コステンスクス

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コステンスクス学名Kostensuchus)は、後期白亜紀マーストリヒチアン期において南アメリカ大陸パタゴニア地域南端に生息していた、ペイロサウルス科に属するワニ形類爬虫類[1]。推定全長約3.5メートル、推定体重約250キログラム[1][2]。現生のワニと比較して陸棲適応が高かったと見られる[1]化石は上部白亜系のチョリロ層英語版から産出しており、共存する鳥脚類曲竜類といった植物食恐竜捕食する頂点捕食者であったと見られている[1]

コステンスクスのホロタイプ標本が発見された産地の地図

コステンスクスの化石は2020年3月上旬にアルゼンチンサンタ・クルス州で初めて発見された[1]。当時はブエノスアイレスに位置するベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館のフェルナンド・ノバスやマルセロ・イサシらが参加する30人程度の調査チームがエル・カラファテの街から南西方向に30キロメートル程度離れた産地でチョリロ層英語版の発掘調査を行っており[3]、当該化石の発見はその日程の1日目の出来事であった[1]。Puma caveと呼ばれる化石産地にて[3]、初日の日暮れごろになってイサシがベージュ色の母岩付近を通りかかり、その際にを伴った黒色の頭骨を発見した[1]。同行していた古生物画家ガブリエル・リオにより、当該の化石はただちにワニに近年な動物として同定された[1]。当該の露頭はチョリロ層の基底から約60メートル上位に位置した[3]

調査当時は新型コロナウイルス感染症の世界的流行が発生しており、2020年3月24日に上記の発掘調査は中断された[1]。回収された化石は母岩である大型のコンクリーションごとブエノスアイレスに輸送されたものの、博物館内での研究作業が許可されず、イサシが自宅に持ち帰ってプレパレーションを行うこととなった[1]。プレパレーションには約半年を要した[1]。コンクリーションの内部には関節した頭骨および一部の体骨格が保存されており、体骨格には頸椎胴椎仙椎を含む軸骨格脊柱に沿って配列する皮骨板頸肋胸肋肩甲骨、左右の上腕骨(左のものが部分的)、腰帯、断片的な後肢を含む[3]

その後当該の化石(MPM-PV 23554)の記載論文はイサシやリオを共著者に含めた形でノバスを筆頭著者として出版された[3]。タイプ種はコステンスクス・アトロックスKostensuchus atrox)と命名された[1]。属名はテウェルチェ語英語版でパタゴニアの風を意味するKostenギリシア語でワニを意味するSouchosラテン語化したSuchusとを組み合わせたものであり、タイプ種の種小名atroxはギリシア語で「厳しい」「残酷な」といった意味を持つ[3]

特徴

コステンスクスは既知の範囲内で最大のペイロサウルス科爬虫類であり、現生のカイマン属アリゲーター属に基づき、生時において全長3.5メートル、体重250キログラムと推定される[3]モンテアルトスクスウベラバスクスロマスクスハマダスクスなど既知のペイロサウルス科ワニ形類は推定体重が12 - 63キログラムに収まっており、コステンスクスの体サイズは同科において傑出している[3]。ただし、現生のワニとペイロサウルス科との間で体の比率が異なる可能性は否めない[1]

頭骨

ホロタイプ標本MPM-PV 23554の頭骨。左は右外側・背側・腹側、右は前側・後側から撮影・図示されている。

頭骨長は49センチメートルに達する[1]ハマダスクスロマスクスといった他のペイロサウルス科ワニ形類と比較して相対的に長いわけでなく、むしろ左右方向と背腹方向に発達しており、特に異なる陸棲ワニ形類であるバウルスクス科と比較しても左右方向に広い[3]。また頭骨長の50%強は吻部が占める[3]。顎には最大で5センチメートル程度に達する鋭利な歯が配列しており[1]、これらの歯は鋸歯が縁に存在した[3]。歯の形態や大きさのパターンはバウルスクス科と類似するが、左右の上顎骨にそれぞれ10本を超過する歯が生えている点は、5本の上顎骨歯しか持たないバウルスクス科との顕著な差異である[3]

左右の前上顎骨の鼻骨突起から構成される細長い部分(internarial bar)は完全に骨化している[3]固有派生形質としては、涙骨の外側面に僅かな装飾が存在し、また前眼窩窓眼窩との間が僅かに窪んでいることが挙げられる[3]

前眼窩部の拡大写真。装飾を伴う涙骨のバルジ(lab)と窪み(lad)を確認できる。

頬骨は円形をなす前眼窩窓の腹側縁に達する[3]。上側頭窓は台形をなし、頭蓋天井英語版の左右幅の約70%を占める[3]頭頂骨は後側から見て背側面が平坦であり、鱗状骨は後外側突起の背側面には明瞭な段差が存在する[3]口蓋骨は前縁が広く、そのため上顎骨との縫合線が横方向に拡大している[3]。基蝶形骨の腹側面には1対の傍矢状稜が走る[3]

上角骨は背側縁が凸状であり、頭骨と下顎との関節は歯骨の歯列よりも高い位置に配置する[3]。顎は下顎内転筋が格納されるadductor chamberが深く拡大し、また下顎枝も発達している[3]。adductor chamberと下顎枝の形質状態はコステンスクスが強い咬合力を有していたことを示唆する[1][2]

体骨格

現生のワニが横這いに近い姿勢を取るのに対し、コステンスクスの四肢は直立姿勢に近かったと見られる[1]上腕骨肩甲下筋の停止部位が内結節の上に垂直方向に位置し、三角胸筋稜の遠位端が内側に湾曲して上腕骨体の内外側方向の幅を半分以上超える[3]。また、上腕骨の遠位端は前面が上腕骨体から明瞭な段差によって隔てられており、棚状の構造を呈する[3]。前肢は頑強であり、強力な顎に加え、前肢による大型の獲物の制圧も可能であったと推測されている[2]

バウルスクス科において腸骨寛骨臼が深く、また、水平方向への張り出しが存在するために寛骨臼が腹側に向く[3]。これに対してコステンスクスの寛骨臼は浅く、また張り出しの下部は直下でなく外腹側に向く[3]。寛骨臼に関節する大腿骨が産出しなければ具体的な検証が難しいものの、この骨盤の形状から、コステンスクスの後肢はバウルスクス科ほど直立の度合いが高くなかった可能性がある[3]

分類と系統

古環境

出典

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