予告殺人
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| 予告殺人 A Murder is Announced | ||
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| 著者 | アガサ・クリスティー | |
| 訳者 | 田村隆一、ほか | |
| 発行日 |
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| 発行元 |
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| ジャンル | 推理小説 | |
| 国 |
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| シリーズ | ミス・マープルシリーズ | |
| 前作 | 動く指 | |
| 次作 | 魔術の殺人 | |
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『予告殺人』(よこくさつじん、原題:A Murder is Announced)は、1950年に刊行されたアガサ・クリスティの推理小説。マープルシリーズの長編第4作目にあたり、クラドック警部初登場作品でもある[注 1]。
本作は、マープルシリーズの中でクリスティ・ファンから最も高く評価されている(後述の#作品の評価を参照)。
チッピング・クレグホーンの地元紙「ギャゼット」の広告欄に次のような文章が掲載された。「殺人お知らせ申し上げます…10月29日金曜日、午後6時30分よりリトル・パドックス館にて、…」
リトル・パドックス館の主人、レティシア・ブラックロックはこれに驚くが、客を迎える準備をする。予告の時刻が近づくと、好奇心旺盛な村の人々が館に集まる。時計が6時30分を指した時、明かりが消え、部屋のドアが開いて、まぶしい灯りを持った男が現れ、人々に 「手を上げろ!」と命令する。そして、銃声が響く。部屋の電灯が復旧すると、レティシアは耳から血を流しており、床には男の死体が横たわっている。レティシアのコンパニオンのドラは、その男が地元のホテルで働くスイス人で、最近レティシアに金の無心をしてきたルディー・シャーツだと気づく。
現場検証と目撃者の事情聴取を行った警察はルディー・シャーツが犯人として事件を終結させようとするが、納得がいかないクラドック警部は、名付け親であるヘンリー・クリザリング卿にミス・マープルを紹介され、彼女のアドバイスに従ってシャーツの恋人マーナ・ハリスに会いに行く。マーナは、シャーツが何者かに雇われて強盗犯の演技をしたことを明かし、事件の本当の標的はレティシアだったのであり、シャーツは口封じのために殺されたのだという推測が有力となる。
レティシアは資産家ランダル・ゲドラーの下でかつて働いていた。ゲドラーの遺産は妻のベルが相続したが、ベルも死期が近く、彼女が亡くなれば、レティシアが遺産を相続することになっていた。しかし、もしレティシアがベルより先に死亡すると、遺産はゲドラーの妹ソニアの双子の子供であるピップとエマに渡ることになっていた。
クラドックは、ソニアの一家が今どこにいるのか、成長した双子がどんな顔をしているのか、誰も知らないということを知る。レティシアにはシャーロットという妹がおり、彼女は甲状腺腫を患っていたことがわかる。姉妹の父親は医者だったが、甲状腺腫の手術を信用せずシャーロットに受けさせなかったため、シャーロットは病状が悪化して、引きこもりになったという。第二次世界大戦の少し前にその父親が亡くなり、レティシアはゲドラーの仕事を辞めて、妹をスイスに連れて行き、手術を受けさせた。姉妹はスイスで終戦を待ったが、シャーロットは結核で急死してしまい、レティシアは独りでイギリスに戻ったのだという。
一方、チッピング・クレグホーンに乗り込んだマープルは、友人の娘が嫁いでいる牧師館に滞在し、早速リトル・パドックス館でドラとお茶をする。ドラの他に、館にはパトリック・シモンズと妹のジュリア、そして若い未亡人のフィリッパ・ヘイムズが居候していた。ドラは、家の中にあるランプが入れ替わっていることに言及する。
レティシアはドラの誕生日会を開き、シャーツが殺された時に現場にいたほぼ全員を招待する。料理人のミッチーは、「甘美なる死」という名の特製ケーキを作る。パーティーの後、ドラは頭痛を訴え、レティシアの部屋にあったアスピリンを飲む。翌朝、ドラが毒死しているところが発見される。
レティシアは、本物のジュリア・シモンズから手紙を受け取り、彼女の館でジュリアを名乗っていた人物と対峙し、彼女は本当はエマであることを白状する。彼女はレティシアの殺人未遂を否定し、双子のピップとは幼児の時以来会っていないと言う。
隣人ヒンチクリフとマーガトロイドはシャーツの事件を振り返り、マーガトロイドは事件当時ある人物がその部屋に見当たらなかったことを思い出すが、その人物の名前をヒンチクリフに告げる前に殺されてしまう。
クラドック警部は館に関係者を集める。その場でミッチーはレティシアがシャーツを撃つのを見たと主張するが、クラドックは取り合わない。その場でフィリッパ・ヘイムズは自分がピップであることを認める。すると台所から悲鳴が聞こえ、皆が駆けつけるとレティシアがミッチーを流しに押し付けて溺れさせようとしているのが発見され、逮捕される。
マープルは、本当のレティシアはスイスで肺炎で死んだのであり、妹のシャーロットが姉になりすましたのだと説明する。ルディ・シャーツは、かつてスイスの病院に勤めていて、シャーロットの顔に見覚えがあったので殺されたのだった。彼女はランプのコードに細工して、後で皆が時計の音に気を取られている時に水をかけてショートさせて家を停電させ、シャーツを撃ち、自分の耳を爪切りで切った。ドラは姉妹の幼なじみであり、シャーロットがレティシアになりすましていることも知っていた。彼女はときどきシャーロットの本来の愛称を口走ることがあったため殺されてしまったのだった。ミッチーが殺人現場を見たと証言したのはマープルが仕掛けた罠だった。
事件は解決し、フィリッパとエマがゲドラー家の財産を相続する。フィリッパはエドマンド・スウェッテナムと結婚し、チッピング・クレグホーンに住むようになる。
登場人物
- ジェーン・マープル
- セント・メアリ・ミード村に住む探偵好きな独身の老婦人。
- レティシア・ブラックロック
- リトル・パドックス館の60代の女主人。愛称「レティー」。昔は資産家の秘書として務めた。
- ドラ・バンナー
- レティシアの親友。愛称「バニー」。リトル・パドックス館に住んでいる。
- パトリック・シモンズ
- レティシアの年離れた再従弟。レティシアのことを「おば」と呼ぶ。
- ジュリア・シモンズ
- レティシアの年離れた再従妹。レティシアのことを「おば」と呼ぶ。
- フィリッパ・ヘイムズ
- 美貌の下宿人。
- ミッチー
- 外国人のメイド。
- アーチー・イースターブルック大佐
- インドから帰ったばかりの心理学者。
- ローラ・イースターブルック
- イースターブルック大佐の若妻。
- エドマンド・スウェッテナム
- 文学青年。
- スウェッテナム夫人
- エドマンドの母。
- ヒンチクリフ
- 養鶏業者。
- エイミー・マーガトロイド
- 養鶏業者。ヒンチクリフの同居人。
- ジュリアン・ハーモン
- 牧師。
- ダイアナ・ハーモン
- ジュリアンの妻。愛称「バンチ」。
- ルディー・シャーツ
- スイス人の強盗。
- メーナー・ハリス
- シャーツの彼女。
- ダーモット・エリック・クラドック
- 捜査課の警部
- ジョージ・ライデスデール
- 警察署長。
- フレッチャー
- 巡査部長。
- レッグ
- 巡査。
- ヘンリー・クリザリング卿
- 前警視総監。
- ランダル・ゲドラー
- 資産家。レティシアの元雇い主。
- ベル・ゲドラー
- ランダルの妻。
- ソニア
- 男と駆け落ちしてゲドラー家を出たランダルの妹。
- ピップ
- ソニアの子。
- エマ
- ソニアの子。
- シャーロット・ブラックロック
- レティシアの妹。愛称「ロティー」。
作品の評価
- 江戸川乱歩は本作品を作者ベスト8の1つに挙げている[注 2]。
- 辛口の評論に定評があるとされている英国の作家ロバート・バーナードは『欺しの天才 アガサ・クリスティ創作の秘密』(1979年)の中で、傑作として挙げた3作のうちの1作に本作を挙げている[1]。
- 作者ベストテンでは、1971年の日本全国のクリスティ・ファン80余名の投票で本作品は3位(1位は『そして誰もいなくなった』、2位は『アクロイド殺し』)[2]、1982年に行われた日本クリスティ・ファンクラブ員の投票では4位に挙げられている(1位は『そして誰もいなくなった』、2位は『アクロイド殺し』、3位は『オリエント急行の殺人』)[3]。
- 2015年にAGATHA CHRISTIE LIMITEDにより行われた「世界で一番好きなクリスティ・グローバル投票」で本作品は6位に選出されている[4]。
- 青山剛昌は『名探偵コナン』第20巻で、カバー裏のおまけ「青山剛昌の名探偵大図鑑」のミス・マープルの項目にて本作品をおすすめとして挙げている。
出版
| 題名 | 出版社 | 文庫名 | 訳者 | 巻末 | カバーデザイン | 初版年月日 | ページ数 | ISBN | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 豫告殺人 | 早川書房 | 世界傑作探偵小説シリーズ8 | 田村隆一 | 訳者あとがき | 1951年 | 346 | 絶版 | ||
| 予告殺人 | 早川書房 | ハヤカワ・ポケット・ミステリ181 | 田村隆一 | 解説 | 1955年 | 絶版 | |||
| 予告殺人 | 早川書房 | ハヤカワ・ミステリ文庫1-7 | 田村隆一 | 田中潤司 | 真鍋博 | 1976年6月 | 366 | 4-15-070007-9 | 絶版 |
| 予告殺人 | 早川書房 | クリスティー文庫38 | 田村隆一 | 解説 三橋暁 | Hayakawa Design | 2003年11月11日 | 486 | 978-4-15-130038-7 | 絶版 |
| 予告殺人 | 早川書房 | クリスティー・ジュニア・ミステリ 4 | 羽田詩津子 | イラスト:たなか しんすけ | 2008年2月25日 | 456 | 978-4-15-208898-7 | ||
| 予告殺人[新訳版] | 早川書房 | クリスティー文庫38 | 羽田詩津子 | 解説 三橋暁 | 早川書房デザイン室 | 2020年5月26日 | 480 | 978-4-15-131038-6 | |
| ミス・マープルの名推理 予告殺人 | 早川書房 | ハヤカワ・ジュニア・ミステリ 8 | 羽田詩津子 | イラスト:藤森カンナ、 イラスト編集:サイドランチ | 2020年6月26日 | 416 | 978-4-15-209928-0 | ||