アウトドアスポーツ用品の開発・販売を手がけるアウトドアドリーム社の秘書室に勤務する倉科麻子は、翌日に屋上のクライミングジムを利用したいという副社長の頼みで屋上の鍵を開けに行ったところ、蛆がたかりもはや判別不明となっている腐乱死体を見つける。着衣から遺体は8日前からアメリカへ出張に行っているはずの社長・渡潤一郎の可能性が浮上する。後頭部に傷があり、ボルダリング中に手を滑らせて転落し、死亡したのではないかとの捜査一課の見解を米沢は示すが、遺体の腰にボルダリングに不可欠な滑り止めのチョークバッグがなく、掌にも粉が付いていた痕跡がないこと、万が一事故があった時に発見が遅れるため、潤一郎が鍵を閉めてクライミングをする理由がないことなどから右京が疑いを持つ。また、唯一の窓は直径5センチ程度の小さな穴が開いた嵌めごろしの天窓のみで、現場は密室状態であり、ドアのサムターン錠は通常のものより回りにくい固い作りになっており、糸を使ったトリックも現実的ではなかった。事故なのか、事件なのか、事件ならば密室トリックはどのように作られたのか、右京の推理が冴え渡る。
- 杉下 右京(すぎした うきょう)
- 警視庁特命係 警部。
- 米沢 守(よねざわ まもる)
- 警視庁刑事部鑑識課員。右京とは落語などの共通の趣味があり親しくしている。
- 伊丹 憲一(いたみ けんいち) / 三浦 信輔(みうら しんすけ) / 芹沢 慶二(せりざわ けいじ)
- 警視庁刑事部捜査一課の刑事トリオ。
- 渡 潤一郎(わたり じゅんいちろう)
- アウトドアドリーム社の社長。フリークライミングが趣味で、自社のワタリビルの屋上にクライミングジムを増築した。自宅はビルの5階にある。
- 倉科 麻子(くらしな あさこ)
- アウトドアドリーム社 社長秘書。篠山に頼まれ、屋上の開錠に行ったところ、遺体を発見する。
- 三条 良雄(さんじょう よしお)
- アウトドアドリーム社総務部勤務。麻子とは同期で恋人。
- 篠山 融(しのやま とおる)
- アウトドアドリーム社副社長。潤一郎とは大学の登山部の同級生。
- 渡 朋代(わたり ともよ)
- 渡の妻。父が営んでいた登山用品店を、婿養子に入った潤一郎が篠山と共にリニューアルした。
- 渡 邦子(わたり くにこ)
- 朋代の母。認知症を患っており、徘徊癖がある。
- 松金 穣(まつがね みのり)
- ワタリビルの西隣の住人。8年ほど前に夫を交通事故で失い、息子と2人暮らし。クライミングジムの建設によって眺望権を侵害されたとクレームを入れた。
- 松金 環(まつがね かん)
- 穣の息子。父が亡くなった交通事故で脊髄を損傷し、下半身不随となり車椅子生活を送っている。事故後、引きこもりがちになっている。
- 西連寺 翔(さいれんじ しょう)
- ステルス探偵事務所 所長。ネット犯罪がらみの調査を請け負うサイバー探偵。