スイス国鉄RABe501形電車
From Wikipedia, the free encyclopedia
2015年9月5日に貨物列車の、12月11日に旅客列車の営業を開始したゴッタルドベーストンネルでは、スイスを南北に縦断する列車が運行され、貨物列車、旅客列車ともに隣接するドイツもしくはイタリア方面へ直通する国際列車も多く設定されている。このトンネルを通過する旅客列車の運行を行っているスイス国鉄では、開業当初は同トンネルを通過する列車のうち、イタリア(2017年12月以降はドイツへも直通予定)へ直通するユーロシティについては、250km/h運転が可能なETR610およびRABe503形による運行、国内のみの運行であるインターシティについては、200km/h運転が可能なRABDe500形およびRe460形が牽引するEW IV系およびEC系による客車列車による運行とすることとしていたが、その後は輸送量の増加が予想されることもあり、これらの機材を250km/h走行可能で各国への乗入れが可能な29編成の新しいものに更新することを計画していた。2012年より具体化したこの計画はプロジェクト名称をBeNe[2]として、2014年にはアルストム・トランスポール[3]、シーメンス、タルゴ、シュタッドラー・レール[4]のメーカー各社より提案を受けている。なお、ボンバルディア・トランスポーテーションは同社のインターレギオおよびインターシティ用のRABe502/RABDe502形の製造途上[5]であり、本形式の提案には参加していない。
入札の結果、2014年5月9日にはシュタッドラー・レールが29編成を9.8億スイス・フランで落札し、また、最大92編成のオプションが付けられることが決定し、2015年にはプロジェクト名称および列車名称を新たに"Giruno"、シュタッドラー・レールでのプロジェクト名および車両名称を”EC250”として開発が進められることとなった。シュタッドラー・レールは連接・低床式で主に都市近郊列車用のFLIRT[6]シリーズや全車二階建てで主にSバーン用のKISS[7]シリーズなどの生産で近年では欧州有数の鉄道車両メーカー[8]に成長していたが、高速列車用の機材としてはノルウェー国鉄、オーストリアの都市間列車運行会社、ベラルーシ国鉄向けの最高速度200km/hの実績があったが、最高速度250km/hの機材は本形式が初めてのものであった。なお、当初は食堂車付の編成が19編成、食堂車なしの編成が10編成となる予定であったが、全29編成が食堂車付の編成となっている。
本形式は連接・部分低床式で、欧州およびアフリカの計14カ国に1100編成以上が発注・導入されたFLIRTシリーズをベースとしたもので、欧州の鉄道車両における速度区分では中速車両[9]にカテゴライズされる、250km/h運転に対応した車両である。また、11車体連接のうち2車体をスイス/イタリアにおけるホーム高さ550mmとドイツにおけるホーム高さ760mmにおける車椅子での乗降に対応するための高さの異なる片側2か所ずつの乗降扉を持つ低床式構造として、それぞれ1等車および2等車であるこの低床式2車体と、その間に連結した食堂車の3車体の約40mの間を移動円滑化に完全対応したものとしているほか、両先頭車を除くその他6車体もスロープにより車内をステップレス構造としていることが特徴となっている。また、イタリアおよびドイツ、オーストリアの各国へ乗り入れるため、各国の路線での走行を考慮した相互運用性のための技術仕様であるTSI[10]の高速鉄道車両基準に準拠し、各国の電源方式や信号方式に対応してドイツ、オーストリア、イタリアの各国へ乗入れることが可能な仕様となっており、スイスではスイス国鉄の全線のほか、レッチュベルクベーストンネルを含むBLS AGおよびスイス南東鉄道[11]での運行が可能、ドイツでは標準軌の電化路線全線、オーストリアではゼメリング峠を除く標準軌の電化路線全線、イタリアではAC25kVおよびDC3kVの標準軌の電化路線全線での運行が可能となっている。また、欧州の衝突安全基準であるEN15227に準拠しているほか、長大なゴッタルドベーストンネル通過のための火災対策、気圧および気温の急変動対策がなされている。
- 本形式の主な設計要件は以下の通り
- ユーロシティの運用でスイス、ドイツ、オーストリア、イタリアに取り入れ可能。
- 29編成を2019年から運行開始。
- 軸重を最大18tとし、機器を分散配置としてなるべく均等とする。
- 編成定員を405名とし、車内は列車の全長にわたり客室とする。
- 高さ550mmと760mmのそれぞれの高さのホームから車椅子で乗降可能とする。
- 12か所の乗降口を編成に均等に配置する。
- その他の設計要件は以下の通り
- オープンデザインの客室デザインとする。
- トンネル進入時の気圧変動に対応した乗降扉と空調装置を装備する。
- 車椅子に対応したトイレおよび食堂車とする。
- 室内に自転車および多用途荷物置場を設置する。
- 人間工学に基づいた運転台とする。
- 空気ばね式台車を装備する。
- EN規格に基づく衝突安全性能とする。
- 長距離列車向けの客室設備とする。
- 自動連結器を装備し、単独編成もしくは重連での運転が可能とする。
ロマンシュ語で ノスリを表す"Giruno"と呼称されるこの機体は、2017年にはシュタッドラー・レール社のメーカーシリーズ名が"SMILE"(Schneller Mehrsystemfähiger Innovativer Leichter Expresszug[12])となったほか、スイス国鉄の一部の電気機関車や電車の例に倣い、各編成ごとに機体名がつけられることとなっている。これは、ゴッタルド峠を超える路線でかつて使用されていた勾配用電気機関車であるAe6/6形(称号改正後のAe610形)の11401-11425号機および11483号機[13]からスイスの26州の名称およびその紋章を引継ぐほか、残り3編成にはゴッタルド、シンプロン、チェネリの3トンネルの名称が付され、先頭車側面や食堂車車内に機体名と紋章が設置される。
本形式は車体、台車、機械部分の製造と最終組立がスイス国内のシュタッドラー社各工場で行われるほか、主要電気機器をスイスの伝統的な電機メーカーであったBBC[14]やSAAS[15]の流れを引くABB Schweiz[16]およびABB Sécheron[17]が担当するなど、多くの部品がスイス製であることも特徴となっており、車体、内装、座席デザインもスイス国内のデザイン事務所であるnose design experience[18]で行われている。このほか、ドイツのVoith Turbo[19]やBBCの流れを汲むオーストリアのtraktionssysteme austria[20]製の機械品、電機品を使用している。
また、本形式は、車両および列車の名称はGiruno、形式名はRABe501形であるが、編成を構成する11両の車両の2007年から採用されたUICUnion Internationale des Chemins de fer規格によるヨーロッパ標準動力車番号体系であるEVN[21]の車両番号は以下のとおりとなっている。
- 編成番号(XYは01-29の編成番号、aはチェックディジット)
- RABe 501 93 85 0 501 0XX-a CH-SBB
- 車両番号(XYは01-29の編成番号、b-lはチェックディジット)
- Bt1 93 85 1 501 0XY-b
- B11 93 85 2 501 0XY-c
- B10 93 85 3 501 0XY-d
- B9 93 85 4 501 0XY-e
- B8 93 85 5 501 0XY-f
- B7 93 85 6 501 2XY-g
- WR6 93 85 5 501 2XY-h
- A5 93 85 4 501 2XY-i
- A4 93 85 3 501 2XY-j
- A3 93 85 2 501 2XY-k
- At2 93 85 1 501 2XY-l
また、各編成の編成番号と機体名、エンブレムは以下の通り。
- RABe501形機体名・エンブレム一覧
- RABe501 001
Kanton Tessin - RABe501 002
Kanton Uri - RABe501 003
Kanton Schwyz - RABe501 004
Kanton Luzern - RABe501 005
Kanton Nidwalden - RABe501 006
Kanton Obwalden - RABe501 007
Kanton Aargau - RABe501 008
Kanton Solothurn - RABe501 009
Kanton Basel-Landschaft - RABe501 010
Kanton Basel-Stadt - RABe501 012
Kanton Zürich - RABe501 013
Kanton Schaffhausen - RABe501 014
Kanton Bern - RABe501 015
Kanton Thurgau - RABe501 016
Kanton Glarus - RABe501 017
Kanton Freiburg - RABe501 018
Kanton St. Gallen - RABe501 019
Kanton Appenzell Innerrhoden - RABe501 020
Kanton Appenzell Ausserrhoden - RABe501 021
Kanton Graubünden - RABe501 022
Kanton Waadt - RABe501 023
Kanton Wallis - RABe501 024
Kanton Neuenburg - RABe501 025
Kanton Genf - RABe501 026
Kanton Jura - RABe501 027
Gotthard-Basistunnel - RABe501 028
Simplontunnel - RABe501 029
Ceneri-Basistunnel
仕様
運行
- RABe501形はシュタッドラー社のスイス国内の工場で組み立てが行われている。2016年9月のイノトランスに製造中の第1編成と第2編成から6両編成を組んで出品され、その後2017年3月18日には第1編成がシュタッドラー・レールのブスナング工場でロールアウトして式典が執り行われ、4月28日には試運転が始まり、7月12日に第2編成がロールアウトしている。また、同年7月2日からはゴッタルドベーストンネルでの試運転が開始され、その後チェコ国内の高速試験線やオーストリアのウィーンにあるRail Tec Arsenal[28]での試験を行い、スイス、イタリア、ドイツ、オーストリア各国での運行認可プロセスを開始することとなっている。当初予定されていた試運転スケジュールは以下の通りであった。
- 2018年1月までに6編成を製造
- 2017年7月からスイス国内での試運転を実施、2018年第1四半期頃までの予定
- 2017年10月からドイツおよびオーストリア国内での試運転を実施、2018年第2四半期頃までの予定
- 2018年2月からイタリア国内での試運転を実施、同年第3四半期頃までの予定
- 2018年8月以降、運行承認手続き、2019年第1四半期頃までの予定
- 2019年12月頃までに29編成を製造予定
- 定期運用までのスケジュールは以下の通り
- 2019年第1-2四半期は試験的に運用開始
- 2019年第2四半期以降は単編成もしくは重連運転での運用
- 2019年12月ダイヤ改正より定期運用開始
- 本形式はフランクフルト - バーゼル - ミラノもしくはチューリッヒ - ミラノ間のユーロシティで単行もしくは重連で運行され、現在使用されているETR610およびRABe503形は他線区へ転用される計画となっている。
- 2017年7月24日にRABe501 001号機を使用してチェコ国内の高速試験線で200km/hの走行試験が行われたほか、この試験線で電源切替の試験なども実施されているほか、ドイツ国内とオーストリア国内でそれぞれ3編成ずつが試運転を実施している。その後2018年2月21日にはドイツ国内でRABe501 002号機を、4月1日にはゴッタルドベーストンネル内でRABe501 004号機を使用して250km/hの営業運行に必要となる250km/h+10%の275km/hでの走行試験を実施している。また、2018年10月30日にはスイス国旗とイタリア国旗をデザインした塗装に変更されたRABe501 004号機がイタリアに回送されて同国内での試運転を開始している。
- 本形式の試験はほぼ計画通りしており、2019年4月4日には連邦運輸省交通局[29]より、単独編成・最高速度200km/hでの運行許可が発行され、同年5月8日のチューリッヒ - エルストフェルト間のインターレギオの運行から営業運転を開始し、5月13日からはチューリッヒ - バーゼルのインターレギオでの運行にも使用されている。その後同年12月からはゴッタルドベーストンネルを通過してキアッソもしくはアイロロまで、2020年春にはミラノまでの運行が開始される予定となっている。
- 2019年の本形式の導入と2020年のチェネリベーストンネルの開業によりさらにスピードアップがなされることになっており、計画ではチューリッヒ - ミラノ間がゴッタルドベーストンネル開業前の4時間3分、現状の3時間30分から3時間に短縮されることになっており、同時に本形式がチューリッヒ - ルガーノ間のインターシティの運行でも使用される計画となっている。


