アメリカアリゲーター
大型のワニの一種
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アメリカアリゲーター(学名:Alligator mississippiensis)は、アリゲーター科に分類される大型のワニの一種。ミシシッピワニ、ミシシッピアリゲーターとも呼ばれ,学名の略名としてAl.mississippiensisと論文に記入される事も稀にある[5]。アメリカ合衆国南東部に分布する。アリゲーター上科の現生2種のうちの1種で、もう1種のヨウスコウアリゲーターよりも大型である。
| アメリカアリゲーター | |||||||||||||||||||||||||||
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生息年代: | |||||||||||||||||||||||||||
| 保全状況評価[2] | |||||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Alligator mississippiensis (Daudin, 1802) | |||||||||||||||||||||||||||
| シノニム[4] | |||||||||||||||||||||||||||
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| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| American alligator common alligator gator | |||||||||||||||||||||||||||
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分布域 |
成体雄は全長3.4-4.5m、体重500kgに達する。全長5.84m、体重1,000kgという未確認記録もあり、アリゲーター科の中で最も重く、クロカイマンに次いで2番目に長い。雌は全長2.6-3mと小型である[6][7][8][9][10]。テキサス州南部からノースカロライナ州まで、熱帯および亜熱帯域の淡水湿地や沼地に生息する[11]。アメリカワニとは同所的に生息するが、本種は吻が幅広く、口を閉じると歯が隠れ、体色が暗い。アメリカワニは塩分耐性が高いが、本種は寒さへの耐性が高い。
頂点捕食者であり、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類を捕食する。幼体は主に無脊椎動物を捕食する。湿地の生態系においては、大きな穴を掘るため、重要な生態系エンジニアとなっている。特に繁殖期には鳴き声を上げて縄張りを主張し、繁殖相手を探す[12]。雄は低周波の音を発して雌を呼ぶ。水辺に小枝、葉、泥で巣を作り、卵を産む。幼体は黄色い帯が入り、母親は最長で1年間子育てを行う[13]。爬虫類では珍しく、親が子育てを行う。母親は卵を守り、幼体を口で水辺へと運ぶ[14]。
国際自然保護連合のレッドリストでは、低危険種に分類されている。狩猟によって個体数が激減したため、絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律によって、絶滅危惧種に指定された。以後の保護活動によって個体数は増加したため、1987年に絶滅危惧種指定は解除された。フロリダ州、ルイジアナ州、ミシシッピ州では、州の爬虫類に指定されている。
分類と系統
1801年にフランスの動物学者であるフランソワ・マリー・ドゥダンによって、Crocodilus mississipiensis として記載された。1807年にはジョルジュ・キュヴィエによってアリゲーター属が設立され、本種は現在の属に移された[15]。アリゲーター属は本種とヨウスコウアリゲーターの2種からなり、アリゲーター亜科の唯一の現生属である。アリゲーター亜科はカイマン亜科の姉妹群である。アリゲーター科の系統樹を以下に示す[16][17]。
進化
250万年前から1万1700年前までの更新世の地層から、本種の化石が発見されている[18]。2016年にはフロリダ州から、約700万年から800万年前の後期中新世のアリゲーター属の化石が発見された。この化石の頭蓋骨は、現生のアメリカアリゲーターとほとんど類似していた。この化石種とアメリカアリゲーターは姉妹群と考えられ、本種の系統が中新世に存在していたとされた[19]。2020年の研究では、中新世の化石は Alligator mefferdi と Alligator hailensis のもので、アメリカアリゲーターは中期更新世に進化したとされた[1]。
1990年代にミトコンドリアゲノムの配列が解読された結果、ワニの進化速度は哺乳類と同程度で、鳥類よりも速いとされたが、[20]2014年にゲノムが公開された結果、ワニの進化速度は哺乳類や鳥類よりもはるかに遅いことが示された[21]。
形態


口吻はやや長く、吻端は扁平かつ幅広く丸みを帯びる。口吻のキールは発達しない。頸鱗板は4枚。前肢には指の半分くらいまで、後肢で趾の先まで水かきがある[22]。
大きさ
平均的にはアリゲーター科で最大の種だが、クロカイマンはより大型化する可能性がある[23]。体の大きさは様々な要因によって左右され、例えばアーカンソー州南部、アラバマ州、ノースカロライナ州北部など、北部の個体群は小型化する傾向にある。体は他のワニと比べて頑強である。飼育下の全長3-4mの雄は、体重200-350kgであり、飼育下では給餌やストレスなどの要因で体重が増加することがある[24][25]。
大形の雄は全長4.6m、体重500kgに達し、雌は最大でも3mである[6][7][26]。雌は最大でも全長3.22m、体重170kgであった[27]。雄の老齢個体はさらに大きくなることがある[28][29]。
通常は雄で全長約3.4m、体重は大きくても360kgで[8]、雌で全長約2.6m、体重は大きくても91kgである[9][10]。フロリダ州のニューナンズ湖では、雄の平均体重は73.2kg、全長は2.47mで、雌の平均体重は55.1kg、全長は2.22mであった[30]。フロリダ州のレイク・グリフィン州立公園では、成体の平均体重は57.9kgであった[31]。
一般的にワニは一生成長し続けると言われている。この主張は幼体のデータに基づいており、近年は反例もある。1979-2015年にサウスカロライナ州で行われた調査では、雄は43歳、雌は31歳で成長が停止することが明らかになった[32]。
大きさの性的二形は、ワニの中では比較的小さい[33]。例えばイリエワニでは、雄の全長は雌の2倍、体重は4倍以上となる[34]。雌は生存率が高く、個体群の大部分は幼体または若い成体であるため、全長3.4mを超える大型雄は少ない[35]。
19世紀から20世紀までは、全長5-6mという大型個体の報告があった[36]。最大の個体は1890年にエドワード・マキルヘニーによって仕留められた雄で[37]、ルイジアナ州マーシュ島で仕留められ、その全長は5.84mと測定されたが、大きすぎたため動かせず、標本にはできなかった[29]。体重は約1,000kgと推定される[38]。アーカンソー州では全長4.04m、体重626kgの個体が仕留められた[39]。フロリダのエバーグレーズ国立公園では、5.31mという未確認記録がある[40][41]。科学的な検証が行われたデータの中では、全長4.23m、体重473kgの個体が最大であったという報告があるが、頭蓋骨からの推定で、全長4.54mという標本がある[24]。アラバマ州では全長4.5m、体重458.8kgという記録がある[42][43]。
記録
| 日付 | 場所 | 全長 | 体重 | 胴囲 | 頭蓋骨の長さ | 出典・特記事項 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1890年1月2日 | ルイジアナ州Lake Vermilion | 584.2 cm | 不明 | 不明 | 不明 | エドワード・エイブリー・マキルヘニーによって射殺された。重すぎたため動かすことが出来なかった[44]。 |
| 1886年 | ルイジアナ州エイブリー島 | 523.24 cm | 不明 | 不明 | 不明 | ジョン・エイブリーによって生け捕りにされたが、輸送中に緑色の塗料を掛けられたことで死亡した[45]。 |
| 1916年3月 | ルイジアナ州マーシュ島 | 561.34 cm | 不明 | 不明 | 不明 | マーシュ島の猟区管理人であるMax Touchetが生け捕りにしようとしたが、殺害してしまった[46]。 |
| 1956年 | フロリダ州アポプカ湖 | 530.86 cm | 不明 | 不明 | 不明 | アラン・ウッドワードによれば、頭骨の長さから全長421.64 cmと推定された[47][48]。 |
| 2010年11月11日 | フロリダ州セントジョンズ川 | 435.61 cm | 297 kg | 不明 | 不明 | 当時のフロリダ州では最長記録とされた[49]。 |
| 2012年8月23日 | フロリダ州タルキン湖 | 426.72 cm | 不明 | 不明 | 60.325 cm | 頭部の長さは州の記録で最大のものであった[50]。
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| 2014年8月16日 | アラバマ州アラバマ川 | 480 cm | 458.8 kg | 不明 | 不明 | 確実な記録ではこの個体が最大のアメリカアリゲーターとされる[51]。 |
| 2016年5月31日 | フロリダ州パルメット | 426.72 cm | 不明 | 不明 | 不明 | 推定全長は426.72 cmから457.2 cmである[52][53][54]。 |
| 2020年9月26日 | アーカンソー州メリサック湖 | 425.45 cm | 362.874 kg | 不明 | 不明 | アーカンソー州では最長の記録である[55]。 |
| 2022年2月2日 | フロリダ州ワシントン湖 | 401.32 cm | 410.501 kg | 不明 | 不明 | 家畜を食べるため駆除された[56]。
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| 2023年8月29日 | ミシシッピ州ヤズー川 | 434.34 cm | 364.00 kg | 167.64 cm | 不明 | ミシシッピ州では最大の記録である[57][58]。 |
体色
背面はオリーブ色、茶色、灰色、黒色である。一般的に、他のワニと比べて黒い傾向にある。アメリカワニよりも黒みが強いことが特徴である[28]。腹面はクリーム色である[59]。幼体は背面に黄色い横縞が入る[22]。メラニンの遺伝子が欠損または阻害された結果、アルビノとなる場合もある。野生では非常に希少であり、日光と捕食に弱いため、基本的に飼育下でしか生存できない[60]。
頭部
74-80本の歯を持つ[36]。歯と顎の形状は、成長に伴って大きく変化する[61]。Ventral pterygoideus muscles という筋肉は肥大化し、非常に強力になる[62]。幼体の歯は小さく針のようで、吻も狭いが、成長に伴って歯は頑強に、吻は幅広になる。これは食性の変化に関連しており、幼体は魚や昆虫など小型の獲物を食べるが、成体はカメ、鳥などの大型脊椎動物を捕食する[61]。飼育下では吻が幅広くなる。顎を閉じた際には下の歯が見えなくなる。メガネカイマンと同様に、頭部に隆起があるが、それほど目立たない[36]。アメリカワニと混同されることがあるが、本種は口を閉じている際に、4番目の歯が上顎に収まって見えなくなることが特徴である。おおよそ1年に1度、頻繁に歯が生え変わる[63]。その長い生涯で、2,000本以上の歯が生え変わることもある[64]。
咬合
咬合力は現生生物の中でもかなり大きく、最大で13,172Nである。イリエワニはさらに大きい16,414Nであった[65][66]。一方で顎を開く筋肉は弱く、手やテープで顎を閉じることも可能である。大きさが同じ場合、雌雄で咬合力に大きな差は無い。体が大きいほど咬合力も強くなる[61]。
動作
陸上では「這い歩き」と「四足歩行」で移動する。しかしワニはトカゲやイモリとは異なり、這い歩きも通常の歩行に近い。そのため「low walk」と「high walk」とも言われる。多くの陸上脊椎動物とは異なり、四肢の近位端ではなく遠位端を使って速度を上げる[67] 。
水中では骨盤と尾を左右に振り、魚のように泳ぐ[68]。前肢は5本指、後肢は4本指である。後肢には水かきがあり、これも遊泳に利用する[69][70]。空気は体の中を一方向に流れ、肺を通った際に循環する[71]。筋肉により肺を移動させ、浮力の調節を行う。これにより水中での浮上と沈降、回転が可能となる[72]。
分布
新北区および新熱帯区の種で、北はサウスカロライナ州のサウスカロライナ・ローカントリーから、南はフロリダ州のエバーグレーズ国立公園、西はテキサス州南東部まで、アメリカ合衆国南東部に分布する[73]。ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、ジョージア州、フロリダ州、ルイジアナ州、アラバマ州、ミシシッピ州、アーカンソー州、オクラホマ州、テキサス州の一部で見られる。いくつかの地域には最近進出したと考えられ、個体数は少ないが繁殖も起こっている[74]。ルイジアナ州は最も個体数が多い。将来的にはメキシコにも進出する可能性がある[75]。分布域は徐々に北上しており、バージニア州にも再び進出している[76]。分布はテネシー州にも拡大しており[77]、水路を経由してやって来た個体により、州南部に小さな個体群が生まれている[78]。バージニア州からは一度絶滅したが、時折ノースカロライナ州の個体がグレート・ディズマル・スワンプに迷い込んでいる[79]。2021年にはメリーランド州のチェサピーク湾付近で、アリゲーターがハンターに射殺された。同地域からは他にも報告があるが、飼育下個体が逸脱したものと考えられる[80]。
生息地
沼地、小川、川、池、湖、湿原、沼沢地に生息する[81][82]。一頭のアリゲーターが、アトランタ北部の川で10年以上生息し続けていた[83]。雌や幼体はカロライナ・ベイズや季節性の湿地で見られる。汽水域に迷い込むこともある[84]。舌の塩類腺が機能しないため、アメリカワニよりも塩分耐性が劣る[85]。フロリダ州北中部での研究によれば、季節と性別によって生息地は変化する。春には、雄は湖の開けた水域を好み、雌は沼地と湖の両方に生息する。夏には、雄は開けた水域を好み、雌は沼地で巣作りや産卵を行う。冬には、雌雄ともに土手や茂みに巣を作る[30]。生息域の一部では都市に進出することもある。ゴルフ場は水場が多く、魚や鳥などの獲物も豊富であるため、本種にとって適した環境である[86][87]。
低温への耐性
アメリカワニよりも低温に強く、アメリカワニは7℃以下では生存できないが、アメリカアリゲーターは同様の温度でもしばらくは生き延びることができる。そのためアメリカアリゲーターは、アメリカワニよりも北方に広く分布している[88]。アメリカアリゲーターは他のワニよりも、寒冷な気候に適応している[89]。冬季に気温が低下する地域の個体群は冬眠する[90]。水が凍り始めると吻を水面に突き出し、氷の上で呼吸が可能となる[84]。この状態で生存することができる[91]。
生態と行動
主に陸上で日光浴をするが、木の枝に登ることもある。しかし脅威を感じるとすぐに枝から水中に飛び降りるため、この行動はあまり見られない[92]。エバーグレーズなどの湿地では、「alligator holes (アリゲーターホール)」と呼ばれる小さな池を作る。これにより湿地の環境が大きく変化するため、本種はキーストーン種とされている。アリゲーターホールは乾季でも水場を維持し、水生生物の生息地となる。アリゲーターホールの周囲に巣が作られ、土が堆積することで、他の爬虫類が巣を作る場所や、植物が生息する場所が形成される。またアリゲーターホールは、乾季には他の生物にとって重要な摂餌場所となる[93]。ヌマスギ属の生える湿地の石灰岩の窪地では、ホールは大きく深い傾向がある。対して泥灰岩の草原や岩の多い森林の空き地では、小さく浅い傾向にある。沼地の泥炭質の窪地ではより変化に富む[94]。
発声
喉頭の声帯を外転および内転させることができるが、伸縮させることはできない。しかし周波数をうまく調節する[95]。アリゲーターの声帯は上皮、粘膜固有層、筋肉から成る。音域は50-1200Hzである。周波数は声門間隙と喉頭組織の硬さに左右される。声門下圧も重要な要素であり、圧力が閾値を超えると声帯が振動する[96]。
ワニは爬虫類の中で鳴き声が最も大きく、その種類は年齢、大きさ、性別によって異なる[97]。発声の目的としては、縄張りの主張、苦痛、威嚇、繁殖などがある。幼体が巣から出る際には、甲高い鳴き声で母親を呼ぶ[98]。また脅威を感じたときにも鳴き声で母親を呼ぶ。成体は威嚇や縄張りの主張のために、うなり声やシューという音、せき込むような音を発する。
肺に空気を吸い込み、吠えながら吐き出すことで、大きな吠え声を発する。これは自身の存在を示す目的があると考えられる[99][100]。雄は繁殖の際に超低周波音を発する[100]。繁殖期が始まると、吠え声を発し始める[101]。頭を斜めにし、尾を弓状に曲げて吠える。雄が超低周波音を発すると、雄の真上と両側の水面がしぶきを上げ[102]、これは「water dance」と呼ばれる[99][103]。繁殖期には雌が鳴き始め、雄が参加して合唱となる[104]。大規模な合唱を観察する人々は、聞こえるよりも低周波音を感じることが多い。周波は58.27Hzであり、チューバの音、ソニックブーム、航空機の音に反応して鳴き始めることもある[105]。
他種との関わり
寄生虫の宿主となる事が多く、2016年にテキサス州で行われた調査では、調査されたすべての個体が寄生虫に寄生されており、肺に寄生する舌形動物、胃に寄生する線形動物、腸管に寄生する寄生虫など、少なくとも20種の寄生虫が存在した。他の州でも寄生率に有意な差はなかった[106]。
ヌートリアは20世紀半ばに南米から北米の湿地帯に導入され、数百万匹まで爆発的に増加した。沿岸の湿地帯に深刻な被害を与え、堤防に巣穴を掘ることもある。ルイジアナ州ではヌートリアの個体数を削減するため、懸賞金をかけて対策を行った。大型のアメリカアリゲーターはヌートリアを捕食するため、ルイジアナ州での個体数を抑制し、エバーグレーズへの拡大を防いでいる。ヌートリアの対策として狩猟や罠があるが、これはアリゲーターへの圧となってしまうため、その他の方法を探す必要がある[107]。
近年エバーグレーズ国立公園に、ビルマニシキヘビが外来種として定着した。エバーグレーズではアメリカアリゲーターが多いため、ニシキヘビの個体数を低く抑え、分布の拡大を防いでいる可能性がある。ビルマニシキヘビが大型のアメリカアリゲーターを捕食した事例があるが[108][109][110]、アリゲーターの個体数への悪影響は見られない[111]。フロリダ州北中部では、幼体が外来種のスクミリンゴガイを大量に捕食している。他の地域でも同様の傾向にある可能性がある[112]。
環境との関わり
エバーグレーズの復元において、指標生物として重要な種となっている[113]。アメリカアリゲーターは、生態系内の水、塩分、生産性の変化に非常に敏感である。また捕食によってヌートリアなどの小型哺乳類の個体数を減らすことで、湿地の植生にも影響を及ぼしている[107]。アリゲーターはルイジアナ州の沿岸湿地を保護するうえで重要な役割を持つ可能性がある[114]。また湿地の水鳥にも関係しており、アリゲーターは巣から落ちた鳥を食べるものの、哺乳類の捕食者が水鳥の営巣地に近づくことを防いでいる。水鳥はアリゲーターの生息する地域に引き寄せられており、フロリダ州のワニ養殖場など、ワニが多く生息する場所に水鳥が巣を作ることが判明している[115]。
摂餌と食性
- ミナミヒョウガエルを食べる幼体
- ウシガエルを食べる若い個体
- ミミズを食べる若い個体
- フロリダガーを食べる
- プレコを食べる
- ワタリガニ科を食べる
- アメリカホシハジロを食べる
- オオアオサギを食べる
- フロリダスッポンを食べる
- クーターガメ属を食べる
- ヌートリアを食べる
- ブタを食べる
- シカを食べる
捕食
アメリカアリゲーターの歯は獲物を掴む役割があり、イヌ科やネコ科などの捕食者の歯とは異なり、肉を引き裂き噛み砕くことはできない。代わりに砂嚢を使って食物を砕く。成体は大型哺乳類や大型のカメであっても捕食する[116]。カメの甲羅や中型哺乳類の骨を噛み砕くことができる[117]。口蓋により、水中で獲物を捕らえても呼吸器系に水が浸入しない[118]。
獲物を狩るために擬似餌を使用することがある[119]。爬虫類における道具の使用が確認された初めての例であった。頭の上に棒や枝を乗せ、巣の材料を探している鳥をおびき寄せて食べる。これは鳥が巣の材料を探す営巣期に効果的であり、ヌマワニも同様の行動をとる[120]。フロリダの2つの動物園では1日に複数回行われており、ルイジアナ州のいくつかの公園でも記録がある。この行動は鳥が巣の材料を探す繁殖期に多く記録された[119]。
しかし2019年に行われた同様の実験では、鳥をおびき寄せて食べることを記録することはできなかった。鳥の営巣地の近くにある二つの個体群、営巣地から遠い二つの個体群に棒を設置した。棒を乗せる行動は複数回観察されたものの、鳥の営巣地から遠い個体群でも観察され、場所によって特に差は無かった。このことから、鳥をおびき寄せる以外の目的がある可能性がある[121]。
昼夜を問わず、主に魚類を含む水生生物を捕食する。水場から最大50m離れた陸上でも狩りを行い、道端で陸生生物を待ち伏せする。陸上での狩りは、気温の高い夜に行われることが多い[122]。特に大型個体では、陸上の獲物を水中に引きずり込んで食べることがある[28]。
協力して狩りを行うと考えられる[123][124]。獲物を追い詰める個体と捕らえる個体が存在し、交代でそれぞれの位置についていた。約60頭が集まって、約半数の個体が半円を作り、魚を岸に追い詰めていた。1頭が魚を捕まえると、もう1頭がその場所に入り、魚を休息場所まで運ぶ。この行動は2日連続で発生した[124]。
食性
生息域全域において、頂点捕食者とされている。日和見的な捕食者で、食べられる獲物であれば何でも食べる。その食性は年齢や体の大きさ、獲物の大きさと入手可能性によって左右される。無脊椎動物、魚類、鳥類、カメ、ヘビ、両生類、哺乳類など、様々な動物を捕食する。幼体は主に昆虫とその幼虫、カタツムリ、クモ、ミミズなどの無脊椎動物、小魚やカエルを食べる[13][36]。成長に伴って獲物も大きくなり、大型の成体では、水中やその付近の陸上動物であれば何でも食べられる。ほとんどの獲物はアリゲーター自身よりもかなり小さい[36]。例えばオオクチバス、スポッテッドガー、ホンカワシンジュガイ、アメリカアマガエル、キイロドロガメ、ヌママムシ、バン、イノシシなどが主な獲物となる[13]。胃の内容物の調査によれば、在来の哺乳類ではマスクラットとアライグマが一般的な獲物となっている[125]。ルイジアナ州では外来種のヌートリアが一般的な獲物となっており、大型の成体のみがヌートリアを捕食できる[107][125]。共食いも確認されており、大型個体が中型個体を、中型個体が小型個体や幼体を捕食することがある[126]。獲物がいない場合は腐肉も食べる。岩や人工物を食べることもあり、これらは胃の中で獲物の殻や骨を砕いて消化を助ける胃石となる[13]。
フロリダ中部での食性が魚類が大半を占めるが、日和見的な捕食者であるため、場所によってその食性は大きく異なる。食事における魚の割合は、グリフィン湖では重量比で54%であり、ナマズが最も多かった。この割合はアポプカ湖では90%で、主にシャッドが占めていた。ウッドラフ湖では、魚類は食事の84%を占め、その中でもバスとサンフィッシュ科が多かった。魚類以外では爬虫類と両生類が重要な獲物となっており、そのほとんどがカメとミズベヘビであった[127]。ルイジアナ州南部では、南東部の個体群はザリガニやカニなどの甲殻類を捕食していたが、南西部の個体群は捕食していなかった。南西部の個体群では、食事における爬虫類の割合が比較的高かったが、最も多い獲物は魚類であり、雄は多くの哺乳類を捕食していた[128]。テキサス州東部では食性は多様であり、魚類とほぼ同量の哺乳類、爬虫類、両生類、巻貝などの無脊椎動物を捕食していた[129]。
まれにシカやイノシシなどの大型哺乳類を捕食することもあるが、これは小動物の数が少ない場合に起こることが多い[130]。ボブキャットを捕食した例もあるが、これは非常に珍しいため、ボブキャットの個体数にも影響を及ぼしていない[131][132]。ニルガイやアメリカマナティーの捕食者とされているが、証拠はほとんど無い[133]。2000年代に外来種のビルマニシキヘビがエバーグレーズに侵入した際、アメリカアリゲーターが大きなニシキヘビを捕食しており、ニシキヘビの個体数を制御し、分布拡大を防いだ可能性がある[134]。ビルマニシキヘビは時折アメリカアリゲーターを捕食することがあり、お互いに捕食関係にある[108]。まれにフロリダピューマを捕食することもあり、ピューマが水路を渡る際や、沼地や川に水を飲みに訪れた際に捕食される[135]。アメリカクロクマを捕食した記録もある[136][137][138]。

犬や猫、子牛などの家畜を捕食することもある[36]。ヘビやトカゲ、甲殻類、貝類などの様々な無脊椎動物も時折捕食する[28][139]。サギ、シラサギ、コウノトリ、カモ、アメリカバンやアメリカオオバンといった大型のクイナ科など、様々な水鳥も捕食する。基本的には飛翔の練習をする若鳥が狙われる[28]。板鰓類ではウチワシュモクザメ、ニシレモンザメ、アトランティックスティングレイ、コモリザメを捕食した例がある。逆にサメがアメリカアリゲーターを捕食することもあり、アリゲーターとサメは日常的に接触していると考えられる[140][141]。
2013年には本種を含めたワニ類が、果物を食べることが報告された[142]。野生のブドウ、ニワトコ属、ミカン属などの果物を木から直接食べる様子が観察されている。胃の内容物の調査では、34科46属の植物が発見された。アメリカアリゲーターは植物の種子散布に役立っている可能性がある[143]。
繁殖と成長

繁殖期は春に始まり、夜には集団で求愛行動を行う[144]。1980年代にワニ園で行われた研究では、同性に求愛することが多く、3分の2が雄同士であった[145]。「複数父性 (Multiple paternity)」があると考えられ、これは雌が一度に産む卵の父親が複数存在することを意味する[146]。雌は6-7月になると、水場付近の雨風をしのげる場所に、植物、枝、葉、泥などで塚状の巣を作る[22][90]。巣の高さは60-90cm、直径は200-300cmである[5]。
卵は白く、大きさはガチョウの卵ほどである。産卵数は20-50個で、雌は卵を植物で覆う。植物が腐敗する過程で熱が生まれ、卵が保温される[88]。温度依存型性決定であり、卵のおかれた環境温度によって性別が決まる。31.5℃未満または34.5℃以上では雌が、32.5-33.5℃では雄が生まれた[147]。堤防に作られた巣は暖かいため雄が生まれ、湿地の巣は冷たいため雌が生まれる[148]。抱卵期間は65日間で、雌はその間巣の近くに留まって外敵から守る。幼体は孵化直前に鳴くため、それを聞くと母親は幼体を掘り出し、口で水場へと運ぶ[36]。
幼体は成体と似るが、体に黄色の帯が入り、これは擬態の役割がある[36]。幼体は群れを作り、母親に守られる。鳴くことで母親を呼ぶ。幼体は小魚、カエル、ザリガニ、昆虫などを食べる[149]。幼体の天敵は大型の魚、鳥、アライグマ、フロリダピューマ、成体のアリゲーターなどである[36]。幼体は翌年の春まで一年以上保護されることもある[22][90][82]。ある程度成長すると母親は攻撃的になるため、独り立ちして分散する[149]。幼体は1年に7.6-20.3cm成長し、1.8mで成熟する[84]。
寿命は通常50年だが、70年を超えることもある。雄は約11.6歳、雌は約15.8歳で性成熟にする。以前は一生成長し続けると考えられていたが、研究により雄は約43歳、雌は約31歳で成長が止まることが明らかになった[32]。
脅威と保全

国際自然保護連合のレッドリストでは低危険種とされている[2]。絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約の付属書IIに掲載されており、加工品を含む国際取引が規制されている[3]。狩猟と生息地の喪失による深刻な影響を受けており、種の存続も危険視されていた。生息域の全域または大部分で絶滅の危機に瀕していると考えられ、1967年に絶滅危惧種に指定された[150][151]。
合衆国魚類野生生物局と各州の野生生物局は、アリゲーターの個体数回復に貢献した。絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律により保護が行われ、多くの地域で個体数が回復した。個体数を継続的に増加させるため、各州で監視が行われた。1987年には個体数が回復したと判断され、絶滅危惧種から除外された[152]。現在もアメリカアリゲーターおよび由来の製品の取引は、野生生物局によって規制されており、アメリカワニも同様である[150]。ミシシッピ州では2005年から許可制で狩猟を認めている[151]。皮革の需要低下などもあり、生息数は回復している[82]。
人間との関係

性質は基本的に温和でおとなしいが[153]、ペットを捕食したり、まれに人間を襲うこともある[90][154][82]。濁った水の中やその付近では、餌と誤認されて襲われる可能性がある。ナイルワニやイリエワニなど、人間を襲う大型のクロコダイルに比べれば攻撃性は低い[29][155]。しかし咬む力が非常に強いため、万が一咬まれた場合は深刻な怪我を負う恐れがあり、治療を受けたとしても感染症を引き起こす可能性がある[156]。
人口増加の結果、低地にも住宅が建つようになり、人々が水辺で魚釣りや狩りをするようになった結果、人間がアメリカアリゲーターの生息地に侵入することになった。1948年以来、フロリダ州では257件の襲撃が記録されており、そのうち推定23件では被害者が死亡した[157]。1970年代から1990年代を通して、アメリカ合衆国全体では9件の死亡事故があり、2001年から2007年の間には12人がアリゲーターによって死亡した。1948年から2004年の間に、376人が負傷、15人が死亡した[158]。2006年5月には、フロリダ州において1週間ほどで3人が殺された[159]。1970年以降、アメリカ合衆国では少なくとも28件の死亡事故が発生している。

1880年代後半以来、娯楽としてワニとの格闘(アリゲーターレスリング)が行われている。観光として人気が出る以前、ミコスーキー族とセミノール族は、狩りとしてアリゲーターレスリングを行っていた。動物愛護活動家からの批判もあるが、今もなお観光産業として人気である[160]。
アリゲーターの養殖はジョージア州、フロリダ州、テキサス州、ルイジアナ州で大規模な産業となっている。年間で合計約4万5000枚のワニ革が生産されている。皮は高値で取引され、体長1.8-2.1mの皮は、1枚300ドルで取引されている[161]。ワニ肉の市場も成長を続けており、年間約14万kgのワニ肉が生産されている[162]。生のワニ肉は91gあたり232calが含まれており、そのうち38calは脂質由来である[163]。
2020年5月23日、ロシアのモスクワ動物園は、アメリカアリゲーターの「サターン」が84歳で死亡したと発表した。アメリカアリゲーターは野生下で50歳を超えることがほとんどないため、84歳は「立派な年齢」だという。サターンはアメリカ生まれで、ドイツのベルリンの動物園で飼われていたが、第二次世界大戦下の1943年に空襲を受けた後に脱走、1946年にイギリス軍兵士に発見され、当時のソビエト連邦に引き渡された。ソ連では、ヒトラーが個人的に収集した動物だったとのうわさが広まったという[164]。サターンはダーウィン博物館で剥製にされ、一般公開された[165][166]。日本では特定動物に指定されているため、個人での愛玩目的での飼育は出来ない[167]。
フロリダ州[168]、ルイジアナ州[169]、ミシシッピ州[170]では、州の爬虫類に指定されている。フロリダ大学のスポーツ競技チーム、フロリダ・ゲイターズのシンボルとマスコットはアリゲーターとなっている[171][172]。アレゲニー大学とサンフランシスコ州立大学も同様に、アリゲーターをマスコットにしている[173]。
画像
- 頭部
- アメリカワニ(左)とアメリカアリゲーター(右)
- 日光浴
- 成体の頭に乗る幼体
- ワニ革
- アルビノのアメリカアリゲーター(クロード)[174]
