ケチャップ
野菜、果実、キノコ、または魚介類などを原料にした調味料
From Wikipedia, the free encyclopedia
表記ゆれ
語源
ケチャップという語がどこから英語に流入したかについては、いくつかの立場がある。
閩南語説
中国福建省の泉州や厦門、台湾の鹿港周辺で「ケ・ツィアプ(KE-chiap)」と呼ばれる調味料がイギリスに伝わったのが由来とする説がある[5][6]。これは現在のナンプラーや魚醤のように、魚に塩を加えて発酵させて作ったもので[5]、数百年前から調味料のような形で料理に使用されていた[7]。
閩南語、台湾語では、「肴(さかな)に鹽(しほ)したとき出る汁[8]」つまり魚醤を「膎汁(異表記:鮭汁)」と呼び、kôe-chiap / kê-chiap または「コエチャプ[8]」 と発音する[9]。なお、この「膎」もしくは「鮭」と記し ke または koe と読むのは方言字で小魚の塩辛のことで、魚のサケとは無関係である[10]。
音と意味が似ているが語源ではない中国語
現在の中国語ではトマトケチャップを蕃茄醤や茄汁と呼ぶが、これはトマト(蕃茄)のペーストという意味で英語から意訳または音訳された語である。広東語では茄汁を ke2zap1と発音するが、ketchupという単語はトマトケチャップ以前からあるため、これは音が似ているだけで語源とは考えられない。『しょうゆ世界への旅』(大塚滋、東洋経済新報社)は「茄醤(コエチップ・ケツィアプ)」と表記しているが、字と音が合わない[独自研究?]。
また、台湾語におけるトマトケチャップやウスターソースを指す、kiat-chiap(キエッチャプ、橘汁)または kiat-chiap-puh(キエッチアップッ)[11]は、日本語や英語からの借用語と見られる[要出典]。
また、広東語では魚を使ったソースをマレー語の kicap にちなんで gipjap 喼汁 キッチャプ と呼び、さらに、濃い汁という意味で gitjap ギッチャプ という言葉もある[要出典]が、どれもケチャップの語源ではない[要出典]。
マレー・インドネシア語説
前述の閩南語や台湾語の 膎汁/鮭汁(kechiap、koechiap)がマレー半島に伝わり、マレー語の“kicap”やインドネシア語の “kecap” になったと考えられる。これがイギリスに伝わったのがケチャップの由来とする説がある[要出典]。
なお、現在のマレーシアではトマトケチャップは“sos tomat”、インドネシアでは“saus tomat”と呼び、それぞれ「トマトソース」の意味である。
ロマンス諸語・アラビア語説
アメリカの人類学者E.N.アンダーソンは、エリザベス・デイヴィッドの主張を引用して、ケチャップはフランス語のescavèche (「ソースのかかった食べ物」という意味)と同源語であると主張している。 この言葉はスペイン語とポルトガル語にもescabeche(「ピクルス用のソース」)という形で存在し、料理史家のカレン・ヘスはアラビア語のkabees(「酢漬け」)に遡るとしている。この言葉はケチャップが登場したのと同時期の17世紀後半に英語化されてcaveachとなった。[要出典]
トマトケチャップ
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 498 kJ (119 kcal) |
|
27.4 g | |
| 食物繊維 | 1.8 g |
| 飽和脂肪酸 | 0.01 g |
| 多価不飽和 | 0.01 g |
|
1.7 g | |
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(7%) 56 µg(6%) 670 µg |
| チアミン (B1) |
(7%) 0.08 mg |
| リボフラビン (B2) |
(3%) 0.04 mg |
| ナイアシン (B3) |
(9%) 1.3 mg |
| パントテン酸 (B5) |
(6%) 0.32 mg |
| ビタミンB6 |
(5%) 0.07 mg |
| 葉酸 (B9) |
(1%) 5 µg |
| ビタミンC |
(11%) 9 mg |
| ビタミンE |
(15%) 2.2 mg |
| ビタミンK |
(5%) 5 µg |
| ミネラル | |
| ナトリウム |
(87%) 1300 mg |
| カリウム |
(10%) 470 mg |
| カルシウム |
(2%) 17 mg |
| マグネシウム |
(6%) 20 mg |
| リン |
(5%) 36 mg |
| 鉄分 |
(5%) 0.7 mg |
| 亜鉛 |
(2%) 0.2 mg |
| 銅 |
(8%) 0.16 mg |
| セレン |
(10%) 7 µg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 66.0 g |
| 水溶性食物繊維 | 0.6 g |
| 不溶性食物繊維 | 1.2 g |
| ビオチン(B7) | 5.9 µg |
| 酢酸 | 0.7 g |
|
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[13]。 | |
| |
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 | |
日本やアメリカにおいて「ケチャップ」と言えば通常トマトケチャップのことを指す。世界のケチャップ市場の63%をトマトケチャップが占める[14]。
レシピ
基本的なトマトケチャップの作り方は完熟トマトを加熱して漉し、さらに低温で煮詰めてトマトピューレを作る。それに、砂糖、塩、酢、香辛料、玉ねぎ、ニンニクを加える[1][2][3]。家庭向けのレシピではセロリ、ニンジン、ショウガといった香味野菜が加えられることもある[15]。
トマトソース等との区別
日本農林規格ではトマトケチャップを「濃縮トマトに食塩、香辛料、食酢、砂糖類及びたまねぎ又はにんにくを加えて調味したもので可溶性固形分が25%以上のもの」と定義し、可溶性固形分が9%以上25%未満のトマトソースや、トマトの風味を変えない程度に調味料の使用が制限されるトマトペーストと区別している[16]。
イギリスやオーストラリアなどアメリカ以外の多くの国では酢が入っていないトマトケチャップをトマトソース、レッドグレイビー、レッドソースなどの名前で販売している[要出典]。
消費
トマトケチャップはホットドッグ、ソーセージ、オムレツ、ハンバーガー、フライドポテトなどのソースとして使用される。食材の上からかける場合と、ディップソースとして小皿で提供される場合がある。家庭用のほか、ファストフード店やストリートフード店で卓上調味料として用意されることが多い。マスタードやレリッシュとセットとして販売、提供される場合もある[17]。
米国のトマトケチャップ消費量は年間210万トンで、世界の11%を占める[18]。
日本の洋食では、チキンライス、オムライス、ナポリタンなど加熱前にトマトケチャップで味付けするメニューがある。また、カレーライスのルーや味噌汁などに隠し味として少量加えて味に深みを出すことも行われている[要出典]。
日本やアメリカなどでは[要出典] 酢豚やエビチリなど、中華料理に用いられる事も多い。
他のソースの材料として
バーベキューソースはトマトケチャップを使って調合されることがある[19]。マヨネーズとケチャップを1:1で練り合わせたものはフライソースとなり、日本ではオーロラソースと呼ばれる。
歴史
トマトケチャップは18世紀末のアメリカで誕生した。後述するようにイギリスでは17-18世紀から多様なケチャップが作られていたが、トマトケチャップに関してはアメリカの方が早く、イギリスの料理書に登場するのは19世紀初頭である[20]。
トマトケチャップの最古のレシピは1795年に手書きの写本で記された『Approval Recipes』と『Receipt Book of Sally Bella Dunlop』である。これは切ったトマトに塩を振り、2・3日置いてからしみ出した果汁を香辛料と煮詰めたもので、酢も砂糖も加えていない[20]。現在とは違い、調理中に隠し味として使ったと考えられている[要出典]。
トマトベースのケチャップを最初に出版書籍で紹介したのは、フィラデルフィアの医師であり科学者でもあったジェームズミーズ(英語: James Mease)であり、そのレシピが1812年の「Archives of Useful Knowledge, vol. 2」という百科事典に記されている。その後、19世紀後半になってようやくトマトを砂糖で甘くし、酢で酸味を加え、クローブ・ナツメグ・ジンジャーといったスパイスで味付けした、いわゆる現代の「ケチャップ」が誕生した[7]。
世界最大手のケチャップメーカーであるハインツは1876年に品質の良い完熟トマトのみで作った瓶詰めトマトケチャップを発売した。これが広く普及した結果、ケチャップの代表になったといわれている[7]。
日本のトマトケチャップは、明治期にアメリカから伝わったものが最初とされる。当時既にトマトケチャップが主流になっていたアメリカから伝わったため、日本では当初からケチャップといえばトマトケチャップだった[5]。国産製品は1896年(明治29年)に横浜で清水與助が創業した清水屋が、1903年(明治36年)に製造販売を開始したという記録が横浜開港資料館所蔵の資料に残っており、これが最初の国産ケチャップであると考えられる[21](神奈川区の国道15号線沿いには「トマトケチャップ発祥の地」の石碑がある[22])。この清水屋ケチャップは、1913年に南区で開かれた勧業共進会で銅賞を受賞し、宮内庁御用達にもなったという。
1908年(明治41年)には明治屋がトマトケチャップとマッシュルームケチャップの輸入販売を開始した[23]。
同年にはまた、蟹江一太郎(カゴメの創業者)がトマトケチャップの製造販売を開始している[24]。その後トマトケチャップを用いる料理の普及拡大、殺菌方法を変え仕上がりを改善したこと[6]、積極的な宣伝などが奏功して急速に売り上げを伸ばした。
容器
日本においてはソフトチューブ入りのものが普及している。日本における発売当初はビール瓶に詰められていたため取り出しにくかったが、1957年に(他社に追随して)カゴメが広口瓶を採用し、スプーンで必要なだけ取り出せるようになったことで4年後には売り上げが2倍近くに増えたという[要出典] 。さらにその後、ポリエチレンをブロー成形したソフトチューブ入りのものが発売され、使い勝手の良さから日本における主流となった。
アメリカでは瓶入りや逆さまにして立てることのできる硬質ビニール容器入りが普及している。日本においても1988年にカゴメが「ニューケチャップ」の商品名で硬質ビニール製のものを発売したが、短期間で発売終了となった。消費者にチューブ入りのものが浸透していたこと、日本人のトマトケチャップの消費量はアメリカ人に比べて少ないことなどが普及に至らなかった理由とされる[24]。
このほか、弁当用など使い切りの個包装パック[25][26]や、マスタードとの組み合わせで容器を折って開封するパキッテ(旧称:ディスペンパック)[27]でも販売されている。
保存
トマトケチャップは、家庭や飲食店などで常温で保存されていたものが提供されることもあり、しばしば保存方法について議論されることがある。2017年、クラフト・ハインツのアメリカ法人は「天然の酸味があるのでハインツのケチャップは戸棚でも保存できますが、製品の品質を保つために開封後は冷蔵庫へ」との回答を示したが、2023年、クラフト・ハインツのイギリス法人は「ケチャップは冷蔵庫へ!」との回答を示している[30]。
トマト以外を主原料とするケチャップ

マレーシア・インドネシアにおけるケチャップ
#語源説で述べたように、閩南語で魚醤を表す「膎汁」がマレー語、インドネシア語を経由してイギリスに持ち込まれた可能性がある。
しかし、現在のマレー半島におけるkicap/kecapには魚介類は含まれず、大豆が主原料の醤油に近い調味料となっている。甘い(manis)もの、塩辛い(asin)ものの2タイプが有り、甘いケチャップマニスはトロミがあり、大豆と小麦の発酵による甘みに加え、パームシュガーが多く加えられていて、両国の代表的な料理ナシゴレンやミーゴレンなどに多用される。一方、塩辛いケチャップアシンは粘性は少なく、日本の濃口醤油に似ているが風味は異なり、中国醤油の生抽により近い。
イギリスにおける初期のケチャップ
18世紀末にアメリカでトマトケチャップが登場する以前、18~19世紀のイギリスでは多様なケチャップが紹介されていた。これらはすべてではないが、塩や酒や酢、様々なスパイスを加える、加熱や発酵、瓶詰めで保存性を高めるといった共通項がある[20]。
ハンナ・グラスの『The Art of Cookery Made Plain and Easy』の1762年版には2種類のアンチョビケチャップ、4種類のマッシュルームケチャップ、1種類のクルミケチャップのレシピが掲載されている[20]。
アンチョビケチャップ
イギリスの最初期のケチャップは、カキ、アンチョビ、ロブスターといった魚介類を用いたものであった。これは東洋から貿易で魚醤に似たケチャップが持ち込まれた影響と推測される[20]。
1693-1694年にジェーン・スティーブリーが記した『Receipt book of Jane Staveley』にはエシャロット、アンチョビ、スパイスから作られるホワイトケチャップが記されている[20]
また、1727年にロンドンで出版されたエリザ・スミスの『The Compleat Housewife』というレシピ本には、ワインやスパイスを使ったアンチョビベースのケチャップのレシピが記されている[7]。
マッシュルームケチャップ

イギリスでは17世紀からマッシュルームケチャップ(英語: Mushroom ketchup)が作られていた[要出典]。18世紀半ば頃には代表的なケチャップになった[20]。これはキノコに塩を振り、2・3日置いてからしみ出た汁を香辛料と煮詰めたものである。
1727年にリチャード・ブラッドリーが記した『The Country Housewife』にはマッシュルームを煮出して作るケチャップの製法が記されている[20]。
マッシュルームケチャップはトマト以前のケチャップのなかでは比較的普及し、アメリカでも1770年にはイギリス人入植者によってマッシュルームケチャップが作られている[要出典]。マッシュルームケチャップは現在でもパイやシチューに使用されている[要出典]。
クルミケチャップ
1720年に書かれた作者不明の『Cookbook』には「リッチモンド夫人のクルミケチャップ」が掲載されている[20]。
イギリスではクルミのほか、インゲンマメ、キュウリ、ブルーベリー、クランベリー、レモンそしてブドウなど植物素材を材料とするソースが考案されていった[31]。
果物を使ったケチャップ
フィリピンでは、第二次世界大戦によるトマト不足から、トマトの代わりにバナナを用いたバナナケチャップが考案され、現在でも主流となっている。バナナケチャップの本来の色は茶色かかった黄色であるが、トマトケチャップに似せて着色料で赤く着色されている[32]。
カナダのケベックの伝統的なレシピでは、Ketchup aux Fruitsと呼ばれるフルーツケチャップをトゥルティエールと呼ばれるミートパイにかけて食べる。ただしこれは果物だけで作られるものではなく、トマトをベースとして、モモ、洋ナシ、リンゴなどを加えて作られるものである[33]。
2018年、福井市に本社を置く企業「日々是(ひびこれ)」は、マンゴーや黄色いパプリカ、レモンを材料とする金色のケチャップを製品化した[34]。
逸話
1981年、レーガン政権下のアメリカ合衆国議会は、農務省に対して連邦公立学校の昼食基準について学校経費削減プランの提案を求めた。それに応じた農務省の提案の一つは、ケチャップを野菜として分類するというものであった[35]。この提案は広く嘲笑の対象となり、結果却下された[36]。
2017年にアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプがウェルダンに焼いたビーフステーキにトマトケチャップをかけたところ、外交儀礼に反すると批判された[37][38]。
2021年、アメリカでは新型コロナウイルス感染症の拡大により、外食産業のデリバリーやテイクアウトの利用が増大した結果、トマトケチャップの小分けパックが品不足になる事態が発生した[39]。