蝙蝠と蛞蝓

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金田一耕助 > 蝙蝠と蛞蝓

蝙蝠と蛞蝓』(こうもりとなめくじ)は、横溝正史の短編推理小説。「金田一耕助シリーズ」の一つ。探偵小説誌『ロック (The Lock)』(筑波書林)1947年昭和22年)9月号に掲載された。

金田一耕助が登場する作品の一つで、角川文庫版で28ページの短編である。舞台は戦後間もない日本の平凡なアパート[注 1]で、蝙蝠とは主人公が金田一耕助につけたあだ名、蛞蝓は主人公が被害者につけていたあだ名である[1]

湯浅順平は隣に引っ越してきた金田一耕助が蝙蝠にそっくりで気に入らない。裏に住む蛞蝓にそっくりのお繁も気になる。ある日ふと思いついて、お繁を殺してその罪を金田一にかぶせてしまうという小説の下書きを書く。しかし、翌日には自分の書いたものがつまらなく思え、そのうちそんなものを書いたことも忘れてしまっていた。ところが半月ほど経って、お繁が本当に殺害され、順平が殺人の嫌疑をかけられる。なぜか寝間着の右袖に血がついており、凶器は順平の部屋から持ち出された短刀、現場で犯人が血の付いた手を洗った金魚鉢に順平の指紋が残っていた。小説の下書きも殺人計画書とみなされてしまう。

連日警察の取り調べを受けていた順平だが、4、5日経つと担当刑事の態度が軟化してきた。ヤミ市か何かで金魚鉢に触れたことは無いかというのだ。どうやら金魚鉢に順平の指紋がついた経緯を調べているらしい。その翌日、取調室に金田一が現れる。金田一は事件の前日に順平が電気の修繕を頼まれてお加代の部屋に入り、真っ暗な中で電気の笠をお加代に持たされた様子を隣で聞いていた。金田一は、その笠が金魚鉢のような形ではなかったかと確認した。お加代はそうやって順平の指紋が現場に残るよう細工したのである。

金田一がそのことに気付いたのは、順平が小説の下書きにお繁が金魚鉢の位置を神経質に調整していることを書いていたからである。金魚鉢はお繁の定位置にはなく、水の量も少なかった。そこで金田一は金魚鉢が2個あって犯人が水を移し替えた可能性に思い当たったのである。

金田一はそもそも、毒を盛られていることに気付いた剣突の依頼でアパートに来ており、お加代が毒を盛った証拠をつかんだところであった。お繁は咽喉を縊られたうえ心臓をえぐられて死んでいたので犯人は2人であり、共犯の居ない順平は犯人ではありえない。お繁の持っている金に目をつけたお加代は、紅吉を巻き込み、順平の小説をヒントにして濡れ衣を着せる相手を順平に変えたのだった。[1]

主な登場人物

金田一耕助(きんだいち こうすけ)
私立探偵。湯浅の隣の部屋へ最近引っ越してきた。
湯浅順平(ゆあさ じゅんぺい)
アパートの住人。戦争前から住んでいる学生。作中の「俺」。
お加代(おかよ)
アパート経営者・剣突剣十郎の姪。湯浅が目をつけているが、山名がさっさと良い仲になってしまったらしい。
山名紅吉(やまな こうきち)
アパートの住人。湯浅の真上の部屋に住んでいる。前の下宿を追い出され、湯浅の口利きで入居した。実家は財産税と農地改革で痛めつけられた没落地主で、学費の工面に悩んでいる学生。
お繁(おしげ)
アパートの裏に住む女。湯浅曰く「蛞蝓女史」。アパートの住人から見えるような場所で遺書のようなものを書いていたかと思うと、手持ちの着物をまとまった金に変えて贅沢な暮らしをしばらく続けたりしている。近頃は金魚と金魚鉢を買ってきて、水替えのたびに物尺で水の深さを測ったりしている。
剣突剣十郎(けんつき けんじゅうろう)
アパートの経営者。お加代の伯父。近ごろ鬼のカクランでしょっちゅう床についている。

収録書籍

  • 東京文芸社『金田一耕助探偵小説選第2期第3 湖泥』(1955年)
  • 東京文芸社『金田一耕助推理全集10 女怪』(1959年)
  • 講談社『新版横溝正史全集6』(1975年)
  • 春陽文庫毒の矢』(ISBN 978-4-394-39519-5)pp.190 - 217
  • 角川文庫 緑304-33 『死神の矢』(ISBN 978-4-04-130433-4)pp.230 - 257
  • 角川文庫 よ5-6 『人面瘡』(金田一耕助ファイル6 ISBN 978-4-04-130497-6)pp.237 - 264
  • 角川文庫 『死神の矢』(ISBN 978-4-04-112354-6
  • 角川文庫『真山仁が語る横溝正史 私のこだわり人物伝』(2010年)(ISBN 978-4-04-394369-2)pp.123 - 156

漫画

JETの作画で『ミステリーDX』(角川書店)1999年8月号に掲載された。JETが漫画化した他の金田一シリーズと共に以下のコミックスに収録されている。

テレビドラマ

脚注

外部リンク

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