1998 KY26
小惑星
From Wikipedia, the free encyclopedia
1998 KY26 はアポロ群に分類される地球近傍小惑星である。キットピーク国立天文台で観測を行っていたスペースウォッチプロジェクトによって1998年5月28日に初めて観測され、日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ2」の(162173) リュウグウに次ぐ探査目標に選定されている[7][8][9]。
| 1998 KY26 | |
|---|---|
| 分類 | 地球近傍小惑星[1][2] |
| 軌道の種類 | アポロ群[1][2] |
| 発見 | |
| 発見日 | 1998年5月28日(初観測日)[2] |
| 発見者 | |
| 軌道要素と性質 元期:TDB 2,461,000.5(2025年11月21日)[1] | |
| 軌道長半径 (a) | 1.229 au[1] |
| 近日点距離 (q) | 0.983 au[1] |
| 遠日点距離 (Q) | 1.475 au[1] |
| 離心率 (e) | 0.200[1] |
| 公転周期 (P) | 497.573 日[1](1.37 年[1]) |
| 軌道傾斜角 (i) | 1.491°[1] |
| 近日点引数 (ω) | 210.004°[1] |
| 昇交点黄経 (Ω) | 84.182°[1] |
| 平均近点角 (M) | 0.983°[1] |
| 前回近日点通過 | TDB 2,460,501.568 (2024年7月10日) |
| 次回近日点通過 | TDB 2,460,999.141[1] (2025年11月19日) |
| 物理的性質 | |
| 直径 | 11 ± 2 m[4] |
| 自転周期 | 5.3516 ± 0.0001 分[4] |
| スペクトル分類 | X[5] |
| 絶対等級 (H) | 26.13 ± 0.16[4] |
| アルベド(反射能) | 0.52 ± 0.08[4] |
| 色指数 (B-R) | 0.083 ± 0.070[6] |
| 色指数 (V-R) | 0.058 ± 0.055[6] |
| 色指数 (R-I) | 0.088 ± 0.053[6] |
| ■Template (■ノート ■解説) ■Project | |
軌道
1998 KY26 の軌道長半径は約 1.229 au で、約500日かけて太陽の周りを公転している。地球との最小交差距離 (Earth MOID) は約 0.0025 au(約 37.4万 km)しかなく、月軌道(約 38万 km)よりもやや内側にまで達することになる[1]。発見直後の1998年6月7日には、地球から月までの距離の約2倍である約 0.0054 au(約 80万 km)のところを通過している[1]。
1998 KY26 は太陽系の中でも地球から比較的到達しやすい軌道を持つ天体の一つであり、地球から火星への物資の輸送に最適な軌道にきわめて近い軌道となっている。水が豊富に含まれているとされていることから、将来の探査計画で使用できる潜在的な水源になりうる[10]。
物理的特性

1998 KY26の物理的特性の解析はジェット推進研究所の天文学者スティーヴン・オストロ (Steven J. Ostro) を中心とした国際研究チームによって行われた[6]。研究チームは、アメリカ合衆国カリフォルニア州にある電波望遠鏡と同国のカリフォルニア州、ハワイ州、アリゾナ州およびチェコの光学望遠鏡を用いて観測を行った。
1998年に行われた光度曲線の測定では、1998 KY26の直径は約 30 m 、自転周期は約10.7分しかないことが判明し、これは当時知られていた太陽系内の天体では最も短い自転周期で、当時、自転周期が判明していた小惑星はいずれも時間単位の自転周期を持っていた[6]。このような高速自転をしており、短い自転周期を持つ小惑星は「高速自転天体」[7]または「高速自転小惑星」[11]と呼ばれる。多くの小型の小惑星は小さな岩石の塊が集まって形成されたラブルパイル天体であると考えられているが、これほどの高速で自転していることが判明したため、1998 KY26はラブルパイル天体ではなく一枚岩のような小惑星である可能性が示されている[6][12][13]。
2025年には、スペインのアリカンテ大学の研究者である Toni Santana-Ros らによる研究チームは、超大型望遠鏡VLTやジェミニ南望遠鏡、カナリア大望遠鏡などを用いた地上からの観測の結果、1998 KY26 が当初考えられていた推定よりもさらに小さく、かつ自転周期が短いという研究結果を公表した[4]。この研究により 1998 KY26 の直径は約 11 m、自転周期は約5.4分しかないと求められ、後述のはやぶさ2による接近探査をさらに困難なものにする可能性が示されている。また、アルベド(反射能)が 0.52 と高く、明るい表面を持つと判明したことから、別の小惑星の破片が起源となっている一枚岩の塊のような天体であることを示唆する結果であるとしているが、ラブルパイル天体である可能性も完全には排除できないとしている[4][14]。
スペクトル分類においてはX型小惑星に分類されており[5]、広義的には炭素質小惑星に分類される可能性もある[7][8]。光学的観測及びレーダー観測の結果からは 1998 KY26 には水が豊富に含まれていることが示されており、さらなる研究および将来における火星への水の潜在的な供給源として魅力的な対象でもあるとされている[10]。
はやぶさ2による近接探査
はやぶさ2 · (162173) リュウグウ · 地球 · 太陽 · (98943) トリフネ · 1998 KY26
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、はやぶさの後継機によるC型小惑星のサンプルリターン対象として 1998 KY26 を候補の1つに挙げていた[15]が、結局、小惑星 1999 JU3(後の(162173) リュウグウ)に向かうことが決まったため、サンプルリターンは実現しなかった。
2020年7月、JAXAははやぶさの後継機である小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へカプセルを分離した後に行う「拡張ミッション」の目標天体として、はやぶさ2が探査可能な354個の小惑星の中から、工学的観点と理学的観点に基づく評価により、候補を 1998 KY26 と 2001 AV43 の2天体に絞ったことを発表した[11][16]。そして同年9月、JAXAは熱成立性、イオンエンジンの運転条件そしてシナリオ成立性の状況の総合的判断に基づき、拡張ミッションの探査目標となる天体を 1998 KY26 に決定し、2031年7月にランデブーして 1998 KY26 の近接観測を行う計画を発表した[7][8][9][17]。この拡張ミッションが成功すれば、1998 KY26は直径 100 m 以下の天体および高速自転小惑星の中では史上初めて近接探査された天体となる[7][9]。また、1998 KY26 の直径が先述の通り2025年の研究で下方修正されたが、この大きさは2013年にロシア連邦のチェリャビンスク州に落下したチェリャビンスク隕石の元となった小惑星の推定直径よりも小さく、惑星防衛の面においても、はやぶさ2による接近探査が地球へ影響を及ぼしうる小型の小惑星への理解を深めることになると期待されている[18]。