カキバチシャノキ属

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カキバチシャノキ属[1] あるいはイヌジシャ属[2]学名: Cordia)とは、ムラサキ科の1つである。世界の熱帯亜熱帯に広く見られる大きなグループであり[1]The Plant List (2013) では405種と2亜種2変種、Hassler (2018) では亜種や変種を除いて223種が認められている(参照: #種)。

概要 カキバチシャノキ属, 分類(APG IV) ...
カキバチシャノキ属
Cordia myxa L.(左および中央。右はムラサキ科シャゼンムラサキ属Echium rauwolfii Delile (sv) 。)
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : pentapetalae
階級なし : キク上群 superasterids
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: ムラサキ目 Boraginales
: ムラサキ科 Boraginaceae
: カキバチシャノキ属 Cordia
学名
Cordia L.
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学名はドイツの植物学者で薬剤師でもあるヴァレリウス・コルドゥス(Valerius Cordus)への献名としてリンネが命名したものである[3][4]。リンネが1753年の『植物の種』(ラテン語: Species Plantarum)において本属の種として掲載したのは Cordia myxa (en) C. sebestena(和名: アカバナチシャノキ)、C. glabra の3つであるが、このうち C. glabra は後に同じムラサキ科の別属に Bourreria succulenta Jacq. (sv)  として配置され直された[5][6][7](参照: #タイプ種)。

材木や食材、薬、街路樹としての有用性が知られている種がいくつか存在する(参照: #利用)。

特徴

ムラサキ科の他属と比較した際のカキバチシャノキ属の特徴としては、花柱が2度2裂して柱頭が4つとなる点が挙げられる[8]高木もしくは低木であるが、つる性のものもある[9][10]。以下は部位ごとの解説となる。

葉は互生あるいは少数派ではあるが非常にありふれた種において見られるようにほぼ対生となる場合があり、単葉で有柄、しばしば大きく、葉縁全縁から円鋸歯-鋸歯である[10]托葉はない[9]

花は多くの場合白、黄、あるいは橙色で[10] 紅色のものも存在し、ツツジツツジ科)を思わせる[11]両性花雑性花あるいは単性花雌雄異花)で、ほぼ無柄か小花柄があり、頂生腋生で2叉の散房花序円錐花序もしくは集散花序でほぼ球状の房となり、枝にサソリ形花序巻散花序)となるがはない[10]。雄花は4-8本の雄蕊(雄しべ)を持ち、花糸はしばしば基部で毛に覆われており、子房は未発達で花柱はない[10]雌蕊(雌しべ)には不稔葯があるか、あるいは雄花に類似している[10]は筒形もしくは形で、平滑あるいは模様のあるうねがあり、2-5(あるいはそれよりも多い数)裂し、花期を過ぎても散らずに生長する[10]花冠漏斗状もしくは状で、基本的には5裂であるが3-8裂のものや[10]ジリコテC. dodecandra)のように12裂以上するものも存在し、花冠筒部は短い場合もあれば長い場合もあり、円筒状か広がった形をしている[10]。花冠裂片は直立し、広がるか反り返るかしており、花芽に[10] 瓦重ね状または片巻き状に重なる[9]。雄蕊は突き出ている場合もあれば花冠の外に突き出ていない場合もあり、花糸は無毛か基部で軟毛に覆われている[10]。子房は4室で、各室には直立した胚珠が1つずつ存在する[10]。花柱は頂生で2度2裂し、先述の通りこれがムラサキ科におけるカキバチシャノキ属の特異な点であるのだが変則的に2度3裂するものも存在し、4枝の最後の柱頭部分は線形からほぼ葉状か1本の頭状あるいは盾形の柱頭を持つが、まれに4本に分かれた花柱である場合もある[10]

果実は卵形か球状あるいは楕円で、状の萼に包まれており、内果皮は骨質で最大4室であるが、その中で結実能力を持つのは1-2室のみである[10]

種子には内胚乳が存在しない[10]繁殖方法は主に実生である[11]

分類

Cordia africanaムクマリ
C. alliodoraカナレッテ
C. boissieri
C. curassavica (syn. Varronia curassavica)
C. cylindrostachya(syn. Varronia cylindrostachya
C. decandraコルディア・デカンドラ
C. dichotoma(標準和名: カキバチシャノキ)もしくは別種の C. myxa
C. dodecandra(商業名: ジリコテ
C. glabrata
C. goeldianaフレイジョ
C. lutea
C. nodosa
C. parvifolia
C. pilosa
C. sebestena(和名: アカバナチシャノキ
C. sinensisグンドニ
C. subcordata(標準和名: キバナイヌチシャ
C. superbaコルディア・スペルバ
C. trichotomaペテレビイ

The Plant List (2013) で認められている405種と2亜種2変種は以下の通りである。括弧でくくられているものは、Hassler (2018) では独立した種とは見做されていないものである。また、正名とシノニムについても異なる扱いとされている場合があり、たとえばいくつかの種は同じムラサキ科のVarronia属やBourreria属 (en) 、場合によっては全く異なる科に置かれたものが正名とされていることがある。そうした場合の個々の詳細については注釈を参照。なお、Varronia属はカキバチシャノキ属から独立した存在とは認められない傾向があったが、分子形態学花粉学的データからこれをカキバチシャノキ属とは異なる独立の属として認めることが妥当であると結論付けた論文が存在する(Miller & Gottschling (2007)[12]

Hassler (2018) では独立した種とされているものおよびそのシノニムのなかには、The Plant List (2013) における扱いが異なるものがいくつか存在する。以下はその例である。

以下は Hassler (2018) では独立した種とされているが、The Plant List (2013) では未解決状態とされているものである。

また以下は Hassler (2018) などにはあるが、The Plant List (2013) には見られないものである。

  • Cordia fusca M.Stapf (sv) Brittonia 65(2): 191193, 2013 に記載)[38]
  • C. glabrifolia M.Stapf (sv) Brittonia 65(2): 193195, 2013 に記載)[39]
  • C. killipiana J.S.Mill. (sv) [注 171]Brittonia 64(4): 361, 2012 に記載)[40]
  • C. ramanujamii N.Balach. & Rajendiran
  • C. restingae M.Stapf (sv) Brittonia 65(2): 195197, 2013 に記載)[41]
  • C. santacruzensis J.S.Mill. & M.Nee (sv) Brittonia 64: 359, 2012 に記載)[42]
  • C. tarodae M.Stapf (sv) Brittonia 65(2): 197199, 2013 に記載)[43]

タイプ種

リンネが『植物の種』に記載した3種のうち、タイプ種には C. sebestena(和名: アカバナチシャノキアメリカチシャノキ)や C. glabra(Britton & Wilson (1925))が選ばれる傾向があった[10]。しかし、C. glabra については1762年にリンネ自身が『植物の種』第2版、p. 275 において C. collococca (es)  のシノニムとしているが、Johnston (1940:345) はこれは誤記であり、C. glabra の記述と同一の内容が初出の際に記されている Ehretia bourreria L.、つまり Bourreria succulenta Jacq. が本当のシノニムであるとの見解を示している。Verdcourt (1991:4) は、もし属が分割されるようなことがある場合にはレクトタイプ[注 177]としては疑問のある C. glabra ではなく、C. myxa をタイプ種とするのが賢明であろうと述べている。

利用

木材

本属のうちいくつかの種からは木材が得られ、国際的に流通しているものも存在する。

アフリカンコーディア

主に東アフリカ産のムクマリCordia africana、シノニム: C. abyssinica など)や、ウガンダなどに生育する C. millenii西アフリカ産のオモC. platythyrsa)の3種から得られる木材はまとめてアフリカンコーディア: African cordia)として扱われる[44]タンザニアで話されているチャガ語などでムクマリは mringaringa[45]、ウガンダで話されているガンダ語でムクマリ[46][47]C. millenii[48]mukebuナイジェリアC. milleniiC. platythyrsa が omo と呼ばれている[44]

木材の外観は、辺材が乳白色であるのに対し、心材は金色や中褐色など多種多様で、時に濃い色の筋や桃色を帯びている場合があるが、時間が経過するにつれて薄赤褐色となる[44]木理木目)は通直、交錯、不規則なものというように一定せず、肌目は粗である[44]

特性に関しては、気乾比重が0.43前後で乾燥は早いが、密度曲げ強さつまり板材の両端に力を加えた際の割れにくさは低く、剛性つまり木材の弾力性の度合や耐衝撃性つまり急に加えられた衝撃荷重に対する抵抗力も非常に低い[44]。圧縮強さは中庸である[44]。加工すること自体は機械か手道具かを問わず容易であるが、表面が毛羽立つので加工の際には刃先を鋭く研摩しておくことが強く推奨される[44]。心材の外側の耐久性は強いが、内側はそれほどでもなく、保存薬剤による処理は困難である[44]

比較的軽くて柔らかい木材であることもあり、内装縁材調度品、書庫の備品、縁飾りなどの用途に用いられる[44]。ほかにはロータリーカットを行って合板集成材芯材としたり、見た目の美しいものにスライスカットを行って化粧単板としキャビネット羽目板に用いたりもする[44]共鳴性に優れており[44]エリトリアではムクマリが教会のドラム製作に[49]、ウガンダでも C. millenii がドラムなどの楽器製作に用いられている[48]。また西アフリカでは伝統的にカヌーボートに用いられており[44]、東アフリカのウガンダにおいてもやはり手斧で削りやすい、仮に転覆したとしても浮くといった理由から C. millenii がカヌー製作で好まれている[48]

ジリコテ

ジリコテ材

メキシコ南部、グアテマラベリーズなどに分布するジリコテ(ziricote、学名: C. dodecandra)は床材や家具材[50]、さらにはギターなどの楽器材として用いられる[51]

ボコテ

メキシコ産の C. gerascanthus (sv) C. elaeagnoides (sv)  などから得られる材はまとめてボコテ(bocote)あるいは仏壇業界や数珠業界においては黄王檀(きおうたん)、黄金檀と呼ばれる[52]

木材の外観は、色は黄色に黒い筋が入っており、ところどころにタイガーアイに似た丸く小さな模様が見られる[52]。匂いは木工家の河村寿昌によると、挽いている時に松やにのように強いものが感じられるが加工から数日ほどで非常に弱くなる[52]

特性に関しては、気乾比重が0.80で、加工がしやすく耐水性もあるが、サンドペーパーで磨こうとしてもやにでペーパーの目が詰まってしまうため削りにくい[53]

用途としては仏壇数珠、高級ナイフ、高級、輪切りにした花台、楽器のパーツ、内装材が挙げられる[52]

食材

ムクマリCordia africana[49]カキバチシャノキ英語版: 破布子, 樹子仔, 爛布子 など、学名: C. dichotoma Forst.f.[54]ジリコテC. dodecandra[55]果実は食用となる。

薬用

カキバチシャノキ属の植物は地域を問わず民間薬として風邪や胸部の疾患、高血圧などの治療に用いられる傾向がある。例としては以下のようなものが挙げられる。なお、この中には資料によってはVarronia属下に置かれたものを正名とする種も含まれる。

さらに見る 種, 写真 ...
写真 地域(民族) 対象 使用部位 用法 出典 備考
Cordia africana Lam.
ムクマリ
 ケニアニエリ県キクユ人 高血圧、胸部の感染症など 樹皮 煎じ薬 [56] かつては他の植物とともに組み合わせて用いられていた。参照: コルディア・アフリカーナ#薬用
C. bullata var. globosa (Jacq.) Govaerts
(シノニム: C. globosa Jacq.、Varronia globosa Jacq.)
グレナダの旗 グレナダ 風邪、胸部の充血など [57]
ジャマイカの旗 ジャマイカ 風邪、胸の締め付けられる感覚 茶にする [57]
C. cylindrostachya (Ruiz. & Pav.) Roem. & Schult.
(シノニム: Varronia cylindrostachya Ruiz. & Pav.)
キュラソーの旗 キュラソージャマイカの旗 ジャマイカ 風邪、高血圧など [58]
C. dichotoma G.Forst.
(標準和名: カキバチシャノキ英語版
中華民国の旗 中華民国台湾 急性および慢性の気管支炎 果実 4銭(= 15グラム)[注 178]を煎じて服用 [60]
C. dodecandra A.DC.
(商業名: ジリコテ
メキシコの旗 メキシコツォツィル人 果実 食べる [61]
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観賞用

カキバチシャノキ属のうち美しい花をつける種は公園や街中へ植栽される[11]。栽培種となり得るのはチリ原産のコルディア・デカンドラスウェーデン語版Cordia decandra Hook. & Arn.)、熱帯アメリカ原産のアカバナチシャノキ(別名: アメリカチシャノキ、学名: C. sebestena L.)、アフリカ-ポリネシア原産のキバナチシャノキ英語版(学名: C. subcordata Lam.)、ブラジル原産のコルディア・スペルバフランス語版C. superba Cham.)といった種である[62](以上の4種の写真は#種を参照)。栽培の際には湿地を嫌うため砂質土壌など水はけの良い場所を選ぶとよい[11]。多少粘質の土壌であっても生育するが、雨季が長くなると落葉して生気を失ってしまう[11]。一応耐寒性も有するが、日当たりの良い場所に植栽される[11]

脚注

参考文献

関連文献

関連項目

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