霧の山荘
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本作は、『面白倶楽部』1958年(昭和33年)11月号に発表された『霧の別荘』を改稿し、1961年(昭和36年)1月に中編化されたものである。角川文庫『悪魔の降誕祭』(ISBN 4-04-355503-2)に収録されている[注 1]。
本作は死体消失の謎を題材としているが、犯人の真の狙いはその裏に仕組まれたアリバイトリックと、ある人物を罪に陥れることにある(#犯行動機に関する考察を参照)。
あらすじ
1958年(昭和33年)9月[注 2]、K高原のPホテルに滞在していた金田一耕助を、江馬容子という女が訪ねてきた。容子は、「自分の伯母である、元映画スターの紅葉(西田)照子が、30年前に起こった迷宮入り事件の犯人に最近会ったと言いだし、不安がっている。ついては伯母に会い、相談にのってやって欲しい。」と奇妙な依頼を金田一に持ちかける。
この奇妙な依頼に応じ、照子の待つM原にある別荘へ向かった金田一は、途中で道に迷ってしまった。途方に暮れる金田一を迎えに来た派手なアロハ姿の若い男は照子の使いの者と名乗り、金田一を目的の別荘に案内する。しかし、建物には鍵がかかっており、呼び出しにも返事がない。不審に思った金田一がアロハの男とカーテンの隙間から中を窺うと、そこには身につけた浴衣を赤黒い液体で染めた照子が倒れていた。
アロハの男が石につまずき生爪をはがして歩けないと訴えたため、金田一が別荘の管理人を呼びに行き警察にも通報してもらったが、戻ってみるとアロハの男も照子も消えてしまっていた。翌朝、K署の捜査主任・岡田警部補から、照子の死体が発見されたと連絡が入る。一緒に避暑を過ごそうとPホテルに来ていた等々力警部とともに金田一が別荘に急行すると、別荘の裏の潅木林の中に裸にされた照子の死体が横たわっていた。
原型短編からの加筆内容
短編版『霧の別荘』では照子の死体が消えて再度出た謎を金田一が解いただけで、事件直後に軽井沢に来た武彦を警察が怪しむ[注 3]が、実際に彼が犯人なのかどうか不明なまま終わっており、殺人事件としては解決に至っていない[1]。
長編版はこれを約5倍に増量して殺人事件としても解決させている。冒頭部分は細かい加筆はあるものの短編とほぼ同等のストーリーであるが、中盤の死体発見以後は、過去の迷宮事件(短編版には出てこない)の工作や最終的な共犯関係のトリックなど、内容の充実が著しい。さらに短編版では初登場の手代呂木警部補が事件を担当し、それとは別に「前にも一度このK高原で起こった事件の捜査に協力した」との記述があるところを、この事件(『香水心中』)を担当した岡田警部補が本作の事件も担当して連続性を持たせる形に改めている[2]。
また、西田照子の義理の姪・江馬容子は、短編ではそのように名乗る人物が登場するだけで実在せず、正体も明らかにならないのに対して、長編では実在する設定に変更されている。後半では、照子の別荘とよく似た別荘およびアロハの男の死体が原型短編では簡単に発見(手代呂木警部補の命令で部下の警官が調査開始後、次の行で発見の説明がある)されるところを、金田一と等々力が現地警察と別行動の冒険で発見する展開に変更し、さらに照子の行動に関する詳細な検討や、高崎駅での連絡とアリバイ強化のトリック(等々力警部も絡む)が追加されている。
事件になった舞台
登場人物
- 金田一耕助 - 私立探偵。
- 等々力大志 - 警視庁警部。
- 西田照子 - 元映画スター、紅葉照子。
- 江馬容子 - 照子の亡夫・西田稔の妹の子 。雑誌記者。
- 川島房子 - 照子の姉。
- 西田武彦 - 照子の亡夫・西田稔の弟の子。
- 杉山平太 - 「アロハの男」。照子の恩人の息子。
- 岡田警部補 - K署の捜査主任。