電位依存性ナトリウムチャネル
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電位依存性ナトリウムチャネル(でんいいぞんせいナトリウムチャネル、英語: voltage-gated sodium channel、略称:Nav[注 1])は、膜電位の変化によりナトリウムイオンNa+を細胞膜を超えて通過させることができるイオンチャネルである。細胞内側が相対的に負に荷電した静止膜電位においては閉鎖しているが、脱分極して正になると開口し、Na+を急速に細胞内に流入させた後すぐに不活性化(英語: inactivation)して閉じる。このような特徴は神経細胞や心筋細胞、筋細胞といった興奮性の細胞における活動電位の発生のために重要である。電位依存性ナトリウムチャネルはフグ毒の有毒成分であるテトロドトキシンによって阻害されることが広く知られている。電位依存性ナトリウムチャネルをコードする遺伝子に変異が起きると様々な疾患の原因になることが研究されてきている。例えば、てんかん、QT延長症候群、疼痛、周期性四肢麻痺などが電位依存性ナトリウムチャネルが関わっている疾患の例として挙げられる。

電位依存性ナトリウムチャネルの基本的な特徴は膜電位の脱分極によりナトリウムイオンNa+を選択的に通過させることである[2]。そのイオン選択性はカリウムイオンK+に対しては10~100倍であると考えられている[3]。細胞内外のイオン濃度はほとんどの細胞において、細胞外にNa+が多く、細胞内にK+が多い、という状況である。更に静止膜電位は-60~-90mV程度である。それゆえ、電位依存性ナトリウムチャネルが開くと電気的な勾配を考えても、Na+濃度の勾配を考えてもNa+は細胞内に流入する方向に移動する。これにより膜電位は正となる。Na+の平衡電位(ナトリウムチャネルが開いていてもNa+が見かけ上移動しないような膜電位)はネルンストの式から求めると約65mVであり、この電位よりも正であれば細胞外に流出させるようなNa+電流も生み出すことができる[4]。
膜電位の変化に応じて電位依存性ナトリウムチャネルは主に静止(脱活性化)状態・活性化状態・不活性化状態の3つの状態を形成することができる[5]。膜電位が脱分極により電位依存性ナトリウムチャネルが開口し、1ミリ秒未満のごくわずかな間とる状態が活性化(activation)状態で、このとき、電位依存性ナトリウムチャネルはNa+を通過させることができるようになる。しかし、1~5ミリ秒も経つと構造変化によってNa+は通過できなくなる。この状態が不活性化(inactivation)状態である。更に電位依存性カリウムチャネルなどの働きにより膜電位が再分極すれば膜電位が変化する前の脱活性化(deactivation)状態に戻るというメカニズムが考えられている[6]。
数ミリ秒で起こるような不活性化は非常に速いことから速い不活性化(fast inactivation)と呼ばれる[7]。一方で、数十から数百ミリ秒単位で起こる遅い不活性化(slow inactivation)も存在する。遅い不活性化は長時間または反復的に脱分極刺激を与えたときに起こる。このような不活性化は極度の興奮性を抑え、興奮毒性を受けにくくするための特性であると考えられている[8]。遅い不活性化はポアの外側付近の膜貫通領域が関わっていると考えられている[9]。
電位依存性ナトリウムチャネルが活性化した直後に急速に不活性化してもわずかながら電流を認めることがある。この電流を持続性電流(英語: persistent current)という[10]。持続性電流の発生機序として、各イオンチャネル分子の状態を考えたときに100%は不活性化しておらず、わずかなイオンチャネル分子が活性化しているために微小電流が流れるという機構が考えられる。しかしながらこの機構だけに基づく場合、脱分極の度合いが大きくなるにつれて不活性化/活性化の比率は大きくなりコンダクタンスが小さくなるはずであるが、実験的には逆に大きくなることからこの理論のみでは説明がつかない[11]。様々な機構が絡み合っていると考えられているが、その詳細は不明である[12]。
小脳のプルキンエ細胞に存在する電位依存性ナトリウムチャネルでは、Resurgent電流と呼ばれる特殊な電流が観測される。このResurgent電流とは、電位依存性ナトリウムチャネルが活性化した直後に急速に不活性化して再分極に移るとき、再度誘発されるNa+電流である。一見持続性電流と同じようにも見えるが、持続性電流のような微小な電流ではなく、電流の減衰も目に見えて分かる[13]。β4サブユニットによって生じるという仮説があるが、細胞によってβ4サブユニットを欠失させるとResurgent電流が消える場合、残存する場合どちらも報告されている[14]。β4サブユニットも含め、何らかのタンパク質が活性化の際にチャネルを阻害することで不活性化を起こし、再分極に伴って阻害が解除されることでResurgent電流が生じると考えられている[15]。
種類
電位依存性ナトリウムチャネルはαサブユニット単量体1個とβサブユニット1,2個で構成される。ヒトにおいては9種類の電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットが発見されており、Nav1.xのxの部分に1~9を当てはめた名称が用いられる[2]。これらのNav1.1-Nav1.9の9種類のαサブユニットは配列の同一性が70%超と非常に似ているため、選択的に活性化または阻害する薬剤を開発することが難しい原因の一つとなっている[6]。βサブユニットはβ1-β4の4種類が発見されている[16]。以下に表にまとめた[16][17][18][19]。遺伝子名のSCNはナトリウムチャネルの英語sodium channelに由来する[1]。それぞれの電位依存性ナトリウムチャネルの詳細な特徴などは各項目を参照。
| 名称 | 遺伝子名 | 遺伝子座(ヒト) | 発現(太字は主な発現部位) |
|---|---|---|---|
| Nav1.1 | SCN1A | 2q24.3[20] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節 |
| Nav1.2 | SCN2A | 2q24.3[21] | 中枢神経系、末梢神経系、後根神経節 |
| Nav1.3 | SCN3A | 2q24.3[22] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節 |
| Nav1.4 | SCN4A | 17q23.3[23] | 骨格筋、心筋、末梢神経系、後根神経節 |
| Nav1.5 | SCN5A | 3p22.2[24] | 心筋、骨格筋、中枢神経系、後根神経節 |
| Nav1.6 | SCN8A | 12q13.13[25] | 中枢神経系、後根神経節、末梢神経系、心筋 |
| Nav1.7 | SCN9A | 2q24.3[26] | 後根神経節(末梢神経系)、嗅神経 |
| Nav1.8 | SCN10A | 3p22.2[27] | 後根神経節 |
| Nav1.9 | SCN11A | 3p22.2[28] | 後根神経節 |
| β1 | SCN1B | 19q13.11[29] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞、アストロサイト、放射状グリア細胞 |
| β2 | SCN2B | 11q23.3[30] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節 |
| β3 | SCN3B | 11q24.1[31] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節 |
| β4 | SCN4B | 11q23.3[32] | 中枢神経系、末梢神経系、心筋、後根神経節 |
なお、電位依存性ナトリウムチャネルに配列が類似するタンパク質として、Nax(遺伝子名SCN7A[注 2])という膜タンパク質がある。Naxは膜電位によって性質が変わる電位依存性を持たず、細胞外Na+濃度の上昇に伴ってナトリウムチャネルとして機能するNa+センサーの役割を果たすイオンチャネルであると考えられていた[35]。しかし、その後の研究では細胞外Na+濃度に依存せず、細胞外Ca2+の存在下で作動する漏出性のチャネルとして機能する可能性が示唆され、その実体はいまだ不明確である[36]。
構造
αサブユニット
電位依存性ナトリウムチャネルαサブユニットは約2000個のアミノ酸で構成され、合計24回細胞膜を貫通している。24回膜貫通構造は6回膜貫通構造が4回連なったような構造であり、6回膜貫通ごとにドメインをN末端側からDⅠ、DⅡ、DⅢ、DⅣと呼ぶ[38]。DⅠ-DⅣのそれぞれはアミノ酸配列が類似した相同なものであるが、完全に同一な配列ではない[39]。DⅠ-DⅣのそれぞれにおける6回膜貫通領域ひとまとまりの中ではN末端側から膜を貫通した部分をS1-S6と順に名付ける[38]。S1-S4を電位センサードメイン(VSD)、S5-S6をポアドメイン(PD)またはポアモジュール(PM)と呼び、ポアドメインの部分がDⅠ-DⅣの4つ立体的に集まることにより、Na+が通過できる一つのポアを形成する[16]。S5とS6の間にはPループという膜を貫通はしないが膜を通過するループ状の構造があり、この部分は後述する選択性フィルターのアミノ酸残基が存在する[40]。
電位依存性ナトリウムチャネルの電位センサードメインとポアドメインの配置は電位依存性カリウムチャネルと同様、domain-swappedである。domain-swappedとは、あるドメインの電位センサードメインと隣り合うポアドメインが隣のドメイン由来である、ということであり[41]、例えばDⅡの電位センサードメインにはDⅢのポアドメインが接している。
電位センサードメイン

電位センサードメインはその名の通り、電位を感知する機能があり、アルギニンを主とする正に荷電したアミノ酸残基がS4に3残基に1残基の間隔で存在する[注 3][43]。その正電荷を補うようにS1、S2、S3にグルタミン酸やアスパラギン酸といった負に荷電した酸性アミノ酸残基が配置されている[43][44]。これらの負電荷(negative charge)を帯びた残基が多い部分はnegative charge clusterと呼ばれており、細胞外側(extracellular)と細胞内側(intracellular)にそれぞれ存在していて、略してENC、INCとそれぞれ呼ばれる[44]。
静止状態ではS4は細胞外側を上として下がっている状態であり、このときポアのイオン通過経路は閉じている。静止状態になっているのは膜電位(細胞外側を基準とした細胞内側の電位差)が負のときである。脱分極により膜電位が正になるとS4には正に荷電したアルギニン残基が豊富に含まれるため、細胞内側から遠ざかろうとして上がった状態になる[44]。S4が上がるときには元々相互作用していた負荷電アミノ酸とは別のアミノ酸に相互作用する相手を変える[45]。S4が上がるとS4の細胞内側でつながっているS4-S5リンカーという電位センサードメイン・ポアドメインを結ぶリンカーペプチドが引かれ、これによってポアドメインにも構造変化が及ぶ。この構造変化によりポアの面積が広がり、Na+を通過させることができるようになる[44]。DⅠ、DⅡ、DⅢの電位センサーのS4が上がるとこのようなNa+通過が起こるようになるが、DⅣのS4が上がると反対にNa+が通過できなくなる。これが速い不活性化の機構であり、電位センサーに蛍光を標識することで、DⅠ・DⅡ・DⅢはNa+電流よりも前に構造変化を起こすが、DⅣはNa+電流よりも後に構造変化を起こすことから裏付けられる[46]。
電位センサードメインはイオンを通さず、水分子すらも膜を越えさせないような構造となっている。これは電位センサードメインを構成するアミノ酸残基の側鎖などにより作られる通り道が狭隘であるためであり、最も狭窄している部分を変異させると水の通れる通路ができるようになったという実験結果がある[47]。この狭窄した部分(constriction site)はENCとINCとの間にあり、疎水性(hydrophobic)のアミノ酸を多く含むため、HCSと略して呼ばれる[44]。HCSは多くの電位依存性イオンチャネルにおいてイオンが漏出しないために保存されている[44]。
ポアドメイン

4つのポアドメインで構成されるポア(Na+の通過経路)は外側から外腔、選択性フィルター、中心腔、活性化ゲートという順に領域が存在する[40]。
外腔の一部はPループのS5側の細胞外側のループ(ECL)によって囲まれている。DⅠやDⅣのECLはβ1サブユニットが結合する部分となっており、この部分にβ1サブユニットが結合することでアロステリックに構造変化が起こり、チャネルの開閉やチャネルのメンブレントラフィックに影響を与えるものと考えられている[40]。
ポアの外腔のやや内側には選択性フィルター(SF)という電位依存性ナトリウムチャネルがNa+を通すために狭くなっている構造が存在する。電位依存性ナトリウムチャネルにはDⅠにアスパラギン酸(D)、DⅡにグルタミン酸(E)、DⅢにリシン(K)、DⅣにアラニン(A)残基があり、これらの各ドメインから成るDEKAが選択性フィルターを構成する[48]。選択性フィルターよりやや細胞外側には3つの突き出たグルタミン酸残基が存在しており、これがNa+を引き寄せる電場を作る[48]。DEKAのうちKは正に荷電する塩基性アミノ酸であるが、このK残基の存在によりエネルギー的にNa+といった小さいイオンは通すことができるが、K+、Rb+、Cs+といったより大きい一価陽イオンを通しにくくなっている一つの原因であると考えられている[49]。また、Kの正電荷はCa2+のような二価陽イオンを反発させることでもNa+の選択性に役立っていると考えられている[50]。
ドメイン間のリンカー
各ドメイン同士は細胞内でループを形成しながらつながっており、つながっている部分はリンカーと呼び、リンカーを構成するペプチドをリンカーペプチドという[51]。DⅢとDⅣをつなぐリンカーペプチドが電位依存性ナトリウムチャネルの特徴である不活性化に寄与していると考えられている[38]。このことはDⅢとDⅣの間のリンカーを切断した状態で入れたチャネルが不活性化を起こさないことから確認できる[52]。この不活性化にはイソロイシン-フェニルアラニン-メチオニン(一文字記号でIFM)の順番のアミノ酸配列が重要と考えられており、IFMを変異させると不活性化を起こさなくなり、更にその状態でKIFMK[注 4]というIFM配列含有ペプチドを投入すると元に戻る[52]。
βサブユニット

電位依存性ナトリウムチャネルβサブユニットはNa+を通すαサブユニットに結合することで機能を調節する補助的なサブユニットである。機能調節以外にタンパク質フォールディングやメンブレントラフィックに重要な構造である可能性もある[48]。β1-β4の4タイプが発見されている[41]。アミノ酸配列上、β1とβ3、β2とβ4がそれぞれ類似している[55]。
βサブユニットはいずれも1回膜を貫通している[41]。細胞外側にN末端が、細胞内側にC末端が突出しており、N末端側は免疫グロブリン様ドメインを形成する[6]。細胞外側のN末端領域にはN-結合型グリコシル化によって糖鎖が結合することができ、その糖鎖がβサブユニットの分子量全体の1/3をも占めることが示されている[55]。
これまでに構造解析でβサブユニットがどのようにαサブユニットに結合されているかが一部解明されている。β1サブユニットやβ3サブユニットの場合は非共有結合的に結合するが、β2サブユニットやβ4サブユニットの場合は、ジスルフィド結合を形成して共有結合的に結合する[41][56]。β1・β3サブユニットの結合する場所はDⅠとDⅣの間のポアドメイン(S5-S6)で、β2・β4が結合するためのシステイン残基の場所は細胞外DⅡのS5-S6ループ内である。Nav1.5、Nav1.8、Nav1.9ではDⅡのS5-S6ループにあるシステイン残基が存在しないためこの部分でβ2・β4サブユニットは結合できない。しかし、Nav1.5に対してβ2サブユニットが調節作用をもたらすことが示唆されている[57]。また、細胞内C末端領域がαサブユニットとの相互作用に重要である可能性があり、β1・β3サブユニットにおいては電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するリドカインを結合しにくくする作用を持つことが示されている[58]。
βサブユニットに存在する免疫グロブリン様ドメインは様々な細胞外に突出した膜タンパク質と相互作用することができる。例えば、β1サブユニットは他の細胞膜のβ1サブユニットと相互作用することができ、また、β2サブユニットとも相互作用することができる[59]。他にも同様に免疫グロブリン様ドメインを持つNRCAMやその他の細胞接着分子としてN-カドヘリンと結合できることが示されている[59]。
なお、β1サブユニットにおいては翻訳されないべきイントロンがスプライシングで切り取られないことで、膜貫通領域を持たないアイソフォームが産生されることがある。これをβ1bと呼び、細胞膜を貫通できないので細胞外に分泌される細胞接着分子として機能する[59]。
生理的機能
電位依存性ナトリウムチャネルの主な役割は活動電位の発生であり、神経細胞の軸索や骨格筋・心筋といった筋組織、その他非興奮性細胞である内分泌細胞などで機能する[60]。
神経細胞では軸索起始部やランヴィエの絞輪で高く発現していることが分かっている。ランヴィエの絞輪は髄鞘を持つ神経線維(有髄線維)において跳躍伝導という速い活動電位の伝導のために重要な髄鞘と髄鞘の間の部分のことである。軸索起始部で発生した活動電位がランヴィエの絞輪のみに伝わることで髄鞘のない線維(無髄線維)よりも速い伝導速度が可能になっている[61]。軸索起始部やランヴィエの絞輪に限局して電位依存性ナトリウムチャネルの量が多くなっているのはアンキリンGのような細胞骨格との接着を媒介するタンパク質が関わっていると考えられている[62]。
心筋においてはNav1.5が主に発現して、心筋の活動電位の発生に寄与している[63]。心筋でNav1.5が開口し、Na+電流が細胞内に流入すると膜電位が脱分極し、L型カルシウムチャネルを活性化する。これによってCa2+が細胞内に流入し、興奮収縮連関のきっかけとなる[64]。Nav1.1、Nav1.3、Nav1.6についても心筋のT細管における発現が確認されている[65]。
βサブユニットに関してはチャネルの補助的なタンパク質としての機能以外にも、細胞接着分子(CAMs)としての機能も有する。特にβ1・β2サブユニットが細胞接着分子として機能することが研究されてきており、神経突起の伸長に重要であると考えられている[66]。
機能の調節
電位依存性ナトリウムチャネルは膜電位の変化以外に翻訳後修飾によっても機能が調節される。その例がリン酸化と糖鎖修飾である。
リン酸化を担うのがプロテインキナーゼAやプロテインキナーゼCで、様々なタンパク質のリン酸化を行う。これらのプロテインキナーゼはGタンパク質共役受容体がリガンドを受容した後の一連のシグナル伝達を経て活性化される[67]。このようなリン酸化は中枢神経系に存在するNav1.1・Nav1.2や末梢神経系に存在するNav1.8において確認されている[68]。Nav1.1やNav1.2ではドーパミンやアセチルコリン、セロトニンのような神経伝達物質をリガンドとし、一連の反応の結果、DⅠ-DⅡリンカー部分がリン酸化を受け、高頻度刺激に伴う遅い不活性化を促進することでNa+を通過しにくくする[68]。Nav1.8ではプロスタグランジンE2(PGE2)をリガンドとし、Nav1.1・Nav1.2のときとは逆に活性化の方向に調節される[68]。
糖鎖修飾を構成する物質のうち、40~50%程度をシアル酸が占める。各電位依存性ナトリウムチャネルには100個ものシアル酸残基が含まれていると推定されている。シアル酸はカルボキシ基を含有するため負に荷電しており、それによってチャネルの性質に影響を与えうる[69]。
薬理学
以下に電位依存性ナトリウムチャネルを活性化または阻害する物質について、作用部位・機序の違いごとに述べる。
ポアの選択性フィルターから外側への結合
電位依存性ナトリウムチャネルの特徴の一つとしてフグ毒であるテトロドトキシン(TTX)によって阻害されるということが挙げられる。テトロドトキシンは電位依存性ナトリウムチャネルのポアに細胞外側から結合することでNa+が選択性フィルターを通過するのを阻害する。Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3、Nav1.4、Nav1.6、Nav1.7の6つはナノモル毎リットルのオーダーで作用を示すのに対し、Nav1.5、Nav1.8、Nav1.9はマイクロモル毎リットルのオーダーで作用を示す[49]。この感受性の違いは1残基の違いによって生じているものと考えられている。前者のNav1.1ら6つの場合はDEKA配列のD(アスパラギン酸)の次がY(チロシン)またはF(フェニルアラニン)であり、どちらもベンゼン環を含むのでテトロドトキシンのグアニジノ基との間にカチオン-π相互作用が働くことができる。一方でNav1.5ら3つの場合はDEKAのDの次はC(システイン)やS(セリン)となっており、相互作用が起こりにくくなって感受性が低くなっていると考えられる[70]。後者のテトロドトキシンに感受性が低いNav1.8のセリンをフェニルアラニンに置換した変異体においてはテトロドトキシンの感受性が前者のように増すことから、当残基の重要性が実験的にも確かめられている[71]。
自然毒のサキシトキシンも電位依存性ナトリウムチャネルのポアに結合して阻害作用を持つ。サキシトキシンにおいてはNav1.7のみ他のタイプよりも親和性が低いという違いがある。Nav1.7の他のタイプとのアミノ酸配列上の違いとしては選択性フィルターDEKA配列のKの4アミノ酸後ろのD(アスパラギン酸)が唯一I(イソロイシン)になっていることが挙げられる[40]。
イモガイの毒であるμ-コノトキシンも電位依存性ナトリウムチャネルのポアに結合する。選択性フィルターよりもやや細胞外側で結合し、選択性フィルターを覆うことでNa+の通過を阻害する[72]。
中心腔への結合
電位依存性ナトリウムチャネルには各ドメインのポアドメインの間を通り抜けてチャネルの機能を調節する小分子化合物または脂溶性物質が存在する。これらの物質は活性化・脱活性化のゲートで主に動く活性化ゲートと選択性フィルターの間にある中心腔(central cavity)と呼ばれる隙間に結合部が存在している[73]。そのため、これらの小分子化合物や脂溶性物質は理論上必ずしもチャネルが開いている状態である必要はない。ただし、結合親和性は静止状態よりも活性化状態や不活性化状態で高い場合が多い[70]。中心腔に結合する物質の例としてバトラコトキシンやベラトリジン、トリカブト毒のアコニチン[49]、アンチラトキシン、グラヤノトキシン[74]などが挙げられる。抗不整脈薬として用いられるフレカイニド、プロパフェノン、キニジンも同様のルートを通ってNav1.5の中心腔で結合しうることが示されている[73][70]。
以上の物質とほぼ同じ位置に局所麻酔薬、全身麻酔薬、抗けいれん薬(抗てんかん薬)、その他の抗不整脈薬などが結合しうることが示されている。例えば、局所麻酔薬にはリドカイン、全身麻酔薬にはセボフルランやイソフルラン、抗けいれん薬にはカルバマゼピンやラモトリギン、抗不整脈薬にはメキシレチンがある[74]。
電位センサードメインへの結合
電位センサードメインに結合するような物質は電位センサーの状態を特定の状態に保持させることで活性化または阻害を行う[75]。
まずその一例としてDⅡの電位センサードメインに特異的に結合するタイプの阻害物質がある。これらは主にNav1.7に対して阻害作用を持ち、S1-S2ループやS3-S4ループのような細胞外のループに結合する。このような物質にはプロトキシン-IIやフエントキシン-IVなどがある。どちらもDⅡに結合するものの、厳密には結合の方法にやや違いがあると考えられている[76]。
電位依存性ナトリウムチャネルの不活性化を標的とする物質も存在しており、その一つがサソリ毒のα-サソリ毒である。結合する部位はDⅣのS3-S4ループであることが明らかになっている。これらの毒素はVSDのS4の高さをチャネルが開閉の中間的な状態になるような位置に調整し、結果的に活性化状態から不活性化状態への移行を起こりにくくしているものと考えられている[77][78]。
不活性化に関わるDⅣの電位センサーを活性化状態に維持させることでNaチャネルを阻害する作用を持つのがアリール基を持つスルホンアミド化合物である。Nav1.7を選択的に阻害する化合物やNav1.3又はNav1.1を選択的に阻害する化合物が発見されている[79]。
その他
有毒渦鞭毛藻により産生されるシガトキシンやブレベトキシンはポア側面のDⅠのS6とDⅣのS5と平行に結合する。電位依存性ナトリウムチャネルを活性化する作用を持つが、どのアミノ酸残基が関わるかなどは不明である[74]。
殺虫剤成分のピレスロイドやDDTも電位依存性ナトリウムチャネルの活性化作用がある。これらの物質の結合部位はDⅢのS6に存在し、不活性化や脱活性化といったポアの閉鎖状態を抑制することで開口状態を維持する作用があると考えられている[74]。殺虫剤に抵抗性のある昆虫はこのようなピレスロイドやDDTの作用部位となるアミノ酸残基に対応する塩基配列を変異させている[80]。
関連する疾患
イオンチャネルが関与するような疾患はチャネロパチーと呼ばれる。電位依存性ナトリウムチャネルの変異が関係するチャネロパチーも存在しており、障害されるNavの種類によって異なる。疾患の詳しい変異によるメカニズムは本記事では省き、各Navの項目において記載する。
- 中枢神経疾患
- てんかん - SCN1A、SCN2A、SCN3A、SCN8Aの異常による。機能喪失型変異で起こる場合も機能獲得型変異で起こる場合もある[81]。
- 素因性てんかん熱性けいれんプラス(GEFS+) - 通常6歳を超えて発症しない熱性けいれんが6歳をこえても続くことを特徴とする遺伝性疾患である[注 5][82]。SCN1Aの異常による[68]。
- ドラベ症候群 - 1歳未満で体温上昇に伴うてんかん発作を引き起こし、その後も複数の型のてんかん発作が出現する。てんかんに伴い、認知障害・行動障害、運動失調、歩行障害などが現れ、最悪の場合死に至る[83]。SCN1Aの異常による[68]。
- 自然終息性家族性新生児・乳児てんかん - 生後3-6か月ほどでてんかんを発症するが、1年以内には名称のとおり終息する遺伝性のてんかんである。SCN2Aの異常による[84]。
- 多小脳回症 - SCN3Aの異常による。てんかんを伴うことがあり、機能獲得型変異で起こる[85]。
- 発達性てんかん性脳症(DEE) - てんかんを起こすもののうち、早期から重症なてんかん発作を引き起こすもの。てんかんに伴い発達障害も生じることがある[86]。
- 家族性片麻痺性片頭痛3型 - 片麻痺を伴う前兆のある片頭痛を起こし、思春期ごろに発症する[86]。SCN1Aの異常による[68]。機能獲得型変異によって起こることが多い[85]。
- 自閉スペクトラム症 - SCN2A、SCN3A、SCN8Aの異常により起こることがある。機能喪失型変異によって起こる[89]。
- 神経発達症 - SCN8Aの異常により起こることがある。機能喪失型変異によって起こる[90]。
- 筋疾患
- 周期性四肢麻痺 - 筋の興奮性の低下によって脱力発作・麻痺発作を起こす[91][92]。血清カリウム値により分類される[92]。
- 高カリウム性周期性四肢麻痺 - 発作の初発は小児期(約10歳ごろまで)であり、脱力・麻痺発作が1-4時間ほど続く[93]。高カリウム血症の状態であるため、致死性不整脈による心停止が危惧される[92]。SCN4Aの異常による[68]。
- 低カリウム性周期性四肢麻痺2型 - 発作の初発は10代から20代ごろで、ふつう、40歳以降は減少する傾向にある[93]。2型はSCN4Aの異常による[68]が、1型(CACNA1S異常)よりは稀である[93]。
- 先天性筋無力症候群 - 骨格筋への神経伝達の異常により、筋力低下や易疲労感を来す[97]。Navの異常の場合、SCN4Aの異常による。機能喪失型変異で起こることが多い[96]。
- 先天性パラミオトニア - 筋ジストロフィーのような筋変性はないが、筋強直を起こす非ジストロフィー性ミオトニー症候群の一つである[98]。運動で症状が改善傾向になる先天性ミオトニアとは異なり、運動によって悪化する[99]。SCN4Aの異常による[68]。機能獲得型変異で起こることが多い[96]。
- カリウム惹起性ミオトニー(ナトリウムチャネルミオトニー) - 名称の通り、カリウムが多いことで増悪するミオトニーである[99]。SCN4Aの異常による。機能獲得型変異で起こることが多い[96]。
- 心疾患
- QT延長症候群3型 - 心電図のQT時間が延長するような症候群をQT延長症候群という。QT延長症候群のうち3型はSCN5Aの異常が原因である[68]。主に機能獲得型変異によって起こり[96]、速い不活性化が阻害されて後期Na+電流が増加することでQT延長につながる[100]。
- ブルガダ症候群 - 安静時や睡眠時などに突然不整脈を起こして最悪死に至る疾患として知られる[101]。SCN5Aの異常による[68]。主に機能喪失型変異によって起こる[96]。
- 心房細動 - SCN10Aの異常により早期発症しやすいといわれている[102]。機能喪失型変異が報告されている[90]。
- 疼痛関連疾患
- 肢端紅痛症 - 四肢における疼痛と紅斑を特徴とする疾患である。これらの症状は温暖な環境では増悪し、寒冷な環境では軽減する、という特徴がある[103]。SCN9Aの異常による[68]。SCN11Aの異常も報告されている[104]。
- 発作性激痛症(PEPD) - 直腸や仙骨、肛門といった部分への刺激により激痛を生じる疾患である。眼や下顎への痛みが主訴であることもある[105]。SCN9Aの異常による[68]。
- 小径線維ニューロパチー(SFN) - 無髄線維(髄鞘のない神経線維)や薄い神経線維が障害されるニューロパチーである。そのため、痛覚や温度覚などは障害されるものの、軽い触圧覚や深部感覚などは障害されない[106]。半数程度は原因不明であるが、30%がSCN9Aの機能獲得型変異による[107]。また、SCN10Aの変異も原因の一つである[108]。
- 先天性無痛症[注 7] - 生来、どのような刺激に対しても応答が起こらず、痛みを感じなくなる先天性疾患である[110]。本来は神経成長因子(NGF)に関連するタンパク質や転写因子の一つであるPRDM12の変異によると考えられていたが、SCN9Aの変異も原因の一つであることが明らかになっている[111]。
- 家族性エピソード性疼痛症候群 - 家族性に起こる疾患で、小児期から疼痛を主に下肢に生じる。多くの場合、NSAIDsが有効である。SCN11Aの異常による[112]。
分子系統学
電位依存性ナトリウムチャネルは電位依存性イオンチャネルの一つであり、その起源は細菌に存在する電位依存性カリウムチャネルにまで遡ることができる。電位依存性カリウムチャネルは6回膜を貫通した構造を単量体としてそれが4つ集まった四量体であり、これが当初のイオンチャネルの基本構造であった[1]。その後、真核生物の発生初期ごろ、6回膜貫通構造単量体が2つつながった遺伝子が進化の過程で確立されると、二量体によってポアを形成できる二孔チャネル(TPCチャネル)のようなチャネルが出現した。その後、TPCチャネルなどの6回膜貫通構造単量体が2つつながった遺伝子が更に2つつながった遺伝子が出現すると6回膜貫通構造単量体が4つつながった遺伝子として確立し、現在の電位依存性カルシウムチャネルや電位依存性ナトリウムチャネルの基盤になったと考えられている[1]。
電位依存性ナトリウムチャネルは電位依存性カルシウムチャネルから派生したと考えられている。電位依存性カルシウムチャネルはCa2+を引き付けるために酸性アミノ酸による強い電場が働いており、電位依存性ナトリウムチャネルにおけるDEKAではなく、グルタミン酸のみから成るEEEEが選択性フィルターを構成する[113]。発生の過程をたどると後生動物に近い襟鞭毛虫や後生動物のうち進化的に早期の生物ではEEEEとDEKAの中間であるDEEAを持つ電位依存性ナトリウムチャネルが確認されており、このような電位依存性ナトリウムチャネルはNa+のみ選択的に通すわけではなくCa2+も通しうることから発生的な順序が考察される[114]。
後生動物の下位分類には有櫛動物、平板動物、刺胞動物、左右相称動物があるが、うちDEKAを有するのは左右相称動物である[115]。左右相称動物の中でも脊椎動物にはNav1のみしか存在しないが、無脊椎動物にはNav1とNav2があり、うちNav2はDEEAを有する[116]。左右相称動物以外の後生動物、つまり有櫛動物、平板動物、刺胞動物においては基本的にDEEAとなっているものの、刺胞動物の水母亜門の生物についてはDKEAとなっており、DⅡの選択性フィルター寄与残基がリシン(K)である。DKEAはDEEAよりもNa+選択性が高いことが確認されており、正に荷電したリシン残基がNa+選択性に重要であることが顕れている[114]。

初期の脊椎動物にはNav1がただ一つしかなく、現在のヒトの9種類に至るまでには何らかの形によって複製されたと考えられている。その複製の説明として提唱されたのが2R仮説である。2R仮説はイオンチャネルの遺伝子に限らず、全ゲノムが脊椎動物の進化初期に2回複製されてきたという仮説である。この仮説に基づくと、まず脊椎動物の進化初期にはNavは4種類に増える。これが更に遺伝子重複を受けることで9種類にまで増えたとされる[117]。この仮説を裏付ける証拠として、無顎類のヤツメウナギでは2種類、サメやエイなどといった魚類の中でも板鰓亜綱のものでは4種類であることが挙げられ、進化が進むにつれ増えていったことが確認できる[115]。また、遺伝子座、つまり電位依存性ナトリウムチャネルをコードする遺伝子がどの染色体にあるかを調べることによっても推定ができる。ヒトでは2番染色体長腕にSCN1A、SCN2A、SCN3A、SCN9Aが、3番染色体短腕にSCN5A、SCN8A、SCN11Aが、12番染色体長腕にSCN8Aが、17番染色体長腕にSCN4Aがコードされている[33]。つまり、まず2R仮説によりNav1が2回複製されて4つとなり、3個・4個それぞれ重複したものが1つずつと重複が起こらなかった2つにより9種類になったと考えることができる[33]。
ヒトを含め多くの脊椎動物はテトロドトキシンに曝露されると致死性となる。これはほとんどの電位依存性ナトリウムチャネルがテトロドトキシンによる阻害を受け、神経伝達や骨格筋・心筋の筋収縮に支障を来すためである。しかし、脊椎動物の種によってはテトロドトキシンの阻害を受けないような特殊な進化をしているものがあり、その代表例がテトロドトキシンを毒として有するフグである。フグではテトロドトキシン感受性が抵抗性となるようなNav遺伝子変異が起こっていることが確認されており、これにより生存することができると考えられている[118]。
歴史
電位依存性ナトリウムチャネルのタンパク質およびイオンチャネルとしての存在が明らかになるより前にアラン・ロイド・ホジキンとアンドリュー・フィールディング・ハクスリーはイカの巨大軸索に膜電位固定法を用いることで、イオンチャネルの分子実体が分からない状態で膜を流れる電流を研究していた[7]。Na+チャネルの開口の仕組みについて、ホジキンとハクスリーらは速やかに動くゲート m が3つと比較的ゆっくりと動くゲート h が1つ存在する、と推測した。この3+1のゲーティングの理論は4つのドメインがある中で3つのゲート(DⅠ、DⅡ、DⅢ)はチャネルの開口に、残り1つのゲート(DⅣ)は不活性化に寄与する、ということに一致していることが後に明らかにされた[40]。
ホジキンとハクスリーは研究の結果をもとに、ナトリウムチャネルが膜電位の変化によってNa+を通過させるためには構造の変化が必要であり、Na+が通過するより前にも微小な電流が流れているだろうと1952年時点で考えていた。ナトリウムチャネルが開口する前の微小な電流は、現在は電位依存性イオンチャネルに普遍的なゲーティング電流(gating current)として知られているが、実際に測定が行われたのは1973年のことであった[7]。1973年に測定されたClay ArmstrongとFrancisco Bezanillaによる電位依存性ナトリウムチャネルのゲーティング電流の電流密度は0.13 pA/μm2と非常に小さい値であった[注 8][119][120]。
電位依存性ナトリウムチャネル蛋白自体が発見されたのは高い親和性をもって結合する神経毒を用いる手法による。毒素を放射性のヨウ素125で標識したものをSDS-PAGEで分離した結果、260kDa程度のαサブユニットと33~36kDa程度のβサブユニットに分離された[121]。更にタンパク質の精製技術が高まり、精製したものを小胞に組み込むと電位依存性という性質を持つことが明らかになり、電位依存性ナトリウムチャネルの発見となった[121][122]。
cDNA配列解析やcDNAクローニングが可能になると電位依存性ナトリウムチャネルがどのような構造をしているかも明らかになっていった[123]。最初期の電位依存性ナトリウムチャネルのcDNA配列解析は沼正作らの研究チームの貢献によるところが大きく、彼らはαサブユニットのN末端からアミノ酸を一つ一つエドマン分解することで全配列の解析を試みた。これだけでは完全な解析ができなかったため、cDNAライブラリーの作成により解析できなかった部分を埋めることで初めてSCN1Aの配列特定に成功した[124][125]。
電位依存性ナトリウムチャネルの構造解析が初めて行われたのは原核生物のもので、2011年にX線結晶構造解析により得られた。Acrobacter butzleriの電位依存性ナトリウムチャネルなので、NavAbと呼ばれる。NavAbは真核生物の6回膜貫通の構造が4つ連なった単一のαサブユニットという構造ではなく、細胞内・細胞外のリンカーが短い6回膜貫通構造を単量体とするホモテトラマーであるために構造解析のためのタンパク質精製が行いやすかった[9]。
原核生物に見られるホモテトラマーのチャネルは対称性があるため、真核生物の非対称性のチャネルとは異なっている。対称性のチャネルでは速い不活性化を起こさないため、不活性化に対する構造生物学に基づく知見が得られていないという課題があった[126]。その中、2017年、クライオ電顕の技術発展によりワモンゴキブリの電位依存性ナトリウムチャネルNavPasの構造解析に成功した。この後もヒトのNav1.1、Nav1.2、Nav1.4、Nav1.5、Nav1.7などの構造がβサブユニットとの結合状態や小分子リガンドの結合状態で解析されてきている[126]。