聖ヴェロニカ (エル・グレコ)

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製作年1580年ごろ
寸法84 cm × 91 cm (33 in × 36 in)
『聖ヴェロニカ』
スペイン語: Santa Verónica
英語: St Veronica
作者エル・グレコ
製作年1580年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法84 cm × 91 cm (33 in × 36 in)
所蔵サンタ・クルス美術館英語版 (寄託)、トレド

聖ヴェロニカ』(せいヴェロニカ、西: Santa Verónica: St Veronica) 、または『布を持つ聖ヴェロニカ』(ぬのをもつせいヴェロニカ、: St Veronica Holding the Veil) は、ギリシアクレタ島出身で主にマニエリスム期のスペインで活動した画家エル・グレコが制作したキャンバス上の油彩画である。署名はなく、制作年代を推測することも難しいが、様式的に画家がスペインで制作活動に入った時期の1580年ごろに描かれたと思われる[1]。作品は、トレドサンタ・クルス美術館英語版に所蔵されている[1][2]

本作の主題となっている聖ヴェロニカは、福音書には記述されていない伝説上の女性である[3][4]ゴルゴタの丘を目指し、歩を進めるイエス・キリストの顔を彼女が布で拭ったところ、布にイエスの顔が浮かび上がったという[1][3][5]。この伝説は、キリストの衣に触れることで血友病が治った娘の話 (「ルカによる福音書」9:20-22) が6世紀になって『新約聖書外典の「ピラト行伝」およびエウセビオスの『教会史』 (3世紀) の記述と結びついたものといわれ、中世には宗教劇などを通じて広く一般に知られるところとなった。聖ヴェロニカの生涯については、各国で様々な伝説が生まれた[1]

聖ヴェロニカは15世紀ごろ、画題としてだけではなく時には彫刻の主題としてもさかんに採りあげられた。ヴェロニカという名前は「真の聖画像」をあらわす「ヴェラ・イコン」に由来するという説があることからもわかるように、美術作品で表現される彼女は必ず、茨の冠をつけた正面向きのキリストの顔を映し出した布を両手で持っている[1]。この主題を描く場合、画家の関心は、ヴェロニカとキリストの顔をいかに描き分けるかという点に集中する。布上のキリストはそれ自体が礼拝の対象ともなるだけに、けっして副次的な地位にとどまるものではない。時にこの布は持ち主の聖ヴェロニカから独立して、文字通りイコンのように画面いっぱいに描かれることもあり、それはスペインでは一般に「聖顔 (サンタ・ファス、Santa Faz)」と呼ばれる[1]

作品

エル・グレコと工房『聖顔』 (1586-1595年)、プラド美術館マドリード
エル・グレコ『聖衣剥奪』 (1579年)、トレド大聖堂

エル・グレコは、「聖顔」を主題とした絵画を数点描いている[1][2]。本作に描かれているのは、暗闇の中に立つヴェロニカが聖顔のついた布を両手で拡げ持つ光景である。彼女の青緑色の服は闇の中に溶け込む一方、キリストの顔は明るい紫色と黒の枠取りのある白い布の上に左右対称にくっきりと描かれている。それは優しくも厳かな姿であり、血の気のない無表情ともいえるヴェロニカと比べれば、エル・グレコの関心が聖なる布と聖顔に向けられていることは明白である[1]

この作品のヴェロニカの顔は、『聖衣剥奪』 (トレド大聖堂) の前景左端の聖母マリアの背後に顔だけ登場する女性と一致する[1][2]。また、ヴェネツィアで学んだ画面背後の闇の使用、ビザンチン美術のイコンを連想させるキリストの顔は、スペインに到着していた時にエル・グレコがすでに習得していたものである。このような様式上の特徴から、本作はサント・ドミンゴ・エル・アンティグオ聖堂英語版祭壇のために制作された作品群や『聖セバスティアヌス』などのイタリアマニエリスムを強調したダイナミックな作品と同時期に描かれたと見られ、興味深い[1]

脚注

参考文献

外部リンク

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