彼岸
日本の雑節の一つ
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起源
由来
浄土思想における「極楽浄土」(阿弥陀如来が領する西方浄土)は西方にあるとされる。1年の内で昼夜の長さが同じになる春分と秋分は、太陽が真東から昇り真西に沈む。そのため、沈みゆく太陽を礼拝し、遙か彼方の極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まりとされる。昼夜・東西が等しく交わるこの時期には「あの世」への門が開くともいわれてきた。現在ではこのように仏教行事として説明される場合が多く、それがやがて祖先供養の行事へと趣旨が変容して定着した。
しかし、彼岸の行事は日本独自のものであり、インドや中国の仏教には存在しない。そのため民俗学では、元は日本古来の土俗的な太陽信仰や祖霊信仰が起源であろうと推定されている。五来重は、豊作を太陽に祈願する太陽信仰の言葉「日の願い」が「日願(ひがん)」となり、後に仏教語の「彼岸」と結びついたとの説を唱えた[12]。また、僧侶で仏教民俗学者の伊藤唯真も、民間習俗が彼岸の名称と結合して仏教行事化し、歳時習俗として生活の中に定着したものであると指摘している[13]。
歴史
延暦25年(806年)、日本で初めて仏教行事としての彼岸会が行われた記録は『日本後紀』延暦25年(806年)2月条にあり、怨念を鎮めるため「毎年春分と秋分を中心とした前後7日間、『金剛般若波羅蜜多経』を崇道天皇(早良親王)のために転読」させた[14]。そして同3月17日に朝廷の太政官から「五畿内七道諸国」の国分寺の僧に対して、春分・秋分を中心とする7日間に金剛般若波羅蜜経を読むよう命じ、以降、太政官府もそれを恒例とし後の彼岸会の端緒になった[14]。
文応元年(1260年)には亀山天皇が六斎日と春秋の彼岸に殺生を禁じた[16]。その後の記録にも生物の命を彼岸に断つことの禁忌があらわれる[26]。
風習
時節
明治元年(1868年)以降の時節(暦)のデータは、国立天文台がまとめている[注釈 2]。
海上保安庁による観測値(1997-2010年)は以下の通り。
| 西暦 | 平成 | 閏年 | 春分 | 曜日 | 秋分 | 曜日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1996 | 8 | 閏 | 3/20 | (水) | 9/23 | (月) |
| 1997 | 9 | 3/20 | (木) | 9/23 | (火) | |
| 1998 | 10 | 3/21 | (土) | 9/23 | (水) | |
| 1999 | 11 | 3/21 | (日) | 9/23 | (木) | |
| 2000 | 12 | 閏 | 3/20 | (月) | 9/23 | (土) |
| 2001 | 13 | 3/20 | (火) | 9/23 | (日) | |
| 2002 | 14 | 3/21 | (木) | 9/23 | (月) | |
| 2003 | 15 | 3/21 | (金) | 9/23 | (火) | |
| 2004 | 16 | 閏 | 3/20 | (土) | 9/23 | (木) |
| 2005 | 17 | 3/20 | (日) | 9/23 | (金) | |
| 2006 | 18 | 3/21 | (火) | 9/23 | (土) | |
| 2007 | 19 | 3/21 | (水) | 9/23 | (日) | |
| 2008 | 20 | 閏 | 3/20 | (木) | 9/23 | (火) |
| 2009 | 21 | 3/20 | (金) | 9/23 | (水) | |
| 2010 | 22 | 3/21 | (日) | 9/23 | (木) | |
| 表の中の日付は全て日本標準時による[36][37]。 | ||||||
気候
冬至と夏至、春分と秋分をまとめて「二至二分」と呼び、春分の日と秋分の日はそれぞれ春秋の彼岸の中日である[38]。
日本の気候を表す慣用句「暑さ寒さも彼岸まで」はそれぞれ夏と秋の特徴を示し、残暑・残寒は彼岸のころまで続くと記されてきた[39][40]。季節の変化は彼岸をすぎるとやわらぐと表現する[41][42][43]。
気温の変動は場所も時代も決定要素であり、一様ではない[44]。彼岸のもととなる二十四節気もその点、概念を生んだ場所は中国北部、時代は古代であり[45]、地理的条件をたとえば現代の西安とすると、高温のピークは彼岸と関わる暑中(7月)にある[注釈 3]。その点、東京では同じく8月を示す[注釈 3]。
季語
俳諧では「彼岸」は春の彼岸[49][50]を意味し[52][53][注釈 4]、「彼岸」「彼岸前」「彼岸過」「中日」は春の季語である。これに対し、秋の彼岸は「秋彼岸」[61][62][63]「秋の彼岸」[64]と言う。
けふ彼岸 菩提の種をまく日かな — 伝松尾芭蕉
