生殖器系の発達
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生殖器系の発達は、胚の成長過程において性器が形成され、性分化が進行する一連の発生現象を指す。尿路系の発達と大きく重複するため、一般には泌尿生殖器系として統一的に扱われる。本稿では哺乳類(特にヒト)の生殖器系の発達を概説する。
哺乳類は三胚葉性の動物であり、生殖器官は中胚葉から発生する。未分化状態では内外性器に性差はなく、原始生殖細胞および性腺原基が形成された後、Y染色体上のSRY遺伝子が活性化して男性ホルモンが分泌され、男性器へと分化が進む。一方、SRY が発現しない場合は女性器への分化が進行する。
生殖細胞は尿膜付近から移動し、原始生殖腺に定着する。オスでは生殖細胞は髄質の精索に定着して精祖細胞となる。メスでは生殖細胞は皮質に定着して卵祖細胞となる。
妊娠初期(ヒトでは約6週頃まで)では、雄雌の性器に差は見られない。

- 総排泄腔が尿直腸中隔によって背側の肛門直腸管と腹側の原始尿生殖洞(英: primitive urogenital sinus)に分離した後、原始尿生殖洞は更に、頭側の膀胱尿道管と尾側の完成尿生殖洞(英: definitive urogenital sinus)に分けられる[1]。完成尿生殖洞は、中間部の狭い骨盤部と、最も尾側に位置する生殖茎部の2つの部位から構成される。
- 生殖隆起/生殖 (腺) 堤(英: genital ridge, gonadal ridge)は卵巣または精巣の原基である。
- 原始生殖索が間葉内に伸長して生殖堤内に進入する。二次生殖索は体腔上皮が増殖したものである。
性決定
生殖提と中腎は当初は連続しているが、胚が成長するにつれて溝が生じ徐々に切り離される。しかし中腎由来の細胞の一部は生殖提に合流し、後の精巣索や支持細胞の形成に寄与する。更に生殖提は腹膜の襞である精巣間膜または卵巣間膜によって後腹壁(または中腎の残存部)と接続している。
- オスの生殖提では第6~7週にY染色体上のSRY遺伝子が発現してSOX9が産生され、既存の(髄質内の)生殖索(一次生殖索)が発達して精巣索(英: testis cord)となる。体腔上皮に由来する細胞がセルトリ細胞に分化し[3]、抗ミュラー管ホルモンが分泌される。間質細胞はライディッヒ細胞となる。第8〜9週でライディッヒ細胞からテストステロンが分泌され始める。精巣索は出生後に管腔化し、精細管となる。原始生殖細胞から精祖細胞への分化は思春期に発生する。
- メスの生殖提ではSRYが不在であるためWNT4、RSPO1、FOXL2等が発現し、第8〜9週で一次生殖索が退縮する一方で表面の皮質部で細胞が増殖して皮質索(英: cortical cord)(二次生殖索)が発達する。原始生殖細胞が皮質索に取り込まれて卵祖細胞へ分化する。第10〜12週で卵胞の原基が形成される。
ヒトでは受精後第7週頃(妊娠第9週頃)になると、生殖提における性別の区別が認識可能になり始める。
性腺の分化
精巣
初期段階の精巣は、体腔上皮(生殖上皮)に覆われた中心塊(未分化性腺)として形成される。発生が進むと、中心塊内に原始生殖索と呼ばれる一連の索状組織が出現し、同時に塊周辺部は厚く強固な結合組織層である精巣白膜へと変化する。精巣白膜の形成により、表面の上皮は精巣固有の組織形成から隔離される。
中心塊内の索状組織は、将来の精巣門に向かって集合し、網目状の精巣網を形成する。一方、精巣門より遠位(外側)に位置する索状組織は精子を産生する精細管へと発達し、その間に精巣を小葉状に区分する精巣中隔が伸長する。これらの精細管は精巣網を介して中腎小管に由来する精巣輸出管と接続し、最終的に精巣上体へと移行する。
精巣の下降
精巣の下降においては、まず精巣から前腹壁の予定位置へ至る経路が確保され、次いで精巣導帯(英: gubernaculum testis)が形成される。精巣導帯は相対的な成長差や収縮によって精巣を牽引し、鼠径管を通過させて陰嚢内へと移動させる。この過程では腹膜の突出である鞘状突起(英: vaginal process)が先行して下降するが、精巣の下降完了後、この通路の大部分は精巣に近い部分を除いて閉鎖する。この閉鎖が不完全であると、先天性外鼠径ヘルニアや精索水瘤の原因となる。このような下降は有胎盤類に広く見られるが、ゾウなどのアフリカ獣上目では、精巣が腎臓付近に留まる非下降状態が見られる[4]。
接続部の形成と開口
胚発生の初期段階では精巣は腹腔後部、腹膜の背側に位置し、腹膜襞(英: peritoneal fold)である精巣間膜(英: mesorchium)によって中腎に付着している。中腎前方からは鼠径襞(英: inguinal fold)と呼ばれる腹膜襞が前方に伸長し、腹壁前外側から後方へ成長する腹膜襞である鼠径稜(英: inguinal crest)と合流して癒合する。これにより精巣は腹壁前部と間接的に連結される。同時に、これら癒合した襞の外側に位置する腹腔部分は、将来の鞘状突起として区画される。
精巣導帯の発達
鼠径稜には精巣導帯(英: gubernaculum testis)と呼ばれる構造が現れる。これは当初細長い帯状であり、後に陰嚢を形成する鼠径部の皮膚から鼠径管を経て精巣と精巣上体へ伸びている。この帯には精巣導帯の上部が含まれ最終的には内精索血管[訳語疑問点](英: internal spermatic vessels)を伴う。一方その下方に位置する帯状組織である精巣導帯襞[訳語疑問点](英: plica gubernatrix)には、精巣導帯の下部が含まれている。
導帯は、精巣から分泌されるインスリン様因子3の働きにより、太く短い索状組織へと発達する。下方では腹部の鼠径輪の位置で、腹膜の管状突出である鞘状突起内に終わり、この鞘状突起は鼠径管内へと突出していく。妊娠5ヶ月頃まで、精巣導帯の下部は太い索状構造として残存する一方、上部は退縮する。その後、下部組織は中心の平滑筋線維の周囲を横紋筋組織の堅い層が取り囲む構造となり、腹膜の裏側で腹壁と連結する。
精巣下降
精巣の発達に伴い、精巣導帯下端の主要部分は付着する皮膚に沿って陰嚢底部まで移動する。導帯の他の部分は、大腿内側や会陰部へと移行する。腹膜の管状構造である鞘状突起は下方へ突出して鼠径管内に進入し、その際、内腹斜筋の一部および外腹斜筋の腱膜を前方へ押し出す。これらは其々精巣挙筋および外精筋膜を形成する。鞘状突起は次第に伸長して袋状構造となり、最終的に陰嚢底に到達する。この袋状構造の後方では、胎児体幹の成長に伴い精巣が引き込まれる。これは、精巣導帯が他部位の成長に比例して発育しないためであり、精巣が導帯によって陰嚢底部に固定され、体幹成長に伴う相対的上昇が妨げられる。その結果、精巣はまず鼠径管内へ、続いて陰嚢内へと移動する。さらに、発達後期には精巣導帯自体が短縮することも確認されており、これが精巣の陰嚢底部到達を補助している。
通路の閉鎖

妊娠8ヶ月の終わりまでに精巣は陰嚢に到達する。これに先行して鞘状突起が形成され、その上端は腹腔と交通している。出生直前には、鞘状突起の上部は通常内鼠径輪付近で閉鎖し、この閉鎖は徐々に下方へ進行して精巣近傍にまで及ぶ。その結果精巣を包む腹膜は一般の腹腔から完全に切り離され、精巣鞘膜を形成する。
雄性生殖細胞
精巣で生成される雄性生殖細胞は、減数分裂中に特殊なDNA修復プロセスを実行し、DNA損傷を修復すると共に、子孫に伝達されるゲノムの完全性を維持する[5]。これらのDNA修復プロセスには、相同組換え修復と非相同末端結合が含まれる[5]。
病理学
内鼠径輪が正しく閉鎖しない場合、腹腔内の他の内容物や液体がその通路から突出して外鼠径ヘルニアや陰嚢水瘤を引き起こすリスクがある。
卵巣
卵巣の発生は、卵黄嚢背側の内胚葉に由来する原始生殖細胞(PCG)が、胚の生殖堤へと移動してくることから開始する。生殖堤に到達したこれらの細胞は卵祖細胞と呼ばれ、盛んに有糸分裂を繰り返して増殖する。卵巣内では、中心部の卵巣髄質とそれを取り囲む表面層の皮質(生殖上皮)が分化する。精巣の発達とは対照的に、初期に形成された索状組織(髄質索)は退行し、代わって表面の体腔上皮から皮質索が内部の卵巣支質へと伸長する。
卵祖細胞はこの皮質索の中に取り込まれて皮質内に留まる。胚発生が進むと卵祖細胞は減数分裂を開始して一次卵母細胞となり、その周囲を一層の平坦な上皮細胞(前顆粒膜細胞)が完全に包み込む。これにより、卵巣の基本単位である原始卵胞が形成される。最終的に、表面を覆う上皮と内部の卵胞形成部位の間には、非常に薄い結合組織層である卵巣白膜が形成され、構造的に分離される。
卵子の起源
初期胚発生において、PGCは後腸に沿って生殖堤へ移動する。第5〜6週に到達すると卵祖細胞(二倍体幹細胞)と呼ばれる。
卵祖細胞がこの領域に入ると、腹膜および中腎由来の体細胞と結合し、卵胞の原基を形成する。卵形成の過程で、卵祖細胞は一次卵母細胞へと分化する。原始卵胞内で成長を停止した(前期停止状態)卵母細胞は、二本鎖切断を含むDNA損傷に対して高効率な相同組換え修復を行う能力を有する[6]。このDNA損傷修復能力により、ゲノムの完全性が維持され、子孫の健康が守られる[6]。
顆粒膜細胞の起源
顆粒膜細胞の起源については、歴史的に二つの説がある。
- 中腎由来説:1970年代に提唱された、卵祖細胞と密接に関連する中腎細胞が増殖して顆粒膜細胞層を形成するという説[7][8][9]。
- 体腔上皮(表面上皮)由来説:近年の組織学的研究(Sawyerら)による、中皮細胞(卵巣の表面上皮)から発達するという説[10]。
卵巣の降下
オスと同様にメスにも卵巣導帯(英: gubernaculum ovarii)が存在するが、その走行は子宮の存在によって大きく異なるものとなる。メスの導帯は途中で子宮底の側面に付着するため、卵巣は子宮の高さ(骨盤内)までしか下降しない。この導帯は、付着点を境に二つの靭帯へと変化する。
オスの鞘状突起に相当する腹膜の膨隆は、メスではヌック管(Nuck管)と呼ばれる。
病理学
稀に卵巣導帯が子宮に癒着しない場合があり、その際には卵巣が鼠径管を通って大陰唇へ下降する。このような状況下では、その位置は精巣の位置に類似する。
ヌック管は通常閉鎖するが、開存したままになると鼠径ヘルニアやヌック管水腫の原因となる。
内性器の分化
中腎管
オスにおける発達
オスではこの管は存続し、精巣上体管、輸精管、射精管を形成する。一方、精嚢は3ヶ月目に尾端から側方憩室として発生する。中腎頭端の大部分は萎縮して消失する。残存部分の内、前方の細管は精巣の輸出管を構成し、後方の細管は迷管および精巣傍体(精索の前方、精巣上体頭部の上方に位置することがある)に相当する。
メスにおける縮退
メスでは中腎体と中腎管は萎縮する。機能を持たない中腎小管の残遺物は、卵管間膜に位置する2つの小さな未発達の盲管(卵巣上体と卵巣傍体)の集合体となる。
痕跡器官

中腎管の下部は消失するが、上部は卵巣上体縦管として残存し、ガートナー管と呼ばれる。
中腎管から発生する他組織の発達も持続する。例えば卵巣提索の発達などである。
中腎傍管
オスにおける縮退
オスでは中腎傍管は萎縮するが、その前端の痕跡は、男性の精巣付属器として残る。また末端の癒合部は前立腺部尿道底部に前立腺小室を形成する。この変化は、精巣のセルトリ細胞による抗ミュラー管ホルモンの産生による。
メスにおける発達
メスでは中腎傍管は残存し、さらに発達する。生殖索に位置する部分は融合して子宮と膣を形成する。この中腎傍管の癒合は妊娠3ヶ月目に始まり、内壁が融合して形成された中隔は下方から上方に向かって消失する。
この索状体の外側の部分は分離したままで、其々が対応する卵管を形成する。卵管の開口部は、腹腔から陥入した当初の管状の前端の遺残である。
妊娠5ヶ月頃になると子宮頸部の位置を示す輪状の狭窄部が現れ、6ヶ月を過ぎると子宮壁が厚くなり始める。暫くの間、膣は上皮細胞の固い棒状組織として形成される。この上皮の輪状突起が子宮下端に生じ、将来の膣円蓋を形成する。5~6ヶ月頃、上皮の中心細胞が崩壊し膣内腔が形成される。処女膜は尿生殖洞結節の残骸である[11]。
内性器の分化の図解

A.—性分化以前の胚における原始泌尿生殖器の図
- 3. 尿管
- 4. 膀胱
- 5. 尿膜管
- cl. 総排泄腔
- cp. 陰核または陰茎となる隆起
- i. 腸の下部
- ls. 大陰唇または陰嚢となる外皮の襞
- m, m. 左右のミュラー管が合流し、ウォルフ管とともにgc(生殖索)を走行する
- ot. 卵巣または精巣となる生殖巣堤
- ug. 尿生殖洞
- W. 左ウォルフ体
- w, w. 左右ウォルフ管(中腎管)
B.—メスの生殖器の図
- C. 大前庭腺とそのすぐ上にある尿道
- cc. 陰核海綿体
- dG. 左側のウォルフ管の残存部(ガートナー管 (英: duct of Gärtner) を形成するもの等)は点線で示されている。右側は w.
- f. 左卵管の腹腔開口部
- g. 子宮円索。導帯に相当。
- h. 処女膜の位置
- i. 腸の下部
- l. 大陰唇
- n. 小陰唇
- o. 左卵巣
- po. 卵巣上体
- sc. 尿道海綿体
- u. 子宮。そこから伸びる右卵管は m.
- v. 陰門
- va. 膣
- W. ウォルフ体の散在遺残(ワルダイエルの卵巣傍体 (英: paroöphoron of Waldeyer))
C.—オスの生殖器の図
- C. 尿道球腺(片側)
- cp. 陰茎海綿体(一部)
- e. 精巣上体頭部
- g. 精巣導帯
- i. 腸の下部
- m. ミュラー管。上部は精巣垂(英: hydatid of Morgagni)として残存する。点線で示される下部は前立腺小室まで下降し、稀に存在する雄性子宮角と雄性子宮管を構成する。
- pr. 前立腺
- s. 陰嚢
- sp. 尿道海綿体
- t. 精巣(降下前位置)
- t’, 精巣および精巣上体の降下後位置
- vd. 精管
- vh. 迷管
- vs. 精嚢
- W. ウォルフ体の散在遺残。精巣傍体(ジラルデ器官 (英: organ of Giraldès) の一部、ワルダイエルの精巣傍体 (英: paradidymis of Waldeyer))
前立腺の形成
外性器の分化

8週齢の胚におけるヒトの男女の生殖結節(英: genital tubercle)は同一であり、いずれも亀頭部(分化後のオスの陰茎亀頭、メスの陰核亀頭)、尿生殖襞(英: urogenital fold)、尿生殖溝(英: urogenital groove)、肛丘(英: anal tubercle)を有する。妊娠第9週頃までは[12]、両性の外性器は見た目も似ており、共通の発達過程を辿る。これは生殖結節と、その背側で尿生殖孔(英: urogenital opening)を覆う膜、およびその外側を囲む陰唇陰嚢隆起(英: labioscrotal swellings)の発達からなる。
性分化が始まると、ホルモン依存的な発達により形態に差異が生じてくる。
- オスでは生殖結節が伸長して陰茎亀頭と陰茎体を形成する。陰唇陰嚢隆起は癒合して陰嚢へと分化し、尿道襞(英: urethral fold)は陰茎の腹側で閉鎖して尿道を形成する。
- メスでは生殖結節は大きく突出せず、陰核亀頭と陰核体が形成される[13][14]。陰唇陰嚢隆起は大陰唇(非霊長類では消失または痕跡化)へと分化する[13][15]。尿道襞は小陰唇(ヒトを含む霊長類)/陰唇[訳語疑問点](非霊長類)となる[16][17][18]。
亀頭の基部には冠状溝(英: coronal sulcus)または亀頭冠(英: corona glandis)と呼ばれる溝が形成され、包皮が付着する部位となる。肛丘の直前では左右の尿道溝の尾側端が融合して会陰の正中線に沿った会陰縫線(英: perineal raphe)を形成する。生殖結節の外側部分(外側結節と呼ばれる)は縦方向に成長し、男女ともにほぼ同じ長さとなる。
雌雄共通の事項
分化前
泌尿生殖膜
臍帯から尾部にかけて、外胚葉と内胚葉からなる排泄腔膜(英: cloacal membrane)が形成され、総排泄腔を外部から隔離する。その後、尿直腸中隔によって直腸が総排泄腔の背側から分離されると、排泄腔膜の腹側部分は尿生殖膜(英: urogenital membrane)となる。
生殖結節
中胚葉が臍帯の後方から正中腹線に沿って伸長し、腹壁の下部を形成する。この中胚葉は排泄腔膜の頭側に排泄腔結節[訳語疑問点](英: cloacal tubercle)と呼ばれる隆起を作り、直腸の分離に伴って生殖結節(英: genital tubercle)となる。この時期、結節の両側では中胚葉の層が完全には癒合しておらず、尿生殖膜が介在している。
原始生殖茎
生殖結節は更に伸長して原始生殖茎(英: primordial phallus)となり、これが将来の陰茎または陰核の原基となる[13]。 原始生殖茎の末端部(将来の亀頭となる部分)は、細胞が詰まった「充実性」の組織として発達する。一方、生殖茎のそれ以外の部分は、内部の尿生殖膜が吸収され消失することで、縦方向の溝(尿生殖溝)へと変化する。なお、発生が進むにつれ「生殖結節」という用語は、将来の亀頭部分のみを指すようになる[12]。
泌尿生殖器開口部
この段階ではオスメスの区別なく、尿生殖洞(英: urogenital sinus)の陰茎体部が、生殖茎の下面に沿って先端方向へ伸びている。先端部では生殖茎の両壁が接近・融合し、尿生殖孔(英: urogenital opening)を閉鎖するように尿道板(英: urethral plate)と呼ばれる上皮性の固い板を形成し、その後、尿生殖膜が吸収されることで外部との連絡路を形成する。この開口部は、亀頭冠の直下まで前方へ延びる原始尿生殖孔となる。
分化後

A:共通 (未分化)
B, D, F:メスの発達
C, E:オスの発達
以下の発達は雌雄ともに起こるが、既に性差による発達の違いが見られる:
- 陰茎海綿体、陰核海綿体、尿道海綿体は、生殖茎の中胚葉組織から発生する。これらは当初は緻密な構造であるが、後に血管腔が出現し、次第に海綿状となる[13]。
- 両性における包皮は、外胚葉の固い板状組織が生殖茎の表層部へ成長することで形成される。冠状断面ではこの板状組織は馬蹄形を示す。より中心部に位置する細胞の崩壊により、板状組織は二つの薄板に分割される。こうして皮膚の襞である包皮が解放され、亀頭を覆う兜を形成する。
オス
陰嚢の形成
オスでは左右の陰唇陰嚢隆起が正中で融合し、将来の陰嚢となる領域を形成する。その後、精巣下降に伴ってこの領域が袋状に押し広げられ、最終的な陰嚢が完成する。
陰茎と尿道の形成
陰茎は原始生殖茎が伸長することで発達する。 尿生殖膜が吸収されると、陰茎の腹側(下面)に沿って尿生殖溝が形成される。この溝は前方へ延び、亀頭冠の直下まで到達する。
続いてこの陰茎腹側の開口部(尿道溝)が後方から前方に向かって閉鎖し、管状の尿道を形成する。一方、陰茎亀頭部では、上皮性の尿道板が陥入・管腔化することで尿道溝と連続する溝が形成される。この亀頭部の溝も同様に閉鎖することで、最終的に尿道口が亀頭の先端へと位置することになる。
雄性プログラム期間
妊娠8週〜14週頃は雄性プログラム期間(英: Masculinization Programming Window; MPW)と呼ばれ、当該期間のアンドロゲン作用により、将来の陰茎の長さや肛門性器間距離(英: Anogenital distance; AGD)が確定する[19]。この期間のホルモン環境は、成人の生殖機能にも影響を与える重要な時期とされている。
メス
メスでは生殖茎の周囲に深い溝が形成される。その両側は背側に向かって成長し陰唇陰嚢隆起となり、最終的にメスの大陰唇を形成する。一方、小陰唇は生殖茎下面の溝の縁が更に成長することで生じ、生殖茎の残りの部分は陰核亀頭を形成する[13]。
陰茎亀頭と陰核亀頭の違いの一つは、陰核亀頭が陰茎亀頭の約1⁄10の体積に神経末端を集中させている点である。従って、陰核亀頭部の皮膚小体受容器密度(100倍高倍率視野あたり1~14個)は、陰茎亀頭部(100倍高倍率視野あたり1~3個)と比較してより大きな変動性を示す。同等の強度の接触では、この神経の集中により陰核亀頭は陰茎亀頭よりも敏感である。結果として、多くの女性は優しい接触以上の刺激で不快感や痛みを感じることがある[20]。
胎児の性分化の時間経過
| 週齢 | オス | メス |
|---|---|---|
| 1 | X染色体の不活性化(複数のX染色体が存在する場合)[22] | |
| 4 | ウォルフ管の発達 | |
| 5 | 未分化性腺における原始生殖細胞の移動 | |
| 6 | ミュラー管の発達 | |
| 7 | 精細管の分化 | |
| 8 | ミュラー管の退縮 | |
| 8 | ライディッヒ細胞の出現、テストステロンの合成開始 | |
| 9 | ミュラー管の完全退縮 | ミュラー管の感受性の喪失 |
| 10 | 外性器の男性化開始 | ウォルフ管の退縮開始 |
| 12 | 胎児の精巣は内鼠径輪内にある | |
| 12–14 | 陰茎尿道の完成 | |
| 14 | 最初の精祖細胞の出現 | |
| 16 | 最初の卵胞の出現 | |
| 17 | ライディッヒ細胞の増加、テストステロン分泌のピーク | |
| 20 | ライディッヒ細胞の退縮、テストステロン分泌の減少 | |
| 24 | 最初の多層卵胞、膣の形成 | |
| 28 | 精巣の下降 | 卵祖細胞の分裂停止 |