し、その問題点について詳細に解説した[209]。
- 弁護士の橋下徹は「政治家の戦略なきポロっと発言によって民間が損を被ることはあってはならない」「損が出た民間事業者も、政治に文句を言えない日本の雰囲気。やだやだ」と述べた[210]。
- 社会学者の古市憲寿は、エンタメ業界や観光業界などで損失が生じているとして、現状は国益にかなっておらず、他のやり方があったのではないかと述べた[211]。
- 元オーストラリア大使の山上信吾は高市の国会答弁に対し、「10年前から何度も説明している当然のこと」と述べた。また、菅義偉、岸田文雄、石破茂の対中姿勢に対し媚中外交と批判した[212]。
- 在日台湾人とその家族で構成されている団体の在日台湾同郷会は高市の答弁に対し「日本および周辺諸国の安全保障に関しての仮定の議論の中で発せられた、日本政府としての公式見解であり、何ら問題があるものではありません」と声明を出した。また、中国に対しては「民族ジェノサイドという国家犯罪を今すぐ停止することを求めます」と批判した[213]。
- 元外交官で日本台湾交流協会台北事務所総務部長や駐中華人民共和国日本大使などを歴任した垂秀夫は高市の政治思想や手法が類似している元内閣総理大臣の安倍晋三による対中外交をあげた上で安倍は就任直後に訪中したり、総理在任中は台湾有事に関する発言は控えるなど、中国政府にも配慮していたが、高市はそうではないとし、「総理になってから勉強しているようでは遅すぎる」と批判した[214][215]。
薛剣について
元外交官の佐藤優は高市答弁と同月の19日に国会内の鈴木宗男参院議員勉強会で講演し、薛総領事のX(SNS)をして「管轄外の話を勝手にして『われわれは怒っている』と極めてエキセントリックな言葉で伝えている。通常の外交ルートでは怒りが伝わらないから(SNSという)平場に出している」、「(習氏の意向を反映した)国家意思でやっている」のだと語った[216]。佐藤は劉勁松アジア局長が日中の外交の場で見せた「両手ポケット」の光景についても解説をし、「日本に見せるためでも、中国国民に見せるためでもない。習近平さんに見せるためだ。中国の関係者はたった1人の観客、習近平さんだけを見て演技している」のであり、「ポケットに手を入れるのが劉氏の仕事なの。とんでもないXの投稿をするのが総領事の仕事なの。その意味では変な人はいない」のだと語った[216]。
薛総領事の前任総領事は知日派だったが就任から10か月で姿を消し、粛清人事が噂された[217]。半年間の空白期間の後で薛総領事は2021年6月に新任総領事として大阪に着任し、当時から戦狼外交で名を馳せ、X(SNS)日本語版で米軍のアフガニスタン撤退への風刺画ツイートが注目の的となった[217]。彼のツイートは米国に厳しかったが日本には友好的なツイートもないわけではなく、それは日米同盟への揺さぶり工作にも捉えられた[217]。
彼の戦狼外交ツイートは米軍風刺画ツイートの他に、国際人権団体の英アムネスティ・インターナショナルが香港を撤退するに際し「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事また一つ」、ダライ・ラマ14世に対し「平和解放前のチベット最大の農奴主」、日本のネットメディアが中国を批判すれば「過激な反中マインドに駆られているこのマスゴミが益々発狂!!!」、国民民主党の玉木雄一郎代表が北京五輪ボイコットを主張すれば「ハエがウンコに飛びつこうとする西側子分政治家」、など日本語で煽り立てている[218]。日本の外交関係者は、接受国である日本に嫌われないことをするべきところを、普通と逆だろうと不快感を示した[218]。
以前から薛総領事と付き合いのある玉木雄一郎(国民民主)によれば、「昔はああいう感じの人ではなかった」とし、高市を斬る趣旨のツイートに関しては「職業外交官として、公館の長としては極めて不適切だ。外交戦略の一環だと思うからあまり過度な反応はしたくないが、今回の発言は度を越している」と述べた[219]。
岡田克也について
一部では、存立危機事態となる具体的な場合を問い質した岡田克也が悪いという論調も見られた[220]。例えば、日本維新の会共同代表の藤田文武は「個別の具体事例を一つ一つしつこく聞くやり方は適切ではない」との認識を示した[221]。また、元衆院議員の山尾志桜里は「明白になったのは、『曖昧にするな』という質問をしておいて『曖昧にせずけしからん』という立憲民主党の矛盾体質」と主張した[222]。
これに対して衆院議員の岡田悟は「国会の否定」[223]、衆院議員の米山隆一は「質疑は自由なのが民主主義。それに文句をつけるのは民主主義を否定していると言って過言ではない」と批判している[224]。元外務審議官の田中均は「首相に答弁の自由があるのに、質問した方が悪いというのは奇妙な論理」と指摘[225]、また、高千穂大の五野井郁夫は「当たり前の基本的な質問をしただけ。批判するのは完全に責任転嫁だ」「岡田は挑発するのではなく、逆にいさめている」と指摘している[226]。
立憲民主党前代表の泉健太は「野党の忖度がないと成り立たない政権だとの汚名を自ら着るようなものだ」と批判[227]、政調会長の本庄知史は「政府の運用や解釈が憲法や法律に合致しているかどうかを聞くところは国会以外にない」「一般の人が自由にSNSで書いているならともかく、メディアが書いているのを見ると、危険な状況だと言わざるを得ない」と批判した[228]。代表の野田佳彦は「質問者批判は筋違いだ」「過去の首相の発言の真意を確かめたいのは当然」とした[229]。参院議員の打越さく良は外務副大臣の国光文乃が読売新聞の社説をXアカウント上にポストしたことに対し、「驚きを禁じ得ない」「権力とメディアが結託すれば、民主主義は揺らぐ」とコメントしている[230]。
岡田自身は、「近年、与党政治家から限定なき集団的自衛権に近い発言が相次いでいるため、法成立当時の政府解釈を今も維持しているのか確認した。期待した返答と真逆で驚いた。聞いた時点でまずいと思ったので、次の質問では少しずらした。そもそもしつこく聞いてはおらず、聞く方が悪いと言うのは理解できない」「政局に利用しようとしたと言っているメディアもあるが、そんなことはなく、あくまでも存立危機事態というものが野放図に広がっていくことを防ごうとした」と反論している[18][231][232][233]。また、SNS上で質問した岡田を批判する声が出ていることに対しては、「意図的に騒ぐ人は一部いると思うが、国民の約5割が(首相発言に)肯定的というのが問題だ」と懸念を示した[234]。
答弁においては、岡田が事前通告した質問に対して内閣官房が作成した応答要領では「回答を差し控える」とされており、高市が独断で持論を展開したことが明らかになっている[235]。
