藤崎町のリンゴ産業

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青森県藤崎町にある りんご「ふじ」発祥の地モニュメント

この項では青森県南津軽郡藤崎町のリンゴ産業(ふじさきまちのりんごさんぎょう)について述べる。藤崎町2001年に品種別生産量世界一となったリンゴの品種「ふじ」の発祥の地として知られている[1]

藤崎町のりんごの始まり

青森りんごのはじまりは、1875年(明治8年)4月、内務省勧業寮から民間に配布されたりんごの苗木3本が、県庁構内に植栽されたことだとされている(「日本最古のりんごの木」も参照のこと)。その後、青森県内に苗木が配布されたが、士族が優先されたため、士族が多く住んでいた弘前黒石に集中した。1877年(明治10年)弘前士族宅で3個が初結実し、士族を中心に栽培熱が高まり、農家や地主も栽培に手をつけるようになり県内に広まっていった[2]

その後、県内各地でりんごの産業化の試みが行われるようになった。藤崎村で1885年(明治18年)に佐藤勝三郎が結成した「敬業社」が、青森県において最も早くりんご栽培の産業化を試みた[2]。敬業社は、岩木川平川の合流点に近い真那板縁の荒地7ヘクタール余りを開墾し、りんごを植え付けた[3]。なお、敬業社は、近代的な株式会社の手法を取り入れたものとして、青森県の農業史上、極めて画期的な試みとして評価されている[2]

敬業社は目覚ましい成果を上げ続け、近郊の農家でりんご栽培熱が高まる。この時期、藤崎村で盛んに栽培されていたが急激に衰退する時期と重なったことも、りんごの植栽を進める要因となった。明治時代の藤崎のりんご園は、藤崎町内の藤崎白子一帯が中心で、品質的に他の追随を許さず「白子りんご」の名前が全国的に有名になった時期があった[2][3]

1901年(明治34年)、敬業社は解散したが、その頃には敬業社を中心に35町歩以上のりんご園が藤崎村で開園されていたといわれている[2][3]

国立園芸試験場東北支場の設置

各地のりんご栽培熱が高まり面積が増加する反面、病気や害虫が猛威を振るうという背景の中で、1900年(明治33年)に設立された「県農事試験場」に病害虫を取り扱う部局が整備された。また、冷害に悩まされる東北の農業・東北の園芸作物の試験研究が強く望まれ[4]1938年(昭和13年)、藤崎町に「農林省園芸試験場東北支場」が設置され、果樹や野菜の品種改良、栽培改善、栄養生理、病害虫防除に関する様々な試験研究が行われ、りんごの研究や品種改良に大きく貢献した[2][4]。園芸試験場東北支場は、1961年(昭和36年)に盛岡に移転した。ガラス温室は、園芸試験場の研究施設で2025年現在も唯一取り壊されずに残っている[4]

ふじの誕生

青森県藤崎町 リンゴ畑のふじ

藤崎町は、国内シェア・世界シェアともに1位を誇るリンゴの品種「ふじ」発祥の地である[5]

1939年(昭和14年)、「ふじ」のもととなるりんごの新品種の育種試験が開始された。農林省園芸試験場東北支場(現在の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、盛岡市)の圃場にあった「国光」の花のめしべに、青森県苹果試験場 (現在の地方独立行政法人青森県産業技術センターりんご研究所)から提供された「デリシャス」の花粉を交配したのが「ふじ」誕生のルーツである。

1939年(昭和14年)274個の果実を収穫。1940年(昭和15年)、この果実から得られた2004粒の種子を植え付け、968本の実生が育ち、畑に植え付けられた[4][6]

第二次世界大戦により研究員たちが次々に戦地に取られていくなどの困難があったが、1951年(昭和26年)に初めて実をつけた。実生を守り抜き、戦後研究が再開[7]。交配により生じた実生の選抜が行われ、1958年(昭和33年)東北7号として発表し、同年に農林1号として登録された[5][8][9]。1962年(昭和37年)には藤崎町の町名と富士山や初代ミス日本の山本富士子にもあやかり、平仮名で「ふじ」と命名され正式に品種登録された[10]

「ふじ」は1982年(昭和57年)に生産高日本一位となった[2][6][4]

ふじ誕生後の品種改良や技術発展

「ふじ」はもともと有袋栽培主体であったが、1990年代に入ると「ふじ」の無袋栽培が普及し、さらに、生産者の労働力不足を背景として2010年代から有袋栽培は急激に低下した[11]

生産・出荷体制

藤崎町のりんご流通は、JAつがる弘前JA津軽みらいという2つの広域農業協同組合によって担われている。JAつがる弘前は2003年7月1日に藤崎農協を含む6農協の合併により設立され、旧藤崎町エリアを管轄している。年間約6万トンのりんごを取り扱い、青森県内最大規模である[12]。一方、JA津軽みらいは2008年7月1日に常盤村農協を含む6農協の合併により発足し、旧常盤村エリア(現・藤崎町常盤地区)を管轄している。

選果・貯蔵施設

藤崎町のりんごは主に河東地区りんご施設(弘前市)で選果・貯蔵されている。この施設はJAつがる弘前が運営する青森県内最大のりんご選果施設で、敷地面積34,500平方メートルを有し、選果場と冷蔵庫を統合した複合施設として機能している[13]。光センサー選果機により着色度、糖度、蜜入りなどを非破壊で測定し、精密な品質等級付けを行っている[14]

樹園地面積・出荷量の推移・産出額

藤崎町の樹園地面積(果樹園全体の面積)

農林水産省の作物統計作況調査(果樹)では、以下のように示されている[15]

  • 2006年:776ヘクタール
  • 2005年:778ヘクタール
  • 2004年:779ヘクタール

注:「樹園地」は果樹全体の面積であり、りんご専用の面積ではない

藤崎町のりんご出荷量

農林水産省の作物統計作況調査(果樹)では、以下のように示されている(単位:トン)[16]

  • 2006年:14,900(つがる1,390、王林2,180、ジョナゴールド2,130、ふじ7,100、その他2,130)
  • 2005年:13,400(つがる1,240、王林2,070、ジョナゴールド1,780、ふじ6,380、陸奥393、その他1,500)
  • 2004年:11,700(つがる1,080、王林1,540、ジョナゴールド1,750、ふじ5,750、陸奥481、その他1,140)
  • 2003年:12,300(つがる1,130、王林1,840、ジョナゴールド1,920、ふじ5,760、陸奥566、その他1,100)
農林水産省 市町村別農業産出額(推計)[17]<藤崎町 りんご>
産出額

(1,000万円)

全国順位 青森県内順位
2023 441 8 7
2022 422 8 7
2021 439 8 7
2020 358 9 7
2019 371 8 7
2018 333 8 7
2017 318 8 7

主要品種

青森県内の生産者情報ハーベストマーケット掲載の農産物では、以下の通り[18]

  • 主要品種:ふじ-無袋-、王林、ふじ-有袋-、ジョナゴールドなど
  • 一般品種:シナノゴールド、トキ、つがる/サンつがる、シナノスイートぐんま名月など
  • 限定品種:ひろさきふじ、早生ふじ、紅の夢、北斗、紅玉など

CA貯蔵と流通管理

青森県藤崎町にある藤崎りんご商業協同組合 CA第三冷蔵庫

CA貯蔵とは、一般的な冷蔵に加え、機密性の高い貯蔵庫の大気の組成を「低酸素・高二酸化炭素」の状態に調節し、貯蔵庫に保存する野菜や果物の呼吸作用を抑えつつ、品質の低下を防ぐ貯蔵方法であり、イギリスのKIDDらによって開発された[19][20]

通常の貯蔵庫内の大気の組成は酸素20.95%・二酸化炭素0.03%という状態だが、一般的にCA貯蔵の大気の組成は酸素2~10%・二酸化炭素2~10%という状態に制御して保管している[21]。CA貯蔵によって様々な品種のりんごを4~6ヶ月間貯蔵でき、品種によっては普通冷蔵とCA貯蔵の2つの方法を活用し、10月半ば、11月上旬~6月下旬、7月下旬まで販売している[22]

品種とブランド

青森県藤崎町の町役場前にあるふじ発祥の地を示すモニュメント

弘前大学生まれのりんご5品種

藤崎町には、弘前大学農学生命科学部附属生物共生教育研究センターの農場(藤崎農場)がある。同農場は農林省園芸試験場東北支場が盛岡市に移転した際の跡地に設立され、りんごの生産現場で直接役立つ研究を中心に、気候変動などに対処する研究に取り組んでいる[23]。次世代を担う特徴あるリンゴ品種の育成や普及にも取り組んでおり、1981年(昭和56年)からリンゴの育種プロジェクトを進めている[3]。これまでに「こうこう」、「紅の夢」、「弘大みさき」、「きみと」、「美紅」を品種開発・育成した[24]

藤崎町で生産されたりんごの特徴

藤崎町の町域はほとんどが平地で日当たりが良く、津軽三大河川(岩木川、平川、浅瀬石川)の合流地点に位置するため、肥沃な土壌である[25]。最適な日当たりの良さと肥沃な土壌、加えて晩夏から秋にかけて昼夜の寒暖差が起きる事で糖度の高いりんごを生産できる[4]。また農作と畜産を組み合わせた有畜複合の資源循環型農業を実践する先進的な取り組みを行ったり、高い技能と技術を持った生産者が切磋琢磨しあったりして、高い品質のりんごを生産している[26]

課題と展望

藤崎町にあったりんご栽培の専門教育機関「旧弘前実業高校藤崎校舎りんご科」が平成30年度(2019年3月)をもって閉校となり[27][28]、長きにわたって地域のりんご農家を輩出した場所がなくなったことで、藤崎町のりんご産業の持続化への影響も懸念されている。今後は、津軽りんご産業の中心地としてのシビックプライドを地域住民に継承することで、りんご産業の就業者数の維持・担い手の確保を図る必要があるとされている[29]

旧弘前実業高校藤崎校舎は2022年から改修工事を施し2024年に 「ふじさき産業文化交流施設 RINGOCA(リンゴカ)」として再活用されている[27]

今後の農業を支える人材の育成と農業競争力の強化に向けて、スマート農業技術の導入などによる農業生産性の安定化を図るとともに、6次産業化の取組を強化して、藤崎ブランド農産物を直売・飲食・加工へとつなげることで地域内に雇用や利益を創出していく。さらに、それらを地域外への大きな好循環につなげることで、競争力のある将来的に持続可能な農業の創出を推進していく方針である[30]

関連産業・取り組み

藤崎町のりんごの歌

脚注

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