なめとこ山の熊
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- 小十郎
- 本名淵沢小十郎。まるで熊のような風体をした熊撃ちの達人であったが、熊の言葉や気持ちが分かるようになり、熊の命を奪う行為に疑問を感じ、葛藤する。
- 熊
- 母子熊、小十郎に命を差し出した熊、小十郎を打ち殺した熊が登場する。
- 荒物屋の主人
- 小十郎の毛皮を買い叩いて搾取する、やり手の荒物屋。
あらすじ
なめとこ山の麓に小十郎という熊撃ちの名人がいた。小十郎には家族を養えるほどの畑はなく[2]、山林は政府のものとなって伐採が禁じられ、里では職にありつけず、熊を撃つしか家族を養う道がなかった。
小十郎は、一家七人を養うために、熊を撃ちまくったが、本当は熊に申し訳ない気持ちでいっぱいであった。彼は熊撃ちの時は自信に満ちた名人だったが、殺した熊に言い訳を聞かせ、次に生まれる時には熊になるなよと熊に語りかける。そして、熊の肝と皮を担いで帰る時はみるかげもなく、ぐんなりした風で山を降りてゆく。
なめとこ山の熊にとって、撃ち殺されるのはもちろん迷惑だったが、熊はそんな小十郎に一種の親近感を抱き、いつも高いところから眺めていた。小十郎は時おり、熊の言葉さえ分かる気さえした。彼が、なめとこ山で道に迷って、熊の親子に出会った時に、小熊と母熊の会話を理解してしまい、胸がいっぱいになって、こっそり戻った時があった。
山では気高い小十郎も、なめとこ山の熊が肝と毛皮という商品に変わってしまい、町の荒物屋に売りに行くときはみじめだった。小十郎の毛皮は、ずるい荒物屋によって2枚で2円という安値がつけられる。生活がかかっている小十郎は、それが不当に安いことを分かっていても、仕方なく手放してしまうのであった。
ある日、小十郎は、木に登っている熊に出会い、鉄砲を構えた。鉄砲をつきつけられた熊は、観念し、木から下りると、小十郎に自分が殺されなければいけない理由を尋ねた。小十郎は、最後には安く買い叩かれてしまう熊の末路を教え、気の毒に思っていることを告げた。さらに(本当は熊撃ちをやめて)草の実でも食べて死ぬならそれでも良いような気がする、と本音を漏らした。すると熊は、二年間し残した仕事を済ませたら、二年目に小十郎の家の前で、死んでいてやるから、胆でも皮でもあげるからと約束した。小十郎はそれを聞くと切なくなって、見逃してやった。ところが二年後、熊は小十郎の家にやって来て、約束どおり死んでしまった。小十郎は熊を見て、思わず拝むようにした。
一月、小十郎は90歳になる母に、「水に入る(猟を始める儀式)」が嫌になったと弱音をはき、孫達に見送られながら出かけて行った。それから白沢から峰を越えたところで猟を始めた。するとまもなく不意打ちで熊が現れ、小十郎は撃ち損じて熊に襲われてしまった。小十郎は、お前を殺すつもりはなかったという声を聞き、青い火を見て死を悟り、熊どもゆるせと心でつぶやいた。
三日後、小十郎のために数多くの熊が集い、盛大な弔いが行われている場面で物語が終わる。