嵐 (フラゴナール)
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| フランス語: L'orage 英語: The Storm | |
| 作者 | ジャン・オノレ・フラゴナール |
|---|---|
| 製作年 | 1759年ごろ |
| 素材 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 73 cm × 97 cm (29 in × 38 in) |
| 所蔵 | ルーヴル美術館、パリ |
『嵐』(あらし、仏: L'orage、英: The Storm)、または『泥にはまった荷車』(どろにはまったにぐるま、仏: La Charrette embourbée、英: The Stalled Cart or Wagon in the Mud)[1][2]は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠ジャン・オノレ・フラゴナールが1759年ごろ[3]、キャンバス上に油彩で制作した絵画である。画家がローマに滞在していた時期の作品で、パリでとりわけ称賛されていたイタリア人画家ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリオーネの荷車の絵画に触発されている[4]。作品は1869年にルイ・ラ・カーズ医師から遺贈されて以来[3]、パリのルーヴル美術館に所蔵されている[3][5]。
初期のフラゴナールは、フランソワ・ブーシェやジャン・シメオン・シャルダンを初め、レンブラントの明暗表現やイタリア・バロックの壮大な構図など様々な様式を学んで、自己の芸術の糧とした[5]。本作は、非常に低い視点から物を満載した荷車を描いている。この主題は、同様の荷車を描いたカスティリオーネの絵画に類似している。一方、雲の垂れこめた空と迫りくる嵐は、イタリアの絵画よりも17世紀オランダの画家たちの絵画に共通している[4]。実際、フラゴナールは、風景画においては友人のフランス人画家ユベール・ロベールやオランダの画家から学んだ点が多い[5]。
とはいえ、本作では、フラゴナール独自の個性がはっきりとうかがわれる[5]。牛に引かせた荷車が山道にさしかかり、泥にはまっている。3人の男たちが後ろから懸命に押し上げようとしており、前にいる牛が鳴いている。上部では、風が荷物を覆う布を捲りあげ、下部では牧童に負われている羊たちが身を寄せ合っている。何よりも、空を駆けている嵐が情景に劇的な緊迫感を与えている。フラゴナールは、朧ではっきりとしない形態を生み出すべく絵具を用いている[4][5]。そして、緊迫感とざわめきが太く素早い筆致で見事に表現されている[5]。

本作は、1860年にパリで初公開された。それまで個人コレクションにあった18世紀フランス絵画の傑作展がイタリアン大通りの会場で開かれた際のことであった。本作はセンセーションを巻き起こし、19世紀半ばにフラゴナールの名声を復活させるのに貢献した[2]。ポール・ド・サン=ヴィクトールは、本作を「難破船の詩情」を持つものと表現している[2]。ゴンクール兄弟はリベラルに称賛し、「煙のような、暗鬱な、電気を帯びた空、断片的な青白い陽光に照らされている」と述べている[6]。
本作のために赤チョークと茶色のインクで描かれた準備素描がシカゴ美術館に所蔵されているが、この素描では荷車が逆方向を向いている[7]。類似した素描がブダペスト国立西洋美術館にも所蔵されている。この素描は、フラゴナールとユベール・ロベールの双方に帰属されている[2]。