東雅
新井白石が著した日本語の辞書
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内容
名詞を天地から虫魚まで15部門に分類した上で、それぞれ漢字およびカタカナの訓を示した後、書籍を参照しつつ語義や語源を述べる[1]。和文で書かれている。
本文の前に凡例と総論がある。伝本によっては、室鳩巣と安積澹泊の序文や新川元成の跋文が付されている[4]。
総論では、本書の語源解釈の理念が述べられる。具体的には、1.歴史的経緯、2.方言、3.俗語、の三つの観点を重視することが述べられる[5]。また、日本語という言語が、古代朝鮮の渡来人の言語や、仏僧が伝えた梵語、禅僧が伝えた中国語の口語、近世の南蛮語等の、外国語の語彙を取り入れてきたことを指摘する[6]。そして実際に、語源解釈において外国語由来説を度々とっており、例えば「ワダツミ」等において朝鮮語由来説をとっている(「ワダ=パダ」説)[7]。また、日本語の音韻の仕組みを重視することなどが述べられる[8]。
本書の語源説のいくつかは、大野晋編『岩波古語辞典』(1974年初版、岩波書店)等にも採用されている[9]。ただし現代から見ればこじつけ・眉唾な説も多い[10]。しかし白石の世界認識の一端を示す事例として注目される[11]。
影響源
本書は平安時代の源順の辞書『和名類聚抄』の構成を土台にしている[12]。また、「東雅」という題名や総論の内容において、古代中国の辞書で儒教経典の一つでもある『爾雅』や、その注釈書『爾雅注疏』の影響も受けている[13]。『爾雅』『爾雅注疏』は『和名類聚抄』でも参照されている[14]。
語源解釈の参考材料として、『和名類聚抄』、『古事記』、『先代旧事本紀』、『出雲国風土記』、『新撰姓氏録』、斎部広成『古語拾遺』、仙覚『万葉集抄』、『藻塩草』、『下学集』、『壒嚢鈔』、李時珍『本草綱目』、張自烈『正字通』、方以智『通雅』などを参照している[15]。他にも様々な和書・漢籍を参照している[15]。また、水戸藩の朱舜水や、友人の稲生若水の見解も参照している[16]。
上記の「ワダツミ」等に関する朝鮮語知識は、友人の雨森芳洲からの又聞きや、朝鮮通信使との筆談で得たものと推定される[7]。琉球使節から得たと推定される琉球関係の記述もある[17]。
本書はしばしば、貝原益軒の辞書『日本釈名』の語源説を暗に批判している[18][19]。益軒と白石は木下順庵門下の兄弟弟子にあたる[18]。「日本釈名」という題名は、『東雅』と『爾雅』の関係と同様、古代中国の辞書『釈名』に由来している[20][4]。