恒先
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内容
難解であり[4]、多様な解釈がある[5]。以下の要約は浅野裕一の日本語訳に基づく[6]。
「恒」(こう、つね)が宇宙の原初段階(「先」)である。「恒」は「無」だったが、「質・静・虚」が増大すると「或」(わく、惑)の段階に移行した。「或」は「有」であり「気」が自生した。「気」から天地が生まれた。
「或」から「有」、「有」から「性」、「性」から「音」、「音」から「言」、「言」から「名」、「名」から「事」が出た。「或」が「或」でなければ「或」とは言わない(或非或、無謂或)。「有」が「有」でなければ「有」とは言わない。「性」が「性」でなければ「性」とは言わない。「音」が「音」でなければ「音」とは言わない。「言」が「言」でなければ「言」とは言わない。「名」が「名」でなければ「名」とは言わない。「事」が「事」でなければ「事」とは言わない。
人類が生まれる前は「善」「治」だったが、人類が生まれて「不善」「乱」が生まれた。「恒」が天下の万物に命名した後、人類が虚名を与えた。天下の明王・明君・明士は「或」によって政治をしているが、「恒」にそむいていることに気づかないため失敗に終わる。
解説
1994年、上海博物館が香港の骨董市場から購入した竹簡群「上博楚簡」に含まれ[3]、2003年、『上海博物館蔵戦国楚竹書(三)』として上海古籍出版社から公刊された[7]。
全13簡からなり、出土文献としては珍しく、文字に欠損が全く無い[3]。
『恒先』という題名は、第3簡の背に記されている[1]。「恒先」でなく「亘先(亙先)」「極先」などとする解釈もある[8][9][10]。「恒」は「道」と同じ概念とする解釈もあれば、「道」とは異なる概念とする解釈もある[11][12][13]。
書写年代は戦国中期だが、成立年代は春秋末期から戦国前期にさかのぼる可能性がある[14]。
馬王堆帛書『黄帝四経』[15]、郭店楚簡『太一生水』[1][15][16][17]、上博楚簡『凡物流形』[16]とともに、道家の生成論に関する新出文献となっている。類似する伝世文献に『老子』[1]『楚辞』[2][14]などがある。「気」[17][18]や「名」[19][20][21]の用例としても注目に値する。
参考文献
- 王中江『簡帛文献からみる初期道家思想の新展開』東京堂出版、2018年。ISBN 9784490209891。
- 浅野裕一 著「『恆先』の道家的特色」、浅野裕一 編『古代思想史と郭店楚簡』汲古書院、2005a年。ISBN 9784762927447。
- 浅野裕一「『上博楚簡』解題 : 『上海博物館蔵戦国楚竹書』(三)(四)所収文献 『恒先』」『中国研究集刊』第38号、大阪大学中国学会、2005b年。 NAID 120006227274。
- 浅野裕一『古代中国の宇宙論』岩波書店、2006年。ISBN 9784000228633。
- 頴川智「上博楚簡『亙先』の宇宙生成論--馬王堆漢墓帛書『道原』との關連を通して」『日本中國學會報』第59号、日本中國學會、2007年。 NAID 40015936325。
- 末永高康「「名出於言」考」『中国研究集刊』第50号、大阪大学中国学会、2010年。 NAID 120006227295。
- 竹田健二 著「『恆先』における気の思想」、浅野裕一 編『古代思想史と郭店楚簡』汲古書院、2005年。ISBN 9784762927447。
- 中嶋隆藏「『上海博物館蔵戦国楚竹書(三)』所収「亙先」小考」『集刊東洋学』第94号、仙台 : 中国文史哲研究会、2005年。 NAID 40007028947。
- 西信康「上博楚簡『恆先』硏究槪況」『東方宗教』第140号、日本道敎學會、2022年。CRID 1520294573748248832
- 谷中信一 著「郭店(湖北省)と〈上博楚簡〉」、中国出土資料学会 編『地下からの贈り物 新出土資料が語るいにしえの中国』東方書店、2014年。ISBN 978-4497214119。
- 谷中信一『『老子』經典化過程の硏究』汲古書院、2015年。ISBN 9784762965586。