天幕のジャードゥーガル
トマトスープによる漫画
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あらすじ
13世紀、イラン東部の街トゥース。奴隷の少女シタラは奴隷商人のはからいで学者の未亡人ファーティマの家に引き取られ、ファーティマやその息子ムハンマドから学問の大切さを教わる。その後ムハンマドはさらなる学びを求め、ニーシャプールへと旅立つ。
8年後、トゥースにトルイ率いるモンゴルの軍勢が襲来する。シタラとファーティマは家の地下に隠れていたが、トルイとその家来に見つかり、ファーティマが大切にしていた『エウクレイデスの原論』の写本を奪われる。写本を取り返そうとしたシタラは兵士に斬りかかられ、庇ったファーティマが命を落とす。シタラは捕虜として他の市民とともにモンゴルに送られるが、その途上、奴隷仲間と死別し、さらにニーシャプールも襲撃されたことを知り絶望する。通訳の少年シラの勧めで、シタラはファーティマと名を変え、トルイの妃ソルコクタニの侍女となるが、侵略された側の境遇や心情に無頓着な彼女に、モンゴルへの復讐心をますます強める。
1229年、チンギス・カン亡きあと、遺言により三男のオゴタイが皇帝に即位する。しかしチンギス・カンの財産や軍事力は末子のトルイが継承したため、王族内で権力のねじれが生じていた。ファーティマはソルコクタニから次男チャガタイを探るよう命じられるが失敗し、オゴタイの妃ドレゲネの前に引き出される。ドレゲネはかつてモンゴルと敵対していたメルキト族長の妻で、夫や一族をモンゴルに討たれた過去があった。互いの境遇を知った二人は結託し、モンゴル帝国への復讐のために動き出す。
登場人物
声の項はテレビアニメ版の声優。
トゥース市の人々
- シタラ/ファーティマ
- 声 - 関根明良[4]
- 主人公で奴隷の少女。シタラは星の意。母を亡くしたため前の主人に売られてしまい、ファーティマの家に引き取られる。当初は逃げ出そうとしていたが、ムハンマドから勉強の意味を教えられて感銘を受け、ファーティマの家で8年を過ごす。このままずっとその生活が続くと思っていたが、モンゴルの襲来によってファーティマを失い、他の奴隷たちとともに捕虜としてモンゴルに送られる。
- 家の財産であり、トルイに奪われた書物「原論」を取り戻すため、トルイの妃であるソルコクタニ・ベキに仕えるが、彼女の無邪気さや無頓着さに腹を立て、モンゴルへの復讐を決意する。「王族に取り入るためには、出自が良い方が望ましい」というシラからの提案で、以後は主人の名であるファーティマを名乗る。
- 新帝即位後、ソルコクタニの命令で密偵としてチャガタイのもとに潜入しようとするが、持っていたジャダ石を盗んだものと勘違いされ、ドレゲネの元に連行される。そのことをきっかけとしてドレゲネの侍女となり、モンゴル帝国への復讐を画策する。
- ファーティマ
- 声 - 桑島法子[4]
- シタラの主人で、ムハンマドの母。学者の一族の出。知識を求めることはイスラム教徒の努めという考えを持ち、奴隷商からの依頼もあって、奴隷であるシタラにも教育を行う。また、亡き夫が残した写本を大切に保管している。
- 奴隷とはいえシタラを娘のように愛しており、最期はシタラを庇ってモンゴル兵の凶刃に倒れる。
- ムハンマド
- 声 - 齋藤潤[4]
- ファーティマの息子。シタラが買われた家の跡継ぎ。頭が良く、保守的な神学の講義だけでは飽き足らず、より学問を深めるためにニーシャープールへと旅立った。シタラと手紙のやり取りをしていたが、ニーシャープールもモンゴルに侵略されたため、その後の消息は不明。
- 第1話のラストでもシタラと再会することはないと明言されている。ただし、同話で「のちに高名な学者となる」という説明が添えられ単行本の登場人物紹介でも生存扱いになっており、読者には生き残っていることが示唆されている。
- ファーティマの兄
- 声 - 最上嗣生
- シタラの主人。私塾の教師であり、シタラにクルアーンの読誦を教える。モンゴルの襲来時に他の奴隷たちとともに避難するも捕まり、奴隷たちと引き離されたまま故人となる。
- ズムッルド
- 声 - ニケライ・ファラナーゼ
- ファーティマに長年仕える奴隷。西の国の出身。捕虜としてモンゴルに送られる途中、弟のミハイルがモンゴル兵に処刑される姿を目の当たりにしてしまう。その後、病に倒れ回復しないまま息を引き取る。
- アニース
- 声 - 伊瀬茉莉也
- ファーティマに仕える奴隷。シタラと同時に買われ、奴隷としての考え方を彼女に教える。掃除や整理・整頓がとても上手い。捕虜となってもムハンマドが生きていることに希望を見出していたが、ニーシャプールが襲撃されたことを知った翌朝、モンゴル兵に掴みかかって斬り捨てられる。
モンゴル帝国
- ドレゲネ
- 声 - 小清水亜美[4]
- オゴタイの第六妃。元はナイマン族の娘で、メルキトのウハズ氏族の長ダイル・ウスンの妻であった。
- ダイル・ウスンとは大きな年の差があったが、娘のクランの手助けもあり、徐々に打ち解けていく。
- メルキトを侵略し、夫を討ったオゴタイひいてはモンゴル帝国を強く憎んでおり、同輩である他の妃たちとの関係もあまり良くなく孤立している。オゴタイとの関係は冷え切っているが、息子であるグユクのことは「グユクちゃん」と呼ぶなど溺愛している。
- ジャダ石をきっかけにシタラと出会い、互いの境遇を知るうちに結託し、共にモンゴル帝国へ復讐することとなる。
- トルイ亡き後、第六妃から第二妃へ昇格する。
- オゴタイ
- 声 - 下野紘[4]
- チンギス・カンの三男。チンギスの崩御後、その遺言に従い皇帝の座につく。また古の君主号であるカアンを復活させた。
- 商業の発達や通商路の安全確保、商工業の拠点となる都市の建設など、それまでモンゴル人があまり重視してこなかった政策を進めていくが、モンゴルの伝統に囚われないその発想は、あまり周囲の理解を得られていない。柔和で鷹揚な性格の持ち主であり、周囲から尊敬を集めるが、時折人知の及ばぬ事柄まで見通しているかのような発言をするなど、底知れないところがある。
- グユク
- オゴタイとドレゲネの息子。情緒が不安定であり、初対面の人物に対して異様な警戒心を示す。
- ボラクチン
- オゴタイの第一妃。元はチンギス・カンの妃だったが、レヴィレート婚によってオゴタイが相続した。オゴタイが帝位についてからは、大カトゥンと呼ばれている。
- オゴタイよりもかなり年上であり、また実家も特に血筋が良いわけでもないので、周囲はなぜボラクチンがオゴタイの正妃となったのか訝しんでいるが、冴えない容姿と控えめな態度からは窺えない聡明さと智謀を持った人物。オゴタイとは夫婦というよりも、通商の発展によってモンゴルを栄えさせるというビジョンを共有する、政治的同志のような関係である。
- オゴタイが大カアンとなった後も、トルイ家に大部分の兵力と発言力が掌握されたままの現状を危惧し、趣味で集めていた鉱石から密かに砒素を採集、謀略を巡らせてトルイを毒殺するが、その過程で仲間に取り込んだドレゲネとファーティマの存在に、次第に危機感を募らせるようになる。
- キルギスタニ
- 声 - 新谷真弓[5]
- オゴタイの第三妃。
- 史実のキルギスタニは、ボラクチンやモゲと同様に元はチンギス・カンの妃であり、レヴィレート婚によってオゴタイが相続したが、本作では最初からオゴタイの妃という設定[6]。コデンの母親だが、子供のように小柄な見た目で、息子に軽々と小脇に抱えられてしまうほど。
- モゲ
- 声 - 朝井彩加[5]
- オゴタイの第四妃。ボラクチンの病気を治すため、シタラと引き合わせる。
- ボラクチンと同じく、元はチンギス・カンの妃であり、レヴィレート婚によってオゴタイが相続した。そのため、ボラクチンとは仲が良い。快活で裏表のない明るい性格の女性で、シタラとも打ち解けた。
- トルイ
- 声 - 鈴木崚汰[4]、雨果(モンゴル語)
- チンギス・カンの末子。モンゴルの将軍としてトゥースを始めとして中東の諸都市を制圧した。武勇に優れるも知識にはあまり興味がなく、ファーティマの家から原論を奪ったのも、妃であるソルコクタニが望んだからである。
- モンゴルの末子相続の慣習により、チンギス・カンの全てを受け継ぐ者(炉の主)とされている。チンギス・カンの崩御後は、帝国の軍事力や財産の大部分を継承し、約2年間は監国として国政を代行する。1229年、父の遺言に従って帝位を兄オゴタイに譲るが、依然として総会議では強い発言力を持ち、第二次金朝遠征を推し進める。
- オゴタイとは仲が良いが、ボラクチンなどの周囲はトルイ家が皇帝を上回る武力を持っていることを警戒している。
- その後、金国との戦いで戦功をあげるも、病に倒れたオゴタイの身代わりとなるために、ボラクチンが仕込んだ「悪霊を封じた水」を飲み、死去する。
- ソルコクタニ・ベキ
- 声 - 久野美咲[5]
- トルイの正妃。ケレイトの出であり、ネストリウス派キリスト教の信者。
- 知識に強い興味があり、西方の知識をモンゴルに取り入れ、後の世代に伝えていくことを望んでいる。トルイに頼んで「原論」の写本を入手し、指南役としてファーティマ(シタラ)を側に置く。悪人ではないが、育ちの良さと恵まれた地位から他者の犠牲に対し無頓着なところがあり、ファーティマに強く恨まれるが気づいていない。
- 新帝即位後、チャガタイやオゴタイの動きを警戒してファーティマを自身の密偵に任ずる。夫のトルイが急死したことで一時期全ての意欲を失い、オゴタイ家とボラクチンの傘下に入ることを受け入れそうになるが、ファーティマに叱咤されてまだ幼い息子たちを守る責務を思い出し、トルイ家の独立を守る決断をする。
- クビライ
- 声 - 石橋陽彩
- トルイの次男。
- フレグ
- 声 - 村瀬歩
- トルイの三男。
- ジュチ
- 声 - 野島健児[4]
- チンギス・カンの長男。オゴデイとは仲が良いが、チャガタイとは不仲。シタラがモンゴルに連れて来られてからの8年の間に死去しており、遺族たちはテムゲの庇護下にある様子。
- チャガタイ
- 声 - 浪川大輔[4]
- チンギス・カンの次男。長男のジュチとは険悪だが、オゴタイとトルイとは仲が良い。
- 一本気で厳格な性格で、しばしば他者に対してきつい物言いをするが、それは「多民族国家になっていくモンゴルで弱者や女性が守られるには、法を守ることを徹底させねばならない」という考えから来ており、オゴデイからはその姿勢を「優しい」と評された。
- テムゲ
- チンギス・カンの弟。
- チンギス・カン
- 声 - 玉鷲一朗
- モンゴル帝国初代皇帝。1227年にオゴタイを次期皇帝に指名し崩御する。遠征の最中であったためその死はしばらく伏せられた。
- 作中ではイメージも含めて後ろ姿のみの描写となっており顔は一切描かれていない。
家臣たち
- シラ
- 声 - 入野自由[4]
- サマルカンド出身の少年。モンゴルに捕らえられ徴発兵にされるが、前線行きを免れるためにモンゴル語を必死で覚え、進んで通訳の任務を引き受ける。モンゴル王族に取り入って出世するため、「原論」の指南役としてシタラを推薦する。
- カダク
- ドレゲネとグユクの側近。シタラを泥棒と間違え、ドレゲネの元に連行する。シタラがドレゲネの側近となったことで以後は同僚のような立場になるが、未だシタラを警戒し監視している。グユクの養育係であり、彼が気を許す数少ない人物。
- チンカイ
- 声 - 上田燿司
- ウイグル人。書記官を努めている。シタラに対してモンゴルに必要な賢者と評価する。
- モンゴル族の多くが、文字を軽視して学ばないため、帝国の大きさに比べて書記官が少ないことを嘆いている。
- イルケ
- オゴタイに仕える将軍。
- イルチダイ
- イルケの息子。オゴタイのケシク(皇帝の世話や護衛を担当する当直係)に任じられる。
- アルグン
- オイラト族の出身の奴隷で、イルケの従者。奴隷の身分であるが、イルチダイとは兄弟のように扱われて育つ。
- 真面目で忠実だが、自己が希薄。
- イルケに命を受け、イルチダイとともにオゴタイのケシクになる。
- ヒタイ語を理解し、モンゴル族の多くが軽視する文字の知識も習得しており、チンカイからは重宝されている。
- コルグズ
- ペルシアに駐在するチン・テムル将軍の書記官。難しい言い回しを多用する癖がある。ペルシアに総督府を作るようオゴタイに嘆願する。
メルキト族
- ダイル・ウスン
- ドレゲネの最初の夫でウハズ氏族の長。ドレゲネとは親子以上に歳が離れている。ナイマン族と同盟を組むなどモンゴルへ対抗するべく力を尽くしてきたが、巫術で一族の未来を予知し、クランをチンギス・カンに捧げ、一族の女たちもモンゴルに引き取ってもらい降伏するが、その後反乱を起こしてオゴタイに討たれる。
- クラン
- ダイルの娘。人懐っこく、嫁いできたばかりで塞いでいたドレゲネともすぐに打ち解ける。一族を守るためチンギス・カンの妻となる。
- クルトガン
- ウドイト氏族長の末子でクランとは幼なじみ。弓の名手。メルキト族の反乱に加わり戦死する。
制作
評価
2023年度の「このマンガがすごい! オンナ編」で第1位を獲得した。歴史物が同ランキングで1位を獲得したのは初となる[8]。第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞した[9]。
ライターの島田一志は、リアルサウンド ブックにおける自身の記事で、本作の物語を称賛した[10]。島田は『ヒストリエ』と『チ。-地球の運動について-』のファンは本作を気に入るだろうとした[10]
書誌情報
- トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』秋田書店〈ボニータコミックス〉、既刊6巻(2026年7月15日現在)
- 2022年8月16日発売[11]、ISBN 978-4-253-26446-4
- 2023年2月16日発売[12]、ISBN 978-4-253-26447-1
- 2023年9月14日発売[13]、ISBN 978-4-253-26448-8
- 2024年8月16日発売[14]、ISBN 978-4-253-26449-5
- 2025年4月16日発売[15]、ISBN 978-4-253-26450-1
- 2026年7月15日発売[16][17]、ISBN 978-4-253-01818-0
- 谷川春菜・トマトスープ『もっと!天幕のジャードゥーガル』秋田書店〈ボニータコミックス〉、2026年7月15日発売[16][18]、ISBN 978-4-253-01820-3
テレビアニメ
2025年4月にテレビアニメ化が発表され[19]、2026年7月よりテレビ朝日系列『IMAnimation』枠ほかにて放送中[20]。
制作
なにか今までにないことをするという考えがアニメ化につながったという[21]。もともとこのようなアニメを作りたいと考えていたトマトスープは、アニメ化にあたって謝意を示した[19]。
山田尚子は原作を大いに触発されるフレッシュな作品と捉えている[22]。山田は「力強く、可愛らしく」作り上げていくと語った[22]。Abel Gongoraは「文化」を尊重しつつ、独自の「解釈」を施した[22]。加藤還一は「現代」との共通点を見出し、視聴者に「希望」をもってもらうことを狙っている[22]。
スタッフ
- 原作 - トマトスープ[19]
- 総監督 - 山田尚子[20]
- 監督 - Abel Gongora[20]
- キャラクターデザイン・作画チーフ - 吉田健一[20]
- デザインワークス - 尾崎智美、木下絵李、石松、やぼみ、齋藤睦
- シリーズ構成 - 加藤還一[20]
- 演出チーフ - 藤倉拓也[4]
- 美術監督 - 樺澤侑里[4]
- 美術設定 - 樺澤侑里、齊藤優香、若宮柊子、田尻健一
- 色彩設計 - 今野成美[4]
- 撮影監督 - 高橋直希[4]
- 編集 - 廣瀬清志[4]
- 音響監督 - 小沼則義[4]
- 音響制作 - ビットグルーヴプロモーション
- 音楽 - 日野浩志郎[20]
- プロデューサー - 遠藤一樹、稲垣豪、宮川泰地、田中康太、中川瑛美、松井優子
- アニメーションプロデューサー - 三角理恵
- アニメーション制作 - サイエンスSARU[19]
- 製作 - 天幕のジャードゥーガル製作委員会
主題歌
各話リスト
放送局
| 放送期間 | 放送時間 | 放送局 | 対象地域 [25] | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年7月4日 - | 土曜 23:30 - 日曜 0:00 | テレビ朝日(製作参加) ほか系列フルネット全24局 | 日本国内[注 3] | 字幕放送[26] / 連動データ放送[26] / 『IMAnimation』枠 |
| 2026年7月5日 - | 日曜 1:00 - 1:30(土曜深夜) | BS朝日 | 日本全域 | 製作参加 / BS/BS4K放送 / 字幕放送[27] / 『アニメA』枠 |
| 日曜 22:30 - 23:00 | AT-X | 日本全域 | CS放送 / 字幕放送[28] / リピート放送あり | |
| 2026年7月12日 - | 日曜 22:00 - 22:30 | テレ朝チャンネル1 | 日本全域 | CS放送 |
| 2026年8月1日 - | 土曜 21:00 - 21:30 | アニマックス | 日本全域 | BS/CS放送 / リピート放送あり |
| 初回は1時間スペシャルとして2話連続放送(テレ朝チャンネル1、アニマックスを除く)。 | ||||
| テレビ朝日系列 IMAnimation | ||
|---|---|---|
| 前番組 | 番組名 | 次番組 |
あかね噺(第1期)
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天幕のジャードゥーガル
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