ドイツは前大会の2014年FIFAワールドカップの優勝国であり、FIFAランキングは世界1位であった。同チームには様々な国家にルーツを持つ選手や様々な宗教的背景を持つ選手が所属し、多様性ある社会を作る上での模範例とされてきた[17]。欧州予選では全チーム最多の43得点をあげて失点はわずかに4であり、圧巻の10戦全勝を飾った。ドイツは優勝候補の筆頭と目されていた[18]。
しかし、大会前にトルコ系ドイツ人のメスト・エジルとイルカイ・ギュンドアンが、トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンと面会して一緒に写真を撮影していたことが物議を醸した。エルドアンは言論弾圧や人権侵害を続ける独裁者だとして、ドイツを含む欧州で強く批判されていた[19][20]。ドイツの高級新聞ターゲスシュピーゲル紙はエジルとギュンドアンを批判し、アンケート調査では回答者の70%以上が「彼らを代表チームに招集するべきでない」と答えるなど、団結に亀裂が入ったまま大会を迎えた[17]。
本戦グループリーグ初戦のメキシコ戦では、監督のフアン・カルロス・オソリオが半年かけて作り上げた対策に屈して敗戦した[21] が、第二戦のスウェーデン戦では先制されたのち同点に追いつき、後半アディショナルタイム内にトニ・クロースが決勝ゴールを放って勝利した[22]。
この時点でグループリーグ各国は3戦中2戦を終えた。メキシコが2勝0敗で勝ち点6、得失点差+2と暫定首位であり、ドイツとスウェーデンがそれぞれ1勝
1敗で勝ち点3と得失点差0でともに並び、総得点の基準によって暫定的に2位はドイツ、3位はスウェーデンとなっていた。一方、韓国は0勝2敗で勝ち点0と暫定4位であった。
それぞれが残す最終試合の結果により、グループリーグを第2位以内として通過し、決勝トーナメントへ進出できるかどうかが決まる。本リーグは混戦を呈しており、各国ともに、同時刻に行われる別会場での第3国同士の試合結果に依存して条件は複雑に異なった。暫定首位のメキシコも敗北すれば敗退の可能性が残されており、暫定2位と3位のドイツとスウェーデンは確実な進出のためには自国の勝利が必要となった。また最下位の韓国にも自国が勝利しつつ他の試合の結果によっては進出の可能性が残されていた。
決勝トーナメント進出のために各国が達成すべき条件は以下であった。
このような状況下でドイツは第三試合の韓国戦を迎えた。一方、韓国は連敗で勝ち点0のまま前大会王者でFIFAランク世界1位のドイツ戦を迎えることに諦観の雰囲気もあったが、シン・デヨン監督は「1%の希望も捨てず、最後まで逆転のチャンスを作る」と試合に臨んだ[23]。
前半戦では本試合および同刻の別試合(スウェーデン対メキシコ)ともに両者無得点であり、膠着状態のままハーフタイムを迎えた。
しかし、後半戦が始まってすぐに別会場でスウェーデンが得点してリードし、暫定的にスウェーデンとメキシコが勝ち点6で首位・第2位と並んだ。スウェーデンは後半62分、後半74分とさらに得点し、最終的に3−0の大差でメキシコを破ることとなった[24]。
このため、後半74分時点でいまだ無得点のドイツは暫定3位に転落し、残りわずかな時間で韓国へ大量得点しなければグループリーグの通過がきわめて厳しい状況に陥った。得点を求めてボールを支配し(支配率は全体の74%に達し、コーナーキックは韓国の3倍を得た)、26本のシュートを浴びせたものの、後半90分終了時点で無得点であった[25]。
決勝トーナメント進出へわずかな希望を託すアディショナルタイムには、左CKからのこぼれ球を金英權にゴールへ押し込まれた。これは主審のマーク・ガイガーにより一度はオフサイドと判定されてゴールを認められなかったものの、本大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリーによって判定は取り消され、決定的となる失点が認められた[26]。ドイツは勝利どころか0-1とリードされ、いっそう絶望的な状況となった。
さらに、捨て身の反撃に出るためにゴールキーパーのマヌエル・ノイアーまでもが前進して11人全員で攻撃したことが裏目に出て、韓国の高速なカウンターを受けて孫興ミンにゴールを奪われ、絶望的な追加失点を喫した。直後に試合終了が宣告され、ドイツは0-2で敗れた[27]。
この結果により、ドイツは史上初めてグループリーグで敗退することとなった(西ドイツ時代から統一ドイツを通じて初めて)[28]。この波乱には大きな反響があり、元イングランド代表のゲーリー・リネカーは「サッカーはシンプルだ。22人がボールを争い、最後はドイツが勝つ」という自身の有名な格言を「サッカーはシンプルだ。22人がボールを争い、最後はドイツが勝つとは限らない」と改変したジョークをSNS上に投稿した[29]。
大会後、ドイツ国内からの批判に晒されていたエジルは「私は勝てばドイツ人、負ければ移民として扱われた」などと述べ、ドイツサッカー連盟の会長ラインハルト・グリンデルを批判するとともに、人種差別を理由として代表引退を表明した[19][30]。一方でFCバイエルン・ミュンヘン会長のウリ・ヘーネスが「クソみたいなプレーだった」とエジルを酷評するなど、混乱が続いた[31]。
なお、今回の結果で3大会連続で前回大会の優勝国がグループステージ敗退に追い込まれることとなった。