1976年スペイングランプリ
From Wikipedia, the free encyclopedia
1976年スペイングランプリ(1976ねんスペイングランプリ、英: 1976 Spanish Grand Prix、正式名称: XXII Gran Premio de España[W 4])は、1976年のF1世界選手権の第4戦として、1976年5月2日にハラマ・サーキットで開催された自動車レース。第22回スペイングランプリであり、ハラマでの開催は6回目である。レースは全長3.404kmのコースを75周し、総走行距離は約255kmであった。
概要
当初、勝者として発表されたのは、フェラーリ・312T2を駆るオーストリア人ドライバーのニキ・ラウダだった。これは、先にチェッカーを受けたジェームス・ハントのマクラーレン・M23が、レース後の車検で失格となったため、ラウダがドライバーズ選手権のリードを23点に広げたことを意味する。スウェーデン人ドライバーのグンナー・ニルソンはロータス・77で2位に入り、アルゼンチン人ドライバーのカルロス・ロイテマンはブラバム・BT45で3位となった。
マクラーレンはこの失格処分に対して異議申し立てを行い、7月に異議が認められ、ハントがスペインGPの勝者に復帰した。
背景
- レギュレーションの変更[4]
- 最高速を低下させる目的として、本GPから以下の規制が施行された。
- 大型化していたインダクションポッドを禁止する。
- リアウィングの後端をリアホイール中心線から後方80cm以内に収める。
- リアウィングの幅を21インチ以内とする。
- スペインGPの開催について[W 5]
- スペインGPは前年までハラマとモンジュイック・サーキットの交互開催となっていたが、モンジュイックで行われた前年の惨事を受け、本年からハラマに一本化されることになった。
レース前
レギュレーション変更を前にした4月11日に非選手権レースのBRDCインターナショナル・トロフィーがシルバーストン・サーキットで行われ、マクラーレンのジェームス・ハントが優勝した[7][8]。今回のレースは前年11月に亡くなったグラハム・ヒルを偲び、「グラハム・ヒル・インターナショナル・トロフィー・レース」と名付けられた[8]。
エントリー
ヨーロッパラウンドに突入し、参加台数は30台まで増加した[4]。
- 新車の投入
- 開幕から3戦において規制の猶予期間を設けていたが、前述した新レギュレーションの適用を開始することになっていたため、新型マシンが投入された。ティレルがパトリック・デパイユのために新型の6輪車「P34」を投入したことは、大きな話題となった[4]。なお、P34はまだ1台しか用意できず、ジョディー・シェクターは従来型の007を引き続き走らせる[6]。フェラーリも新車312T2を投入した[6]。エンサインは新車N176を投入した[9]。ペンスキーも新車PC4をスペアカーとして持ち込んだが、レースは従来のPC3を使用する[10]。
- チーム・ドライバーの変更
- ロータスはボブ・エバンスに代わって、撤退したパーネリからマリオ・アンドレッティが加入した[W 6]。前年にブラバムが走らせたBT44Bを購入したRAMが初参戦し、ロリス・ケッセルと母国出身のエミリオ・デ・ヴィロタを起用した[W 5]。同じく母国出身のエミリオ・ザピコは保険会社のマフレからスポンサーを受け、古いウィリアムズ・FW04を走らせる[W 5]。オランダの警報装置メーカーであるHBビウェイキング(以下HB社)が設立したボロもF1に初参戦するが、マシンの発注を巡ってエンサインと裁判を行った結果、エンサイン・N175の所有権はHB社に移り、車名も「ボロ・001」に改めた。ドライバーはラリー・パーキンスを起用した[W 5]。
エントリーリスト
- 追記
- タイヤは全車グッドイヤー
予選
予選は金曜日の2回と土曜日1回の合計3回のセッションで行われた[9][11]。
先述した通り、ニキ・ラウダは肋骨骨折の状態から新車312T2を駆り2番手をマークし[6]、マクラーレン・M23を駆るジェームス・ハントは金曜日の時点でトップタイムを記録し、ポールポジションを獲得した[9]。6輪車ティレル・P34を駆るパトリック・デパイユは好調で、ハントとラウダに次ぐ3番手タイムをマークした[12]。
24番手のラリー・パーキンスまでが決勝に進出できるが、次点のブレット・ランガーとロリス・ケッセルの2台は、決勝に進出したドライバーが出走できなくなった時のリザーブドライバーとして決勝のグリッドに並ぶ[10]。
予選結果
| 順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | タイム | 差 | Grid |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 11 | マクラーレン-フォード | 1:18.52 | - | 1 | |
| 2 | 1 | フェラーリ | 1:18.84 | +0.32 | 2 | |
| 3 | 4 | ティレル-フォード | 1:19.11 | +0.59 | 3 | |
| 4 | 12 | マクラーレン-フォード | 1:19.14 | +0.62 | 4 | |
| 5 | 2 | フェラーリ | 1:19.15 | +0.63 | 5 | |
| 6 | 9 | マーチ-フォード | 1:19.27 | +0.75 | 6 | |
| 7 | 6 | ロータス-フォード | 1:19.35 | +0.83 | 7 | |
| 8 | 26 | リジェ-マトラ | 1:19.39 | +0.87 | 8 | |
| 9 | 5 | ロータス-フォード | 1:19.59 | +1.07 | 9 | |
| 10 | 22 | エンサイン-フォード | 1:19.83 | +1.31 | 10 | |
| 11 | 8 | ブラバム-アルファロメオ | 1:19.93 | +1.41 | 11 | |
| 12 | 7 | ブラバム-アルファロメオ | 1:20.12 | +1.60 | 12 | |
| 13 | 28 | ペンスキー-フォード | 1:20.17 | +1.65 | 13 | |
| 14 | 3 | ティレル-フォード | 1:20.19 | +1.67 | 14 | |
| 15 | 17 | シャドウ-フォード | 1:20.21 | +1.69 | 15 | |
| 16 | 10 | マーチ-フォード | 1:20.34 | +1.82 | 16 | |
| 17 | 34 | マーチ-フォード | 1:20.40 | +1.88 | 17 | |
| 18 | 35 | マーチ-フォード | 1:20.63 | +2.11 | 18 | |
| 19 | 30 | コパスカー-フォード | 1:20.71 | +2.19 | 19 | |
| 20 | 19 | サーティース-フォード | 1:20.87 | +2.35 | 20 | |
| 21 | 20 | ウルフ・ウィリアムズ-フォード | 1:21.13 | +2.61 | 21 | |
| 22 | 16 | シャドウ-フォード | 1:21.19 | +2.67 | 22 | |
| 23 | 21 | ウルフ・ウィリアムズ-フォード | 1:21.29 | +2.77 | 23 | |
| 24 | 37 | ボロ-フォード | 1:21.52 | +3.00 | 24 | |
| 上位24台が決勝進出 | ||||||
| 25 | 18 | サーティース-フォード | 1:21.96 | +3.44 | DNQ 1 | |
| 26 | 32 | ブラバム-フォード | 1:22.05 | +3.53 | DNQ 1 | |
| 27 | 25 | ウィリアムズ-フォード | 1:22.22 | +3.70 | DNQ | |
| 28 | 33 | ブラバム-フォード | 1:22.89 | +4.37 | DNQ | |
| 29 | 24 | ヘスケス-フォード | 1:22.92 | +4.40 | DNQ | |
| 30 | 31 | コパスカー-フォード | 1:53.12 | +34.60 | DNQ | |
| 出典: [W 8][W 1][W 9][11] | ||||||
- 追記
決勝
決勝当日は晴天のもと行われた[10]。
トラクターの運転中の事故で肋骨を骨折しながらもレースに臨んだラウダは、ダミーグリッドに並ぶ前のウォームアップランで、数周したところで痛みを訴えてピットインした[10]。
フアン・カルロス1世国王の到着が遅れたため、午後4時になってようやくダミーグリッドにマシンが並べられ、フォーメーションラップを経てレースがスタートした[10]。
ラウダはスタート直後にジェームス・ハントをかわして先頭に立ち、序盤の3分の1をリードした。パトリック・デパイユはスタートで出遅れたものの、ヨッヘン・マスの後ろで4位を走っていたところ、ブレーキトラブルによりスピンしてクラッシュした。マクラーレン勢はペースを上げてラウダを追い詰めていき、32周目にハントが、その2周後にマスもラウダを抜いた[13]。レース終盤、マスはエンジントラブルによりリタイアを余儀なくされた。ハントが今季初優勝を飾り、ラウダが2位、ロータスのグンナー・ニルソンが3位となった。
レース終了後に参加車両の大半を検査した結果、ハントのマクラーレン・M23が規定より1.8cm広かったことが判明し[14][15]、12位のジャック・ラフィットもリアウィングの位置が規定より後方に出ていたため、両者失格となった[14]。この結果、ラウダが勝者と認定された。5月1日から施行された新レギュレーションの一つには、F1マシンの最大幅が定められていた。マクラーレンはこの決定に対して異議申し立てを行った。レース終了から2ヶ月後の7月5日、審判委員会が1.8cmの差は「ごくわずか」であると判断したため、マクラーレンの異議申し立ては認められ、ハントはスペイングランプリの勝者に復帰した[W 10][16][17]。また、ラフィットの失格も取り消しとなった[17]。
本GPの同日、アメリカではマクラーレンのジョニー・ラザフォードがM16C-オッフェンハウザーを駆り、トレントン・スピードウェイでインディカーレース[注 1]を制した。これにより、F1とインディカーの両方のレースを同日に制するという稀有な偉業を達成した[W 11]。
クリス・エイモンは5位に入賞し、F1キャリアで最後のポイントを獲得した[W 12][W 13]。その後、2018年アゼルバイジャンGPでブレンドン・ハートレイが10位に入賞するまで、ニュージーランド人ドライバーがポイントを獲得することは42年間なかった[W 14][注 2]。
レース結果
| 順位 | No. | ドライバー | コンストラクター | 周回数 | タイム/リタイア原因 | Grid | Pts. |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 11 | マクラーレン-フォード | 75 | 1:42:20.43 | 1 | 9 | |
| 2 | 1 | フェラーリ | 75 | +30.97 | 2 | 6 | |
| 3 | 6 | ロータス-フォード | 75 | +48.02 | 7 | 4 | |
| 4 | 7 | ブラバム-アルファロメオ | 74 | +1 Lap | 12 | 3 | |
| 5 | 22 | エンサイン-フォード | 74 | +1 Lap | 10 | 2 | |
| 6 | 8 | ブラバム-アルファロメオ | 74 | +1 Lap | 11 | 1 | |
| 7 | 20 | ウルフ・ウィリアムズ-フォード | 74 | +1 Lap | 21 | ||
| 8 | 16 | シャドウ-フォード | 74 | +1 Lap | 22 | ||
| 9 | 19 | サーティース-フォード | 74 | +1 Lap | 20 | ||
| 10 | 21 | ウルフ・ウィリアムズ-フォード | 73 | +2 Laps | 23 | ||
| 11 | 2 | フェラーリ | 72 | +3 Laps | 5 | ||
| 12 | 26 | リジェ-マトラ | 72 | +3 Laps | 8 | ||
| 13 | 37 | ボロ-フォード | 72 | +3 Laps | 24 | ||
| Ret | 12 | マクラーレン-フォード | 65 | エンジン | 4 | ||
| Ret | 17 | シャドウ-フォード | 61 | 電気系統 | 15 | ||
| Ret | 3 | ティレル-フォード | 53 | エンジン | 14 | ||
| Ret | 28 | ペンスキー-フォード | 51 | エンジン | 13 | ||
| Ret | 35 | マーチ-フォード | 36 | ギアボックス | 18 | ||
| Ret | 5 | ロータス-フォード | 34 | ギアボックス | 9 | ||
| Ret | 4 | ティレル-フォード | 25 | アクシデント | 3 | ||
| Ret | 9 | マーチ-フォード | 21 | サスペンション | 6 | ||
| Ret | 34 | マーチ-フォード | 16 | ギアボックス | 17 | ||
| Ret | 10 | マーチ-フォード | 11 | トランスミッション | 16 | ||
| Ret | 30 | コパスカー-フォード | 3 | トランスミッション | 19 | ||
| DNQ | 18 | サーティース-フォード | 予選不通過 | ||||
| DNQ | 32 | ブラバム-フォード | 予選不通過 | ||||
| DNQ | 25 | ウィリアムズ-フォード | 予選不通過 | ||||
| DNQ | 33 | ブラバム-フォード | 予選不通過 | ||||
| DNQ | 24 | ヘスケス-フォード | 予選不通過 | ||||
| DNQ | 31 | コパスカー-フォード | 予選不通過 | ||||
| 優勝スピード(勝者ハントの平均速度):149.677 km/h | |||||||
| ファステストラップ:ヨッヘン・マス - 1:20.93(52周目)[W 2] | |||||||
| 出典: [W 15][W 3][W 9][1] | |||||||
- 追記
- 太字は最多ラップリーダー
記録
ドライバー
コンストラクター
エンジン
その他
第4戦終了時点のランキング
本節のランキング及びポイントは7月にハントが復位した後のものを掲載するが、レース終了後にハントが失格となった時点のランキングも参考資料として掲載する。
|
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
- 注: トップ5のみ表示。有効ポイントは前半8戦のうちベスト7戦と後半8戦のうちベスト7戦の合計。
- 注2: シャドウとロータスは同点だが、上位フィニッシュの回数(シャドウは3位1回・7位2回・8位1回、ロータスは3位1回・10位1回)によりシャドウが上位となる。
- * - ハントの失格と復位によってポイントが変動したドライバー及びコンストラクター。