童夢 (漫画)

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ジャンル
出版社双葉社
掲載誌
童夢
ジャンル
漫画
作者 大友克洋
出版社 双葉社
掲載誌
レーベル アクションコミックス
発表期間 1980 – 1981年
巻数 全1巻
テンプレート - ノート
プロジェクト 漫画アニメ
ポータル 漫画アニメ

童夢』(どうむ)は、大友克洋による日本漫画作品。1980年から1981年にかけて4回に分けて雑誌連載された後、1983年単行本として発行された。

大友の代表作の一つで、郊外のマンモス団地で起こる連続不審死事件を巡るモダンホラー[1][2]

超能力の表現や建物の破壊描写等において、『Fire-ball』と共に代表作『AKIRA』の原型とも言える作品[3][4]

初出は漫画雑誌アクションデラックス特別増刊」第3号(双葉社)。第5号まで3回連続して掲載された後(1980年〜1981年)、間を置いて最終話が『漫画アクション増刊スーパーフィクション』第7号(1981年)に掲載された[1][2]。その後、加筆修正と描き下ろしページを加えてアクションコミックス(双葉社)より単行本化された。

また、原稿の原寸のままのB4判函入、定価5000円、限定5000部の『童夢 豪華版』も1984年に刊行された。2022年には大友克洋全集の第1期・第1回配本のうちの1冊として刊行された。

1983年、第4回日本SF大賞受賞[1][注 1]。1984年、第15回星雲賞コミック部門受賞[5]

この作品や『AKIRA』以降、見開きを背景にして人物は小さく描くなど、背景を主役にした作品が増えた[6]

背景の作画はアシスタントの高寺彰彦や末武康光らが担当した[7][8]

作中に登場する団地埼玉県川口市芝園団地[9]警察署は旧川口警察署の庁舎[要出典]を参考に描かれた。

制作の経緯

大友は短編漫画『Fire-ball』制作中にスタッフたちと映画『エクソシスト』の話題で盛り上がり、SFホラーの要素を加えた漫画を描くことを決めた[3][10]大林宣彦のホラー映画『HOUSE』が日本人に馴染みのない西洋館を舞台にしていたことに違和感を覚えた大友は、また当時、東京高島平団地で飛び降り自殺が相次いでいたことに着想を得て、舞台を日本の団地にした[3]

単行本1冊を1本の映画のように描こうと思った大友は、最初からきっちり構成を決めて本作を描いた[10]。その構成を守るためにかなり苦労したと言う大友は、単行本化にあたっては加筆修正を加えるなどかなり手を入れている[1][10]。特に最終回は全面改稿に近い形で、連載版の最終回はひろしの父親に撃たれたヨッちゃんが、チョウさんのいる団地の屋上までたどり着き、そこで警察のヘリコプターに二人が発見されるという形で終わっているが、単行本ではそうはならず悦子とチョウさんの戦いが繰り広げられて団地が崩壊する等、最終的には百ページ近い増ページになった[1]

あらすじ

第一話

「堤団地」というマンモス団地では不審な死亡事件が連続していた。警察では山川部長が事件の捜査を指揮していたが、なかなか進展しない。ある夜、団地を巡回していた巡査2名のうち1名が屋上から転落死し、拳銃が紛失。常識では説明がつかないほど短い間の出来事であった。さらに別の夜、山川は団地で、自分を嘲笑う誰かの声を聞く。声を追って団地の屋上へ行く。そこに団地に住む老人「チョウさん」が空中浮遊をした状態で現れた。一連の事件は痴呆により子供がえりしたチョウさんによる、超能力での犯行だったのだ。直後、山川もまた団地の屋上から転落して死亡する。小学生の悦子の一家が団地に引っ越してきたその日、チョウさんが幼児をベランダから転落させるが、悦子がいち早く気づき、新たな犠牲者を阻止する。悦子もまた能力を持ち、その力を見せつけてチョウさんの「イタズラ」を牽制する。チョウさんは自分と同じ力を持つ悦子の存在に戦慄する。

第二話

警察では、山川の後任として岡村部長が着任するが、あいかわらず捜査は進展しない。一方の悦子は、アル中の父親を持つ吉川ひろし、「ヨッちゃん」と呼ばれる藤山良夫たちと親しくなる。そんな中、団地の住人である浪人生・佐々木勉がチョウさんに操られカッターナイフで悦子に襲いかかる。

第三話

悦子は佐々木を能力で止めるが、佐々木は弾け飛んで命を落とす。悦子はショックを受け団地の診療所に収容される。相次ぐ異常事件に、捜査員である高山刑事は参考意見を求めてシャーマンの野々村を訪ね、二人は団地へ向かうが、悦子とチョウさんの存在を感じ取った野々村は団地の入口で震え出し、高山に「子供に気をつけなさい」と告げて逃げ帰ってしまう。一方、吉川ひろしとヨッちゃんが悦子の友達だと知ったチョウさんは、転落死した巡査から奪った拳銃を吉川ひろしの父に与える。夜、チョウさんに操られたひろしの父は団地の子供を射殺しながら、悦子のいる診療所に侵入する。悦子はひろしの父と対決する。

第四話

悦子はひろしの父を気絶させるが、ヨッちゃんが撃たれてしまう。チョウさんの居場所を見つけた悦子はチョウさんとの直接対決に挑む。チョウさんと悦子は宙に浮き、空を飛び、コンクリート片等を念動力で相手にぶつけ、団地の上空で戦い続ける。チョウさんをしかりつける悦子に、チョウさんは「今まで僕一人で遊んでたのに」と言う。チョウさんは再びひろしの父を操ってひろしを射殺し、これに激昂したヨッちゃんがひろしの父を撲殺。さらにチョウさんが起こした団地のガス爆発を阻止しきれず、激情に我を忘れた悦子は、あらゆるものを破壊しながらチョウさんを追う。崩壊する団地の中で続く戦いに巻き込まれ、大勢の人々が命を落とす。悦子から逃げるばかりとなったチョウさんがほうほうの体で建物の外に這い出し、悦子が泣きながら追い詰めるが、悦子の母が悦子を見つけ、ふたりは抱き合う。悦子が我を取り戻し、事態は収束する。

二週間後の警察の記者会見では、警察はまだ調査中と発表するも、マスコミによりひろしの父によるガス爆発事件として報道されてしまう。ケガから復帰した高山刑事はチョウさんに面会し、以前にシャーマンの野々村が言った「子供」とは、実は痴呆により子供がえりしたチョウさんのことであったと気づき愕然とする。チョウさんの部屋からは過去の犠牲者の所持品が多数発見されたが、痴呆老人であるチョウさんからの事情聴取は意味をなさず、警察は真相を掴む事はできない。チョウさんは行き先の養老院が決まるまで、いったん団地に戻る事になり、高山刑事はチョウさんの身辺警護という名目で彼を監視する。

平穏な春の日の団地に、京都の母親の実家にいるはずの悦子が再び現れる。高山刑事はチョウさんが座るベンチの近くにいて、チョウさんの杖が破裂するのを見たが、何が起きているのかは理解できない。悦子は、チョウさん達がいるのとは別の場所にいて、ただブランコをこいでいる。静かな悦子と怯えるチョウさんは睨み合いを続け、団地の子どもたちだけがそこで起きているなにかを感じ取り、見つめている。やがてチョウさんは息絶えてすべてが終わり、悦子は姿を消し、子どもたちは遊びの輪に戻っていった。

登場人物

悦子
通称エッちゃん。作中、姓は語られない。名前の由来は『さるとびエッちゃん』(「大友克洋インタビュー 1993」、Pioneer LDC.)。両親とともに堤団地に引っ越して来た(ちなみに父親はこの引っ越しの場面にしか登場しないが、悦子がマイルドセブンのお使いを頼まれて出掛ける場面は描かれている)。3号棟の吉川ひろしの隣であるが号数は不明。小学生らしいが年齢・学年は不明。明るく人見知りせず、周りの意見に流されない性格で、同級生から孤立していた吉川ひろしや、周囲から怖がられているヨッちゃんとはすぐに仲良くなった。超能力者であり、引っ越しの当日チョウさんと遭遇してその正体を見抜き、自分も超能力を用いてチョウさんを牽制するが、その結果チョウさんに命を狙われるようになる。チョウさんが佐々木勉や吉川ひろしの父を操り攻撃してきたことでチョウさんとの対決に至る。使える超能力はチョウさんと同等かそれ以上であるらしい。ただし、子供だけに感情のコントロールが不安定で、パニックに陥ると相手構わず攻撃する危うさも併せ持っており、作中では善意の人間が何人も犠牲になっている[注 2]。チョウさんが引き起こしたガス爆発を止められず、また吉川ひろしとヨッちゃんが死亡したことにショックを受け、号泣しながら団地を破壊しチョウさんを追うが、建物の外に出たところを母親が見つけ、泣きながら抱き合う。その後母親の実家がある京都に移住したが、ある春の日に団地に再び現れる。チョウさんの死亡後、団地から消えた。
内田 長二郎
通称チョウさん。堤団地3号棟608号で一人暮らしする65歳の男性。以前同居していた娘一家は内田姓で雄一・恵子・一郎だったが、転勤になりチョウさんをおいて引っ越していった。一連の連続変死事件の犯人で、超能力者。空中を自在に飛翔し、瞬間移動もできる。団地にガス爆発を引き起こす際は、念力で元栓を操作した。佐々木勉に対して行ったように、何らかの手段で他人を操ることができる。いわゆるボケ老人であるが、現代の認知症の概念というより、作中の「ガキと一緒だよ」という表現そのものの状態。悦子は「いたずらっ子」「なんて子なの」と言い、大人だとは思っていない。悦子との対峙の際には一連の事件のことを「僕一人で遊んでた」と言う。他人からみればガラクタのような玩具、模型等々を大量に集めていて、恐らくは大半は「イタズラ」の犠牲者からの収集品。中でも一番のお気に入りは、作中冒頭で転落死する上野元司という10階(どの棟かは不詳)の住人の子・タケシの、羽のついた帽子である。悦子との対決の以降には、殺人を再開したような描写はないが、警察からの事情聴取を受け、養老院の空きができるまで元通り団地に暮らす事になる。ある春の日、悦子が堤団地に姿を現してまもなく、絶命する。
吉川 ひろし
堤団地3号棟411号に父と住む男の子。悦子一家の隣人。母親は既に家を出ていて不在。夕飯は菓子パンと牛乳を買って一人で食べる。酒乱の父親が原因で団地の子供たちからは距離を置かれている。1人でキャッチボールをしていたところに悦子とヨッちゃんが加わり、仲良くなる。ある夜、子供が射殺された話を聞いて野次馬のつもりでヨッちゃんとともに歩き回り、診療所で悦子と自分の父に遭遇する。悦子が消えた後、父親により射殺される。
ひろしの父
名前は不明。以前はトラック運転手で、交通事故により片脚を負傷してからアルコール依存症になった。酒に酔って妻と喧嘩し警察沙汰を起こしたことがあり、その後妻に逃げられた。団地内の子供たちは「しゅらん」と呼んでいる。佐々木勉の事件の後の夜、突然目の前に拳銃が現れる。さらに後の夜、拳銃を手にしてまず子供1人を射殺し、悦子がいる診療所に向かう。チョウさんに操られているようだが、佐々木勉が終始無言・無表情であったのに対し、にやにや笑いながら自分の言葉で喋っていると思われる。悦子を撃ち損ねてヨッちゃんを撃ち、悦子がその場から消えた後、息子を撃つ。逆上したヨッちゃんにより殺害される。以前にガス配管工の経験もあった事から、警察の記者会見を聞いたマスコミによってガス爆発事件の犯人として報道される。
藤山 良夫
通称ヨッちゃん。堤団地2号棟の5階に母親と同居する。屈強な体躯の男性であるが、団地の管理人が「頭は子供」と言う知的障害者。年齢不詳だが、警察の記者会見ではさん付けされた後で君付けに訂正されたため、未成年と思われる。悦子、吉川ひろしは自分達と対等な子供であると思って遊んでいる。吉川ひろしの父が拳銃を持って診療所に現れた際に撃たれ、さらにひろしが父親に撃たれた事により激昂し、ひろしの父を壁に叩きつけて殺害する。悦子とチョウさんの対決により建物が崩壊する中、悦子を助けに向かおうとするも、手塚夫人と遭遇。手塚夫人によって乳母車ごと落とされた吉川ひろしを抱きしめながら落下していった。
高山
長髪の刑事。作中、警察官としての階級は言及されていない。山川部長からは「長髪の若造」と評されていたらしい。岡村部長との雑談で、火の玉を見たことはあるが幽霊は疑問である旨を言うが、佐々木勉の事件で団地に行った際、山川の幽霊と思われるものを見る。その影響か、金子教授を訪ね、シャーマンの野々村典子を紹介してもらう。チョウさんと悦子の対決の際、ガス爆発のため頭部にケガをして入院することになる。その後の職務復帰の日、取調室にいたチョウさんに面会しようとして、再び山川の姿を見てしまう(吉川ひろしの父の姿もあったが。作中ではそれらが幽霊なのか、チョウさんか誰かの作り出した幻影なのかは説明されない)。実際にチョウさんと面会して、以前野々村が言っていた「子供」の意味を理解し驚愕するのだが、悦子も含まれるとは気付いていない。ただチョウさんと悦子の間に何かがあったことを感じ取り、チョウさんの身辺警護という名目で監視を行う。そして春、悦子が団地に現われた日、高山には何が起きているのかわからない中でチョウさんが絶命する場面を目撃する。
山川部長
作中前半で捜査を指揮する警察官。部長と通称されるが階級は言及されていない。事件を調査中、怪死事件には犯人がおり、犠牲者の持ち物を欲しがって収集するために殺人を働いていることまでを突き止める。叩き上げのベテラン然とした風貌だが、所望の品と見たポケットベルを差し出し、姿なき声に言葉で答えるなど、超常的な場面にも柔軟に応じる。だが、早く犯人を捕まえないと捜査から降ろされる、リューマチが痛い、娘の帰りが遅い、母親に満足な治療を受けさせられなかったことを悔やんでいるなど、個人的な事情をからかう声を追いかけるうちに、声の主・チョウさんの待ち構える団地の屋上にたどり着き、転落死を遂げる。その後、幽霊か幻影のような姿を岡村や高山に目撃されるようになる。
岡村部長
山川部長の後任。山川とは同期だった。着任後に団地を訪ねた際、山川の幽霊のようなものを見て、「来るな」という警告の声を聞く。事件の不可解さには気づくが、超常的なものを信じるかどうかは明確にされていない。悦子とチョウさんの対決の2週間後の記者会見で公式には、拳銃を紛失した巡査は「自殺」、ガス爆発は地盤沈下による、吉川ひろしの父について捜査中、等発表する。チョウさんが何らかの事件の鍵だと睨んでいたようだが、チョウさんが認知症によりまともに証言が取れない事がわかったため、部下には「振り出しに戻ったな」と言う。高山がチョウさんの身辺警護をしたいと申し出たのを許可する。
伊藤
山川と岡村、両部長の配下において団地の連続不審死の捜査に当たる刑事で、高山が敬称敬語で接する人物。巡査の案内で、高山と共に玩具で溢れかえったチョウさんの部屋を訪れた後、腹部に銃弾を受けて興奮状態のヨッちゃんに遭遇し、格闘となる。その際、ヨッちゃんの殴打を頭に受けて失神し、意識を失ったまま爆発と崩壊に巻き込まれる。事故の後、一命を取り留め、復帰に強い意欲を示すものの、結局職を辞すことが刑事達の会話で語られる。
佐々木 勉
三浪の浪人生。堤団地の住人だが具体的な部屋番号等は不詳。近所から陰口を叩かれながらも、本人は真面目に勉強する気はあまりない。航空機のプラモデルが趣味。いわゆるオタク。チョウさんに操られて悦子を襲い、悦子の目の前で自分の首をカッターで切り死亡する。その後、天井にまで血が飛び散った現場の描写や、「人が一人はじけた」という伊藤刑事の言葉から、文字通りはじけ飛んだことが示唆されているが、それがチョウさんの仕業なのか、混乱した悦子の力が暴走したせいかは不明。
手塚夫人
堤団地8号棟783号の住人。胞状奇胎による流産で子供をなくしたという噂があるノイローゼ気味の主婦。子供が乗っていない乳母車を押して辺りを徘徊している。銃で撃たれたひろしを乳母車に乗せて、マンションから落とした。崩壊するマンションの落下物に押し潰されて死亡。
金子教授
大学教授。専攻は宗教人類学。趣味として、日本のシャーマンの研究もしている。高山刑事にシャーマンの野々村典子を紹介する。
野々村典子
高山刑事が金子教授の紹介で会うことになったシャーマン。高山とともに赴いた堤団地に足を踏み入れる直前、とても自分の手には負えない状況であることを感知し、恐怖に震え上がる。高山には、まだまだ多くの人が死ぬ、子供に気をつけなさい、と警告する。だが、高山がその真意に迫ったのは、一連の惨劇が終局を迎える頃だった。
竹山巡査
団地内の見回りをしていた巡査。子どもたちとも気さくにやり取りをし、ピストルを見せてとせがまれてもあしらっていたが、そのやり取りを聞いていたチョウさんによってピストルを目当てに標的とされてしまう。同僚の高木巡査と夜間の見回り中、高木巡査が小便に行った数分の間に団地の屋上から飛び降りて死亡した。公式には拳銃を奪われた事に責任を感じて飛び降りたという形になっている。この時奪われた拳銃が、チョウさんを経由してひろしの父親の手に渡る。

書誌情報

  • 『童夢』[注 3](1983年8月18日発行、双葉社アクションコミックスISBN 4-5759-3032-6
  • 『童夢 豪華版』[注 4](1984年12月25日発行、双葉社)ISBN 4-5759-3032-6
  • 『OTOMO THE COMPLETE WORKS 8 童夢』[注 5](2022年1月21日発行、講談社)ISBN 4-0652-6263-1

イメージアルバム

映画化

脚注

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