おでん
日本料理、煮物
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概要
「おでん」は本来、田楽を意味する女房言葉である[6]。田楽、もしくは味噌田楽は室町時代に出現した料理で、種を串刺しにして焼いた「焼き田楽」のほか、種を茹でた「煮込み田楽」があった。江戸時代になって「おでん」は「煮込み田楽」を指すようになり、「田楽」は「焼き田楽」を指すようになった[7][8][9](「味噌田楽」も参照)。
素材にもよるが、前処理として下茹でや油抜きなどした上で、つゆに様々なおでん種を入れて調理を行う。地域や店により種やつゆの違いも大きく、子供が買うような駄菓子屋から、屋台、専門店、コンビニエンスストア、比較的立派な日本料理店のメニューにまで、広く扱われている。家庭でも調理でき、家庭料理を扱う料理本にもしばしば作り方が書いてある。また、テレビの料理番組や旅番組などで紹介されることもある。
歴史
江戸時代以前
江戸時代
江戸では味噌田楽が庶民に親しまれ、直方体の豆腐を串に刺したものを焼いてから味噌を付けて食べるものが江戸名物となっていた[注 1]。1782年には『豆腐百珍』が発行され、豆腐田楽が絵図に記載されている[11][注 2]。
『平凡社大百科事典』第三巻(1943年)によれば菜飯に田楽を添えて提供する「菜飯田楽」は寛永の頃から流行を始め、まもなくこんにゃくの田楽が登場し、これがオデンの略称で呼ばれるようになったとする。『浪花の風』[注 3][12]によれば「この地(上方)にても、蒟蒻の田楽をおしなべておでんと呼ぶ」とある。この頃のこんにゃくおでんは味噌田楽であったが、菜飯田楽の流行から煮込みのこんにゃくがつくられ「煮込みおでん」と言われたものが、むしろこちらが名前を奪い煮込み野菜類にはんぺんや信太巻なども加えて広くおでんと呼ばれるようになったとする[13]。1837年頃の 『守貞謾稿』には、「上燗おでん」という振り売りがあり「酒燗と蒟蒻の田楽であり、江戸のものは芋の田楽も売る」と紹介されている[14]。
江戸時代初期、江戸の市場に入津する醤油の多くは上方からのものであり、享保期の調査によれば70%以上が上方のものであった[15]。これが1800年代に入ると江戸市場周辺の地廻り経済圏から供給される醤油の比率が高まり、幕末の1856年には上方醤油は5.6%となった。元禄期に銚子で始まった醤油醸造は[15]、やがて江戸経済圏の発展とともに香りと味の良い醤油を盛んに供給するようになり、削り節に醤油や砂糖、みりんを入れた甘い汁で煮込んだ「おでん」が作られるようになった。外食産業が盛んであった江戸では、「おでん燗酒、甘いと辛い、あんばいよしよし」の掛け声で売る「おでん かんざけ」と書いたのれんを掲げたおでんの振売や屋台が流行した。この頃には、はんぺんも種として使用されるようになった。江戸では鰹節の削り節が利用されるようになっていて、昆布と合わせて出汁とされた。日本橋室町界隈は魚河岸(市場)が近く、その後に移転した築地市場周辺にかけて、創業元禄元年(1668年)の老舗が存在している[16]。
上方では、田楽が「お座敷おでん」として客座敷に出されるようになったが、種を昆布出汁の中で温めて甘味噌をつけて食べる「焼かない田楽」[17]と区別するために「関東炊き/関東煮」(かんとだき)と呼んだ。その後、関東煮は昆布やクジラ、牛すじなどで出汁をとったり、淡口醤油を用いたりと、関西風のアレンジが加えられていった。
これを「関西炊」と呼ぶ人もいる[17]。大坂の天満ではタコを甘辛く煮たものが人気となっておりこれを「関東煮」と呼んでおり、おでんに対する関東煮の語源については「かんとうふ煮」説や中国広東の煮込み料理[注 4]に由来する「広東煮」説もある[18] が定かではない。
明治以降
明治時代の東京においても「おでん茶飯」の屋台が人気であったが、大正時代の関東大震災(1923年)で大きな被害を受けた。震災の復興過程において関西から関東へ職人の行き来があり、関西風の「関東煮」が関東に逆輸入され[17]、それまで関東では使用されなかった味付けやおでん種が広がる事になった。これにより現在の東京の老舗おでん店の一部には関西風の薄味を店の味とする例がある。1943年刊行の『平凡社大百科事典』では「蒟蒻の田楽及び煮込の蒟蒻類の名」としており[13]、この当時はこんにゃくに重点があったものと考えられる。
一説では関東煮は当時「改良おでん」とも呼ばれ、東京・本郷の「呑喜」主人が1887年に西洋料理のスープを活かし、汁気のなかった従来のおでんをたっぷりのつゆで煮たことが始まりともいう[19]。
1937年(昭和12年)発行の大日本帝国陸軍調理教本『軍隊調理法』では、がんもどき、こんにゃく、大根、里芋、ちくわぶを、削り節・醤油・砂糖のダシで調理するおでんが「関東煮」と表記されており、田楽とは別となっていた。関東煮の名称は1965年(昭和40年)頃まで使われた[18]とされているが、現代でも一部では使用されている。
現代
あらかじめ煮込んでおけば提供できるおでんは、日本全国に広がり、屋台や居酒屋、駄菓子屋などで親しまれて家庭料理の定番メニューともなっていった[17]。
1980年代から全国に広がったコンビニエンスストアで冬期限定商品として扱うようになり、さらに一年中食べられるように変化して、より身近な存在となった。
しかし、コンビニおでんは衛生面での問題が指摘され、COVID-19の影響や食品ロスの問題により、什器で販売する形式からレトルトパウチの製品へ転換されたり、加盟店に取り扱わないことを認めて売り場が縮小されたりしている[20]。
提供・販売形態




- 江戸時代の振売
- 江戸や上方では「上燗おでん」という名称での振売が流行した。
- おでん屋
- 「おでん屋」と称される小さな一杯飲み屋の店舗で酒の肴として供されていることが多い。
- 業務用おでん鍋の多くは四角形で内部は具材ごとに入れることができるよう間仕切りが設けられており、熱源としてはガス式(直火式あるいは湯煎式)と電気式がある。
- 屋台
- かつては、屋台の「おでん屋」が夜になると町中に店を出して酔客の憩いの場となっていたが、1980年代以降は減少してきた。一例として、横浜駅西口では帷子川沿いに10軒程度のおでん屋が軒を連ねる「おでん屋台」が名物だったが、2016年1月末で消滅した[21]。同様に、高知市でもかつては屋台が立ち並んでいたが、2024年3月をもって実店舗へ転換するか、廃業させられた[22]。一方、屋台条例が制定されている福岡市では、多くの屋台が今なお営業を続けており、おでんを扱う屋台も数多く存在する。他都市においても、祭りなどの際に出店としておでんを売る屋台がある。
- 店先
- 駄菓子店や食堂などの店先におでんの大鍋を置き、七輪やストーブなどで日がなグツグツ煮込んでいる素朴な風景も方々で見られたが、1980年代以降は廃れた。静岡市にはこの形態を残したまま営業する店もある。一方、居酒屋においては冬のメニューとして定番である。
- コンビニエンスストア
- 上述の店先での煮込み風景は、コンビニエンスストアのレジ脇での煮込みとして行われている。但し下記のとおり、コンビニエンスストアの「おでん」は、味付け・具材も、実質的に関西発祥の「関東炊き」となっている。
- 1979年にセブン-イレブンがおでんの取り扱いを開始[23] した。これは一般にも好評で、日本全国のコンビニに広く普及し、セブン-イレブンでは年間2億7700万個のおでん種が販売されるという(2011年度)[24]。
- かつては冬期など一部期間のみの取り扱いであったが、消費多角化への対応から、一年中コンビニでおでんを取り扱う傾向が強まっている[25]。
- 販売促進活動が8月中盤以降から徐々に行われ[25][26]、10月から11月にかけて販売のピークを迎える傾向となっている[26]。
- コンビニのおでんつゆは、関東風よりも関西風の味付けが主流である。これは、関西風は関東風に比べてつゆの色が薄く客が選ぶ際に具材をよく見ることができ、匂いも控えめで店内に広がらないからだという[24]。
- スーパー、食料品店 ほか
- 缶詰として天狗缶詰などが「おでん缶」を製造しており、店舗や自動販売機で売られている[27]。包装技術の改良によって、1990年代より、煮込み済みのおでん種をつゆごと透明なラミネートフィルムの袋を用いてレトルトパックにした商品も多く売られるようになった。また変わり種として、冷たくして食べることを前提に汁をゼリー状にした「冷やしおでん」が夏向けの商品として、鈴廣かまぼこや天狗缶詰から発売されている[28][29]。類似の商品はデパートなどのデリカテッセンでも製造販売される例がある。
代表的なおでん種


地方により使用される種の特色があるが、紀文の「家庭の鍋料理調査:好きなおでんベスト10全国版」では、大根、たまご、ちくわ、こんにゃく、はんぺん、厚揚げ、さつま揚げ、餅入り巾着、ごぼう巻、じゃがいもの順となっている。
ほぼ全国共通で用いられるおでん種
- 大根 - 厚切りにして皮を剥いたもの。柔らかくするために別に下茹でをしてから使う。「おでんの王様」ともよばれる。
- こんにゃく - 田楽に由来する、本来のおでん種である。黒・白の板状に加え、ひねったものや青海苔・ごま・柚子・一味などの団子状の物もある。突きコンニャクを用いる場合もある。先に茹でて臭みを抜いてから使う。
- しらたき - 結んで食べやすい形にする。
- 薩摩揚げ(揚げかまぼこ) - 地域により名称は様々。北海道では物により「天ぷら」「練物」、関東以北では「練物」、西日本では「揚物」「天ぷら」、沖縄では「ちきあぎ」と呼ばれる場合が多い。先に湯通しをして油を切ってから用いられる。
- ごぼう巻き(ゴボ天) - ゴボウが芯として入った棒状のさつま揚げ。
- ウィンナー巻き - ウィンナーソーセージが芯として入った棒状のさつま揚げ。
- 平天 - 角型、丸型の平たい物。特に長方形の物は長天とも呼ばれる。
- 丸天(ボール天) - 主に関西地方で使われる。
- ゆで卵 - 鶏卵やウズラの卵。先に茹でて殻をむいてから用いる。
- 昆布 - 水で戻し、結んで種とする。家庭では出汁を取った後の物を活用する場合もある。
- 厚揚げ、生揚げ - 先に熱湯で油抜きをしてから調理する。
- がんもどき - 「がんも」とも略される。
- はんぺん - 白身魚のすり身に山芋を加えて蒸したもの。関東地方では正方形の白はんぺんが一般的だが、地域によって素材や形状は異る。
- つみれ - 魚のすり身に鶏卵や澱粉などを加えた団子状の練り物。
地域、店舗、好みによって使用されるおでん種
関東発祥
- ちくわぶ - 魚肉練り製品の一つである竹輪を模して、小麦粉をこねたものを茹であげて作られた食品。ちくわぶが入る場合は、ちくわは入らない事が多い。
- すじ - サメのすり身と軟骨のすじや軟骨で作られた練り物。
関西発祥
発祥不明
- 里芋、海老芋 - ヌメリが出ないように別茹でして水晒ししたのち出汁に漬け、別鍋で温めて供す。サトイモが入る場合は、ジャガイモは入らない事が多い。
- じゃがいも - 皮を剥いて、丸ごと、または一口大に切る。煮崩れしにくいメイクイーンなどが多い。ジャガイモが入る場合は、サトイモは入らない事が多い。
- 薩摩揚げ(揚げかまぼこ) - 地域性の強いもの、変り種等。
- 野菜天 - 細かく切った人参やごぼう、えんどう豆、玉ねぎなどが用いられ、単品具材の物や混ぜた物がある。平天タイプと不定形のちぎり天がある。
- れんこん天 - 上記の野菜天の一種。スライスしたれんこんを使う。
- じゃこ天 - 愛媛ではホタルジャコ、他の地方では雑多な小魚のすり身で作った長方形状の練り物。
- イカ巻き - イカが芯として入った棒状のさつま揚げ。
- エビ巻き - 胴の殻を剥いた海老が芯として入った棒状のさつま揚げ。頭付きと頭なしがある。
- 玉子巻き(ばくだん) - 鶏卵やウズラの卵を巻き込んださつま揚げ。
- 真薯揚げ(しんじょあげ・しんじょうあげ) - 海老のすり身に卵白と山芋を混ぜて揚げたもの。同様に、海老の代わりにイカ、蟹、帆立などを用いたものもある。
- シューマイ巻き - 焼売を白身魚のすり身で包んであげたもの。
- 餃子巻き - 餃子が芯として入った棒状のさつま揚げ。関東、東北に登場し、遠く離れて福岡でも見られるおでん種。発祥は東京の蒲鉾屋の蒲一とも愛川屋とも言われている[誰によって?]。
- つくね - 鶏肉などのミンチに鶏卵や澱粉などを加えた団子状の練り物。
- ロールキャベツ - 中の具には鶏肉や豚肉などのミンチを使う。縛るために古くは経木や竹の皮を使ったが、現在では[いつ?]食べられるカンピョウやシラタキなどを使うことが多い。
使用例の少いもの
- ニンジン - 洋風おでんの具としてポトフのように大きく切った物が使われる場合もある。
- ワカメ - 生ワカメや灰干しワカメなどを洗ったものを、おでん出汁とともに軽く煮て供す。
- 銀杏 - 加熱して薄皮まで剥いたものを4 - 5粒程度を爪楊枝に刺して種とする。
- 筍 - 地方により様々な筍を用いる。
- キノコ - 椎茸、舞茸、ブナシメジ、エリンギなど多種にわたる。
- 豆腐 - 主に焼き豆腐が用いられる。「しろもの」「おかべ」とも呼ばれる。
- 高野豆腐 - 凍み豆腐とも呼ばれる。水戻し後にかたく絞り煮込んで使う。
- かまぼこ - 中国地方など。
- 信太巻 - 野菜などを油揚げやゆばで包む。信田巻とも。
- 厚焼き - 焼きかまぼこの一種で、原料に玉子が含まれる。
- 巻貝類 - ツブ貝やバイ貝などの非可食部を取り除き下茹でしたものを串に刺して用いられる。
- タコ - 主に足の部分を用いるが、おでん種としては、小さいイイダコが丸々串に刺さっている場合もある。
- ソーセージ - 洋風おでんとして扱っている店もある。沖縄ではホットドッグ用のフランクフルトも一般的。
- 鶏肉 - 手羽先や手羽元など骨付きの部位が用いられることがある。
- トマト - 主に1つ丸ごと使う。おでん専門店などで見かけることがある。
- うどん - 2010年からファミリーマートで、後にローソンでもおでんとして扱われるようになった。
- 焼売
- 玉ねぎ - 小玉の玉ねぎを丸のまま使用する。
- ナルト - 下記のチビ太のおでんの三段目の具材[30]。
出汁と煮汁
薬味
ご当地おでん
青森県青森市
青森市を中心に津軽地方では、ツブ貝、根曲がり竹、大角天(薩摩揚げの一種、薄くて大きい四角い形が特徴)などの青森独特の種に、ショウガ味噌ダレをかけて食べる。2005年には「青森おでんの会」が発足し、B-1グランプリへ出展した。なお青森おでんの会は、10月10日を「おでんの日」としている。
関東
群馬県
古くからこんにゃく芋の生産が盛んで、赤城颪による冬の寒さが厳しい群馬県では、一般的な煮込み料理のおでんとは別に「こんにゃく味噌おでん」という茹でたこんにゃくに味噌だれをかけた田楽と類似した料理が存在する[36]。
静岡県
撮影日 : 2014年9月


静岡市のおでんは牛すじ、あるいは鶏ガラや豚もつなど肉系の出汁に濃口醤油を使った、黒い煮汁が特徴である。近接の焼津市などでは鰹節などを加えることもある。おでん店などでは長年継ぎ足し、底が全く見えないほど真っ黒な汁のところも多い。人気種である「はんぺん」は焼津を中心に静岡県内各地で作られている黒はんぺんである。すべての種に竹串を刺し、「だし粉」と呼ばれるイワシの削り節や鰹節、青海苔をかけて食べることが多い。これは「静岡おでん」と呼ばれ、発音は静岡市周辺での「静岡」の読み方にならって「しぞーかおでん」である。この呼び方をセールスポイントにしている店や書籍も多数存在している。佐藤浩市が出演した「キリン一番搾り」キリンビールのテレビコマーシャルで取り上げられたことから全国的に注目され、一種のブームにつながった。2007年には「静岡おでんの会」という団体が「B-1グランプリ」に静岡おでんを出展し、3位となった[37]。
静岡市葵区にはおでん店が軒を連ねる「青葉おでん街」、「青葉横丁」という二つの飲食店街があり、各店舗で味や具材を工夫している。かつては多くの駄菓子屋でもおでんを販売していたが、令和の現在は駄菓子の小売り店という正しい意味での駄菓子屋で販売している店舗は極僅かしか存在しておらず、居酒屋系・駄菓子屋系と分類して紹介される場合、居酒屋以外の軽食店なども含めたおでんを販売する個人店を駄菓子屋系と扱う場合が多い。「静岡おでん」は季節を問わず食されており、例えば夏場のプールなどでも販売され、店によっては冬場より売り上げが多いところもあるという。このように静岡市周辺においてはおやつ、酒の肴、おかずとして幅広く食されている。
また年に一度、「静岡おでん祭」(2010年に「静岡おでんフェスタ」から「静岡おでんフェア」に改称、2019年から現名称)が開催されており[38]、人気投票が開催されるなど盛り上がりを見せている。最近では日本各地のおでんや、韓国、台湾などのおでん等も紹介している等、イベントで楽しめるおでんの幅が広がりつつある。
さらに最近では静岡県内のみならず、東京都内やバンコクでも静岡おでんが味わえる店が開店するなど、静岡おでんが食べられる地域も広がりつつある[39]。
「静岡おでん」は旧清水市内を含む静岡市とその周辺で主に食されていたものであり、文化圏外である県東部・伊豆や遠州などでの知名度や認知度は低かったが、先述のテレビコマーシャルなどにより全国的な知名度上昇により知られ始めた。
なお遠州では愛知県などと同様に通常のおでんそのものがおでんとは呼ばれず関東煮(かんとに)と呼ばれ、おでんといった場合は味噌おでんや味噌田楽を指す。[要出典]
名古屋
味噌おでん 八丁味噌を使って煮込んだおでん。昭和中期から郷土料理として存在し、名古屋市広小路通などの屋台文化とともに広まった。鉄板に味噌を積んで土手を作り、焦がしながら煮るため「どて焼き」とも呼ばれている。2024年には愛知県が振興協議会を設立した。[40]
大阪府東大阪市
関西で定番の牛すじやタコなどの具材を使用せず、じゃがいもや練り物などを関東風の味付けで煮込んだ「石切のおでん」がある。100年以上の歴史を持ち、2024年度には文化庁の「100年フード」に認定された。石切劔箭(つるぎや)神社の参道商店街で味わえる[41]。
兵庫県姫路市

姫路市では姫路特有の姫路おでんと呼ばれるおでんが有名である。姫路ではおでんをしょうが醤油(生姜醤油)につけて食べる[42]。これが姫路おでんの最大の特徴である。これは姫路周辺が有数の醤油の産地であったことから、これがおでんに生姜醤油を用いるという食習慣につながったのではないかと考えられている[43]。なお、姫路おでんには濃く甘い味付けの関東煮と呼ばれるタイプのおでんと薄味のおでんの2種類存在するが、どちらも姫路おでんと呼ばれる。姫路市内で営業している1946年(昭和21年)創業の澤田店(さわだみせ)という老舗おでん屋では、生姜醤油の他、とんかつソースとウースターソースをブレンドした特製ソースで食べることもできる[44]。
島根県松江市
松江おでん(まつえおでん)は島根県松江市のローカルフード[45]。おでん種が大きいことと、セリや春菊といった葉物がおでん種に使用されるのが特徴である[46][47]。
不昧こと出雲松江藩10代藩主松平治郷が当時、京都で流行していた今出川豆腐(豆腐を醤油で煮込んだ料理)を松江に持ち帰ったことから庶民に広まったのではないかと推測されている[47]。
松江市内にはおでん屋も多く、1年を通じて食されている[47]。
| 都道府県 | |
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| 福井県 | |
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| 静岡県 | |
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| 三重県 |
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| 香川県 |
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| 愛媛県 | |
| 高知県 | |
| 福岡県 | |
| 長崎県 | |
| 熊本県 | |
| 宮崎県 | |
| 鹿児島県 | |
| 沖縄県 |
日本国外のおでん
おでんは日本独自の食べ物であるが、戦前の日本植民地政策や近年のコンビニエンスストアの海外展開に伴い、各国に広がっている[66]。特に、20世紀後半から始まったローソン、ファミリーマート、セブン-イレブンに代表される日系コンビニエンスストアのアジア全域への進出により、海外でもおでんが販売されることになり、それにより海外独自のおでんの発展が見られている。
中国
中国では主に「关东煮(guān dōng zhǔ)」と表記される。1997年、中国にローソンが「熬点(アオディエン)」と名付けて持ち込んだ。セブンイレブンもそれに続いて名称を「好炖」に改め販売していたが、味が薄すぎたためあまり受けなかった[66]。そこで中国のコンビニでは、豚骨と昆布を合わせたつゆを使用するようになった。次第に地方によって味のバリエーションが誕生した。例えば、四川地方では牛脂や花椒をベースとしたつゆ(麻辣おでん)、東北地方では動物の骨で取っただしにしょうゆを合わせたつゆ、広東地方では鶏がらだしのつゆなどが挙げられる。具も、ソーセージや肉団子、湯葉、魚豆腐、卵焼き、五香粉(スパイス)風味の肉巻き、椎茸串、タケノコなど、日本ではあまり見られないものもある[67]。
台湾
台湾におけるおでんの導入は、日本統治時代に遡る。現地では台湾語の音韻に引きずられる形で「黑輪(オーレン)」として親しまれるようになり[68]、さらに練り物そのものを指す言葉として「甜不辣(ティエンプラー:天ぷらの音訳)」が定着した。日本のおでんが出汁の旨味を具材に含ませることを主眼とするのに対し、台湾のおでんは、串から外した具材の上に、甘辛く粘度の高いチリソースや味噌ベースのタレを大量にかけて食すという独自の進化を遂げている[69]。また、煮汁は具材とは別に、食後や食事中に口直しとして飲むものとして扱われることが多い[69]。
台湾のおでんには「豚血糕(ヂューシュエガオ)」と呼ばれる、もち米に豚の血を混ぜて蒸し固めた伝統的な食材が用いられることが多い[69]。豚血糕はおでんの鍋に投入されると、出汁の塩味と旨味を吸い込みながらも、重厚でモチモチとした食感をもたらす[69]。1980年代後半から1990年代にかけてセブンイレブンが台湾全土に本格進出を展開した際、この屋台料理は「関東煮(グアンドンジュ)」として再定義された。日本風(日式)をアピールするために「関東煮」と新字体の表記も確認できる。
韓国
韓国でも戦前の日本で一般的であった串おでんの形式が継承されているが、具材は練り物中心となり、「オデン」という言葉自体が魚肉練り製品を意味する単語として定着している。薄い揚げかまぼこを折り畳んで串に刺すスタイルが代表的である。練り物(オムク)の概念は20世紀初頭に釜山などの港湾都市を中心に持ち込まれ、現在では「オムクタン」または「オデングク」として韓国のストリートフードの根幹を成している。これは主に「ポジャンマチャ」と呼ばれるテント張りの屋台や、現代のコンビニエンスストアで販売されている。
韓国のおでんの特徴としては、具材となる平たい練り物は、波打つように折り畳まれて長い串に刺される。さらに、スープそのものも日本の昆布や鰹の抑制された旨味ではなく、大量の長ネギ、大根、さらには青唐辛子やハラペーニョを投入した、辛味を重視するものとなっている。「オデン」という呼称は日常的な料理用語として深く根付いており、日本的起源から完全に切り離された独自の料理概念として機能している。
タイ
タイの日系コンビニエンスストアでも、ほぼ日本と同じスタイルでおでんが多く売られている。タイの屋台では、おでんのつゆにナンプラーや唐辛子、パクチーやレモングラスを使いトムヤムスープをベースにするなどアレンジが見られる[70]。ココナッツミルクベースのおでんも存在する[71]。具材も、イカ巻き、たこつみれ串、ポークソーセージ、ゆでたまご、ふくろ茸、カット玉ねぎ、サラダチキンといったラインナップが提供されている[70]。このトムヤムおでんは、現地の消費者からはただのタイ料理として認識されるほどに浸透している[70]。
インドネシア
人口の大部分がイスラム教の戒律に従うインドネシア市場において、伝統的な日本のおでん出汁に使われるみりんや日本酒といったアルコール類は使えないという問題が生じた。さらに、アルコール成分および豚肉由来の成分を完全に排除し、ハラール認証という壁もあった。この課題を克服するため、小売チェーンや現地の食品メーカーは、大豆由来の旨味エキスやキノコのブイヨン、そして現地の香味野菜を駆使し、アルコールを使用せずに日本の出汁の深みを模倣するノンアルコール・スープを作成した。具材となる練り物自体も、現地の伝統的なペンペック(サワラ)など、近海で豊富に獲れる魚肉を使用するように変更された。さらに、エビペーストと猛烈な辛さを持つ鳥の目唐辛子をすり潰した「サンバル」が用いられている。
ベトナム
ベトナムでは購入したおでんの容器に、店内に設置された調味料ステーションでタイバジルやコリアンダーといった新鮮なハーブを大量に追加し、ライムを絞る。これは、フォーに代表される伝統的なベトナムのスープ料理における作法に則った行動である。スープ自体も、スパイシーで酸味のあるものや、現地のタマリンドベースの酸っぱいスープ(カインチュア)の要素を取り入れたバリエーションが提供されている。

