鳥島近海地震
From Wikipedia, the free encyclopedia
2023年鳥島近海の群発地震・津波・孀婦海山の噴火
鳥島近海や小笠原諸島西方沖、東海道南方沖などの海域ではしばしば深さ350kmから500km前後の深発地震が発生するほか、鳥島近海の浅い場所で発生する地震ではマグニチュード6未満でも津波を発生させることがある(津波地震)。 鳥島近海で発生する津波地震は、長波近似を用いた津波伝播シミュレーションにより、円形の隆起の津波波源モデルが提唱された(Satake and Kanamori, 1991[1])。震源メカニズムは地下浅部でマグマ貫入に伴う水圧破砕(Kanamori et al., 1993[2])や、スミスカルデラの環状断層(Ekström, 1994[3])の火山活動に伴うCLVD型の地震モデルが推定されている[4][5][6]ほか、三反畑ほか (2020)[7]は「カルデラ直下のシル状マグマだまりで高圧化したマグマによって環状断層が破壊する"trapdoor faulting (引き上げ戸状断層破壊)"」によって津波が発生したと推定した。 一方、深発地震では、震央より離れた場所で最大震度を記録する「異常震域」という現象を伴う事が多い。
2023年10月2日から孀婦岩の北西沖付近でM4~5台の群発地震が発生。活動は激しく、10月3日にMw6.0、10月5日にMw6.1、10月6日にMw6.1と、M6を超える地震も何度か発生した[8]。八丈島では5日の地震で30cmの津波を、6日の地震では20cmの津波を観測した。
10月9日午前4時から6時にかけて孀婦岩の西方を震央とするmb4~5程度の群発地震が発生すると、同日午前6時35分に八丈島八重根で津波を観測。これを受けて気象庁は6時40分に津波注意報を発表した。最大津波高は八丈島の70cm。この津波によって、八丈島と神津島で複数の小型船が転覆する被害が発生した[9]。
9日の群発地震と同時に、震央付近を波源とするT相(水中音波)が少なくとも14回海底地震計によって観測され、宮崎県や鹿児島県の沿岸ではこのT相により震度1~2の揺れを13回観測した[10]。また、海底水圧アレイ観測では、T相の波源に対応できる津波が1時間半に渡って10回以上発生。イベント後半ほど大きな津波を引き起こしたとみられる。 これらは、9日の群発地震とT相・津波の波源は同一の事象を起源としていることを示唆する[11]。
9日午前4時~6時の活動以降、地震活動は低下した。
その後、10月20日に海上保安庁が鳥島の西方約50km付近で漂流軽石を発見。10月27日から31日かけて気象庁の観測船でこの軽石が採取された。このうちの白色の軽石は、非常に新鮮で、ごく最近生成されたとみれる。この白色の軽石の化学組成は、SiO2含有量70.5–72.0 wt.%、Na2O+K2O含有量6.3–6.5 wt.%のデイサイト〜流紋岩質の岩石で、Ba/La比が約19、La/Sm比が約2であり、背弧リフト帯の海底火山の噴出物である可能性を示唆した[12]。
11月10日~12日、JAMSTECが9日の群発地震によるT相の波源付近の海底を調査したところ、孀婦海山山頂の水深約900mに直径約6kmのカルデラが存在していることを発見した。孀婦海山は背弧リフト内に存在する火山であるが、この火山と9日の地震・津波や漂流軽石との関係は不明[13]であった。
2024年1月18~22日、海上保安庁が鳥島から孀婦岩にかけての海域で海底地形調査を実施した。2022年にJOGMECが傭船により取得した海底地形データと比較した結果、孀婦海山カルデラ内の火口丘が一部消失し、その場所に直径約1.6kmの火口が新たに形成されていることが判明した。この火口形成によって、2022年と比較して水深が最大で451m深くなり、推定0.43km3の火山体が失われた。一方、火口周辺では噴出物や崩壊物が堆積し水深が浅くなった場所もある。また、新火口の北麓では長さ4km・幅1kmに渡って抉れたように水深が浅くなっており、斜面崩壊が発生したと考えられている。斜面崩壊の体積は推定0.14km3。これらの海底噴火の痕跡は、上記の地震・津波イベントと関係がある可能性が極めて高いとしている[14]。