HIA (ラグビー)

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HIA(エイチ・アイ・エイ)は、ヘッド・インジュリー・アセスメント(Head Injury Assessment)の略で、「頭部外傷評価」と訳される[1]ワールドラグビーにより、脳しんとうに対する対策として行われ、選手の安全性を守る。日本では、2016-17シーズンからジャパンラグビートップリーグで導入された[2][1]。2024年からは、プレー中の選手が受ける衝撃を、マウスガードからドクターにリアルタイムで無線送信され、脳しんとうの疑いのある選手を即時退場・検査する仕組みが導入されている[3][4]

2011年以前

ラグビーユニオンの統括組織ワールドラグビーがIRB(International Rugby Board、国際ラグビー評議会)だった頃は、「プレーヤーが脳しんとうを起こした場合、試合またはトレーニングに少なくとも3週間は参加してはならない」などのルールがあった[5]

2011年

2011年、IRBは新たな脳しんとうガイドラインを発表。脳しんとうを起こした選手だけではなく、脳しんとうの疑いのある選手も同様に取り扱うという内容を盛り込んだ。しかし、ラグビーワールドカップ2011では、以下の問題点が明らかになった[5]

  • チームドクターが頭部外傷を受けた選手の評価にかけた時間は、平均68秒間という 短時間だった。
  • 脳しんとうを起こした選手(退場すべきであった選手)の56%が競技を継続していた
  • チームドクターが多角的評価(症状、認知機能、バランス機能)を行った形跡が認められなかった。

2012年、PSCA導入

選手評価に5分間の時間を与えるPSCA(Pitch Side Concussion Assessment、ピッチサイド・コンカッション・アセスメント)が試験的に導入され、退場すべき選手の試合継続率は12%に低下させることができた[5]

2014年、HIA導入

2014年5月、評価時間を10分間に延長した新しいツール HIA(Head Injury Assessment、ヘッド・インジュリー・アセスメント)が作られ、2014年6月のテストマッチシーズンから導入され、ラグビーワールドカップ2015でも採用された。その結果、ワールドカップでの試合継続率は、2011年大会の56%から、2015年大会では4%へと大幅に低下した[5]。選手を退場させてフィールド外で検査をする第一段階を「HIA1」という[6]

2016年、トップリーグでHIA採用

2016-17シーズンからジャパンラグビートップリーグで導入された。脳しんとうの疑いのある選手を一時退出させ、HIAの専門的な講習を受けた担当者(マッチドクター、チームドクター)により脳振盪を確認する流れ[2][5]

2019年、日本ラグビーフットボール協会は、HIA1にかける時間(一時退場の時間)を、それまでの10分間から12分間に延長した。出血を伴う場合は17分間の一時退場となる[7]

2022年、段階的競技復帰ガイドラインの設定

2022年、ワールドラグビーは脳しんとうを発症した選手の段階的競技復帰に関するプロトコル(手順)「GRTP(Graduated Return To Play)」を定めた。詳細は、後述「段階的競技復帰(GRTP)」を参照。

2024年、スマートマウスガードの導入

ワールドラグビーは、2024年1月から世界のエリートレベルの大会で新しいHIAプロトコル(HIA手順)を適用し、センサーを搭載したスマートマウスガードiMG、Instrumented mouthguards)の導入が行われた[8][4]。日本では、2024-25シーズンからジャパンラグビーリーグワン(DIVISION3を除く)で導入された[8][3][1]

これにより、選手が着用しているスマートマウスガードが基準を超える衝撃を感知した場合に、医療スタッフにアラートが送信され、マッチオフィシャル(審判団)はその選手を検査(HIA1)のために退場させることになった[8][1]

HIAプロトコル

HIAにおける手順をHIAプロトコル(HIA Protocol)という。ワールドラグビーが定めるHIAプロトコルの詳細(2024年11月20日現在)は、外部リンクを参照のこと。

HIAプロトコルは、以下のように四段階で構成されている[9]

  • 第一段階「HIA1」では、すみやかに選手を退場させて、その挙動の観察や、短期記憶力の口頭テスト、身体のバランステストなどを10分間かけて行う。同時に、ドクターなどが正しいプロセスで選手を検査しているかもチェックされる[10]。ここで異常が無いと判定されると、試合に復帰できる。
  • 第二段階「HIA2」では、試合終了後3時間以内に早期医学的評価を行う。
  • 第三段階「HIA3」では、2晩を経た後(試合から36時間~48時間後)に、遅発性の脳しんとうに関する医学的検査を行う。
  • 第四段階「HIA4」では、脳しんとうからの回復(後述「段階的競技復帰(GRTP)」を参照)、および、リハビリテーション履歴の記録などが行われる。

段階的競技復帰(GRTP)

2022年6月21日、ワールドラグビーは、脳しんとうを発症した選手の段階的競技復帰に関するプロトコル(手順)「GRTP(Graduated Return To Play)」を定めた[11]。以下のように6段階ある。出典:[12][11]

  1. 最低安静期間:症状がない状態での体および脳の絶対安静。
  2. 軽い有酸素運動:10~15分間の軽いジョギング、水泳、または、低 ~中度のエアロバイク。筋力トレーニングはしない。24時間ずっと症状がないこと。
  3. 競技に特化した運動:ランニングドリル。頭部に衝撃を与える活動はしない。
  4. ノンコンタクト・トレーニングドリル:さらに複雑などトレーニングドリルに進む(例:パスドリル)。 漸増負荷による筋力トレーニングを始めてもよい。
  5. フルコンタクトの練習:通常のトレーニング活動。
  6. 競技への復帰:プレーヤーは元の活動に戻る。

ワールドラグビーは、エリートラグビーのゲームにおいて、脳しんとうの既往がある選手と、HIA3で陽性の選手(脳しんとうの症状がある選手)は、「最低12日間は休養しなければならない」と定めた。それら選手の競技復帰には、ICC(Independent concussion consultant)の承認が必要となる。                    

脳しんとうの既往が無く、HIA3で陰性の選手は、ICCの承認が得られれば、受傷後7日目での試合復帰が可能となる。練習や練習試合での脳しんとうはHIA対象外となるため、1週間の休息と1週間のGRTPプロトコルにより、最短14日で試合復帰が可能となる。

高校生・高専生は、最短3週間後、中学生以下は最短23日後の復帰となる。

日本ラグビーフットボール協会による規定

出典:[11]

高校生・高専生を除く18歳以上のコミュニティレベルのプレーヤーは、プレーヤーウェルフェア(選手の健康)を最優先としたメディカル体制を有しているチームの管理のもとに、脳しんとうの既往のない選手に限り、一定の項目を満たせば1週間の休息と1週間のGRTPにより、最短14日で復帰可能となる。脳しんとうの既往がある選手は、2週間の休息と1週間のGRTPにより、最低21日後の復帰となる。

出典

関連項目

外部リンク

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