インジェラ
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原料
イネ科の穀物であるテフの粉を水で溶き、その後、概ね3日間かけて醗酵させて生地とし、これを巨大な鉄板で薄いクレープのように片面だけを焼き上げて作られる[4]。
テフ(Eragrostis tef)は、エチオピア高原で生産される穀物のひとつである[4]。テフの収量は低く、また、生産される地域は十分な降雨量のある特定の中間標高地帯に限られている[8]。よって、テフはその他の穀物と比較して高価である。テフの穀粒は白(nech)、赤(key ないし quey)、混合(sergegna)など、色によって等級分けされ、それぞれが異なる種類のインジェラを作るのに用いられる[8]。白粒のテフは高級であり、赤粒のテフよりも珍重される[9]。
これらが手に入らない場合には、大麦やミレット、ソルガムなどが用いられることもある[10]。また、エチオピアの一般の家庭では、テフにトウモロコシとオオムギの粉を混合した物が、材料として使われる[4]。とはいえ、色合いや風味、あるいは手触りなどの観点から、インジェラを作るうえではテフがもっとも好まれる[8][11]。テフで作ったインジェラの独特の食感は、スポンジやタオルにも喩えられている[4]。
発酵・焼き上げ

水に溶いたテフを発酵させるためには、種菌としてイルショ(ersho)が用いられる。イルショは黄色みを帯びた液体であり、醗酵した生地に上澄みとして溜まる[12]。イルショには、バシラス属の芽胞および数種類の酵母が含まれている[13][8]。また、完成したインジェラには、乳酸菌も作用するため、乳酸菌による醗酵食品独特の匂いと酸味が出る[11]。
醗酵にかけた時間が短ければ芳しい香りがする甘い生地に仕上がり、これは主に農繁期などの時間が無い場合に作られる[12]。逆に、醗酵にかけた時間が長過ぎると、酸味が強くなり、一般には失敗とされるが、酸味の強いインジェラを特に好む者もいる[12]。醗酵の進む速度には、その場所の温度や湿度が影響するため、醗酵させる日数は見た目や味の好みの他に、その土地の気候や季節により異なる[14]。エチオピアにおいては、醗酵のための期間はおおむね3日程度である[4]。また、冬場の日本では1週間程度かかるという[14]。
インジェラを焼く工程には、粘土板ないし専用の電気調理器具が用いられる。これをアムハラ語で Mitad(ምጣድ)、ティグリニャ語で Mogogo(ሞጎጎ)という[10]。焼き上がった生地に空いた多くの穴は「アイン(目)」と呼ばれ、穴の数の多さがインジェラの出来を評価する要素とされる[11]。焼き上がりの色が薄いインジェラが上等の物とされるが、濃い色に焼き上がったインジェラの方がより豊かな風味を持つ[4]。
消費・受容
アフリカの角
インジェラはエチオピアおよびエリトリア、ソマリアで食べられている[5][6]。同地域におけるインジェラの歴史は古く、史料の中には紀元前100年には、すでに存在していたと記す物もある[12]。本来はエチオピア北部の高原地帯で作られてきた食べ物であり、19世紀末のエチオピア帝国の拡大に伴ってエチオピアの南部地域にも広まっていった[11]。
完成したインジェラは冷ました状態で食され、植物を編んで作った台(メソブ、マサブ)に載せて供される。インジェラには様々な種類のワット(唐辛子で煮込んだ辛いシチュー)を付けて食べる。インジェラは朝昼夜の3三食以外に、間食としても食べられており、その際にはベルベレ(バルバレとも)と呼ばれる辛味の強い調味料などを付けて食べられる[15]。
また、インジェラは料理を載せる皿の代わりとしても使用される場合がある[4]。なお、載せていた料理を全て食べた後、皿の代わりにしていたインジェラも食する[4]。こうしたインジェラの食べ方を見た者からは「ナイフとフォークの代わりにもなるパン」に例えられる場合もある[16]。エチオピアにおいて、大勢で大きな盆を囲んで料理を食べる時には、親愛の感情を示すために互いにインジェラを食べさせ合う習慣が存在し、この習慣は「マグロス」と呼ばれている[11]。親族や家族の集まりでは、最年長者がインジェラを小さくちぎり、順番に与えるしきたりである[14]。
その他の地域
エチオピア以外でも、例えばエチオピア料理店などでもインジェラは供される[14]。アメリカ合衆国においては1980年難民法を契機に渡米したエチオピア系移民を介して、1980年代から1990年代ごろよりインジェラが作られるようになった[17]。また、エチオピア系の住民のため、アメリカ国内でもテフが栽培されるようになった[18]。
2019年9月17日、日本の朝日放送にて放送されたテレビ番組である『相席食堂』では、お笑い芸人のアキナがエチオピア料理を調査するパートがあった[19]。同番組では、アムハラ語をそのまま転写した「オフチョベットしたテフをマブガッドしてリットにする」というテロップが、インジェラの製法を説明する際に用いられた。この回がインターネット上のコミュニティで大きく取り上げられたことを背景に、日本語圏ではしばしばこのフレーズがインジェラを説明するうえで用いられる[20]。また、難解な語を多く含む文章がこの語を用いて形容されることがある[21][22]。