胸部大動脈瘤
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| 胸部大動脈瘤 | |
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| 胸部大動脈瘤のX線写真。縦隔陰影の拡大を認める。矢印は下行大動脈の左側辺縁を示している。 | |
| 概要 | |
| 診療科 | 循環器学 |
| 分類および外部参照情報 | |
| ICD-10 | I71.1, I71.2 |
| ICD-9-CM | 441.1, 441.2 |
| MedlinePlus | 001119 |
| eMedicine | article/761627 article/424904 article/418480 |
| MeSH | D017545 |
胸部大動脈瘤(きょうぶだいどうみゃくりゅう、英: thoracic aortic aneurysm、略称: TAA)とは、主として胸部大動脈に存在する大動脈瘤のことであり、胸郭内の大動脈壁が全周性または局所性に突出した状態を指す。
胸部大動脈瘤は腹部大動脈瘤と比較して頻度は高くないが[1]、未治療ないし未発見のまま放置されると、瘤壁の解離や瘤の破裂のために致命的になる恐れがある。
原因
胸部大動脈瘤の原因は複数のものが考えられているが[5]、40歳未満の若年層の場合はマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群、または先天性大動脈二尖弁などのような結合織異常を来す疾患に起因する大動脈壁の脆弱化により、特に上行大動脈に大動脈瘤を発症することが多い。大動脈解離に続いて胸腹部大動脈瘤を発症することもあり、鈍的外傷によって発症することもある。
下行大動脈瘤の主たる原因は動脈硬化であるが、弓部大動脈瘤の原因は解離、動脈硬化、その他炎症性などがある。
年齢
統計的には、剖検例からの推定によると非解離性大動脈瘤の発症のピークは男性70代、女性80代である[6]。高齢に偏っているのは動脈硬化との関連と思われる[4]。
危険因子
高血圧と喫煙が最も重要な危険因子であるが、研究により遺伝的要因の重要性が徐々に認識されてきている。患者の概ね10%は大動脈瘤の家族歴を持つとされる。また同一患者で体の別の場所に動脈瘤を発症した既往のある者は、胸部大動脈瘤を発症する確率が高い[7]。
スクリーニング
2010年3月にAHA(アメリカ心臓協会)、ACC(アメリカ心臓病学会)を含む複数の学会がガイドラインを策定した[8]。その勧告によると、
- 胸部大動脈瘤の患者の一親等の親族は、無症候性の大動脈瘤の有無を大動脈造影で検査することが望ましい。
- 胸部大動脈解離を示唆する症状を呈する者に対してはスクリーニング検査を行うべきである。
- マルファン症候群と診断された者は直ちに心臓超音波検査を受けて大動脈径を計測し、更に半年後に大動脈の拡大の有無をチェックすることが望ましい。
日本において2011年に改訂された「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」[4]でも、
自覚症状として嗄声(させい)、飲み込みにくいといった症状、漠然とした背部痛等がみられる場合は胸部CTをまず施行する
とし、まずCTで大動脈のサイズを測定することを推奨している。
治療
大動脈径の閾値は治療方針を決定する観点から重要である。「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」では、
- 初回検査で大動脈径が45mm未満であれば半年後にCTを再検、半年間で拡大がなければ次からは1年に1回の頻度で径のチェックを行う
- 初回検査で55mm以上であった場合は手術リスクを考慮しながら手術適応を検討する
- マルファン症候群のような遺伝的大動脈疾患や先天性二尖弁,大動脈縮窄症の例では45mmを超えた場合は侵襲的治療について検討する
- 半年で5mm以上径が増大する場合は拡大スピードが速いと判断し、破裂の危険性が高いため、全体の径よりも優先し手術治療の方針とする
- 嚢状の大動脈瘤では、径が大きくなくても破裂の危険性が高いので、形態にも留意する必要がある
との指針を示している[4]。
治療方針としてはステントグラフトを用いた血管内治療、もしくは手術治療(大動脈人工血管置換術、または大動脈基部置換術)がある[9]。手術治療の適応になるか否かは瘤のサイズによる。上行大動脈瘤は下行大動脈瘤よりも、径が小さい場合でも手術が必要になることが多い[10]。
大動脈瘤破裂・切迫破裂
大動脈瘤が破裂すれば,大部分は病院にたどり着く前に死亡する[4]。一旦破裂が起こった場合の死亡率は50~80%に及び、マルファン症候群の患者の死因の大半も大動脈疾患が占めている。救急室へ収容できたとしても診断がついてから緊急手術まで分単位の時間が生死を分けるといってよい。いまだに大動脈瘤の切迫破裂は急性期死亡率の非常に高い重篤な病態である。
胸部大動脈瘤で激しい胸痛やショックを来たした場合で、胸部X線写真による縦隔拡大、血胸等を認めたときは破裂もしくは切迫破裂を強く疑う。心嚢(心膜腔)への破裂もしくは切迫破裂では血性滲出液の貯留により心タンポナーデを来たし、血行動態は非常に不安定になる。その場合CT検査室に運ぶこともリスクは高いが、緊急手術の可能性を考慮するならばCTの情報が必須となる。