シモバシラ
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| 分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||
| Collinsonia japonica (Miq.) Harley[1][2] | ||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||
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| 和名 | ||||||||||||||||||||||||
| シモバシラ | ||||||||||||||||||||||||
| 品種 | ||||||||||||||||||||||||
→詳細は「§ ウスベニシモバシラ」を参照 |
シモバシラ(霜柱、学名:Collinsonia japonica (Miq.) Harley[1][2])は、シソ科に分類される多年草の1種[6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]。
オランダの植物学者フリードリッヒ・アントン・ヴィルヘルム・ミクェルは、本草学者でもある伊藤圭介が愛知県犬山市尾張本宮山[16]で採集した本種の標本を新属(シモバシラ属)新種(シモバシラ)のKeiskea japonica Miq.[3]として命名した[17]。この属名(Keiskea)は、この伊藤圭介にちなむ[13]。種小名(japonica)は、日本のを意味する[13]。米倉浩司・梶田忠 (2003-)によるBG Plants 和名−学名インデックス(YList)では、Collinsonia japonica (Miq.) Harley[1]がシノニムとされているが[2]、ここではGBIFによるこの学名と属名(Collinsonia)を採用する[1]。和名は冬の朝に枯れ始めた茎が毛管現象で地中の水分を吸い上げ、茎に霜柱のような氷の結晶ができること由来する[6][7][8][9][13]。別名は、ユキヨセソウ(雪寄草)[7][10][12][13][15]。アキチョウジに似る[18]。
茎は四角く[7][9]、ややかたく、高さ40-90 cmで、上部は枝分かれする[8]。茎の下方は根茎とともに木質でかたい[12]。葉は対生し、長楕円形で[9]、長さ8-20 cm、幅3-5.5 cm、鋸歯があり[8]、柔らかく、表面の脈上に細毛があり裏面に腺点がある[7]。両端はとがって[9]、葉柄は長さ5-30 mm[10]。苞葉は広線形で[10]、長さ約2 mm[11]。
- 茎は水平方向に曲がって伸び、花序が立ち上がる
- 葉は対生し長楕円形、鋸歯がある
枝の上部の葉腋から、片方だけに花をつけた[注釈 1][14]長さ5-12 cm[8]の総状花序をだし[7]、白色で唇形花をたくさんつける[6]。花序の中央部がまず咲く[19]。上唇は浅く2裂し、下唇は3裂する[8]。花冠は長さ約7 mm[7][8][9]。花柄は短い[8]。雄蕊は4個[8]、花冠から突き出して、下側の2個が少し長い[9]。先が2つに分かれた雌蕊は花冠から飛び出す[8]。萼は5裂し、裂片は狭い三角形で先はとがり[12]、花時に長さ3 mm、果時に5-6 mmになり[9]、著しく5裂する[8]。花期は9-10月[6][8][15]。果実は分果で1個のみが熟し、球形で直径1.5-2 mm、表面は滑らかで褐色、網目模様がある[9]。
- 総状花序で、花穂の片側に花が密生する
- 分果は球形
倉敷などにおけるシモバシラの生活史の観察例を以下に示す[20]。
- 4月 - 根茎より萌芽
- 7月頃 - 茎葉が繁殖状態になる
- 秋 - 開花し、結実
- 11月下旬 - 落葉し、1株に数本-数十本の茎(地上部ににおいて茎径5-7 mm)が残る
- 茎に霜柱がその冬初めて作られるときまで - 髄と接する木質部が変質し褐色化する[21]
- 12月初旬 - 気温が氷点下になってもすぐに着氷現象は見られず最初の霜柱が作られると茎全体が数時間のうちに収縮し、色も緑から褐色へと急変する[21]、数回の氷結で茎皮が破れて、茎の内部の木質部が現れて氷着しやすくなる
- 12月中旬 - 放射冷却が著しく気温が氷点下となった快晴の夜間に茎の周囲に羽毛状の氷薄片が付着する[注釈 2]
- 12月下旬-1月初旬 - 著しく着氷し、長期間何度も着氷する[21]
- 1月中旬以降 - 最低気温が-6 ℃以下になり茎が凍死し、着氷がほとんどみられなくなった
分布と生育環境
日本固有種、本州(関東地方以西)、四国、九州の暖帯[11]に分布する[6][7][8][9][13][22]。太平洋側に多く、日本海側では鳥取県岩美郡岩美町などに稀に分布している[23]。福井県越前市が北限[24][25]。田中澄江による『新・花の百名山』で、山梨県の権現山を代表する花として紹介されている[26]。
以下で本種の標本が採集されている[27]。
- 福井県旧武生市[注釈 3]日野山[25]
- 山梨県南巨摩郡旧身延村[注釈 4]身延山、西八代郡旧下部町[注釈 5]、北都留郡旧笹子村[注釈 6]清八峠、旧富浜村[注釈 7]扇山、南都留郡旧秋山村[注釈 8]、西桂町三ツ峠山、旧河口湖町[注釈 9]、西八代郡旧上九一色村精進[注釈 10]
- 東京都八王子市高尾山、旧南多摩郡浅川町[注釈 11]高尾山、小佛峠、西多摩郡旧五日市町[注釈 12]刈寄山など、港区国立科学博物館附属自然教育園
- 神奈川県旧津久井郡藤野町[注釈 13]、愛甲郡愛川町仏果山、旧津久井郡与瀬町[注釈 14]、旧湘南村[注釈 15]
- 静岡県富士宮市、旧富士郡芝川町[注釈 16]、静岡市竜爪山など、旧安倍郡美和村[注釈 17]竜爪山、旧庵原郡由比町[注釈 18]浜石岳、旧磐田郡龍山村[注釈 19]、賀茂郡・田方郡旧中伊豆町[注釈 20]、賀茂郡東伊豆町、旧城東村[注釈 21]、周智郡旧春野町[注釈 22]秋葉山

- 岐阜県揖斐郡旧久瀬村[注釈 23]、岐阜市
- 和歌山県旧牟婁郡秋津川村[注釈 24]、旧上秋津村[注釈 25]、西牟婁郡旧和深村[注釈 26]、東牟婁郡那智勝浦町
- 香川県三豊郡旧財田町[注釈 27]、観音寺市
- 愛媛県宇和島市
- 徳島県三好郡旧西祖谷山村[注釈 28]
- 高知県高岡郡越知町横倉山、旧葉山村[注釈 29]、幡多郡旧西土佐村[注釈 30]、旧大正町[注釈 31]
- 熊本県球磨郡球磨村、旧四浦村[注釈 32]仰烏帽子山
- 宮崎県旧宮崎郡田野町[注釈 33]鰐塚山
- 鹿児島県曽於郡旧志布志町[注釈 34]
シイ・カシ帯からブナ帯[22]の山地の木陰や山道沿い[12]などに生育する[7][8][9]。特に渓流周辺に群落を作ることもある。
シモバシラの霜柱

シモバシラにできる霜柱は、江戸時代の書物『草木図説』(飯沼慾斎著)にも記載されていて、アキチョウジの仲間(Isodon ssp.)とともに霜柱を作ることが知られていて[28]、古くから人々の目をひいてきた[29]。
此種並ニアキ丁子の類ハ冬枯茎裂開シテソノ中ニ氷柱ヲ結ブ故ニシモバシラノ名アリ — 『草木図説』(飯沼慾斎)
丸く渦を巻いたものや、高く三角定規のようなど色々なものがあり、造形の美しさから「氷の花(華)」や「氷のリボン」と呼ばれることも多い[29]。この現象を観察するためによく知られたシモバシラの産地である東京都八王子市高尾山などには多くの人が訪れている[30]。気温が氷点下でない場合、雨や雪が降っている日や風が強い日には氷の花は見られない[31]。
ウィキメディア・コモンズには、シモバシラの霜柱に関するカテゴリがあります。
氷の花が咲くメカニズム

シモバシラが生えていたところには、冬になると霜華ができる。冬に外気が氷点下になり地上部が枯れても、地中はまだ暖かく根は生きている[32]。水を吸い上げる力の強い個体は水を吸い上げ、冬季に二次的にできた枯れた茎の中の数本の道管(最大の太さ0.5 mm)[21]を上がってきた水は茎の途中などからしみだし、はじめは氷柱になる[33]。これが外気にふれて凍り始める[32]。師部、皮層および表皮は氷晶形成時に維管束形成層を境目として茎から離脱する[34]。茎がどんどん破れてひろがるとともに、水が導管を通って上昇した後に周囲に移動して木質部表面に達した時、凍結した氷が成長し[34]、地きわで横にひろがって霜柱のような氷の花もしだいに大きくなる[33]。木質部における水移動の痕跡は不規則で、水移動が生物の生理的理由ではなく物理的理由で起こると見られている[34]。氷晶析出後の木質部表面にはピットと呼ばれる細孔(平均短径0.3 μm)があり、この細孔が氷の侵入を阻止し、過冷却状態にある氷表面で大きな吸引力を発生することで、導管を通水経路として水が供給され、連続的な氷晶析出を起こすと考えられている[34]。霜柱は木質部の表面に発生し、木質部の割れた部分や木質部の髄と接していた部分には発生しない[21]。最後は導管も破れてしまい、地中も凍って水を上げることができなくなり、氷の花は見られなくなってしまう[32]。
霜柱をつくる他の植物
シモバシラがこのような特異な現象を起こす原因として、他の植物と比べて、その維管束の外部への開口部が大きいまたは多数存在すること、草本植物として落葉しても、茎の組織の木化が著しく耐寒性が優れて枯れにくいこと、茎の熱容量が大きく茎内での凍結が起こりにくいことなどが原因と考えられている[35]。本種以外にも、霜柱をつくる植物がある[32]。シソ科の種(アキチョウジ[12]、カメバヒキオコシ、ミカエリソウ[36]、サルビアなど)が多いが、キク科の種(シロヨメナ、カシワバハグマ、アズマヤマアザミ、ヤナギバヒマワリ[12]など)、クマツヅラ科ランタナなどにも霜柱をつくるものがある[32][37][38]。タデ科ミズヒキ、ヒユ科イノコヅチ、キク科モミジガサ、サクラソウ科オカトラノオなどでも霜柱が見られている[39]。
ウスベニシモバシラ
シモバシラ属
本属は、Collinsonia L.のシノニムとして扱われることがある[1]。
シモバシラ属(霜柱属、学名:Keiskea Miq.[41])は、シソ科に分類される1属[8][9]。葉は対生し、香りはない[8]。葉腋から花を一方にかたよった総状花序をだすが[8]、仮輪には花が2個ずつついている[9]。苞は小さく果時まで残る[9]。萼は鐘形で5中裂、喉部の内部に毛がある[9]。花冠は筒状の鐘形で、筒部の上部が膨らみ、やや唇形になる[9]。上唇は2裂し、下唇は3裂する[9]。雄蕊は4個で花外につきだし[8]、花糸に毛はない[9]。分果は球形で滑らか[9]。東アジアの固有種で6種あり、日本にはシモバシラ1種のみが生育する[8]。タイワンシモバシラ(台湾霜柱、学名:Keiskea macrobracteata Masam.)などが知られている[42]。
種の保全状況評価
環境省による第5次レッドリストで指定を受けていないが[43]、都道府県レベルでは以下の指定を受けている[44]。稀少種(地域的に特に個体数が少ない植物)であることから環境省による自然公園法で秩父多摩甲斐国立公園、南アルプス国立公園、明治の森高尾国定公園、丹沢大山国定公園などで指定植物の一つに選定されている[22][45]。森林伐採や道路工事等による生育環境の悪化や消失[24]、人工林内の林床の遷移による環境変化、園芸上の採取[46]などが生育を脅かす要因とされている。東京都近郊の高尾山の高尾山ケーブルカーの清滝駅付近の登山口でシモバシラが見られていたが、ハイカーやカメラマンの踏みつけなどでみられなくなった[29]。高尾ビジターセンターでは、冬になる前にシモバシラの他の観察コースや登山道脇にロープを張る対策を行っている[29]。