天幕のジャードゥーガル
トマトスープによる漫画
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『天幕のジャードゥーガル』(てんまくのジャードゥーガル、A Witch's Life in Mongol[注 1])は、トマトスープによる日本の漫画。WEBコミックサイト『Souffle』(秋田書店)にて2021年9月25日から連載中。月刊少女漫画雑誌『ミステリーボニータ』でも2025年4月号から出張連載中[1]。
13世紀のモンゴル帝国を主な舞台とし、第2代皇帝オゴデイの第6皇后ドレゲネに側近として仕えたファーティマ・ハトゥンを題材としている。テレビアニメが2026年7月より放送中。
題名の「ジャードゥーガル」はペルシア語で「魔術師」「魔女」を意味する(جادوگر, 現代ペルシア語発音:[d͡ʒɒː.d̪uː.ɡʲæɹ])[2][3][4][注 2]。
制作
トマトスープは5歳ごろに内モンゴル自治区のシリンホト市に行った経験があり、それ以来モンゴルに興味を持ち続け、大学時代から本格的にモンゴル帝国史を調べるようになった[5]。本作は10年ほど構想を温めたもので、当初はドレゲネを主人公にする予定だった[5][6]。ドレゲネについて、後世の歴史書では評価が低いものの男性優位社会で一時はトップに立った女性であり「何かしらのタレント性はあったはず。なぜ高い地位に就いたのか、その理由を想像で埋めればドラマチックな物語になる」と語っている[7]。しかし、モンゴル帝国のスケールの大きさを描くには動きのある人物が良いと考え、またイスラムの歴史も好きだったこともあり、ファーティマを奴隷出身という出自に変えた上で主人公に据えることにしたという[6][7]。
連載開始後にロシアのウクライナ侵攻が起こり、ロシア軍に占領され破壊されたウクライナの街がロシアの手で綺麗に造り替えられている状況を知って、元の住人はどのような気持ちになるだろうかと思ったことが、シタラの内面描写に反映されている[7]。
絵柄は中世の写本に見られる平面的な描き方を意識しているという[6]。
あらすじ
1213年、ペルシア(イラン)東部の街トゥース。奴隷の少女シタラは学者の未亡人ファーティマに引き取られ、ファーティマやその息子ムハンマドから学問の大切さを教わる。その秋、ムハンマドはさらなる学びを求め、ニーシャプールへと旅立つ。シタラは屋敷で働きながら教養を身につけ、ムハンマドは遊学先から手紙を出してシタラを気に掛ける。
8年後、モンゴル皇帝チンギス・カンの四男トルイ率いる軍勢がトゥースを侵攻する(モンゴルのホラズム・シャー朝征服)。トルイは自身の妃ソルコクタニが望む学術書『エウクレイデスの原論』を探しており、屋敷に押し入ってファーティマの亡き夫が遺した大切な写本を奪う。シタラはそれを取り返そうとして兵士に斬りかかられ、シタラを庇ったファーティマが命を落とす。
シタラは捕虜となり、他の侵略された都市の人々とともにモンゴルに送られるが、その途上で奴隷仲間や多くの人々の死に直面し、ニーシャプールも陥落したことを知って絶望する。しかし通訳の少年シラから、ソルコクタニ妃に『原論』を指南する役を引き受けないかと提案される。シタラは写本を取り戻すことを心に誓い、「学者の娘・ファーティマ」と身分を偽って妃の侍女となる。侵略された側の境遇や心情に無頓着な妃の言動に復讐心を掻き立てられながら、シタラは表面的には妃に従順に仕え、信頼を得てゆく。
1227年、皇帝チンギス・カンが崩御。1229年にクリルタイ(総会議)が開かれ、先帝の遺言により三男オゴタイが皇帝に即位する。しかし末子相続の慣習によりチンギス・カンの財産や軍事力の大半はトルイが継承しており、権力のねじれが生じていた。権力闘争を危惧するソルコクタニは、先帝の次男で新帝と親しいチャガタイの動向を探るべく、シタラに密偵役を命じるが、シタラは潜入に失敗し、オゴタイの妃ドレゲネの前に引き出される。ドレゲネは元々メルキト族長ダイル・ウスンの妻で、夫や一族を討ったモンゴルに強い恨みを持っていた。復讐の手立てがないまま日々を過ごしてきた二人であったが、互いの境遇を知ったことで結託し、知を武器にモンゴル帝国への復讐のために動き出す。
年表
年号は全て西暦。史実とは必ずしも一致しない。
- 1204年 - ドレゲネがダイル・ウスンと結婚するが、この年の秋、メルキト族はモンゴルに降伏。その後、ドレゲネはオゴタイと再婚。【第2巻】
- 1209年 - カダクがグユクの養育係となる。【第6巻】
- 1213年 - シタラがファーティマに引き取られる。この年の秋、ムハンマドがニーシャプールに遊学に出る。【第1巻】
- 1221年 - トルイの軍勢によりトゥース陥落。シタラは捕虜としてモンゴルに連行され、ソルコクタニに仕える。【第1巻】
- 1227年 - チンギス・カン崩御。トルイが監国の任に就く。【第2巻】
- 1229年 - オゴタイが新帝に即位。ジャダ石紛失事件によりシタラとドレゲネが出会う。【第2巻】
- 1230年 - モゲを介してシタラとボラクチンが出会う。金国親征開始。【第3巻】
- 1232年 - 三峰山の戦い。凱旋途上でオゴタイが病に倒れ、身代わりのようにトルイが急死。【第3巻】
- 1233年 - ドレゲネがボラクチンに接近し、第六妃から第二妃に昇格。ペルシア総督府設置。イルチダイの密通とオイラト族の流言に裁定が下る。【第4-5巻】
- 1235年 - 首都カラコルムの建設に着手。南宋・高麗・キプチャクへの大遠征開始。【第5巻】
- 1236年 - 南宋遠征中のクチュが急死。ペルシア総督府で権益争い。【第5巻】
- 1237年 - 西征軍がルーシに侵攻。コルゲンが戦死。【第6巻】
登場人物
声の項はテレビアニメ版の声優。
主要人物
- シタラ / ファーティマ
- 声 - 関根明良[8]
- 主人公。シタラは「星」の意。奴隷身分の出身。幼い頃より本心を押し隠して笑顔を作るのが得意で、笑顔は度々「可愛い」と評されている。
- 幼少期に同じく奴隷だった母を亡くして天涯孤独の身となり、同時に前の主人から奴隷商に売られる。容貌を評価した奴隷商が「教養を身に着けさせ高貴な人の側仕えにしたい」ともくろみ、学者の未亡人ファーティマに引き取られた。当初は逃げ出そうとするが、ムハンマドから「賢くなれば困った時何をすればいいかわかる」と教えられて感銘を受け、屋敷で働きながら当時世界最先端だったイスラム世界の教養を身につける。ムハンマドには敬愛の念を抱くとともに、学問を自由に学べる身分の彼に対して悔しさ混じりの複雑な感情も抱いていた。ファーティマから実の娘のように愛され、人生に希望を見出していたが、モンゴル軍の侵攻により全てを失う。
- 捕虜としてモンゴルに連行されてからは、トルイに奪われた『原論』の写本を取り戻すためソルコクタニに仕えるが、その際に「王族に取り入るためには、出自が良い方が望ましい」というシラの提案で、亡き主人の名である「ファーティマ」を名乗り、「学者の娘」として振る舞う。ペルシアで学んだ知識を誇りに思う一方、モンゴル文化の吸収にも貪欲で、当初は話せなかったモンゴル語も数年で貴人たちと流暢に話せるほど上達している。
- 新帝即位直後、ソルコクタニの命令でチャガタイの元に潜入を試みるが、たまたま持っていたベゾアール(モンゴルでは「ジャダ石」と呼ばれる)をドレゲネから盗んだものと勘違いされ、ドレゲネの元に引き渡される。モンゴルでの生活に慣れ復讐心が揺らぎつつあったが、ドレゲネの境遇や想いを知って共感し、ドレゲネの侍女となってモンゴル帝国への復讐を実行に移していく。やがて帝国がもたらす繁栄そのものを憎むようになり、また権力闘争を経て無辜の人を陥れることに抵抗を感じなくなり、救いのない運命を自覚していく。
- 「シタラ」という名はイブン・スィーナーゆかりの女性の名から取られた[注 3]。
- ドレゲネ
- 声 - 小清水亜美[8]
- オゴタイの第六妃で、のちに第二妃へ昇格[注 4]。
- ナイマン族の出。最初の夫はメルキトのウハズ氏族の長ダイル・ウスン。モンゴルに対抗する部族間同盟のための政略結婚であり、ダイルとは親子ほどの年の差があったが[注 5]、ダイルの娘クランの手助けもあり、徐々に夫や氏族への愛着を抱く。しかし氏族はモンゴルに降伏し、女性はモンゴルに引き渡され、男性は後に反乱を起こして討伐された。ダイルらの討伐を指揮したのがオゴタイであり、ドレゲネはオゴタイの妻となったことで生かされ、子ももうけた。
- 夫を討ったオゴタイひいてはモンゴル帝国を強く憎み、オゴタイの面前でも敵愾心を隠さない。そのため他のオゴタイの妃たちから孤立し、オゴタイとの関係も冷え切っているが、息子グユクのことは成長後は「グユクちゃん」と呼び溺愛しているものの、彼の幼少期にはさほど彼に関心を示さず乳母やカダクに任せきりであった。
- なす術がないまま憎しみを募らせる日々を過ごしていたが、ダイルの形見であるジャダ石の紛失事件をきっかけにシタラと出会い、モンゴル帝国への復讐に向けて結託することとなる。
トゥースの人々
- ファーティマ
- 声 - 桑島法子[8]
- シタラを奴隷商から引き取った、学者一族の女性。ムハンマドの母。学者だった夫を亡くし、遺品の書物を大切に保管している。
- 奴隷商からの依頼と「知識を求めることは全てのイスラム教徒の努め」という本人の信条から、シタラに教育を行う。シタラを娘のように愛しており、将来はムハンマドの妻にすることを考えていた。最期はシタラを庇ってモンゴル兵の凶刃に倒れる。
- ムハンマド
- 声 - 齋藤潤[8]
- ファーティマの息子。トゥースの町では秀才として有名な少年で、シタラに学問の大切さを気付かせるきっかけを与えた。シタラや他の奴隷たちからは「坊ちゃん」と呼ばれる。
- 保守的な神学の講義だけでは飽き足らず、より学問を深めるため、シタラが屋敷に来た年の秋にニーシャプールへ旅立つ。シタラとは手紙のやり取りをしていたが、ニーシャプールがモンゴルに侵略されて以降の消息は不明。第1話で、生涯シタラと再会することはないと明言されているが、「のちに高名な学者[注 6]となる」と添えられており、読者には生き残っていることが示唆されている。
- 伯父
- 声 - 最上嗣生
- ムハンマドの伯父で、ファーティマの兄。ファーティマたちが暮らす屋敷の主人。私塾の教師で、シタラにクルアーンの読誦を教える。
- モンゴルの襲来時に他の奴隷たちとともに避難するも捕まり、奴隷たちと引き離されたまま故人となる。
- ズムッルド
- 声 - ニケライ・ファラナーゼ
- ファーティマに長年仕える奴隷。海に面した西の国の出身。
- トゥース陥落後、捕虜としてモンゴルに送られる途中、トゥースの民軍に所属していた弟のミハイルがモンゴル兵に処刑される姿を目の当たりにしてしまう。失意のまま病に倒れ、息を引き取る。
- 名は『千夜一夜物語』の登場人物から取られた[11]。
- アニース
- 声 - 伊瀬茉莉也
- シタラと同時に買われ、ファーティマに仕える奴隷。掃除や整理・整頓が得意。学問に夢中だったシタラに奴隷としての生き方を諭す。
- 捕虜となった後は、ムハンマドが生きている可能性を心の支えにしていたが、ニーシャプールが襲撃されたことを知った翌朝、モンゴル兵に掴みかかって斬り捨てられる。シタラは自ら死を選んだと考えている。
- 名は『千夜一夜物語』の登場人物から取られた[11]。
- 奴隷商
- 声 - 高岡瓶々
- 名前は漫画では「タージル」、アニメでは「アフマド」。シタラに教養を身につけさせれば奴隷としての価値が高まると考え、学者の家系で優秀な息子を持つファーティマの家にシタラを預ける。
- カマルッディーン
- 声 - 前田弘喜
- ムハンマドに法学を教えていた教師。
モンゴル帝国
- チンギス・カン
- 声 - 玉鷲一朗(モンゴル語)
- 初代皇帝。草原に割拠する諸部族のひとつに過ぎなかったモンゴルを1代で大帝国に押し上げた巨星。作中では意図的に正面から描かれず、後ろ姿のみの登場[12]。
オゴタイ家
- オゴタイ
- 声 - 下野紘[8]
- チンギス・カンの三男。父の崩御後、その遺言に従い、2代目皇帝の座につく。その際に古の君主号であるカアンを復活させ、以後「大カアン」と呼ばれるようになる。
- チンギス・カンの息子四兄弟の中では調整役で、父から「賢さ」を評価されて後継に指名された。柔和で鷹揚な性格の持ち主であり、周囲から尊敬を集めるが、時折人知の及ばぬ事柄まで見通しているかのような発言をするなど、底知れぬ人物。馬乳酒を好む。
- 帝国の繁栄には武力以外の拡大も必要であるとの開明的な考えを持ち、皇帝即位後は、商工業の振興や通商路の整備、都の造営など、モンゴルの伝統に囚われない政策を進めていく。
- ボラクチン
- 声 - くじら[13]
- オゴタイの第一妃。元はチンギス・カンの妃だったが、チンギス・カンの死後にオゴタイが相続した(レヴィレート婚の一種)。オゴタイが帝位についてからは「大カトゥン」と呼ばれる。
- オゴタイよりかなり年上で、子がなく、実家の血筋も特に良いわけではないため、なぜ正妃となったのか訝しむ者もいるが、冴えない容姿と控えめな態度からは窺えない聡明さと智謀を持った人物。オゴタイとは夫婦というよりも、通商の発展によってモンゴルを栄えさせるというビジョンを共有する、政治的同志のような関係である。
- 趣味は鉱石集めで、錬丹術に関心を寄せる。オゴタイ即位後もトルイ家に軍事力と発言力が掌握されたままの現状を危惧し、趣味を生かして謀略を巡らす。その過程でドレゲネとシタラを仲間に取り込むが、次第に彼女らの行動に違和感と危機感を募らせる。
- クチュを次期皇帝候補に推していたが、クチュの急死を受け、その息子であるシレムンを皇太子に立て、モゲをシレムンの補佐役と大カトゥンの後継に指名する。
- 記録が少ない人物であり、創作と割り切って大胆に脚色されている[5]。史実ではチンギス・カン存命中にオゴタイと結婚しており、レヴィレート婚ではない[14]。
- キルギスタニ
- 声 - 新谷真弓[15]
- オゴタイの第三妃。子供のように小柄な見た目で、息子のコデンに軽々と小脇に抱えられてしまうほど。成人した息子がいる歳にも関わらず感情的で騒々しく、他の妃に対抗意識を燃やす。
- 史実では確定的な史料が少なく、出自に関しても諸説ある人物であるが、本作ではコデンの母という説に従っている[16]。また本作では最初からオゴタイの妃であるが、史実ではチンギス・カンからオゴタイにレヴィレート婚で相続されたと考えられている[17]。
- モゲ
- 声 - 朝井彩加[15]
- オゴタイの第四妃。快活明朗で裏表のない性格。頭が良くないと自認しているが、人を見る目は確か。
- ボラクチンと同じく、元はチンギス・カンの妃。そのためボラクチンとは仲が良く、彼女の依頼で情報収集などを行う。ボラクチンの病気を治すため、シタラと引き合わせる。
- グユク
- 声 - 花江夏樹
- オゴタイの長男で、ドレゲネとの子。情緒が不安定で、初対面の人物や人混みには異様な警戒心を示し、養育係だったカダクや妻のオグルガイミシュ等の限られた相手にしか心を許さない。母からは関心を持たれず歪な関係の両親を見て育ったせいか、幼少期には癇癪を起こす事も多々でカダクが養育係として着くまでは乗馬などの皇子の嗜みもできなかった。
- 周囲からは皇帝の器ではないと軽んじられてたが、キプチャク遠征の最中、クチュの急死によって一躍後継者候補として担ぎ上げられることとなる。本人にも皇帝になるつもりはなかったが、死の間際にコルゲンからドレゲネの真の狙いを伝えられたことをきっかけに、帝国の被征服民の恩讐を全て背負っていく覚悟を固める。
- コデン
- オゴタイの次男で、キルギスタニとの子。異母弟のクチュとは信頼関係にあるが、兄グユクのことは軽侮している。
- クチュ
- オゴタイの三男で後継者候補。母は既に亡くボラクチンから後見を受けているものの、ボラクチンの謀略に気づいて以来人間不信となる。南宋攻略の司令官に任じられるが、陣中に疫病が流行した際に漢人の医師に毒を盛られ急死する。
トルイ家
- トルイ
- 声 - 鈴木崚汰[8]、雨果(モンゴル語)
- チンギス・カンの四男(末子)。武勇に優れ人望も厚いが、学問には興味が薄い。
- トゥースを制圧した軍勢の将軍を務め、ファーティマから『原論』の写本を奪った張本人。
- 末子相続の慣習により、父の残した軍事力や財産の大部分を継承し、約2年間は監国として国政を代行する。オゴタイ即位後も依然クリルタイで強い発言力を持ち、第二次金朝遠征を推し進める。
- 家族愛が強く兄思いであるが、ボラクチンなどオゴタイの周囲はトルイ家が皇帝を上回る武力を持ち続けていることを警戒している。金との戦いで戦功をあげるも、病に倒れたオゴタイの身代わりとなるため、ボラクチンが仕込んだ「悪霊を封じた水」を飲み急死する。
- ソルコクタニ・ベキ
- 声 - 久野美咲[15]
- トルイの正妃。ケレイトの出で、ネストリウス派キリスト教の信者。
- 洞察力に優れた聡明な人物。モンゴル族の多くが「草原での生き方」しか知らず草原の外の知識に関心が薄いことを憂いており、帝国発展のために西方の知識を取り入れ、後の世代に伝えることを責務と考えている。そのためトルイの西方遠征にあたって『原論』の写本を求め、指南役としてシタラを側に置く。しかし、そのために払われた犠牲を知るシタラの目には、他者の犠牲に無頓着な言動に映り、強い憎しみを買うことになる。
- シタラは表向きはソルコクタニに従順に仕えているため、ソルコクタニ自身はシタラを信頼しており、オゴタイ即位後にはチャガタイの動向を監視する密偵としてシタラを任命する。
- トルイ急死後は全ての意欲を失い、オゴタイ家の傘下に入ることを受け入れそうになるが、ファーティマに叱咤されてまだ若い息子たちを守る責務を思い出し、トルイ家の独立を守る決意を固める。
- モンケ
- トルイとソルコクタニの長男。トルイの死後、当主となる。ジュチ家とともにキプチャク遠征を任じられる。
- クビライ
- 声 - 石橋陽彩
- トルイとソルコクタニの次男。
- フレグ
- 声 - 村瀬歩
- トルイとソルコクタニの三男。トルイの死後圧迫を加えていくオゴタイ家に不満を抱く。
ジュチ家
チャガタイ家
- チャガタイ
- 声 - 浪川大輔[8]
- チンギス・カンの次男。ジュチには辛辣だが、オゴタイやトルイとは仲が良い。
- 一本気で厳格な性格で、しばしば他者にきつい物言いをする。しかし、「多民族国家になっていくモンゴルで弱者や女性が守られるには、チンギス・カンが定めた法の遵守を徹底させねばならない」という考えによるもので、オゴタイからは「優しい」と評されている。
テムゲ家
家臣ほか
- シラ
- 声 - 入野自由[8]
- サマルカンド出身のペルシア語(シタラたちの母国語)通訳。
- 少年のうちにモンゴル軍に捕らえられ徴発兵にされるが、前線行きを免れるためにモンゴル語を必死で覚え、若くして通訳となる。トルイ家に仕えており、ファーティマとシタラが襲われた現場にも居合わせている。
- モンゴルへの復讐心を燃やすシタラとは対照的に、才能次第で出世が叶う帝国の環境を気に入っている。シタラを『原論』の指南役に推薦し、その後もシタラを自分と同じく出世を目指す仲間と認識してたびたび手助けする。
- ペルシアに総督府ができたことを機にペルシアへ共に帰ることをシタラに提案するが、その後毒殺事件に巻き込まれ、シタラがモンゴルへの復讐を画策し自分もそのための踏み台にされていることに気づく。事件を経てグユクとカダクの部下となり、ドレゲネとシタラを警戒するようになる。
- カダク
- 声 - 沼田祐介
- ドレゲネとグユクの側近で、グユクが気を許す数少ない人物。ナイマン族の出で、立身出世によりモンゴル族を見返す野心を抱く。
- チャガタイ家に潜入しようとしていたシタラをドレゲネのジャダ石を盗んだ泥棒と勘違いし、ドレゲネの元に連行する。シタラがドレゲネの側近となって以降は同僚のような立場になるが、シタラを警戒し続ける。
- オゴタイの命でグユクの養育係を務め、周囲から無能扱いされるグユクの資質を見抜き、成人後も運命共同体のように補佐する。
- チンカイ
- 声 - 上田燿司
- ウイグル人の官僚。オゴタイ即位時には書記長官。かつては行商人だった。
- シタラがモンゴルに移送される途中に会っており、シタラの教養の深さを知って「モンゴルに必要な賢者」と評価する。
- モンゴル族の多くが文字を軽視して学ばないため、帝国の大きさに比べて書記官が少ないことを嘆いている。
- イルケ
- 声 - 間宮康弘
- オゴタイに仕える将軍で、筆頭家臣。かつてはオゴタイの養育係だった。
- イルチダイ
- イルケの息子。オゴタイのケシク(皇帝の世話や護衛を担当する当直係)に任じられる。父と望まぬ結婚をした女性を不憫に思い、密通事件を起こす。
- アルグン
- イルケの従者。オイラト族の貧しい家に生まれ、奴隷として売られた。イルチダイとは兄弟のように扱われて育つ。
- 真面目で能力が高く、イルケの命を受けてイルチダイとともにオゴタイのケシクとなり、奴隷の身分から解放される。密通事件に巻き込まれてケシクを解かれるが、チンカイに能力を買われ書記官となる。ウイグル文字の読み書きに加え、ヒタイ語も理解する。
- 自己が希薄で、自由の身になってからも判断を人に委ねる癖があったが、同郷のボラクチンの奴隷と親しくなり、初めて自ら判断して婚約を結ぶ。しかし直後にその女性はボラクチンによってペルシアへ向かう兵士に下賜され、悲嘆に暮れるなか、ドレゲネに今後の生き方を諭され、彼女の密偵となる。
- トマトスープは「女性誌でなければ主人公にしようと思っていたキャラクター」と語っており、シタラとは同じ奴隷出身でありながら異なる答えに至る人物として描かれる[7]。
- スベエデイ・バートル
- 声 - 佐久間元輝
- チンギス・カンの代から帝国に仕える大将軍。金国攻略やキプチャク遠征など数々の戦に帯同する。
- クトク
- 断事官(戦争で獲得した領地や遊牧地を法に基づき公正に分配する役職)を務める官僚で、司法全般や税制にも関わる。南宋遠征では副将を務める。
- コルゲン
- チンギス・カンがクランとの間にもうけた庶子。気さくな性格で、グユクと親しくできる数少ない人物の一人。ダイル・ウスンの血を引いているせいか霊感があり、夢の中でのダイルとの交感を通じて母のクランやドレゲネの背景を知ることとなる。グユクと共にキプチャク遠征に赴くが、コロムナの戦いで重傷を負い、グユクに後を託して死亡する。
- オグルガイミシュ
- グユクの妃。メルキト族の出。
ペルシア総督府
- コルグズ
- ペルシアに駐在するチン・テムル将軍の書記官。有能で正義感が強く、平民から成り上がった努力家であるが、その出自と高圧的な性格から敵は多い。
- 荒廃したペルシアを憂いてオゴタイにペルシア総督府を作るよう上申し、チン・テムルの死後、チンカイの推挙で新たにペルシア総督となる。チン・テムルの統治下で厚遇された勢力から恨みを買い、エドク・テムルに告発されるが、勝訴して総督としての地位を固める。
- シャラフッディーン・ホラズミー
- ペルシア人書記官。平民からホラズムの長官に取り立てられ書記となったが、長官の寵愛を失ったことで追放同然にモンゴル帝国の下で働くようになった。コルグズの総督着任により甘い汁を吸えなくなった一人で、コルグズに対して面従腹背している。
- エドク・テムル
- チン・テムルの息子。コルグズに反発する勢力に担がれ、コルグズを告発して総督の地位を狙うが、敗訴する。
メルキト族
- ダイル・ウスン
- 声 - 石田彰[18]
- ドレゲネの最初の夫で、ウハズ氏族の長。「カム」と呼ばれるシャーマンでもあり、精霊と通じ合える。
- 森の狩猟民メルキトと草原の遊牧民モンゴルの間には長年の対立があり、テムジン(後のチンギス・カン)の台頭で均衡が崩れてからも、ナイマン族と同盟を組むなどして生き残りに尽力してきた。やがて巫術で一族の未来を予知し、娘のクランをチンギス・カンに捧げ、一族の女性たちをモンゴルに引き渡して降伏する。しかし残った男性たちで反乱を起こし、オゴタイに討たれる。
- クラン
- 声 - 水瀬いのり[18]
- ダイルの娘。人懐っこく、嫁いできたばかりで塞いでいたドレゲネともすぐに打ち解ける。一族を守るためチンギス・カンの妻となり、コルゲンを産む。チンギス・カンの死後はオゴタイが相続したが、以前と変わってしまった自分ではドレゲネに合わせる顔がないとしてオゴタイの元ではなく息子の領地で暮らしている。
- ドレゲネが未だ過去に囚われていることを憂いており、シタラとドレゲネの出会いのきっかけとなったジャダ石紛失事件は、ドレゲネに前を向いて生きてほしい思いからクランがコルゲンに盗ませたものであった。
- クルトガン
- 声 - 千葉翔也[18]
- ウドイト氏族の長の末子で、クランとは幼なじみ。メルゲンと呼ばれる弓の名手の一人。彼の氏族はモンゴルへの降伏に参加せず、逃亡と抵抗を続けていたが、やがてチンギス・カンに滅ぼされ、彼も殺される。
評価
2023年度の「このマンガがすごい! オンナ編」で、歴史物としては初の1位を獲得した[19]。2026年には第55回日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞[20]。
ライターの島田一志は、リアルサウンド ブックにおける自身の記事で本作の物語を称賛し、『ヒストリエ』や『チ。-地球の運動について-』のファンは本作を気に入るだろうと評した[21]。
モンゴル帝国史研究者の宇野伸浩は、モンゴル帝国を描いた作品でありながらイスラーム世界から物語を始めている点がオリジナリティが高く、またイスラーム世界とモンゴル世界のどちらにも偏らず、帝国の繁栄と負の側面、グローバル化といった様々な視野から当時の世界情勢を公平に描けていると評価している[14]。
アルジャジーラは2026年7月10日の記事で「激動の歴史的時代を再現するにとどまらず、モンゴル帝国の中心で生き残りを図るイスラム教徒のペルシャ人少女の物語を通じて、戦争がもたらす影響に対する人間的な視点を提示している」と評した[22]。
書誌情報
- トマトスープ『天幕のジャードゥーガル』秋田書店〈ボニータコミックス〉、既刊6巻(2026年7月15日現在)
- 2022年8月16日発売[23]、ISBN 978-4-253-26446-4
- 2023年2月16日発売[24]、ISBN 978-4-253-26447-1
- 2023年9月14日発売[25]、ISBN 978-4-253-26448-8
- 2024年8月16日発売[26]、ISBN 978-4-253-26449-5
- 2025年4月16日発売[27]、ISBN 978-4-253-26450-1
- 2026年7月15日発売[28][29]、ISBN 978-4-253-01818-0
- 副読本 - 谷川春菜・トマトスープ『もっと!天幕のジャードゥーガル』秋田書店〈ボニータコミックス〉、2026年7月15日発売[28][30]、ISBN 978-4-253-01820-3
テレビアニメ
2025年4月にテレビアニメ化が発表され[31]、2026年7月よりテレビ朝日系列『IMAnimation』枠ほかにて放送中[32]。
制作
サイエンスSARU代表取締役の藤田雅規は本作のアニメ化の理由として、「原作がこれまでにない斬新な作品でスタジオの皆が強く心をひかれたこと」「本作をアニメーション化することはサイエンスSARUにとって間違いなく新しいチャレンジになると確信したこと」「テレビ朝日の遠藤プロデューサーがこの作品をぜひ一緒にやろうと言ってくれた熱意」の3点を挙げている[33]。もともと「こんなアニメがあったらいいのに」という思いから本作のアイデアを膨らませていったというトマトスープは、アニメ化に謝意を示した[31]。
山田尚子は原作を新鮮で衝撃的な驚きに溢れる作品と評し、「力強く、可愛らしく」作り上げていくと語った[34]。Abel Gongoraはモンゴルやペルシアの文化とそれらを継承してきた人々に敬意を抱きつつ、その歴史を独自に解釈したと述べた[34]。加藤還一は「現代の私たちにも通じる葛藤や出会い、未来への希望を感じて頂ければ幸い」とコメントした[34]。
制作に当たってはモンゴルで現地ロケハンが行われ[34][35]、その様子がYouTubeで公開された[35]。
序盤の侵略シーンでは「自分たちとは違う言語を話す人たちが突然襲ってくる恐怖」を表現するためモンゴル側の人物の会話はモンゴル語で進められ、モンゴル出身の俳優や力士(玉鷲一朗と玉正鳳萬平[36])が声優として参加した[37]。
スタッフ
- 原作 - トマトスープ[31]
- 総監督 - 山田尚子[32]
- 監督 - Abel Gongora[32]
- キャラクターデザイン・作画チーフ - 吉田健一[32]
- デザインワークス - 尾崎智美、木下絵李、石松、やぼみ、齋藤睦
- シリーズ構成 - 加藤還一[32]
- 演出チーフ - 藤倉拓也[8]
- 美術監督 - 樺澤侑里[8]
- 美術設定 - 樺澤侑里、齊藤優香、若宮柊子、田尻健一
- 色彩設計 - 今野成美[8]
- 撮影監督 - 高橋直希[8]
- 編集 - 廣瀬清志[8]
- 音響監督 - 小沼則義[8]
- 音響制作 - ビットグルーヴプロモーション
- 音楽 - 日野浩志郎[32]
- プロデューサー - 遠藤一樹、稲垣豪、宮川泰地、田中康太、中川瑛美、松井優子
- アニメーションプロデューサー - 三角理恵
- モンゴル文化・歴史考証 - 谷川春菜
- モンゴル文化・歴史考証協力 - 諫早庸一、宇野伸浩、白石典之、中村篤志、永島育
- イスラム文化・歴史考証 - 桝屋友子
- イスラム関連考証 - 高橋和夫
- アニメーション制作 - サイエンスSARU[31]
- 製作 - 天幕のジャードゥーガル製作委員会
主題歌
各話リスト
| 話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 初放送日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 第1幕 | 天にあるもの 地にあるもの | 加藤還一 | Abel Gongora | 吉田健一 | 2026年 7月4日 | |
| 第2幕 | サファルに咲く薔薇 | 山田尚子 |
|
| ||
| 第3幕 | 消しえぬ炎 | 佐藤寿昭 | 安部祐二郎 |
| 7月11日 | |
| 第4幕 | 井上美緒 | 霜山朋久 |
| 7月18日 | ||
| 第5幕 | 蛇のまだらは外側に人のまだらは内側に | 加藤還一 | 笹木信作 | 石郷岡範和 |
| 7月25日 |
| 第6幕 | メルゲンの民 | 佐藤寿昭 | 安藤雅司 | 松永浩太郎 | 阿見圭之介 | 8月1日 |
| 第7幕 | 兄弟 | 井上美緒 |
| 安部祐二郎 |
| 8月9日 |
| 第8幕 | 大カトゥン ボラクチン | 佐藤寿昭 | 村越麻海 |
| 8月16日 | |
| 第9幕 | 井上美緒 | 松永浩太郎 |
| 8月23日 | ||
| 第10幕 | 知恵 | 佐藤寿昭 | 前場健次 |
| 8月30日 | |
放送局
| 放送期間 | 放送時間 | 放送局 | 対象地域 [40] | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年7月4日 - | 土曜 23:30 - 日曜 0:00 | テレビ朝日(製作参加) ほか系列フルネット全24局 | 日本国内[注 7] | 字幕放送[41] / 連動データ放送[41] / 『IMAnimation』枠 |
| 2026年7月5日 - | 日曜 1:00 - 1:30(土曜深夜) | BS朝日 | 日本全域 | 製作参加 / BS/BS4K放送 / 字幕放送[42] / 『アニメA』枠 |
| 日曜 22:30 - 23:00 | AT-X | 日本全域 | CS放送 / 字幕放送[43] / リピート放送あり | |
| 2026年7月12日 - | 日曜 22:00 - 22:30 | テレ朝チャンネル1 | 日本全域 | CS放送 |
| 2026年8月1日 - | 土曜 21:00 - 21:30 | アニマックス | 日本全域 | BS/CS放送 / 字幕放送[44] / リピート放送あり |
| 初回は1時間スペシャルとして2話連続放送(テレ朝チャンネル1、アニマックスを除く)。 | ||||
| 配信開始日 | 配信時間 | 配信サイト | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2026年7月5日 | 日曜 0:00(土曜深夜) 以降順次更新 |
| |
| 日曜 0:00 - 0:30(土曜深夜) | ニコニコ生放送[45] | ||
| 日曜 1:30 - 2:00(土曜深夜) | ABEMA アニメチャンネル | リピート放送・見逃し配信あり |
| テレビ朝日系列 IMAnimation | ||
|---|---|---|
| 前番組 | 番組名 | 次番組 |
あかね噺(第1期)
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天幕のジャードゥーガル
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その他
2026年8月22日から2027年8月21日にかけて、日本・モンゴル民族博物館(兵庫県豊岡市)にてコラボ特別展「モンゴル帝国の美しき女性たち」を開催[46]。ドレゲネとソルコクタニを描いたアニメイラストがキービジュアルとなり、アニメを通してモンゴル帝国女性の生き様を探るという企画になっている[46]。