イーハトーボの劇列車
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22歳から35歳までの賢治の姿を4つのタイミングを題材に描く。本作の特徴は、賢治の生涯の中で描く対象をその上京に絞った点であり(本作では1918年・1921年・1926年・1931年が対象)、舞台も東京に向かう列車内と東京での滞在先のみとなっている。さらに、この「賢治伝」のパートは、実は「現世に思い残すことがありながら世を去った人々」が、来世へと向かうまでの間に演じた寸劇という構成が取り入れられている。
冒頭の口上[1]でも述べられているが、井上は賢治の全集を読み込み、賢治作品に関連する登場人物やエピソード、フレーズを作中にちりばめた。また、全集の詳細な年譜をベースに舞台を設定し、そこにフィクションを挿入している。
近代文学者の伝記劇は井上にとって本作が初めてであったが、このあと約10年にわたって夏目漱石・樋口一葉・石川啄木・太宰治・魯迅の伝記劇を手がけることとなる。