ラ・フィネット
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| フランス語: La Finette 英語: La Finette | |
| 作者 | アントワーヌ・ヴァトー |
|---|---|
| 製作年 | 1717年ごろ |
| 素材 | 板上に油彩 |
| 寸法 | 25 cm × 19 cm (9.8 in × 7.5 in) |
| 所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『ラ・フィネット』(仏: La Finette、英: La Finette)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠アントワーヌ・ヴァトーが1717年ごろに板上に油彩で制作した絵画である。題名の「ラ・フィネット」という言葉は、「おしゃまな」、「機知に富んだ」という意味の形容詞に由来する[1]。作品は1869年に当時の所有者であったルイ・ラ・カーズから寄贈されて以来[2]、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[1][2][3][4]。
ヴァトーはわずか36歳で結核のために世を去った[5]が、その天才的な感性によって18世紀ロココ絵画の創始者となった画家である。本作に見られる少女の人形のような可愛らしい目鼻立ちの顔と、ふっくらとしたまろやかな体つきもヴァトーが創り出して、18世紀のロココ絵画で流行することになる女性のタイプである[1]。
「繊細な音楽家」とも呼ばれる[3]本作の画面では、ふっくらと可愛らしい顔をした少女が庭園のベンチに座っている。彼女は楽器を弾くのを止め、鑑賞者の方を振り向いたところである。やや物憂げなその表情は、何か物思いに沈んでいるようである。彼女は恋を待ち受けているようでもあり、耳に残る音楽の余韻を楽しんでいるようにも見える。ヴァトーは暗緑色の衣装の襞を軽やかに震えるようなタッチで描き、そこに繊細にきらめく輝きを与えている[1]。

緑濃い森と優雅に着飾った若い娘、そして音楽という取り合わせはヴァトーの絵画世界にしばしば見られ、田園趣味と洗練された感覚、官能性への誘いを暗示する。それが夢のような詩情を喚起する抒情的世界にまで高められているところに、雅宴画の画家ヴァトーの真骨頂がある[1]。
この絵画は、同じくルーヴル美術館に所蔵される『無関心』と同じサイズの対作品となっている[1]。『無関心』中の若者は今まさに踊りを始めようとしているが、それは恋に浮き立つ気分を反映しているのかもしれない[1]。ちなみに『無関心』は「舞踊」の、本作『ラ・フィネット』は「音楽」の擬人像である。恋愛の象徴である舞踊と音楽は、ヴァトーの作品では常に需要な主題であった[4]。そして、両作品に見られるような、現実と夢想が微妙なバランスを保つ詩的な世界は、ヴァトーが創造した独自のものである[1]。
なお、本作と『無関心』の油彩表面は18世紀から傷み始めていたとされ、そのため国王ルイ16世が購入を取りやめたというエピソードが伝えられている。それでも19世紀の文学者ゴンクール兄弟や詩人ポール・クローデルを強く魅了し、称賛された[4]。