酸感受性イオンチャネル
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| Acid-sensing sodium channel | |||||||||
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ASIC1の構造[1] | |||||||||
| 識別子 | |||||||||
| 略号 | ASC | ||||||||
| Pfam | PF00858 | ||||||||
| InterPro | IPR001873 | ||||||||
| PROSITE | PDOC00926 | ||||||||
| SCOP | 2qts | ||||||||
| SUPERFAMILY | 2qts | ||||||||
| TCDB | 1.A.6 | ||||||||
| OPM superfamily | 181 | ||||||||
| OPM protein | 4fz1 | ||||||||
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酸感受性イオンチャネル(さんかんじゅせいイオンチャネル、英: acid-sensing ion channel、略称: ASIC)は、神経に存在する電位非依存性ナトリウムチャネルである。ASICは細胞外のプロトンによって活性化され、Na+を透過させる。ASIC1は低いCa2+透過性も示す[2]。ASICタンパク質は、イオンチャネルのENaC/Degスーパーファミリーのサブファミリーを構成する。ASICは哺乳類では5つの遺伝子によってコードされており、ASIC1、ASIC2、ASIC3、ASIC4、ASIC5のサブユニットが産生される[3]。さらに、選択的スプライシングによるアイソフォームが存在し、末尾のアルファベットで区別される。ASICはこれらのタンパク質サブユニットのうちの3つから組み立てられてられ、中枢神経系と末梢神経系の双方でホモ三量体またはヘテロ三量体として存在する[2]。最も一般的なASICはASIC1a、ASIC1a/2a、ASIC3である。ASIC2bは自身では機能を持たないが、ヘテロ三量体に加わることでチャネル活性を調節する。ASIC4の機能は不明である。ASICは網膜の損傷、けいれん発作、虚血性脳損傷などの病態に関与しており、創薬の標的としても期待されている[4][5]。
ポア
ASICの各サブユニットは500–560アミノ酸の配列からなり、2つの膜貫通セグメント(TMD1、TMD2)、細胞質側に位置するN末端とC末端、そして巨大な細胞外ドメインから構成される[3]。細胞内のN末端・C末端ドメインはチャネルの細胞内でのタンパク質間相互作用とその調節、イオンの透過性、ゲート機能に不可欠である。各ASICのゲート機能と作動機構は、構造を形成するサブユニットの組み合わせによって決定される[3]。
イオンチャネルのポアの作動機構は、イオンチャネルの機能の基礎をなしている。細胞外ドメインの上部から細胞内領域まで、ポアはチャネルの中央部、ASICの3つのサブユニットの間を通過しており、チャネルの状態によって大きさや形が変化する狭窄部が存在する[3]。
各サブユニットの2つの膜貫通ドメイン(TMD1とTMD2)がチャネルのポアの形成を担っている。TMD2が主にポアの内壁とチャネルの不活性化ゲートの形成に関与している一方、TMD1はタンパク質を細胞の脂質二重層内に保持する役割を担っている[6]。TMD1は細胞外ドメインのβシートに連結されており、このβシートはイオンがチャネルを通過できるよう、細胞外ドメインを屈曲させて広げる[3]。TMD2セグメントにはポアの最も狭い部分を形成する選択性フィルターが位置し、ASICの主にNa+に対する透過性を担う。ASIC1では、各サブユニットの3つのアミノ酸残基(Gly443、Ala444、Ser445)からなる計9つのアミノ酸残基が選択性フィルターを形成している。この選択性フィルターは「GASベルト」とも呼ばれ、各アミノ酸のカルボニル酸素は全てポアに並び、負電位を形成してカチオンの透過に寄与している[3]。ASIC1では、TMD2の内壁の細胞外側部分に位置する特定のアスパラギン酸残基がこのチャネルの低いCa2+透過性と関連づけられている。さらに、膜貫通領域の末端部分の残基の変異によってチャネルの機能やNa+の透過性が変化するため、この領域もNa+に対する選択性に寄与していると考えられる[3]。
細胞外領域
ASICの大きな、拳に似た形状をした細胞外領域は、タンパク質の構造の大部分を占めている。この拳に似た構造には、wrist(手首)、palm(掌)、finger(指)、knuckle(指関節)、thumb(親指)、β-ballと名付けられたドメインが存在する。細胞外ドメインの大部分を構成するpalmは7本のβシートから形成されるが、他の二次構造は主にαヘリックスから構成される[3]。細胞外領域はその特異なアミノ酸配列によって特徴づけられ、pHによるゲート機能とともに活性化・不活性化の誘導に不可欠である。細胞外ドメインから膜貫通領域へのシグナル伝達にはpalmとthumbの間のβシートループ領域が関与しており、開状態へのコンフォメーション変化を引き起こす[3]。しかしながら、どの残基がプロトンと相互作用してチャネルを活性化させるのかについてはいまだに結論が出ていない。2009年には、Tyr72、Pro287、Trp288の芳香性残基とASICのプロトンゲート機能との関係が確立された[3]。これらの残基は酸性のポケットを形成し、チャネルの活性化や調節のpH依存性を担う静電ポテンシャルを形成する[7]。この細胞外ドメインのポケットはカチオンを濃縮する貯蔵庫として機能し、Na+の流入をさらに補助する。また、細胞外領域のグリコシル化も顕著であり、膜表面へのチャネルの輸送やpH感受性の確立にも重要な役割を果たしている。さらに、ASICのゲートのプロトン親和性の調節には、ポアの内部と細胞外ドメインの双方においてCa2+が重要な役割を果たしている可能性が実験的に示されている[3]。
機能
ASICの役割は細胞外のpHの低下を検知し、神経細胞の反応やシグナルを引き起こすことである。活性化部位に結合するリガンドはプロトンのみであると長らく考えられてきたが、近年の研究ではASIC4とASIC1は正常なpHでも活性化されうることが示され、他のタイプのリガンドの存在が示唆されている[8]。酸性度が高くなるとプロトンがチャネルの細胞外領域に結合し、コンフォメーション変化、すなわちTMD2の開口によってイオンチャネルを活性化する。その結果、TMD2の内側を通ってナトリウムイオンが流入する。すべてのASICがナトリウムイオンを特異的に透過させ、ASIC1aのみはさらにカルシウムイオンに対しても低い透過性を有する。これらのカチオンの流入は膜の脱分極を引き起こし、電位依存性カルシウムチャネルが活性化されてカルシウムイオンが細胞内に流入する。その結果、神経細胞の脱分極が引き起こされ、興奮反応が引き起こされる。ASIC1aの場合、細胞内のCa2+の増加は直接チャネルを介して流入したものでもある[8]。
いったんASICが活性化されると、多数の異なるエフェクタータンパク質やシグナル伝達分子によってさまざまな反応が引き起こされる。α-アクチニンはpH感受性を高めてチャネルの脱感作状態からの回復を引き起こすとともに、チャネル電流の増大ももたらす[8]。リン酸化によってASICの機能を調節するプロテインキナーゼも多く存在し、プロテインキナーゼA(PKA)やプロテインキナーゼC(PKC)などが含まれる。さらに多数の調節因子が存在すると考えられているが、それらの影響に関しては実験的結論はまだ得られていない[8]。
他の因子もASICの調節に関与する。ASIC1aとASIC2aにはN-グリコシル化部位がより多く存在し、チャネル表面の成熟型N-結合型糖鎖の存在によって膜へのASIC1aの選択的輸送が行われると考えられている[8]。また、ASIC2の表面にはグリセロール(タンパク質の成熟を促進することが知られている)が多く含まれおり、これらのチャネルの機能の調節はタンパク質の成熟に依存していると考えられる。また、酸化が膜への輸送に関与しているという仮説も立てられている[8]。
位置
大部分のASICは神経系に発現している。ASIC1、ASIC2、ASIC2b、ASIC4は中枢神経系と末梢神経系の双方で広く発現しているが、ASIC1bとASIC3は末梢神経系のみに位置しているのが一般的である。
末梢神経系では、ASICはシナプス後膜と細胞体の膜に位置している。さらに、ASICは皮膚、筋肉、関節、内臓の求心性神経線維に位置し、そこで痛覚、味覚、胃腸機能と関係していることが明らかにされている[9]。
中枢神経系では、ASICは脊髄の後角に存在する[4]。ASIC1は扁桃体に特に多く存在し、不安行動に関与していることが示されている。ASIC3はコルチ器と蝸牛神経節に存在し、聴覚と視覚に関与しているチャネルであることが示されている[6]。ASIC1a、ASIC2a、ASIC2bサブユニットは海馬にも存在する[10]。