フードコブラ属

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フードコブラ属(フードコブラぞく、Naja)は、コブラ科の1つ。コブラの中では最も広く分布しており、アフリカ西アジア南アジア東南アジアの各地に生息している。キングコブラリンカルスなどもコブラと呼ばれるが、どちらも別の属に分類される[2][3][4]

元々20-22種が分類されていたが、分類学的な改訂が数回行われた[5][6]。2009年にはミズコブラ属 BoulengerinaParanaja 属 (ジムグリコブラ)が本属に含まれ[7]、この体系は幅広く支持されている。現在は38種が分類されている[8]

属名はサンスクリット語で「ヘビ」を表す「Nāga (ナーガ)」に由来する。この語は英語の「snake」、ゲルマン語の「snēk-a-」、インド・ヨーロッパ祖語の「(s)nēg-o-」と同根語であるという見解もある[9]マンフレート・マイルホーファーはこの説に懐疑的であり、サンスクリット語の「nagna (毛の無い、裸の)」が語源であるとした[10]

形態

全長は様々だが、ほとんどが比較的細身の体を持つ。ほとんどの種は全長1.84mに達する。最大種はシンリンコブラで、全長は3.1mに達する[11]頭部は丸く、フードの名前通り、肋骨により頚部皮膚を広げることができる。さらに体の前方を直立させることで、敵に体を大きく見せる[12]。種によっては頸部に模様がある。威嚇時にはシューという音を発する。牙の構造は多様で、いくつかの種は毒液を吐くことが可能である[13]

生態

砂漠から森林まで様々な環境に生息する。天敵としてはマングース科の構成種やラーテル等が挙げられる。前者は素早い動きと体毛、後者は分厚く堅い皮膚と体毛により毒牙による攻撃を避けて捕食する。食性は動物食で、魚類両生類、小型爬虫類、鳥類や卵、小型哺乳類等を食べる。繁殖形態は卵生

毒性

解剖されたシンリンコブラ。牙(A)と毒腺(B)が見える

すべての種が強い毒性を持ち、咬まれれば人間が死亡する可能性もある。ほとんどの種は麻痺を引き起こす神経毒を持つが、腫れや壊死を引き起こす細胞毒の特徴を持つ種も多く、抗凝固作用を引き起こす。一部の種では心臓毒も含まれる。

通常は牙にある深いに毒液が流れて、噛みついた獲物の体に注入し、獲物の神経を麻痺させる。外敵に対しての防御行動として、毒牙の先の孔から毒液を噴射することができる種も多い。毒を噴射できる距離と精度は種によって異なる。毒は傷の無い皮膚にはほとんど影響を及ぼさないが、目に入った場合は激しい灼熱感や一時的または永久的な失明を引き起こす可能性があるため、すぐに洗い流す必要がある。

毒液を噴出する3系統すべてが、ホスホリパーゼA2の上昇を通じて、鎮痛作用を発達させており、これがほとんどのコブラの毒に含まれる細胞毒の鎮痛作用を増強している。アフリカとアジアの種の噴出行動の起源の時期は、アフリカでヒトチンパンジーの系統が分かれ、アジアにホモ・エレクトスが到来した時期と一致している。そのため、二足歩行道具を使用する霊長類の存在が、コブラの毒液を吐く行動の進化を引き起こした可能性がある[14]

カスピコブラは毒性が最も高い。イラン産のカスピコブラの毒をマウス静脈注射した結果、半数致死量は平均して0.14mg/kgと推定された[15]。インドとパキスタンに分布するインドコブラでは0.22mg/kg、タイのタイコブラでは0.2mg/kg、フィリピンコブラでは0.18mg/kgである[16]。カスピコブラの毒を皮下投与した場合、半数致死量は平均して0.2mg/kgであった[17]。カスピコブラの粗毒は、脳室内に注射した場合、最小致死量は0.005mg/kgと、すべてのコブラの中で最も低かった[18]ミズコブラの毒の半数致死量は、静脈内投与で0.17mg/kgと推定された[19][20]。フィリピンコブラの毒は、マウスの静脈内投与で半数致死量0.18 mg/kgである[16]。静脈注射での半数致死量は0.14mg/kgという報告もある[21][22][23]。フィリピン南部の島々に分布するサマールコブラの毒の半数致死量は0.2mg/kgと報告されており[24]、タイコブラと同程度である。インドコブラも0.22mg/kgという高い濃度を示す[16][25]

その他にも、シンリンコブラやミズコブラは毒性が強い。ミズコブラおよびクリスティーミズコブラの毒のマウス腹腔内投与での半数致死量は、それぞれ0.143mg/kg、0.120mg/kgであった[26]。ミズコブラの毒のマウス静脈注射での半数致死量は0.17 mg/kgであった[19]タイワンコブラも猛毒であり、静脈注射での半数致死量は0.3mg/kgとされ[21]、皮下注射での値は0.67mg/kgとされる[27]ケープコブラの毒は、静脈注射での半数致死量が0.35mg/kg、皮下注射での半数致死量は0.4mg/kgであった[21][28]セネガルコブラの毒のマウス静脈注射での半数致死量は0.39mg/kgであった[29]アスプコブラの毒の静脈注射での半数致死量は、平均して0.43mg/kgであった[30]

生息域全体での咬傷件数と死亡件数が多いことから、医学的に重要なヘビのグループである。アフリカ、西南アジア、中央アジア南アジア東アジア東南アジアに分布する。一部の種では咬傷の約30%がドライバイト(毒を注入しない噛みつき)である[31]。ドライバイトの割合が高い種は毒性が高い傾向があり、毒性の弱い種は毒を注入しようとすることが多い。これは同種間でも異なる場合がある。近縁の属とも異なり、例えばマンバ属はほぼ常に毒を注入し、アマガサヘビ属も毒を注入する傾向が強い[32]

多くの要因により、同属であっても種によって咬傷被害者の死因が異なる。咬傷による死亡例は、治療の有無に関わらずかなり多い。治療しなかった場合の死亡率は、タイコブラでは6.5-10%だが[32][33]、カスピコブラでは約80%であり、これは本属の中で最も高い[34]。タイワンコブラの咬傷による死亡率は15-20%、クロクビコブラでは5-10%[35]、ケープコブラでは50%[32]、インドコブラでは20-25%である[36]。医学的な治療を受けた場合、ほとんどの被害者は迅速かつ完全に回復するが、死亡する場合もある。被害者の生死には咬傷の重症度と種が重要である。カスピコブラとフィリピンコブラは非常に毒性が強く、中毒後には顕著な神経毒を引き起こし、命の危険がある。両種とも咬傷からわずか30分で死亡した例がある。フィリピンコブラの毒は純粋な神経毒であり、最小限の組織の損傷と、顕著な神経毒性を引き起こす[37]。中毒後すぐに治療が行われれば、抗毒素療法が優れた効果を発揮する。しかしカスピコブラの毒は複雑であり、顕著な神経毒性に加えて、非常に強力な細胞毒性および心毒性成分が含まれている。激しい痛み、重度の腫れ、痣、水疱、組織壊死を引き起こす。まれに腎障害や心毒性も起こる[38]。カスピコブラの毒に対する抗毒素は、インドコブラなど同地域の他種ほど効果的ではなく、患者には大量の抗毒素が必要になることが多い。イランの研究所では血清の開発が行われている 。抗毒素による治療は一般的に難しく、人工呼吸器気管挿管が必要となる。その結果、治療を受けた患者の死亡率は他の種では1%以下だが、カスピコブラでは最大30%と非常に高い[17]

分類

脚注

関連項目

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