インチェントロ
From Wikipedia, the free encyclopedia
フランス・ナント
ダイムラー・ベンツ傘下のAEGの鉄道システム部門とスイス・スウェーデンの電機メーカーアセア・ブラウン・ボベリ(ABB)の鉄道システム部門が1996年に統合して発足したアドトランツ(ADtranz、本社:ドイツ)は、1998年になって、下記の7種の新型鉄道車両シリーズを発表した[1]。
- ブルータイガー(Blue Tiger)- 電気式ディーゼル機関車
- オクテオン(Octeon)- 電気機関車
- クルザーリス(Crusaris) - 都市間高速鉄道用車両
- イティーノ(Itino) - 地域内輸送鉄道用車両
- インチェントロ(Incentro)- 路面電車車両
- モヴィア(Movia) - 地下鉄車両
- イノヴィア(Innovia) - 新交通システム車両
このうち、路面電車の「インチェントロ」は、アドトランツが製造する3つの車両シリーズ、「GTシリーズ」(別名・ブレーメン形)、「ユーロトラム(Eurotram)」、「バリオバーン(Variobahn)」を集約・一本化すべく開発された車両シリーズである[1]。100%低床構造の超低床電車であり、編成は台車のある車体と台車のないフローティング車体からなる[2]。台車には左右の車輪を繋ぐ車軸を省いた独立車輪を使用し[2]、台車枠側梁先端部分にレール方向に主電動機を取り付けて特殊な継手とかさ歯車によって車輪を駆動する[3]。設計はモジュール化されており、事業者の使用条件に沿って細かな仕様変更が可能である[1]。
2001年5月、メーカーのアドトランツはボンバルディアに買収された[4]。ボンバルディアは買収前から「シティランナー(Cityrunner)」という100%超低床車のシリーズを開発しており[3]、アドトランツ買収後は車軸付き車輪の台車を履く「シティランナーII」を標準車とする方針を採った[2]。その結果、インチェントロの導入事例は下記の2件のみに終わった[4]。なお、車種整理によって2003年にボンバルディアの低床車は「フレキシティ(FLEXITY)」というブランド名にまとめられており、「シティランナーII」は「フレキシティ・アウトルック(FLEXITY Outlook)」のCタイプとして製造が続いている[4]。

インチェントロの初導入はナント都市地域交通会社(SEMITAN)が運営するフランス・ナントのトラムである[5]。形式名は「AT6/5L」で、5車体からなる両運転台車である[6]。当初の受注編成数は23で[3]、2000年6月に最初の編成がナントに到着した[5]。最終的に33編成が納入されている[6]。車両の主要諸元は以下の通り[6]。
- 形式名:AT6/5L
- 車体数:5車体
- 編成寸法:長さ36.4メートル・幅2.4メートル
- 編成出力:45キロワット×8
- 軌間:1,435ミリメートル(標準軌)
- 自重:38.9トン
- 床面高さ:35センチメートル
- 定員:239人(座席76人)
- 最高速度:70キロメートル毎時
イギリス・ノッティンガム

ナントに続くインチェントロの導入事例は、イギリス・ノッティンガムにて新規に開業したノッティンガム・エクスプレス・トランジット(NET)である[7]。形式名は「AT6/5」で、ナントと同様5車体からなり編成両側に運転台を持つ[6]。2004年3月の路線開業にあわせて15編成導入された[8]。イギリス国内では100%超低床車の採用はノッティンガムが初めてであった[8]。車両の主要諸元は以下の通り[6][8]。
- 形式名:AT6/5
- 車体数:5車体
- 編成寸法:長さ33.0メートル、幅2.4メートル
- 軌間:1,435ミリメートル(標準軌)
- 定員:200人(座席62人)
- 最高速度:80キロメートル毎時