兄弟姉妹間の虐待
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(きょうだいしまいかんのぎゃくたい)は、兄弟姉妹による虐待(いじめ、身体的虐待、心理的虐待、性的虐待)である。
主に「兄」「弟」「姉」「妹」からの虐待を指す。「(再婚した)継母・継父(養家)の連れ子からの虐待」や「半血兄弟姉妹間の虐待」、「いとこからの虐待」は有名だが、全血の兄弟姉妹からの虐待も多いと言われる。
兄弟姉妹間の虐待は兄弟姉妹関係の一種とみなされており[1]、歴史的には長らくその兄弟姉妹関係の一種として兄弟姉妹に対するライバル意識については注目されてきた経緯があるが[2]、このような兄弟姉妹へのライバル意識がどういう場合に虐待になるのかというとなかなか線引きが難しい部分もある[3]。
アメリカ合衆国では、児童福祉サービスで兄弟姉妹間における虐待を扱ってはいるものの、国として統一された定義が示されているわけではないので、州によっては現場でこれは虐待だと児童福祉士が判断している場合もあり、対応が難しい状況となっている[4]。児童保護機関における兄弟姉妹間における性的虐待の記録についても、統一性がないことから信頼性の高いものではないという[5]。
日本では児童虐待防止法で定義される児童虐待は保護者によるものと限定されているため、こども家庭庁の統計としては表向き発表されていないのだが、実際には兄弟姉妹間の性暴力は親によるネグレクトや兄の非行行為として対応が行われている[6]。そのため、兄弟姉妹間で性的虐待が起こった日本の家庭について実際には児童相談所は把握していて、そこから日本子ども虐待防止学会で発表された報告によれば、色々と問題がある家庭も少なくないが、ほとんどの事例に共通しているのは性的な境界線がはっきりしないという点だという[7]。
この問題に携わる臨床における支援者らは、兄弟姉妹間の性的虐待は纏綿家族で起こるなどといったように一般化した話をする場合がある[8]。実際にはそこまで単純ではないのだが、臨床経験や被害者の主観的報告から兄弟姉妹間での暴力あるいは性的虐待が起こる家庭には、それぞれある一定の特徴があるらしいということで、そのような特徴が危険因子の一つとして認められる可能性はある[9]。
研究
かつては兄弟姉妹間の虐待に関しては児童虐待の研究者の間ですら関心度が低く、ジョン・V・カファロによれば、1998年時点ではこの問題を取り扱った文献は過去30年間における児童虐待についての研究文献のうち11%を占めるに過ぎず、兄弟姉妹間の性的虐待となるとさらに珍しい状況であった[10]。ただ、その後は兄弟姉妹間の虐待に関する研究は多く発表されている[10]。
兄弟姉妹間の虐待の影響として全世界で文化的差異を超えて普遍的に言えるとされるのが、兄弟姉妹間で虐待を受けた人は対人関係において生涯において虐待的な環境下に置かれやすいという現象である[11]。Renae D. Duncan (1999) は、アメリカ合衆国における家庭内と家庭外のいじめを研究したが、家庭外でいじめを受けている子供は、兄弟姉妹間でも暴力を受けている場合が少なくないことを発見した[12]。Dieter Wolke and Muthanna M. Samara (2004) はイスラエルにおける調査で、兄弟姉妹間の虐待の被害者は学校でもいじめを受けやすいことを見出した[13]。劉奕蘭と趙小玲 (2005) は、台湾における家庭内暴力全般について調査を行ったが、兄弟姉妹間の身体的暴力の加害者の子供は非行に走りやすく、被害者の子供は不安を訴えやすいことを見出した[14]。この台湾の研究は家庭内暴力という区分で行われたもので、子ども虐待という区分で行ったわけではないことには注意が必要である[15]。Ersilia Menesini, Marina Camodeca and Annalaura Nocentini (2010) はイタリアでの調査で、兄弟姉妹間での虐待と学校でのいじめには関連性がみられることが判明したとし、家庭における行動が学校における家庭外の子供に対する行動の基盤になっているのではないかと主張した[16]。あくまで仮説ではあるものの、ジョン・V・カファロは兄弟姉妹間の非対称的な関係が、兄弟姉妹以外の対人関係全般においても非対称的な関係を構築する結果をもたらしているのではないかと推測する[15]。
被害者への治療方法
兄弟姉妹間の虐待の被害者に心理療法を行う場合に重要とされる問題の一つが、アタッチメント(愛着)の問題である[17]。愛着理論に基づいた治療を行う場合、兄弟姉妹間における虐待によってもたらされた認識が対人関係上の問題として機能している可能性があるということで、そのような典型化された認識から離れてよりよい対人関係を取ることができるようセラピーで促すことになる[18]。
情勢
- コニー・ジャクソンは年上のいとこからの虐待を受けたことが過食の原因になっていた。
- 連続ピストル射殺事件の犯人・永山則夫はネグレクトに加え兄や姉たちから虐待を受けていた犠牲者でもあることが明かされている。
- 伊勢崎市同居女性餓死事件を取り上げた週刊誌で、事件の加害者が少年時代の頃、姉に様々な虐待を加えていたと報道され話題となった。