ガメラ対大魔獣ジャイガー
1970年公開の日本映画
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ストーリー

大阪港で「北山船舶修理工場」を営む北山良作には、弘という小学生の息子がいた。北山は、間もなく千里丘で開催される「大阪万博」会場で使用される遊戯用の潜水艇の製作を依頼されていた。この関係で、弘は万博の広報部員・沢田圭介に連れられて建設途中の万博会場の見学をする。万博開催のテーマは「人類の進歩と調和」であり、圭介も自らの考古学の知識を存分に役立てようとしていた。
会場には「ムー大陸の一部だった」と言われる南太平洋・赤道直下の島である「ウエスター島」から、「悪魔の笛」と呼ばれる巨大な彫刻石像が陳列のために運ばれる予定であった[1][3]。しかし、文化使節であるギボーが島に伝わる伝承を理由に発掘に対する猛抗議を行った。圭介は自らの考古学の知識と万博のテーマを交えた講演を行って説得を図るが、ギボーは「ジャイガー」という言葉を何度も吐いて、結局は納得しなかった。
一方、ウエスター島では既に政府からの許可を得ていた発掘隊がウィリアム博士主導の下、悪魔の笛を貨物船「南海丸」へ運搬するために最後の大詰めを迎えていた。そこへ突然ガメラが飛来し、なぜか発掘・運搬を行おうとするヘリコプターを妨害し始める。ウィリアム博士は毅然と指示を出し、ガメラへの攻撃も検討する。博士は息子と娘であるトミーとスーザンから反対されても断固としてガメラへの攻撃をやめようとしない。やがて悪魔の笛が完全に発掘されるとガメラは本格的に妨害を強行し、同時にウィリアム博士らも攻撃を行い、ガメラを相手に一触即発の緊張状態となる。
その時、島の火山が噴火活動を始めるとガメラは炎のエネルギーを求めて火山へと飛び去っていく。南海丸に運搬される悪魔の笛からは突如として汽笛のような謎の怪音が響き始めるも、発掘自体は成功を収め、日本への帰路につく。南海丸より先に大阪へと戻ってきたトミーとスーザンは友人である弘にウエスター島の土産話と現れたガメラの妨害について話をするが、弘は「ガメラの妨害には何か理由がある」と考えており、先日訪れたギボーの口にしていた「ジャイガー」という言葉に、言い知れぬ不安を強く感じる。
その不吉な予感は現実のものとなる。ウエスター島で、悪魔の笛が発掘された地面の下で永い眠りについていた「大魔獣ジャイガー」が目覚めたのだ[1][6][3]。悪魔の笛を追おうとするジャイガーは火山から戻ってきたガメラと戦闘になり、互角の勝負を繰り広げるも、やがて鼻の横の角から発射する固形唾液ミサイルでガメラの四肢を釘付けにして自由を奪い、えらの水上ジェット噴射によって海面を滑走し、日本へと向かう[1][3]。


大阪港では、到着した南海丸から悪魔の笛の荷揚げが行われようとするも、船員たちのほとんどが悪魔の笛に触れてから謎の奇病に侵されており、作業が進まない。圭介からの依頼で訪れた港湾の労務者たちの手によって何とか荷揚げは完了するものの、その1人が悪魔の笛から怪音が響きだすと共に苦しみ始めてしまう。
その少し前、八丈島南方の海域を航行中だった1隻の貨物船[注釈 1]が時速300キロという猛スピードで海面を滑走するジャイガーを目撃、回避も空しく破壊されてしまう。さらに悪魔の笛の荷揚げが終わった直後、大阪港に現れたジャイガーは南海丸までも真っ二つに破壊し、大阪への上陸を果たすと大阪市街地を次々と破壊していく[1][3]。迎撃する陸空の防衛部隊も固形唾液ミサイルや角から発するマグネチューム光線によって全滅させられてしまう。
そのころ、ウエスター島でひっくり返されたまま身動きができなかったガメラは、尻尾を使って四肢に射ち込まれた固形唾液ミサイルを引き抜くと飛行形態となり、ジャイガーを追って日本へと向かう。大阪の町をマグネチューム光線で次々と焼き尽くし、通天閣までも破壊してしまうジャイガーの元へと飛来し、大阪城公園で二度目の挑戦を試みるが、一瞬の隙を突かれて卵を産み付けられて大阪港で仮死状態となってしまう[1][3]。
対策本部ではジャイガーに対する有効策が立てられずに頭を痛めているが、訪れた弘とトミーが「悪魔の笛」の石像にジャイガーを倒す鍵があると進言。しかし、万博会場へと迫ってきたジャイガーは、運ばれていた石像を大阪湾へと投げ飛ばしてしまう。そこで最後の手段としてガメラを蘇らせる計画が練られる一方で、海洋研究所所長・松井博士の証言によりガメラの体内にジャイガーの幼虫がいると推測される[6]。
弘とトミーは独自に持ち出したトランシーバーで連絡を行いつつ、良作が万博会場の遊戯用に試作した小型潜水艇を無断で借用し、ガメラの口から体内へと進入[6][3]。肺に巣食っていたジャイガーの幼生を発見する。壊れたトランシーバーの雑音によって幼生が絶命したことからジャイガーの弱点が判明し[3]、悪魔の笛が発する低周波音によってジャイガーが封印されていたり、船員たちの奇病も同じく低周波が原因だったと判明した。
大型スピーカーによる対ジャイガー用の低周波音作戦が開始され、また同時にガメラを復活させるために高圧電流が送電された。しかし、出力過多によって回路が焼き切れたために、スピーカーの電力もストップしてしまうが、ガメラが復活してジャイガーに対峙するために万博会場に飛来。万博会場を舞台に、二大怪獣による三度目の、最後の決戦が繰り広げられる[1][3]。
解説

前作での舞台であった宇宙から一転して、「日本万国博覧会」をテーマにした作品である[3][4]。当時、各少年誌ではカラーグラビアで「謎の古代遺跡」を題材にしたものが流行っており、本作品はこれを企画に採り入れ、万博を舞台にしたのは後付けだった。そのため、万博会場でのロケが行われたものの、湯浅憲明によると東宝のようにパビリオン面で協力しているわけでもなく、大映にそこまでの営業力もなかったため、タイアップではなかったという。
高橋二三によると、本作品では新しい物語要素としてオカルトをテーマに採り入れており[4]、「悪魔の笛」が引き起こす「呪い」を強調した内容となっている。高橋はこの趣向を、のち(1973年以降)のオカルトブームに先駆けるものだったと述懐している。大映京都撮影所作品『透明剣士』(黒田義之監督)と併せた「特撮二本立て」興行だった。脚本題名は『ガメラ対大魔獣X』[7]。
弘たちの家は大阪市の港区あたりにあると思われるが、卵を産み付けられたガメラがやってくるシーンでは、なぜかすぐそばに、あるはずのない山がある。弘とトミーが家から大阪城、万博会場へと自転車で短時間で急行したり、またジャイガーが万博会場から片手で投げた悪魔の笛が途中で落ちもせずに数10キロ離れた大阪湾まで届くなど、距離感の現実離れした描写がある[独自研究?]。
弘少年がかぶっているのはロッテオリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)の野球帽である。同球団の前身は「毎日大映オリオンズ」でオーナーは永田雅一であり、本作の公開時にはロッテに改称されていたが、オーナーは依然として永田であった。
本作品では半切り・立て看用ポスターにてガメラとジャイガーの死闘を強調し、関連図書で「吸血戦法」や「空中回転投げ」など、ガメラとジャイガーの「必殺戦法」の図解が掲載された。
登場怪獣
ガメラ
前作『ガメラ対大悪獣ギロン』(1969年)で新造されたぬいぐるみを流用し、エキスプロダクションによって頭のみ新規に作り直された[4]。この新造形の頭は頭頂が平たく、鼻先が丸く目の離れているのが特徴。表情が前作までのものよりも優しい印象となっているが、エキスプロによると特に意識したものではなく、通常通り造ったものだという[8]。
ガメラはジャイガーの放つ「マグネチューム光線」を避けるため、電柱を引き抜いて外耳道[注釈 2]に挿し込んで耳栓をしたり、手足に刺さったジャイガーの唾液固形ミサイルを抜くために、ゾウの鼻のように尻尾で岩石を掴んだり、工場の煙突を唾液固形ミサイルに対する盾として使うといった芸当も見せる。
また、本作品ではガメラの「X線透視写真」が登場する。劇中で学者によって「アオウミガメ[注釈 3]の骨格に似ている」という説明があるものの、画面に映るレントゲン写真はリクガメのものだった。ジャイガーに卵を生みつけられ、頭と腕が透明になったガメラは、頭と腕を透明のポリ樹脂にすげ替え、発光ギミックで光らせて表現した。
大魔獣 ジャイガー
本作の敵であり、ウェスター島に封印されていた強大な古代怪獣。
親としての個体と、ガメラの体内で卵から孵化した子ジャイガーが登場した。
キャスト
大阪を舞台にした作品であるが、大阪弁を話す俳優は大村崑とその娘役の八代順子、港湾労働者の蛍雪太郎に限定されている。沢田圭介役の「炎三四郎」は、のちの速水亮。当時、研修を終えたばかりだったが『ああ陸軍戦闘隊』(村山三男監督)で役をもらい、度胸の良さを認められて本作品で主演デビューとなった。「炎三四郎」の命名は大映専務の永田秀雅(英語版)による。
ヘリコプターパイロット役の高田宗彦は日本人であるが白人役を演じている。白人俳優のケリー・バリス、キャサリン・マーフィ、マーリズ・ヘリーは調布市のアメリカンスクールの生徒から選ばれた素人だった。
- 弘[1]:高桑勉
- トミー[1]:ケリー・バリス
- スーザン[1](トミーの妹):キャサリン・マーフィ
- 沢田圭介(万国博広報部員[1]):炎三四郎
- 北山良作(北山船舶修理工場長、弘の父[1]):大村崑
- 北山みわ子(圭介の恋人、弘の姉[1]):八代順子
- 万国博警備員[1][9]:平泉征
- 松井博士(海洋研究所所長):北城寿太郎
- 鈴木博士(国立科学研究所所長):夏木章
- 万博事務局長:仲村隆
- 港湾労務者:三夏伸
- 南海丸船長:丸山修
- 貨物船船長:中田勉
- アナウンサー:森矢雄二
- 山本(ウイリアムの助手):佐伯勇
- 港湾労務者:飛田喜佐夫
- 万博女事務員:田中三津子
- ウィリアム博士(トミーとスーザンの父):フランツ・グルーベル
- ギボー(ウエスター島文化使節):チコ・ローランド
- エレン(トミーの母):マーリズ・ヘリー
- 港湾労務者:蛍雪太郎
- 貨物船通信士:荒木康夫
- 北山船舶修理工場職員:喜多大八
- 自衛隊小隊長:井上大吾
- 万博通訳:隅田一男
- 南海丸船医:志保京助
- 貨物船航海士:松山新一
- ヘリコプターパイロット:高田宗彦
- 発電所技師:遠藤哲平
- 自衛隊司令官:槇俊夫
- 南海丸水夫長:中原健
- 自衛隊員:関幸太郎
- 警察本部長:小杉光史
- 自衛隊員:稲妻竜二
- 南海丸船員:山上友夫
- ヘリコプターパイロット:若倉慶
- 北山船舶修理工場職員:原大作
- 南海丸船員:山本一彦
- ガメラ:泉梅之助
スタッフ
主題歌
制作
本作品の制作時、すでに大映本社の経営は末期状態で倒産の気配は濃厚だったが[4]、湯浅憲明はそれでもアイディアを凝らし、ミニチュア特撮にこだわる演出姿勢を貫いている[3]。湯浅は本作品から社員監督としてでなく、1本ごとの「契約監督」扱いで関わっている。社員監督だと残業の際に保証される「夜間手当」は契約監督にはつかないため、湯浅は撮影所で「夜間」と「ヤカン」を引っかけた社員たちから、「あいつは悔しくてヤカンを蹴飛ばしてるらしいぞ」などと悪評を立てられたという。
ガメラの体内での撮影では、準備中に照明スタッフが脳溢血で倒れてしまった。体内セットが軟らかい素材だったため、クッションになってそのときは無事だったが、映画完成後に亡くなったという。その照明スタッフが倒れた際に最後に発した言葉が「ゆ・・」だったため、スタッフ内では「ゆあさ(湯浅)に殺されると言いたかったのでは?」と笑い話になったという。湯浅は「倒産寸前のストレスからくるストレス死だ」と語っている。当時、大映本社の経営状況悪化と労使抗争から「スタッフ全員、ストレスが山のようだった」という。
特撮
万博会場がクライマックスの舞台であるが、パビリオンを壊すわけにもいかず、代わりに大阪市街地の特撮セットが組まれ、シリーズでは『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年)以来、久しぶりに見応えのある大規模な都市破壊の特撮シーンが描かれている[4]。昭和シリーズで都市破壊が見られるのは、本作品が最後である。それでも製作費はギリギリの状態だったため、湯浅によると、最終的に永田雅一に直談判して、特撮セット一杯分の約3,000万円の追加予算を得た[10][4]。ガメラがジャイガーに寄生産卵されて到達する大阪港の発電所付近のセットは、この予算で作られた[4]。
ジャイガーの子供がガメラに寄生するシーンは、湯浅によると「予算は無いし、やることは大体前のガメラでやりつくしちゃったので、どうしようかと思って考えた」アイディアだったという。寄生卵の描写で、ゾウの鼻を切開して寄生虫の塊を取り出す記録フィルムが劇中に挿入されるが、これは多摩動物公園に協力してもらい、ゾウにメイクし、ブタの回虫を使って撮影したもの。「気味が悪い」と評判だったというが、湯浅も「撮ってる僕も気味悪かった」と笑っている。そのまま映すのははばかられたため、フィルターをかけてモノクロームに処理している。
ソノシート
宣伝興行
- 『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』以来の慣行として、本作品公開前に『週刊ぼくらマガジン』誌でジャイガーのデザイン画が「怪獣X」と称されて公開され、名称が公募された。賞品は「特賞:1人に奨学金10万円」、「佳作A:50人にガメラのプラモデル」、「佳作B:100人に『大怪獣X対ガメラ』の劇場招待券」というものだった。
- 本作品の制作は日本万国博覧会とタイアップ関係には無かったが、開催後の万博会場ではガメラシリーズのキャラクターと東宝のゴジラシリーズのキャラクターによる「怪獣ショー」のアトラクションが行われ、「ゴジラ対ガメラ」「ゴジラ対ゴロザウルス」の一幕もあったという。ショーは博覧会場内の「お祭り広場」で開かれ、大村崑が司会を務めた。ガメラやゴジラは藤田まことの劇団の若手が当初演じていたが、「素人ばかりで立ち回りがうまくいかないから」と、当時ゴジラを演じていた中島春雄が呼ばれ、10日ほど出張してゴジラ役を演じることになった。ショーは舞台の左右からガメラとゴジラが出てきて中央で組み合うというもので、1日3回公演の予定だったが、結局夜1回の公演になったという[11][12]。
漫画化
- 劇場での公開に合わせ、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で一峰大二による漫画が掲載された。この作品はB5判サイズの単行本にされ(1970年3月1日発行)、劇場でも配られた。
映像ソフト化
関連作品
- 『宇宙怪獣ガメラ』(1980年) - ジャイガーがライブフィルムで登場。
- 『大怪獣激闘 ガメラ対バルゴン COMIC VERSION』(2003年) - ジャイガーが古代文明の生物兵器の一体として紹介されている。
- 『ともだち 小さき勇者たち〜ガメラ〜』(2006年) - 蕪木統文(著)と田崎竜太(監修)による『小さき勇者たち〜ガメラ〜』(2006年)のノベライズ。「G-ジャイガー」とその子供が登場する。
- 『聖獣戦記 白い影』(2015年) - 井上伸一郎によるガメラシリーズの設定を利用した小説で、四神の白虎にあたる存在としてジャイガーが登場した。
- 『ボクは五才』(1970年) - 本作の関係者が携わっている同年の大映作品であり、共に日本万国博覧会をテーマに取り上げている[14]。
- 『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー 復活のテガソード』(2025年) - 田崎竜太が監督を務めたスーパー戦隊シリーズの映画。本作品を参考にした描写が存在する。