Wikiwand AI

近代化遺産

日本の文化庁が定義している文化遺産保護制度上の概念 From Wikipedia, the free encyclopedia

近代化遺産(きんだいかいさん)は、

  1. 国家や社会の近代化に関連する文化遺産のこと。
  2. 日本の文化庁が定義している文化遺産保護制度上の概念の一つで、幕末から第二次世界大戦期までの間に建設され、日本の近代化に貢献した産業・交通・土木に係る建造物。
重要文化財の種別「近代化遺産」での指定第一号(1993年)、碓氷峠 めがね橋(群馬県安中市)
琵琶湖疏水(京都府京都市)
端島(軍艦島)(長崎県長崎市)

本項では2について詳述する。

概要

近代化遺産とは、製鉄所、造船所、製糸場などの工場設備や機械、鉱山、橋、ダム、トンネル、発電所、鉄道などの建造物、さらには河川施設や港湾施設など、幕末以降の日本の近代化を支えた総体を文化遺産として捉える概念である。従来の文化遺産保護制度の対象とはなりにくかったが、これらを文化遺産として評価する視点が強まるにつれて、「近代化遺産」というカテゴリーが用いられるようになった。

「近代化遺産」という用語自体は、1990年から文化庁の支援により各都道府県教育委員会が全国の近代化遺産の状況についての調査(「近代化遺産総合調査」)を実施するのに先立ち、文化庁が造語したものである[1]。この調査は特に優れた近代化遺産を重要文化財に指定し、保護することを目的としたものであった。それを踏まえて、1993年には重要文化財建造物の種別として「近代化遺産」が新設され[2]、群馬県の碓氷峠鉄道施設(第2橋梁から第6橋梁までの橋梁群のみ。翌年拡大指定)と秋田県の藤倉水源地の水道施設が、該当する重要文化財として初めての指定を受けた[3]。その後、1996年の文化財保護法改正において登録文化財制度が導入され、保護が本格化した。

なお、重要文化財建造物については「近代化遺産」という分類名で指定されたのは、2003年指定の「舞鶴旧鎮守府水道施設」が最後であり、2005年指定の「八ツ沢発電所」からは「近代化遺産」に代わって「近代/産業・交通・土木」という分類名称が使用されている。文化庁が発表している重要文化財建造物の分類別指定件数統計においても2005年からは「近代/産業・交通・土木」という分類名称が用いられ、従来から指定されていた、単独の橋梁、トンネル、駅舎などもここに分類されている[4]。

近代化遺産として評価される建造物には、建設当初の機能を維持したまま使われ続ける施設が少なくなく、保存に際しては意匠の保全だけでなく、施設本来の目的を達成できる状態と安全性の確保も課題となる。保存すべき価値の所在と活用方針を明らかにする保存活用計画の策定や、耐震診断・耐震補強を含む保存修理が重視されており、国庫補助事業でも非木造の近現代建造物や産業・交通・土木分野の近代文化遺産を対象とする調査工事、部分修理、耐震対策工事が継続的に実施されている[5][6]。また、主として20世紀に造られた建築物や土木構造物についても、2015年度から「近現代建造物緊急重点調査事業」が実施されている。建築分野の公開調査では日本国内の1945年から2000年につくられた建築物を対象に県別の調査成果が示されており、制度説明でも第二次世界大戦終結後から20世紀末までの建築物・土木構造物のうち優れた物件を抽出し、所在地、建設年、規模、構造、現況などを集約する事業と位置付けられている[7][8]。

近代化遺産が所在する地方公共団体を中心として設立された全国近代化遺産活用連絡協議会は、旧工部省の設立日である10月20日を近代化遺産の日としている。

類似の取り組みとして、日本の経済産業省は近代化産業遺産という認定制度を制定している。

主な近代化遺産

重要文化財

以下のリストには重要文化財指定の建造物のうち、文化庁が「近代/産業・交通・土木」に分類しているものを挙げる。西暦年は指定された年を表している。なお、橋梁、灯台などについては、「近代化遺産」という語が生まれる以前に指定されていたものもある。

以下の2件は、江戸時代最末期の建造物で、文化庁では「近世以前/その他」に分類している。

上記以外の事例

  • 北吸浄水場第1および第2配水池(京都府舞鶴市) - 1901年竣工
  • 神崎煉瓦ホフマン式輪窯(京都府舞鶴市) - 1897年竣工
  • 旧居留地下水渠(兵庫県神戸市) - 1868年~1872年、日本最古の近代下水道遺構
  • 湊川隧道(兵庫県神戸市) - 1901年竣工、日本初の河川トンネル
  • 奥平野浄水場旧急速濾過場上屋(兵庫県神戸市) - 1917年竣工、京都・蹴上浄水場とともに日本最初期の急速濾過施設
  • 旧国立生糸検査所(兵庫県神戸市) - 1932年竣工のゴシック建築
  • 八幡製鐵所(福岡県北九州市) - 1901年操業開始、日本初の近代製鉄所
  • 海軍無線電信所船橋送信所- 1915年操業開始、平成20年に電気通信技術の歩みを物語る近代化産業遺産として認定。太平洋戦争の時には真珠湾攻撃部隊に「ニイタカヤマノボレ1208」の電文を送信した事で一般に広く知られている。
  • 名村造船所跡地(大阪市住之江区)-1972年竣工、現在は複合アートイベントスペース(クリエイティブセンター大阪)として稼働。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

Related Articles

Timelines

Top Qs

Fact Checks