スイス国鉄RAe TEE II形電車

From Wikipedia, the free encyclopedia

製造所 SIG、MFO
製造年 1961年 - 1967年
製造数 5編成
スイス国鉄RAe TEE II形電車
TEE「ゴッタルド」として運行されるRAe TEEII 1051号機、イタリア、カントゥ=カームナーテ駅、1988年
基本情報
運用者 スイス連邦鉄道
製造所 SIG、MFO
製造年 1961年 - 1967年
製造数 5編成
運用終了 1999年
主要諸元
編成 5両・6両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 交流15kV 16.7Hz
交流25kV 50Hz
直流1500V
直流3000V
最高速度 160 km/h
編成定員 168名
編成重量 296 t
編成長 149,759 mm
2,840 mm
高さ 4,210 mm
駆動方式 クイル式駆動方式
歯車比 2.34
編成出力 2,310 kW
制御方式 低圧タップ、抵抗制御
制動装置 空気ブレーキ、手ブレーキ、発電ブレーキ、渦電流レールブレーキ
テンプレートを表示

スイス国鉄RAe TEEII形電車(スイスこくてつRAe TEEIIがたでんしゃ)は、スイススイス国鉄(SBB)が保有し、TEE[1]およびユーロシティ[2]などで運行されていた国際列車用交直流電車である。

TEE「ゴッタルド」として運行されるRAe TEEII 1051号機、スイス、ラヴォルゴ付近、1988年
SBB Historicで動態保存されているRAe TEEII 1053号機
RAe TEEII 1053号機の先頭車

西ヨーロッパにおける全一等車による国際列車であるTEEは、1957年の運行当初、オーストリアベルギー西ドイツフランスイタリアルクセンブルクオランダスイスの8カ国の各国鉄が運行に参加し、12往復の列車がいずれも気動車で運行されていた。これは各国それぞれに電化方式が異なるヨーロッパの鉄道において、国境駅での機関車の付替えの省略と出入国管理等の列車内での実施による所要時間の短縮を図るためであり、西ドイツ国鉄VT11.5形(後のVT601形)、フランス国鉄X2770形イタリア国鉄ALn442-448を導入し、スイス国鉄オランダ国鉄とは共同開発したRAm TEEI(スイス国鉄形式)、DE-IV形(オランダ国鉄形式)を導入[3]していた。これらは、前2者が液体式、後2者が電気式気動車であり、いずれもTEE列車にふさわしい接客設備を有し、VT11.5形、RAm TEEI形およびDE-IV形は食堂車を連結、X2770形およびALn 442-448形も供食設備を有していた。しかし、ドイツやフランス方面からスイスを経由してイタリア方面への列車を運行する場合、ゴッタルド鉄道トンネルを擁するアルプス山脈越えルートなど急勾配路線を経由することとなり、国内にスルザー[4]というディーゼルエンジンや機械類の世界的メーカーを持ち、1920年代頃から高出力の気動車もしくはディーゼル機関車を開発してきたスイス国鉄であっても気動車列車によるアルプス越えは困難であると判断し、1957年にスイス国内の車両メーカーのSIG[5]と車両用電機品メーカーのMFO[6]が検討していたチューリッヒ - ミラノ間都市間列車用電車などを参考に、多電源に対応した電車によるTEE用列車の開発を1958年から進めることとなった。この電車は、全一等の国際列車にふさわしい装備とするとともに、1952年イタリア国鉄が導入したETR300形セッテベロ[7]のような乗客の前面展望も意識した構造を検討したほか、RAm TEEI形で指摘されていた食堂車の座席不足も解消することとしていた。なお、前年にSIGとMFOが検討していたチューリッヒ - ミラノ間都市間列車用電車の案は以下の通りであり、基本的な構成の一部はその後のTEE用電車に引き継がれている。

  • 7両固定編成の電車とし、4両目を厨房や乗務員事務室を併設した電動車、5両目をバーカウンター併設のレストランとした座席数58名の食堂車とする。
  • 客室は3、6両目を2+1列の座席配置のオープン客室、2両目を10名3室と6名1室のコンパートメント客室とする。
  • 両先頭車は運転室床を客室床より下に設置して室内からの展望を確保したものとするほか、客室内は個別のソファーシートを2+1列を基本として一部サロン風に配列したものとする。
  • 各旅客車のデッキには大型の手荷物棚を設置する。
  • 電動車はAC15kV 16 2/3Hz、AC25kV 50Hz、DC1500V、DC3000Vの4電源対応とし、屋根上の集電装置も4基装備する。

電車列車として開発が進められたTEE用車両は気動車として検討されていた1957年以降、ETR300形のような2階運転室、前面展望室タイプやチューリッヒ - ミラノ都市間列車用電車の客室床下運転室、前面展望確保タイプが検討されていたが、最終的には前面展望をある程度考慮するものの、代わりに高速走行時の空気抵抗低減を考慮し、風洞実験を実施の上で決定された、最終的なものとほぼ同様の流線形の形状で、運転室直後に乗降デッキと手荷物置場を設置、客室はすべて2+1列の座席配置のオープン客室の1等室のレイアウトとしたデザインが1958年5月頃には固まっていた。

一方、技術的な面においてはヨーロッパ各国における電化方式の違いに対応できる制御装置が必要となっていた。新しいTEE用電車の運行が想定されていた各国国鉄の主な電化方式は以下の通り。

  • オーストリア国鉄、西ドイツ国鉄、スイス国鉄 - AC15kV 16 2/3Hz[8]
  • フランス国鉄 - AC25kV 50Hz、DC1500V(電化時期により異なり、1950年代前半以降、主にパリより南側が交流電化となっている)
  • イタリア国鉄、ベルギー国鉄 - DC3000V
  • オランダ国鉄 - DC1500V

スイス国鉄を始めとするスイスの鉄道では、高圧タップ切換制御交流整流子電動機回生ブレーキ装置の組合せによる電気機関車をこの時代における主な機材として導入を続けていた[9]が、フランス国鉄で1950年代から実用化された商用周波数50Hzを使用するAC25kV電化方式への対応を始めとする新技術の開発が必要となり、1958-61年にかけてAm4/6形電気式ガスタービン機関車BBC[10]製の主制御装置とシーメンス製のシリコン整流器を使用して改造したAC25kV 50Hz、AC15kV 16 2/3Hz、DC1500Vを3電源式機関車へのAe4/6III形の試験や、入換用電気機関車Ee3/3II形の製造などによって技術を蓄積しており、TEE用電車についても直流区間では抵抗制御、交流区間ではタップ切換制御とシリコン整流器、抵抗制御によることとなったが、本格的な多電源機はこの電車が初めてのものとなった。また、その他のTEE用高速電車としての性能要件は以下の通りであった。

  • 1時間定格出力は架線電圧AC15kV時に2376kW、AC25kV、DC1500Vおよび3000V時に2272kW
  • 33パーミルの上り勾配区間を50km/hで走行可能(オーストリアのアールベルク峠を想定)
  • 26パーミルの上り勾配区間を85km/hで走行可能(スイスのゴッタルド峠を想定)
  • 20パーミルの上り勾配区間を120km/hで走行可能
  • 最高速度160km/h
  • 33パーミルの下り勾配区間を電気ブレーキのみで走行可能

こういった経緯を経て1961年にはRAe TEEII形として1051-1054号機の5両4編成のTEE用電車が落成し、同年7月1日のダイヤ改正よりTEE列車のゴッタルド、ティチーノ、シザルパンとして運行を開始し、1966年には全編成が6両編成となったほか、翌1967年には1055号機1編成が増備されて輸送力を増強している。その後1974年には運行系統の見直しにより充当される列車がゴッタルド、イリス、エーデルヴァイスに変更となり、なかでもゴッタルドは国際列車としてのTEE最後の列車として1988年まで運行されていた。なお、当初気動車列車によるものとし、このRAe TEEII形の導入によって電車による運行が加わったTEEであるが、その後多電源機は普及しなかったほか、電車列車では利用客の増減に対して列車の編成両数を柔軟に変更することが難しかったため、1963年以降伝統的な電気機関車の牽引によるTEEの運行が開始され、スイス国内通過のTEEも本形式によるもの以外はスイス国鉄の電気機関車による牽引となり、RAe TEEII形のその後の増備や後継となるTEE用電車の開発も行われなかったほか、他国においても国際列車としてのTEEに電車列車を導入した例は他になく[11]、本格的なTEE用電車はRAe TEEII形のみであった。

1970年代後半から1980年代にかけて全1等車で構成されるTEEは次第に2等車を組み込んだ他の種別の列車に移行しており、RAe TEEII形も一部客室を2等室に変更して、1987年に創設された新しいヨーロッパ国際列車であるユーロシティ用に改造されてRABe EC形に形式変更された。改造後のRABe EC形はゴッタルド、マンゾーニ、シザルパン、ルテチア、レマノ、ユトリベルグ、キレスベルクといったユーロシティ列車やスイスの首都ベルンパリ方面からのTGVとの連絡列車などに使用された。

本形式の製造は車体、機械部分、台車をSIGが、電機部分、主電動機をMFOが担当しているが、集電装置と駆動装置のみBBCが担当しており、各機体の機番及び製造所、運行開始年月日、6両化年、RABe EC形への改造年月日は以下のとおり。

なお、本形式の機番は編成に対して付番されるものとなっており、個別の車両に機番は付けられていないが、編成番号に"/"と前位側から数えた号車数を付加する形で個別の車両の特定がなされる。なお、個別の機番ではなく号車番号であるため、5両編成時と6両編成時で同一の番号であっても同一の車両とは限らない[12]。1051号機を例に挙げると以下の通りであり、6両編成化によって2両目に1両追加されたため、5両編成時の1051/2号車であった車両は6両編成では1051/3号車となるなど番号が変更となっている。

  • 1051号機(5両編成):1051/5 - 1051/4 - 1051/3 - 1051/2 - 1051/1[13]
  • 1051号機(6両編成):1051/6 - 1051/5 - 1051/4 - 1051/3 - 1051/2 - 1051/1

また、本形式は通常RAe TEEII形およびその後身のRABe EC形と呼称されているが、このほか駆動軸数と総軸数を元にした形式名であるRAe 4/22形(5両編成)、RAe 4/26形(6両編成)もしくはRABe 4/26形や、ユーロシティ用に改造された後は機番をベースとしたRABe 1050形や1980年代後半より使用されている新しいUIC方式の形式名であるRABe 500形などと呼称される場合もある。

仕様

運行

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI