励磁機
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励磁機(れいじき、英: exciter)は、同期機の界磁巻線に直流電流を供給し、磁束を発生させるための装置である。
同期機を動作させるためには、回転子(界磁)に磁力を持たせる必要があり、そのために供給される電流を励磁電流と呼ぶ。励磁機はこの電流を制御することで、発電機の端子電圧や無効電力を調整する重要な役割を担う。
概要
同期発電機の出力電圧は、回転速度と界磁磁束の強さによって決まる。回転速度が一定(同期速度)で運用される電力系統においては、励磁機の出力を変化させて界磁電流を調整することにより、電圧を一定に保ったり、系統内の無効電力の流れを制御したりする。現代のシステムでは、自動電圧調整器 (AVR) と組み合わせて運用されるのが一般的である。
励磁方式の分類
励磁機を物理的にどこに配置し、どのように電流を供給するかによって、主に以下の方式に分けられる[1]。
直流励磁機方式
発電機の回転軸に直結された直流発電機を励磁機として使用する古典的な方式。整流子(コンミテータ)とブラシを介して界磁電流を供給する。整流子の保守に手間がかかるため、現代の新設機ではほとんど採用されない。
交流励磁機方式
発電機の回転軸に直結された交流発電機(交流励磁機)を電源とする方式。現在、多くの大型発電機で主流となっている。この方式は、整流後の電流をどう伝えるかによってさらに2つに分けられる。
- スリップリング方式: 交流励磁機の出力を静止した整流器で直流にし、スリップリングとブラシを介して主発電機の界磁に送る方式。
- ブラシレス方式: 後述の通り、回転整流器を用いることでブラシを完全に排除した方式。
静止形励磁方式
励磁機という「回転機械」を持たず、発電機の出力を変圧器(励磁用変圧器)で取り出し、サイリスタなどの静止形電力変換装置によって整流して界磁に供給する方式。
- 利点: 応答速度が非常に速く(超速応)、装置全体を小型化できる。
- 欠点: 電流を回転子に伝えるためのスリップリングとブラシが必要であり、摩耗粉の清掃やブラシ交換などの保守作業が欠かせない。
ブラシレス励磁機
ブラシレス励磁機 (Brushless exciter) は、交流励磁機方式の発展形であり、スリップリングとブラシを排除した方式である。
構造と原理
ブラシレス励磁方式は、主発電機の軸に以下の装置が同軸上に配置されている。
- 交流励磁機 (AC Exciter): 固定子側に励磁巻線(直流)、回転子側に電機子巻線(交流)を持つ「内部回転磁界型」とは逆の構造(裏返し構造)をした交流発電機。
- 回転整流器 (Rotating Rectifier): 回転軸に取り付けられたダイオード等の整流素子。
動作原理は以下の通りである。
- 交流励磁機の固定子(静止側)に直流を流すと、回転している電機子巻線に交流が発生する。
- この交流を、同じ軸上で回転している回転整流器によって直流に変換する。
- 整流された直流を、そのまま軸内部の配線を通して主発電機の界磁巻線へ直接供給する。これにより、外部から回転体へ電流を流し込むための物理的な接触点(ブラシ)が不要となる。
特徴
- 保守性の向上: 摩耗部品であるブラシやスリップリングがないため、点検周期を長くでき、カーボン粉による絶縁低下のリスクもない。
- 環境耐性: 火花が発生しないため、爆発性ガスが存在する環境(化学プラント等)や水素冷却発電機内での運用に適している。
- 応答性: 静止形に比べると交流励磁機の磁気回路を経由するため応答性はやや劣るが、実用上十分な性能を持つ。
励磁制御 (AVR)
励磁機の出力(界磁電流)を制御するために、自動電圧調整器 (AVR: Automatic Voltage Regulator) が使用される。AVRは発電機の端子電圧を監視し、設定値との差分を解消するように励磁機への入力を調整する。これにより、負荷の変動に関わらず安定した電圧供給が可能となる。