漁業
魚介類を捕獲したり養殖する産業
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概説
漁業の分類
分類方法は多様で、漁場による分類(統計調査による分類)、漁具・漁法による分類、漁獲物の種類による分類、漁業法規による分類(漁業制度による分類)、経営形態による分類などがある[1][4]。漁獲物の種類による分類では、「マグロ漁」「イカ漁」「タコ漁」「ホタテ漁」... 等々となる。
漁場による分類
漁場による分類としては、淡水漁業、沿岸漁業、沖合漁業、遠洋漁業、深海漁業などに分けられることがある[1]。
日本標準産業分類では漁業(海面漁業・内水面漁業)と水産養殖業(海水面養殖・内水面養殖)に大別される[4]。
農林水産省の漁業・養殖業生産統計では海面漁業・養殖業と内水面漁業・養殖業に分類され、前者のうち海面漁業部門は遠洋、沖合、沿岸に区分されており、海面養殖業と区別される[5]。
なお、栽培漁業(後述)という概念もあるが養殖漁業とは異なる[6]。
- 氷上漁
漁法による分類

漁法による分類では網漁業・釣漁業・雑漁業の3種に分けられる[4]。釣漁業、網漁業、養殖漁業、採取漁業などに分類されることもある[1]。
漁業制度による分類
日本の場合、漁業権漁業、許可漁業、大臣届出漁業、自由漁業の4種がある[4]。
歴史



ヨーロッパ・アメリカの漁業史
魚獲りは人類の発生とともに行われてきたが、世界で産業と呼べる規模の漁業が行われ始めたのは、16世紀のオランダによる北海ニシン船団が初めてと言われる[8]。ニシン船団は80-100トンのビュスと呼ばれる帆船で構成され、17世紀には2000隻のビュスが活動していた。流し網でニシンを獲り、船上で内臓を取り塩漬け保存され、船倉が一杯になるまで続けられた。オランダのニシン輸出量は1614年の1年だけで15万トンに及び、17世紀には総人口の5分の1がニシン関連の仕事に就いていた。ニシン漁はその後スコットランド、ノルウェー、アイスランド、ドイツなどで産業化した。
16世紀中頃にはタラ漁が産業化し始める。ニューファンドランド島沖のタラの豊かな漁場グランド・バンクスは、以前からバスク人漁師には知られていたが、ジョン・カボットの探検行により他のヨーロッパ諸国にも知られるようになった[8]。1550年代にフランス、ポルトガル、スペインの船団が漁を始め、ヨーロッパや西インド諸島に輸出された。その後、北アメリカの入植が進むとともにニューイングランドやカナダ沿岸の船団も加わった。グランド・バンクスのタラ漁はスクーナー船による延縄漁が長く行われ、20世紀になってトロール船に取って替わられた。
1596年にスピッツベルゲン諸島が発見されるとともに、北氷洋で商業捕鯨が始まった[8]。オランダとイギリスは定期的に捕鯨船団を送り、ホッキョククジラを捕獲した。オランダの捕鯨船団は1675年から1721年のまでのあいだに3万3000頭のホッキョククジラを捕獲している。18世紀にはイギリスが、19世紀半ば以降ははノルウェーが北氷洋捕鯨のトップとなった。また、18世紀にはナンタケット島でマッコウクジラが捕獲され、鯨油を目当てにしたマッコウクジラ漁が産業化した。1842年にはアメリカだけで600隻近い捕鯨船が活動していた。
蒸気船による漁が始まったのは1860年代以降であり、最初はトロール船を牽引するために使われた。蒸気トロール船は急速に発達し、1941年には欧米の漁船団の標準船となっていた。技術が発達しトロール船とともに工船も巨大化し、漁獲量は劇的に上昇したが、操業権と漁業資源の確保は漁業国にとっての死活問題となり、タラ戦争のような深刻な事態へと発展した[8]。1982年になって排他的経済水域を明確にする国連海洋法条約が定められた。
日本の漁業史
縄文・弥生時代の漁業
沿海部における日本漁業の歴史は古く、縄文時代の遺跡からは釣針や銛、漁網の錘として用いられた土器片錘や丸木舟などの漁具が出土しており、漁や採集によって魚介類を収獲していたと考えられる。
縄文晩期の関東地方では大型貝塚の数が減少し、クロダイ・スズキ漁を中心とする縄文型内湾漁労は消滅するに至る[9]。弥生時代には大阪湾岸など縄文晩期から弥生中期に至るまで縄文型漁労が継続した地域も存在するが[9]、東京湾では新たに内湾干潟の貝類を主体とするタイプの貝塚が形成されるが、遺跡から出土する魚骨は少なく、全国的に漁労は低調であったと評価される[9]。一方で、大陸から伝来した管状土錘を用いた網漁やイイダコの蛸壺漁など、新たな漁法を用いた弥生漁労も開始された[9]。また、三浦半島など外洋沿岸地域では外洋漁労が行われた[10]。
弥生時代には稲作農耕が普及するが、水田と貝塚の双方を持つ弥生集落では農繁期の夏季に漁期を持つカツオなどの魚類が出土しており、銛漁・釣漁など専門性の高い漁法が用いられていることから、農耕民とは別に漁労を専門とする技術集団がいたと考えられている[11]。また、稲作農耕の開始により水田や用水路など新たな淡水環境が生まれたことにより淡水産の魚類・貝類を対象とした漁労も開始された[12]。
古代・中世の漁業
鎌倉時代には漁を専門とする漁村があらわれ、魚・海藻・塩・貝などを年貢として納めるようになった。室町時代にはさらに漁業の専門化がすすみ、沖合漁業がおこなわれるようになり、市の発達や交通網の整備、貨幣の流通など商業全般の発達に漁業も組み込まれていった。
近世の漁業
動物考古学から見た近世の漁業
江戸時代には遠洋漁業がおこなわれ、また、上方で発達した地曳網による大規模な漁法が全国に広まるなど、漁場が広がった。消費地である江戸近郊で消費需要が高まり、江戸市中の遺跡からはマダイ、キダイ(レンコダイ)、アマダイ、タラ、サンマ、サケ、ナマズなど「江戸前」と呼ばれた東京湾産出の魚種をはじめ、流通網の成立や保存技術の進歩により遠方から運ばれた多様な魚類が出土している[14]。また、西日本からの魚食文化の流入としてナマズやスッポンが挙げられる[15]。
江戸市中の遺跡から出土する貝類ではアワビ、サザエ、ハマグリが多く消費され、アサリ・シジミは近世前期には少ない[16]。底曳漁業の導入に伴い深場に生息するアカガイの消費も増加し、新たにタイラギやトリガイも出現する[16]。一方で、中世と比較してツメタガイ、アカニシが減少する。底曳漁業の導入は関西からその技術を持った魚民が移住したとも考えられている。アサリなど貝類はむき身の形で販売されており、東京都港区の芝雑魚場跡ではバカガイの貝層が出土し、バカガイがむき身の形で流通していたと考えられている[17]。
一方で、文献史料によれば東京湾岸の漁業は幕府により特権を与えられた特定の漁村のみで行われたとされる[18]。考古学的にも東京湾岸の漁業は中世と同様であることが指摘され、中小規模の貝塚が営まれ、管状土錘を用いた網漁が行われている[18]。貝塚の規模、貝類の組成や出土する魚骨、漁具の種類も中世と同様で、引き続き零細な半農半漁の漁業が継続した様相を示している[18]。
生類憐れみの令と漁業

江戸時代末期、江戸前の佃島沖にて漁師が行う網漁の様子を描いた一図。
延宝8年(1680年)に将軍となった徳川綱吉は「生類憐れみの令」と総称される一連の法令を発布する。生類憐れみの令では犬をはじめとする動物愛護のみならず、牛・馬の保護や食用規制、鷹狩に用いる鷹の放鳥、鷹匠の削減など動物をめぐる総合的な政策が実施された[20]。
生類憐れみの令では鉄砲を用いた一般庶民の狩猟も規制され、家禽を除く鳥類や観賞用の昆虫の飼育なども規制された[21]。川の多い江戸は釣り場が多く一般庶民が釣りを行い魚を食用にしていることがあったが、生類憐れみの令では魚釣りも禁止された。ただし、生業として漁業を行う漁師の活動は制限されず、また漁獲され流通した魚の購入に関しては自由であった[21]。宝永6年1月10日に将軍綱吉は死去し、綱吉の養子となっていた甲府徳川家の綱豊(家宣)が新将軍になると生類憐れみの令は撤廃された[22]。
近現代の漁業

ニュージーランドのクック海峡にて、2005年撮影。
戦後の日本経済の成長とともに水揚げ量は増加。特に1972年から近海でマイワシの豊漁が続いたことから日本の漁獲量は1991年まで世界第1位となった[23]。 その間、漁業を牽引し続けてきた遠洋漁業・沖合漁業が1973年(昭和48年)の石油ショックによって漁船のコスト高の影響を受けたこと、また1970年代後半から世界の漁業国が200海里規制を取るようなると、遠洋漁業・沖合漁業の水揚げ量は減少した。
さらに1985年(昭和60年)のプラザ合意以降、円高が進んだために水産物の輸入が増加した。1980年代半ば以降、遠洋漁業・沖合漁業・沿岸漁業などの海面漁業は漁獲量の下落傾向が続き、2000年(平成12年)には水産物の輸入量が生産量を上回った。
このように漁業資源をめぐる国際競争は激化し、今日の日本の漁業は国際化の波にもさらされる一方で、近年は、そうした「とる漁業」から、採卵、人工孵化、放流などによる「育てる漁業」(栽培漁業・養殖漁業)への転換をはかる努力が続けられている。
近畿大学水産研究所では、2002年6月に世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功した[24]。近大は、完全養殖に成功したクロマグロを近大マグロと呼称し、同大のマグロ料理を提供する専門店を銀座にオープンした[25]。
2017年8月、双日は、子会社の双日ツナファーム鷹島がNTTドコモと電通国際情報サービスとともに、IoT技術やディープラーニングを活用した画像認識技術を活用した水産養殖事業の効率性を向上させるシステムを構築し、水産養殖業の高度化を行う実証実験を開始したとアナウンスした[26]。
2018年、約70年ぶりに漁業法が抜本改正された[27]。この改正では、科学的根拠に基づくTAC(漁獲可能量)管理の推進、漁業権の法定優先順位が廃止、密漁対策の強化などが盛り込まれた。2020年12月、この改正漁業法が施行された。この改正漁業法に対し、大手量販店などのバイイングパワーが強いため漁業者の薄利多売が進み、早獲りが進んでしまったという批判が報告されている[28]。また、TAC管理についても、単年で生計を立てる漁業者の納得を得にくく、コンプライアンスの低下を招いている[29]。
2023年、漁業センサスの結果が公表。この報告では、島根県の確報値では5年間で漁業経営体数が23.2%減少し[30]、全国概数値でも経営体が17.0%、就業者が20.0%減少するなど漁業構造の劇的な縮小を示している[31][32]。高齢化によるリタイアが主因であり、漁業者の減少は資源管理や監視能力の低下、集落機能の喪失に直結している[32]。
2025年2月、水産政策審議会において、スルメイカの実際の資源量が予測を大きく下回ることが指摘される[33]。その後、スルメイカが一時的に豊漁が続き、TAC(漁獲可能量)を2回増枠。その後、TACの上限に達したため、11月1日から水産庁から漁停止命令が出された[34]。これに対し、鈴木憲和農林水産相や立憲民主党北海道連が停止命令を受けた小型漁船の救済策を訴えた[35]。これにより、2026年2月には、水産庁がスルメイカの漁獲枠を3.6倍に拡大する案を示した[36]。
漁業補助金の観点からいうと、日本の漁業補助金は世界一にもかかわらず漁業自体は衰退している[37]。漁業法抜本改正後も、スルメイカやクロマグロ、ニホンウナギといった主要魚種においては依然として資源の崩壊や絶滅のリスクが示唆されている[38]。
管理
漁業管理(英語版)は、主として魚類を中心とする水生の再生可能資源を最適に利用するための、関係当事者および規制当局の一連の活動の総称として用いられる[39]。国連食糧農業機関(FAO)の『2001年漁業管理ガイドブック』によれば、現在「漁業管理について明確で一般に受け入れられた定義はない」[40]。そのため著者らは作業定義として、漁業管理を次のように定めている。
漁業管理の目標は、再生可能な水生資源から生物学的・環境的・社会経済的利益を持続的に生み出すことである。対象生物(例:魚類、貝類、両生類、爬虫類、海棲哺乳類)が毎年の生物学的余剰を生み、それを慎重な管理の下で将来の生産性を損なわずに収穫できる場合、天然の漁業は再生可能と分類される[42]。漁業管理は水産学に基づき、資源の保護を通じて持続的利用を可能にし、予防原則をとることもある。
現代の漁業管理は、明確な目標に基づく適切な環境資源管理(英語版)と、それを実施するための監視・管理・取締(英語版)が組み合わさった国家的取り組みと考えられる。生態系アプローチによる漁業管理は、実践的な手法として広がりを見せている[43]。現代科学は、漁業エコシステムマネジメント(英語版)を、需要、生態系サービスの長期の維持、生態系への悪影響の緩和の三つにバランスを取ることができる最も現実的な手段と考えている[44]。これは単一種に焦点を当てる伝統的管理に対し、生態系の健全性と生産性の達成に焦点を当てる、より包括的なアプローチである[45]。
乱獲
漁業の存続自体は自然環境の再生産に負うところが大きく、旧来の伝統的な漁具・漁法による漁撈活動では生産性は低かったものの、水産資源の再生産の限度を下回るものであった。その後の漁具の改良・開発や、流通網の整備、冷凍保存技術の発達などにともない、生産量は増大し、漁場もまた地球規模に拡大した。その一方で、世界の海洋資源の34%が乱獲されており、混獲により、捕獲された魚の約10%にあたる860万トンが世界中で廃棄されるなどの問題が起こっている[46]。生物学的に持続可能な水準にある漁業資源の割合は、2021年には62.3パーセントに減少し、2019年よりも2.3パーセント低くなっている。なお、この割合は1974年には90%であった[47]。
現代の商業漁船は 1950 年代に比べて2 倍の距離を移動しているが、1 キロメートルあたりの収穫量は以前の 3 分の 1 未満となっている[5]。
2025年、WTO は、乱獲漁業に対する政府の補助金の禁止などを定める協定を発効した[48]。なお、日本の漁業補助金のうち73.8%は乱獲に寄与し得る補助金だと言われている[49]。
地球規模の目標
持続可能な開発目標(SDGs)の第14目標「海の豊かさを守ろう(英語版)」が国際的な注目を集めており、沿岸生態系の保全や、沿岸コミュニティのより持続可能な経済慣行(漁業・養殖を含む)を支えることに焦点を当てた国際政策目標を設定している[50]。
漁業法
水産業・漁業用語
- 水揚げ
- 水産業で言うところの「水揚げ」は、漁業(漁撈)や養殖漁業によって得られる、取り扱い水産資源全般を指す語である。
- 水揚げ量と水揚げ高
- 「水揚げ量」および「水揚げ高」という用語は、前者が重さを、後者が取引金額を表すためのものであり、例えば、「水揚げ量は3,000トン。水揚げ高は25億円に達した」などという用い方をする。数値は前者が物理的であるのに対して後者は経済的であるため、水揚げ量の多い漁港と水揚げ高の多い漁港が一致することは、双方が同一経済圏に属しているか、何らかの経済協定で同一条件下にない限り、あり得ない。さらには、同一経済圏に属していても、ブランド力の有無・優劣によって差異が生じる場合も多い(事例:大間のマグロとその他の同種)。
- 商業的に重要な魚種・未利用魚・低利用魚
- 商業的に重要な魚種のリストでは70種程度、他の魚種は未利用魚・低利用魚である。商業的に利用される魚でも形や大きさ傷などによって廃棄される。FAO(国際連合食糧農業機関)が2020年に公開したデータでは、全漁獲量の30-35%が廃棄されているとしている[54]。
- 未利用魚・低利用になる理由としては、毒がある、サイズが小型・規格外、棘・骨が多くて加工しにくい、鮮度の低下が早く腐りやすい、季節が限定的、匂いやクサミがあるなどである[55][56]。例として、バラムツ、アブラソコムツなどの深海魚の多くは、消化ができない油を含み下痢などを起こし最悪昏睡状態になるので、食品衛生法で販売が禁止されている[57]。前述の様な食用として重篤な要因を除去できない未利用魚以外は、持続可能性の観点から活用法が研究されている。
- 漁業系廃棄物
- 漁網、フロートなどのプラスチック類、金属くず、木くずの他、貝殻や内臓・頭等の魚介類残渣がある。廃プラスチック類や金属くず等は「産業廃棄物」、紙くずや魚介類残渣等は「一般廃棄物」に分類され、事業者が責任をもって破棄することとなっている[58]。
世界の漁業
日本の漁業
環境問題
漁業の環境に対する影響(英語版)には、魚の利用、乱獲、漁業、漁業管理、さらに水産業が混獲など他の環境要素に与える影響が含まれる[61]。これらは海洋保全(英語版)の一部であり、水産学のプログラムで扱われる。国連食糧農業機関の2019年報告によれば、魚類・甲殻類・軟体動物・その他水生動物の世界生産量は増加を続け、2017年に1億7,260万トンに達し、2016年比4.1%増となった[62]。世界人口の増加等により、供給と需要のギャップは拡大している[63]。
毎年約800万トン(ジャンボジェット機にして5万機相当)に及ぶプラスチックゴミが海洋に新たに流れ出ていると推定されているが[64]、英国の研究グループは北大西洋でのプラスチックごみのトラブルが2000年以降に10倍に増えたと指摘し、ごみのうち半分は網など漁業由来だったと分析した[65]。さらに、海底を根こそぎ浚う底引き網漁(トロール漁)では、炭素を貯蔵するサンゴ礁や海洋堆積物を破壊することから、最大 1 ギガトンの炭素(世界の温室効果ガス排出量の 3% 相当)を放出する可能性があると報告される[66]。また漁業廃棄物は、海鳥の50%、海洋動物の66%、すべてのウミガメの種に、絡まりや閉じ込めの脅威にさらしている[67]。
海に放棄された網はプラスチックやナイロン製のため分解されず、生態系や野生生物に甚大な被害を与える。乱獲と海洋生態系の破壊は、海鳥個体群など他の環境要素にも大きな影響を及ぼし得る。さらに、大量の水産物廃棄に起因する水産物不足、そして一般が消費する水産物に混入するマイクロプラスチックの問題もある。後者は主に、流し網(英語版)や延縄などプラスチック製の漁具が摩耗・紛失・投棄されることで生じる[68][69]。
国連環境計画(UNEP)は、地球温暖化や海洋汚染、乱獲などの影響で2050年頃には海の生態系の変化が顕著になり、世界のほぼすべての海域で漁獲量が減少し、小さい魚しかいなくなると予測している[70]。サイエンス誌が2006年11月に発表した4年研究では、現在の傾向が続けば2048年に天然の水産物が枯渇すると予測した。研究者らは、漁業資源の減少は乱獲・汚染などにより引き起こされ、同時に生態系の破壊が進んでいるためだと述べた。トンガ、米国、オーストラリア、バハマなど多くの国や国際的管理機関が、海洋資源を適切に管理するための措置を講じている[71][72]。
気候変動
漁業は多様な形で気候変動の影響を受ける。水圏生態系は海洋では海水温(英語版)の上昇[73]、海洋酸性化[74]、海洋貧酸素化(英語版)、淡水では水温・水流の変化や魚類生息地の喪失の影響を受ける[75]。これらの影響の現れ方は漁業ごとの文脈で異なる[76]が、気候変動は魚類の分布[77]や海洋・淡水種の生産性を変化させ、水産物の利用や貿易に大きな変化をもたらすと見込まれる[78]。地政学的・経済的帰結は大きく、特にこの部門への依存度の高い国々で顕著である。最大漁獲潜在力の最も大きな減少は、主に南太平洋地域を中心とする熱帯で予想される。[78]
気候変動による海洋への影響は、漁業・養殖の持続可能性、それらに依存するコミュニティの生計、そして海洋による炭素の捕捉・貯蔵(生物ポンプ)にも及ぶ。海面上昇は沿岸の漁業コミュニティに深刻な影響を与える一方、降水パターンや水利用の変化は内陸の淡水漁業・養殖に影響する[79]。洪水・疾病・寄生虫・有害藻類ブルーム(英語版)のリスク増大も生産やインフラの損失につながり得る。[78]