金属有機構造体

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金属有機構造体(きんぞくゆうきこうぞうたい、: Metal Organic Framework、略称: MOF(もふ))、金属-有機骨格(きんぞくゆうきこっかく)、または多孔性配位高分子(たこうせいはいいこうぶんし、: Porous Coordination Polymer、略称: PCP)は、内部に空孔を有する有機配位子からなる配位ネットワークである[1]

MIL-101 MOFの合成例。クラスター(緑色の八面体)はそれぞれ、中心に1つのクロム原子と、頂点に6つの酸素原子(赤い球)から構成されている。
MIL-101結晶の走査型電子顕微鏡写真。

金属中心どうしが有機配位子で架橋されるように錯体形成を行うと、金属原子が互いに架橋された構造を有する周期性の高い化合物が得られる。これを金属有機構造体という[2]

従来から使用されている活性炭ゼオライトでは細孔構造・比表面積を精密に制御した構築は困難だった。対して、金属有機構造体は従来の多孔質材料に比べて特性が優れているだけでなく、分子設計に配位結合を精密に取り入れることで細孔構造・比表面積・形態などを人為的に設計できる。この特性により、非常に複雑な構造体の構築や高次機能の発現が可能となりつつある[2]

MOFは多くの場合において、ゲスト分子(多くの場合溶媒分子)を脱離しても細孔は安定しており、他の分子で再充填することができる。この特性により、MOFは水素二酸化炭素などのガスの貯蔵に有用である。MOFのその他の応用例としては、ガス精製、ガス分離、水質浄化英語版[3]触媒、固体電解質、スーパーキャパシタなどが挙げられる[4]

北川進リチャード・ロブソンオマー・ヤギーは金属有機構造体(MOF)に関する研究により、2025年にノーベル化学賞を受賞した[5]

定義

金属有機構造体(MOF)とは、金属クラスターと有機配位子からなる拡張構造である[6][7][8]。拡張構造とは、そのサブユニットが一定の配分で繰り返しパターンを形成する構造を指す。

2013年のIUPAC推奨ガイドライン[1]によれば、MOFは「配位ネットワーク」の一部であり、配位ネットワークはまた「配位ポリマー」の一部である。

  • 配位ポリマー(Coordination polymer):1次元・2次元・3次元に繰り返し構造を持つ配位化合物。
    • 配位ネットワーク(Coordination network):繰り返し配位構造単位によって1次元方向に延びる配位化合物であるが複数のチェーン・ループ・スピロリンク間に架橋を有するもの、あるいは繰り返し配位構造単位を通じて2次元または3次元方向に延びる配位化合物。
      • MOF(Metal–Organic Framework):有機配位子を持つ配位ネットワークのうち、潜在的な空孔(potential voids)を持つもの。

MOFに隣接する分野として、軽元素(H、B、C、N、O)のみで構成された拡張構造である共有結合性有機構造体(covalent organic framework、COF)[9]や、有限の大きさを持つ超分子配位錯体英語版(Supramolecular Coordination Complex、SCC)がある。

歴史と初期のMOF

1974年、メルボルン大学で講師を務めていたリチャード・ロブソンは、初年級の学生講義用に結晶構造模型を作製していた。彼は原子を表す木製の球に一定角度の穴を開けて化学結合を表す棒でつなぐとおのずと正しい構造が組み上がることに気づき、原子固有の性質を利用して異なる分子どうしを結合すれば新規の分子構造ができるのではないかと着想した[10] [11]。1989年、彼はこのアイデアをもとに、銅イオンとそれに引きつけられるニトリル基を先端に持つ有機分子を結合させたCu[C(C6H4CN)4]BF4などの結晶性高分子を合成した [12][13]

1990年代に入り、金属と配位子を使った多くの分子構造体を試作されたが、不安定で壊れやすいものであった[11]

北川進は、新規の構造と性質を持つ銅を含んだ結晶性高分子についての報告に興味を持ち、1990年からこの分野の研究を始めた[11]。1992年、銅イオンに有機分子のピラジンテトラメチルピラジンを配位させた新しい高分子結晶体を報告した[14]。そのひとつは2次元の層状化合物で、層の間の空間にアセトン分子を含むことができた。その後も研究を継続し、1997年には可逆的に気体分子を吸着できる構造体を合成した[15]。これはコバルトニッケル亜鉛の各イオンに4,4’-ビピリジンが配位した、メタン、窒素、酸素分子が出入りできる3次元の多孔性金属有機構造体である。北川らは「多孔性配位高分子(PCP)」という名称で概念の体系化を行なった[16]

オマー・M・ヤギーは1995年にカルボキシレート系配位子を用いた結晶を合成し、「金属有機構造体(MOF)」と名付けた。この成果は、安定かつ結晶性の多孔質材料創出への道を開いた[17] 。ヤギーはまた1998年に二次構築単位という、多孔性を有する骨格を構築するための構成要素として機能する金属カルボキシレートクラスターの概念を導入し、この分野をさらに発展させた[18]。この発明により精密な構造設計と機械的安定性の向上が可能となり、MOFが工業条件下でも多孔性を保持できるようになった。ヤギーはこれらの材料のガス吸着等温線を測定し、ガス貯蔵・分離用途への応用の道を示した[19]

Scopusデータベースに基づく、金属有機構造体に関する非特許文献の年間発表件数。

1999年、とても高いポロシティを示す初のMOFであるMOF-5英語版の開発というブレークスルーがあった[20]酸化亜鉛クラスターとテレフタレート配位子から構成されるMOF-5は、高い比表面積、構造的頑健性、汎用性といった特異的性質を示し、ガス貯蔵・分離から触媒・センシングに至る応用分野を持つ基盤技術としてのMOFの地位を確立した。この発明は、右図の2000年における転換点が示すように、金属有機構造体(MOF)の開発と応用に劇的な影響を与えた。

構造

MOFは主に2つの構成要素からなる:二次構築単位(Secondary Building Unit, SBU)と呼ばれる無機金属クラスターと、リンカー(Linker)または架橋基(Strut)と呼ばれる有機分子である。このため、MOFはしばしば「ハイブリッド有機無機材料」と呼ばれる[1]。リンカーは通常、1価、2価、3価、または4価の配位子である[21]。金属とリンカーの選択がMOFの構造、ひいてはその特性を決定する。例えば、金属の配位数は、金属に結合できる配位子の数やその方向を定め、細孔のサイズや形状に影響を与える。

次元性に基づくハイブリッド材料の分類[22]
無機材料の次元
0123
有機材料の次元
0 分子複合体
(Molecular complexes)
ハイブリッド無機チェーン
(Hybrid inorganic chains)
ハイブリッド無機レイヤー
(Hybrid inorganic layers)
3D無機ハイブリッド
(3D inorganic hybrids)
1 チェーン配位ポリマー
(Chain coordination polymers)
混合無機有機レイヤー
(Mixed inorganic-organic layers)
混合無機有機3D骨格
(Mixed inorganic-organic 3D framework)
2 レイヤー状配位ポリマー
(Layered coordination polymer)
混合無機有機3D骨格
(Mixed inorganic-organic 3D framework)
3 3D配位ポリマー
(3D Coordination polymers)

MOFの構造を記述し体系化するため、命名法体系が開発された。MOFのサブユニットである二次構築単位は、複数の構造に共通するトポロジーで記述できる。各トポロジー(ネットとも呼ばれる)には、太字の小文字3文字で記号が割り当てられる。例えばMOF-5英語版pcuネットを有する。

Zn4O(CH3COO)6の構造。二次構築単位はしばしば酢酸亜鉛構造から誘導され、酢酸イオンはより強固なジカルボン酸およびトリカルボン酸に置換される。

金属クラスターには架橋配位子英語版が結合する。MOFにおいて、代表的な架橋配位子はジカルボン酸およびトリカルボン酸英語版である。これらの配位子は通常、剛直な骨格を有する。例としては、ベンゼン-1,4-ジカルボン酸(H2bdcまたはテレフタル酸)、ビフェニル-4,4-ジカルボン酸(H2bpdc)、およびトリカルボン酸であるトリメシン酸が挙げられる。

MOFの開発における極めて重要な側面は、その結晶構造がX線結晶構造解析法によって決定可能であることである[23]。多くのMOFは良好な結晶性を示すため、その3次元構造を正確に決定できる。これにより、MOFの細孔内で起こる反応を研究し、反応中間体の構造決定が可能となった[24]

文献で報告されているMOFのほとんどは結晶性化合物であるが、非晶質MOF[25]やその他の無秩序相[26]も存在する。

合成

一般的な合成

MOF化学は配位化学と固体無機化学から出発し、新たな分野として発展した。MOFは、合成プロセスを通して不変の架橋有機配位子から構築される[27]。ゼオライト合成では、「テンプレート」と呼ばれる、無機骨格の構造成長に影響を与えるイオンがしばしば用いられる。テンプレートイオンは後段階で除去される。MOFでは、骨格は二次構築単位(SBU)と有機配位子によってテンプレート化される[28][29]

水素貯蔵を目的としたMOFに有用なテンプレート化手法として、N,N-ジメチルホルムアミドや水などの金属と結合する溶媒の使用が挙げられる。この場合、溶媒を除去すると金属サイトが露出し、水素分子がこれらのサイトに結合できるようになる[30]

MOFの化学を進展させる上で特に重要な4つの進展があった[31]

  1. 金属含有単位を安定形状に保持する幾何学的構築原理。設計合成でターゲットとすべきトポロジーの同定につながっただけでなく、恒久的な多孔性を達成する核心点となった。
  2. 構造のトポロジーを変えずにサイズと性質を変化させるisoreticular原理の適用。超高ポロシティと大きな細孔開口部を有するMOFが実現された。
  3. 合成後の改質。有機ユニットや金属有機錯体をリンカーと反応させることでMOFの機能性が向上した。
  4. 単一骨格内に複数の機能を組み込んだ多機能性MOFの実現。

MOF中の配位子は通常可逆的に結合するため、結晶の成長速度が遅い中で格子欠陥が再溶解されやすく、ほぼ平衡状態に達した欠陥密度を持つミリメートル規模の結晶が得られる。ソルボサーマル合成法(Solvothermal synthesis)は、結晶が数時間から数日かけて成長するため、構造決定に適した結晶の育成に有用である。しかし、MOFを消費財の貯蔵材料として利用するには、その合成を大幅にスケールアップする必要がある。MOFのスケールアップは広く研究されていないが、複数の研究グループがマイクロ波を用いて溶液からMOF結晶を急速に核生成できることを実証している[32][33]。この「マイクロ波補助ソルボサーマル合成(microwave-assisted solvothermal synthesis)」と呼ばれる技術は、ゼオライト研究分野で広く用いられており[27]、数秒から数分でマイクロメートル規模の結晶を生成し[32][33]、収率は従来の低速成長法と同等である。

メソポーラス材料MIL-100(Fe)のような一部の金属有機構造体(MOF)は、室温およびグリーン溶媒(水やエタノール)中で、スケーラブルな合成法によって穏和な条件下で得ることができる[34]

溶媒を用いない結晶性金属有機構造体の合成も報告されている[35]。酢酸金属と有機配位子前駆体を混合し、ボールミルで粉砕する。この方法によりCu3(BTC)2を一定の収率で迅速に合成可能である。溶媒を用いずに合成したCu3(BTC)2の形態は市販のBasolite C300と同一であった。ボールミル内の高い衝突エネルギーによる成分の局所的な溶融が反応を促進すると考えられている。また、ボールミル内反応で副生成物として生成する酢酸が、ボールミル内で溶媒効果を発揮し反応を助けた可能性もある[36] 。Cu3(BTC)2の機械化学的合成において少量のエタノールを添加すると、得られる材料の構造欠陥量が大幅に減少することが示されている[37]

溶媒を使用しないMOF薄膜および複合材料の合成法の一つは、化学気相成長法(CVD)によるものである。このMOF-CVD[38]は、ZIF-8に対して初めて実証され、2段階からなる。第1段階では金属酸化物の前駆体層を堆積させる。第2段階では、これらの前駆体層を昇華した配位子分子に曝露し、MOF結晶格子への相転移を誘起する。この反応中に生成する水分子が転移を誘導する上で重要な役割を果たす。このプロセスは産業用微細加工基準に準拠したクリーンルームプロセスへのスケールアップに成功した[39]

配向性薄膜としてのMOFの成長については数多くの方法が報告されている。しかし、これらの方法はごく少数のMOFトポロジーの合成にしか適さない。その一例が蒸気補助変換法(Vapor-Assisted Conversion、VAC)であり、これはいくつかのUiO型MOFの薄膜合成に利用可能である[40]

ハイスループット合成

ハイスループット(High-Throughput、HT)法は、コンビナトリアル化学の一部であり、効率向上のためのツールである。ハイスループット法にはコンビナトリアル法と並列合成法の2つの合成戦略が存在する。コンビナトリアル法では、全ての反応が1つの容器内で進行し、混合生成物が生じる。並列合成法では、反応が異なる容器内で進行する。さらに、薄膜法と溶媒ベース法との区別がなされる[41]

ソルボサーマル合成法は、対流式オーブン内のテフロン製反応器あるいはマイクロ波オーブン内のガラス製反応器を用いて(ハイスループットマイクロ波合成)行われる。マイクロ波オーブンの使用は反応パラメータを劇的に変化させることがある。

ソルボサーマル合成に加え、連続流反応器における超臨界流体溶媒の利用も進展している。超臨界水は2012年に初めて銅・ニッケル系MOFの合成に用いられ、わずか数秒で反応を完了させた[42]。2020年には、超臨界水法と同等の時間スケールで連続流反応器と超臨界二酸化炭素英語版が用いられ、二酸化炭素の低い臨界点によりジルコニウム系MOFであるUiO-66の合成が可能となった[43]

仮晶的複製(Pseudomorphic replication)

仮晶的鉱物置換現象は、鉱物相が平衡状態でない流体と接触する際に生じる。自由エネルギーを低減し初期相をより熱力学的に安定な相へ変換するため、再平衡化が進行する傾向があり、これには溶解と再沈殿の副過程が伴う[44][45]

このような地質学的プロセスに着想を得て、適切な基板(例えばフッ素ドープ酸化スズ)への酸化アルミニウム原子層堆積(ALD)法と、ソルボサーマルマイクロ波合成法を組み合わせることでMOF薄膜を成長させた例がある。酸化アルミニウム層は、構造形成剤として機能すると同時に、MOF構造の骨格を形成する金属ソースとしても作用する[46]。多孔性3次元金属有機構造体の構築は、マイクロ波合成法において行われる。具体的には、原子層堆積された基板を、高温下でDMF/H2O 3:1混合溶媒中のリンカー溶液に曝露する。同様の手法で、2015年にコバルトポルフィリンMOF(Al2(OH)2TCPP-Co; TCPP-H2=4,4,4,4-(ポルフィリン-5,10,15,20-テトライル)テトラベンゾエート)の合成が報告された。これは水溶液中のCO2COへ電気触媒変換するために構築された初のMOF触媒である[47]

合成後修飾

理論上は金属ノードと有機リンカーを適切に選択することで3次元構造と細孔の内部環境を制御できるものの、実際には、MOF系の不安定性のために望む機能を備えた目的の生成物を直接合成することはしばしば困難である。ゲスト分子や対イオン英語版の交換、溶媒の除去により機能性を追加できるが、依然として骨格の構成要素に限定される[48]。合成後の有機リンカーや金属イオンの交換は、この分野で拡大しつつある領域であり、より複雑な構造、機能性の向上、系の制御の可能性を開く[48][49]

配位子交換

合成後修飾を用いることで、MOF内の有機リンカーを、配位子交換または部分配位子交換により新たなリンカーと置換できる[49][50]。この交換により、MOFの細孔構造、場合によっては全体的な骨格構造を特定の目的に合わせて調整することが可能となる。配位子交換は選択的吸着、ガス貯蔵、触媒としての利用を目的とした材料の微調整などに役立つ[49][30]。配位子交換を行うには、既製MOF結晶を溶媒で洗浄した後、新たなリンカー溶液に浸漬する。この交換反応には熱が必要となることが多く、数日単位の時間スケールで進行する[50]。合成後配位子交換により、温度・pH・その他の反応条件によりMOF合成中に分解してしまう官能基、あるいは供与基との競合により合成そのものを阻害する官能基をMOFに組み込むことも可能となる[49]

金属交換

合成後修飾法は、MOF内の既存金属イオンを新規金属イオンと置換するためにも用いられる。MOFの骨格構造や細孔構造を変化させることなく、完全な金属イオン交換反応が達成されている。合成後の配位子交換と同様に、合成後の金属交換は、あらかじめ合成されたMOF結晶を溶媒で洗浄した後、新たな金属の溶液に結晶を浸漬することで行われる[51]。合成後金属交換により、同一骨格でありながら異なる金属イオンを有するMOFを簡便に合成できる[48]

層別化合成

合成後修飾は、配位子や金属自体の機能を変更するだけでなく、MOFの構造を多様にするためにも用いられる。合成後修飾を利用することで、MOFを高度に秩序立った結晶性材料から不均一な多孔質材料へと変換できる[52]。この技術によりMOF結晶内に独自の構造的・機能的特性を示す領域を設けることが可能となる。コアシェル型MOFやその他の層状MOFは、各層が独自の機能を有しながらも、ほとんどの場合層間で結晶学的に互換性を持つように合成されている[53]

オープンな配位サイト

場合によっては、金属ノードは不飽和であり、様々な技術を用いてこの周囲を修飾することが可能である。配位子のサイズが細孔開口部のサイズと一致する場合、既存のMOF構造に追加の配位子を導入することが可能である[54][55]。金属ノードは有機配位子だけでなく無機化学種に対しても良好な結合親和性を示すことがある。一例として、金属ノードがウラニルイオンと結合を形成することが示されている[56]

2次元MOFにおける層間導入

2次元金属有機構造体(MOF)を扱う場合、MOFの層間に配位子を取り込むことが可能である。方法の一つは、MOFの合成過程(デノボ合成と呼ばれる)において取り込むものである。この方法では、MOFの構成要素とターゲットの層間配位子を同時に反応させる。これによりMOFが形成されると同時に、配位子がMOFに配位する。もう一つの方法は合成後修飾であり、最も一般的な手法はソルボサーマル合成法を用いるものである。

亜鉛(II)メソ-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィン。図は、H4TCPPリンカーの構造を示し、亜鉛イオンはポルフィリン内に配位結合している。他の亜鉛ノードはカルボキシレートと配位し、拡張されたMOF構造を形成する。

配位子は通常、MOF内で金属ノードに配位する。配位を促進するため、MOFに使用する金属ノードと配位子がどう結合するかを慎重に見極めて選ぶ必要がある。2次元MOFにおいて金属ノード間にポルフィリンリンカーを用いる場合、第2のリンカーはポルフィリン内の金属を介してMOFに配位するとともに、ポルフィリンリンカー間の金属ノードにも配位することが可能であり、2つの配位サイトが存在する。一例として、亜鉛ノードとテトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリンリンカーから構成される2次元Zn2(Zntcpp) MOFが挙げられる。この構造では、光色変化性配位子であるビス(5-ピリジル-2-メチル-3-チエニル)シクロペンテン(bpmtc)をZn2(Zntcpp)層間に組み込んだ[57]。これらの2次元MOFは、第2のリンカーを導入しても結晶性を維持し、サスペンション以外では可変的な安定性を示す。様々な2次元MOF内に多様なリンカーを導入することで、幅広い応用が可能となる。

複合材料

MOFの吸着量を増大させる別のアプローチは、化学吸着が可能となるように系を改変することである。この機能は、活性炭に担持された白金錯体とMOFを含有する複合材料を作ることで実現した。水素スピルオーバー現象英語版として知られる現象によって、H2は解離し白金表面に結合する。解離した水素原子は活性炭を伝ってMOF表面へ移動する。この技術革新により、MOFの常温水素貯蔵容量は3倍に増加した。ただし脱離には最大12時間以上を要し、可逆的脱離が観察されるのはわずか2サイクルに留まる場合がある[58][59]。水素スピルオーバーとMOFの水素貯蔵特性との関連性は十分に解明されていないが、水素貯蔵技術への応用可能性が示唆される。

触媒

MIL-101の電子顕微鏡画像と構造。赤色と青色の円はそれぞれ29オングストロームと34オングストロームのケージを、黄色の長方形はクロムノードとBDCリンカーからなる超四面体を示す[60]

MOFは不均一系触媒としての可能性を秘めている[61]。その高い比表面積、調整可能な細孔構造、金属および官能基の多様性は、触媒としての利用に特に魅力的である。ゼオライトは触媒として極めて有用であるが[62]、Si/Al結合点の固定された四面体配位と2配位酸化物リンカーに制限され、既知のゼオライトは200種類未満である。この限られた種類とは対照的に、MOFはより多様な配位構造、多面体リンカー、補助配位子(F、OH、H2Oなど)を示す。また、1ナノメートルを超える細孔サイズを持つゼオライトを得ることは困難であり、ゼオライトの触媒としての応用は比較的小さな有機分子(一般的にはキシレン以下)に限定される。

さらに、MOF合成に一般的に用いられる合成条件は穏和であるため、繊細な官能基を骨格構造に直接組み込むことが可能となる。ゼオライトやその他の微細多孔性結晶性酸化物系材料では過酷な条件(例えば、有機テンプレートを除去するための高温焼成)が用いられるため、このようなことは難しい。金属有機構造体MIL-101は、クロムなどの遷移金属を組み込んだ触媒用途で最も広く用いられるMOFの一つである[63]。しかしながら、一部のMOF光触媒は水溶液中や強酸化条件下での安定性が極めて低い[64][65]

ゼオライトは依然としてエナンチオピュアな形態で得られず、医薬品、農薬、香料産業などにおける不斉合成触媒としての応用が妨げられている。エナンチオピュアなキラル配位子またはその金属錯体をMOFに組み込むことで、効率的な不斉触媒が実現されている。一部のMOF材料は、多核サイト、ホスト-ゲスト応答、疎水性キャビティを組み合わせることで、ゼオライトと酵素の間のギャップを埋める可能性すらある。MOFの半導体としての性質も有用かもしれない。理論計算によれば、MOFは1.0~5.5電子ボルトのバンドギャップを持つ半導体または絶縁体であり、配位子の共役度を変化させることでこの特性が調整可能であることから、光触媒としての可能性が示唆されている[66]

触媒作用の設計

金属イオンまたは金属クラスター

ゼオライト触媒の例。

MOFを用いた触媒作用に関する最も初期の報告の一つは、2次元MOF(層状正方形格子)Cd(4,4-bpy)2(NO3)2を触媒としたアルデヒドのシアノシリル化であった[67]。この研究は主にサイズおよび形状選択的なクラスレーションに焦点を当てていた。第2の報告は、単一のパラジウム(II)イオンを金属ノードとし、2-ヒドロキシピリミジノレートを支柱とする2次元正方形格子MOFによるものであった[68]。配位が飽和しているにもかかわらず、このMOF中のパラジウム中心はアルコール酸化英語版オレフィン水素化、および鈴木C–Cカップリングを触媒する。少なくともこれらの反応では、金属ノードがPd(II)とPd(0)の中間体を往復する酸化還元振動が生じ、配位子の配位数が大きく変化する。もし全てのパラジウム中心が触媒活性を持つならば、これは元の骨格の不安定化と潜在的な破壊を確実に招くことから、基質の形状・サイズ選択性が観察されたことは触媒反応が不均一でありMOF内部で起きていることを示唆する。しかしながら、少なくとも水素化反応に関しては、触媒作用がMOF内の金属ノードではなく、MOFに取り込まれたパラジウムクラスターやナノ粒子表面や欠陥部位で発生している可能性を排除することは困難である。立方晶化合物であるMOF-5では、この「日和見主義的」なMOFベースの触媒作用が報告されている[69]。この材料は配位的に飽和したZn4Oノードと完全錯体化したBDC(benzene-1,4-dicarboxylic acid)架橋基で構成されており、トルエンビフェニルに対してフリーデル・クラフツ-tert-ブチル化の触媒作用を示す。さらに、パラアルキル化がオルトアルキル化よりも強く優先される挙動は、反応物がMOFに取り込まれていることを反映していると考えられる。

機能的な架橋基

多孔性骨格材料[Cu3(btc)2(H2O)3](通称 HKUST-1[70])は、直径約6オングストロームの窓を有する大きな空洞を持つ。配位した水分子は容易に除去でき、オープンな銅(II)サイトが残る。このルイス酸サイトがベンズアルデヒドアセトンのシアノシリル化を触媒する[71]

ブレンステッド酸触媒かルイス酸触媒かという観点で見ると、α-ピネンオキシドの異性化、シトロネラールの環化、α-ブロモアセタールの転位という3つの反応において生成物選択性が顕著に異なり、[Cu3(btc)2]が主にルイス酸触媒として機能していることを示している。また、触媒反応(例:シクロプロパン化英語版)における生成物選択性および収率は、銅(I)やリンカーの不完全に脱プロトン化されたカルボン酸基などの欠陥部位の影響を受けることも報告されている[37]

MIL-101([Cr3F(H2O)2O(BDC)3])は、大きな空孔を持つMOFであり、シアノシリル化反応の触媒である[72]。MIL-101に配位した水分子は容易に除去でき、クロム(III)サイトが露出する。クロム(III)は銅(II)よりもルイス酸性が強いため、MIL-101はアルデヒドのシアノシリル化反応においてHKUST-1よりもはるかに活性が高い。MIL-101の触媒サイトはHKUST-1とは対照的にベンズアルデヒドによる望ましくない還元を受けにくい。芳香族アルデヒドのルイス酸触媒によるシアノシリル化はMn3[(Mn4Cl)3btt8(CH3OH)10]を用いても行われている[73]。この材料は3次元細孔構造を有し、細孔径は10オングストロームである。原理的には、2種類のマンガン(II)サイトのいずれかが触媒として機能し得る。本触媒の注目すべき特徴は、(小分子基質に対しての)高い変換収率と良好な基質サイズ選択性であり、これらはチャネル局在型触媒作用とよく合致する。

カプセル化された触媒

MOFカプセル化アプローチには、ゼオライトカプセル化鉄(ポルフィリン)[74]およびマンガン(ポルフィリン)[75]系の酸化触媒作用に関する先行研究が役立つ。ゼオライト研究では一般に、酸化剤としてTBHPではなくヨードシルベンゼン(PhIO)が用いられてきた。この酸化剤の差異は機構的に重要である可能性が高く、比較を複雑にしている。簡潔に述べると、PhIOは単一の酸素原子供与体であるのに対し、TBHPはより複雑な挙動を示す。さらに、マンガンオキソ中間体からの酸素移動と、マンガン開始ラジカル連鎖反応の両方を通じて酸化が進行する可能性が考えられる。いずれの機構においても、この手法はオキソ架橋二量体形成と酸化分解の両方においてポルフィリンを安定化させる有望なアプローチである[76]

有機架橋基またはキャビティ修飾子による触媒

MOFを用いた触媒反応のほとんどは、活性サイトとして金属イオンまたは金属原子を利用している。数少ない例外として、ニッケル2個と銅2個を含むMOFがある[77]。この化合物は、架橋基としてジピリジルアミノ酸(L-またはD-アスパラギン酸)を併用している。配位化学構造上、アスパラギン酸のアミノ基は添加した塩酸によってプロトン化されないが、カルボキシル基の一方はプロトン化される。したがって、骨格に組み込まれたアミノ酸は、遊離アミノ酸とは異なる状態で存在し得る。ニッケル系化合物はチャネルが微細であるため多孔性はわずかである一方、銅系化合物は明らかに多孔性を示す。骨格のカルボン酸がブレンステッド酸性触媒として作用し、キャビティに侵入可能なエポキシド小分子の開環メタノリシス反応を最大65%の収率で促進する[78]。ただし、これより優れた均一系触媒は存在する。

[Cd(4-btapa)2(NO3)2]の式を持つ触媒用MOFの合成が報告されている[79]。このMOFは3次元構造を持ち、同一の鎖状ネットワークが対をなして構成されていながらも、分子サイズの細孔を有する。ノードは単一のカドミウムイオンであり、ピリジル窒素が八面体配位している。しかし触媒の観点から見て、この材料の最も興味深い特徴はゲスト分子がアクセス可能なアミド官能基の存在である。これらのアミド基ベンズアルデヒドマロンニトリルクネーフェナーゲル縮合反応を塩基触媒する能力を有する。ニトリルが大きい場合、反応はわずかに加速されるのみであり、触媒作用が主に材料表面ではなく材料内部の細孔中で進行することを示唆している。特筆すべき発見は、均一系溶液中では遊離架橋基による触媒作用が認められない点である。これはbptda分子間の分子間水素結合に起因する。したがって、このMOF構造は従来では得られなかった触媒活性を引き起こすのである。

興味深い別のアプローチとして、複数のエチレンジアミン分子それぞれが持つ2つの窒素原子のうち1つがクロム(III)に配位することで、MIL-101の内部構造を改変した報告がある[80]。エチレンジアミンの配位されていない自由端がブレンステッド塩基触媒として用いられ、ベンズアルデヒドとニトリルのクネーフェナーゲル縮合反応を促進した。

Kimらによる第3のアプローチも報告されている[81]。彼らはピリジン官能基を有する酒石酸誘導体と亜鉛(II)ソースを用いることで、POST-1と呼ばれる2次元MOFの合成に成功した。POST-1は1次元チャネルを有し、その断面は6つの3核亜鉛クラスターと6本の支柱によって形成される。6つのピリジン基のうち3つは亜鉛イオンに配位しているが、残る3つはプロトン化されチャネル内部に向けられている。中和されたとき、非配位ピリジル基は、反応物アルコールの脱プロトン化を促進することでエステル交換反応を触媒することが判明した。大きなアルコールを用いた場合に顕著な触媒作用が認められないことから、触媒作用はMOFのチャネル内で発生していることが強く示唆される[82]

アキラル触媒

MOF触媒の模式図。

触媒サイトとしての金属

MOF構造中の金属はしばしばルイス酸として作用する。MOF中の金属は、骨格活性化後に除去できる溶媒分子や対イオンと配位することが多い。このような不飽和金属中心のルイス酸的性質は、配位した有機基質を活性化し、その後の有機変換を可能にする。不飽和金属中心の利用は、2004年に藤田誠らによってアルデヒドおよびイミンのシアノシリル化反応で実証された[83]。彼らは、直鎖状架橋配位子4,4-ビピリジン(bpy)をCd(NO
3
)
2
で処理して得られた、組成{[Cd(4,4-bpy)2(H2O)2] • (NO3)2 • 4H2O}のMOFを報告した。このMOF中のカドミウム(II)中心は歪んだ八面体構造をとり、エクアトリアル位に4つのピリジン、アキシャル位に2つの水分子を有し、2次元無限ネットワークを形成する。活性化により2つの水分子が除去され、金属中心は不飽和でルイス酸性を帯びる。金属中心のルイス酸性は、イミンがルイス酸性金属中心に付着してイミンの求電子性が高まるシアノシリル化反応で実証された。イミンのシアノシリル化反応では、ほとんどの反応が1時間以内に完了し、アミノニトリルが定量収率で得られた。

Kaskelらは、3次元MOFを不均一系触媒として用い、配位不飽和金属を用いた同様のシアノシリル化反応を行った[84]。本研究で使用した3次元骨格[Cu3(btc)2(H2O)3] (btc: ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート) (HKUST-1英語版)は、Williamsらによって最初に報告されたものである[85]。[Cu3(btc)2(H2O)3]の開放型骨格は、二量体の四カルボン酸銅ユニット(パドルホイール)から構築され、アキシャル位に配位した水分子とbtc架橋配位子が存在する。アキシャル位から2つの水分子を除去すると、多孔性チャネルを有する骨格が得られた。この活性化されたMOFは、293 K (20 °C)ではベンズアルデヒドのトリメチルシアノシリル化を非常に低い変換率(24時間で5パーセント未満)で触媒する。反応温度を313 K (40 °C)に上げると、72時間後に89%の選択性で、57%という良好な変換率が得られた。対照的に、同じ条件下でMOFなしのバックグラウンド反応では10%未満の変換率しか観測されなかった。しかし、この戦略にはいくつかの問題がある。

  1. アルデヒドが起こすCu(II)からCu(I)への還元により反応温度上昇に伴い骨格が分解すること、
  2. 強い溶媒阻害効果(THFなどの電子供与性溶媒が、Cu(II)サイトへの配位をアルデヒドと競合し、これらの溶媒ではシアノシリル化生成物が観察されなかったこと)、
  3. 一部の有機溶媒における骨格の不安定性

である。他の複数の研究グループも、MOF中の金属中心を触媒として利用することを報告している[73][86]。ここでも、一部の金属や金属クラスターの電子不足性が、生成するMOFを効率的な酸化触媒とする。森らは、アルコール酸化の不均一系触媒としてCu2パドルホイールユニットを有するMOFを報告した[87]。得られたMOFの触媒活性は、酸化剤としてH2O2を用いたアルコール酸化反応により評価された。このMOFは、第一級アルコール、第二級アルコール、ベンジルアルコールの酸化反応においても高い選択性を示した。Hillらは、バナジウムオキソクラスターV6O13を基本単位とするMOFを用いたチオエーテルスルホキシド化英語版反応を実証している[88]

触媒サイトとしての機能的リンカー

機能性リンカーは触媒部位としても利用可能である。3次元MOF{[Cd(4-btapa)2(NO3)2] • 6H2O • 2dmf} (H34-btapa= 1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリス[N-(4-ピリジル)アミド], dmf = N,N-ジメチルホルムアミド)は、3座アミドリンカーとカドミウム塩によって構築され、クネーフェナーゲル縮合反応を触媒する[79]。4-btapa上のピリジン基は八面体構造のカドミウム中心に結合する配位子として機能し、アミド基は基質との相互作用に機能性を提供する。具体的には、アミド基の−NH基が電子受容体として、C=O基が電子供与体として作用し、有機基質を活性化して後続反応を促進する。

Fereyらは、高強度かつ高多孔性のMOF[Cr33-O)F(H2O)2(BDC)3] (BDC: ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート)を報告した[89]。このMOFでは、不飽和クロム(III)中心を直接触媒サイトとして用いるのではなく、クロム(III)サイトにエチレンジアミン(ed)がグラフト(接ぎ木)されている。グラフトされたエチレンジアミンの非配位端が塩基触媒サイトとして機能する。edグラフト処理をしたMOFを用いてクネーフェナーゲル縮合反応を行ったところ、未処理骨格と比較して変換率が著しく向上した(98パーセント vs. 36パーセント)。触媒サイトをつくるためのリンカー修飾の別の例として、ジオール触媒的酸化反応の目的で、ヨウ素官能基化アルミニウム系MOF(MIL-53およびDUT-5)およびジルコニウム系MOF(UiO-66およびUiO-67)が挙げられる[90][91]

触媒活性を有する貴金属ナノ粒子の担持

触媒活性を持つ貴金属の担持は、MOFの不飽和金属サイトへ官能基をグラフトする(接ぎ木する)ことによって達成できる。エチレンジアミン(ed)はクロム金属サイトにグラフトされ、さらに修飾してパラジウムなどの貴金属を担持できることが示されている[80]。担持されたパラジウムは、ヘック反応においてPd/Cと同等の触媒活性を示す。ルテニウムナノ粒子は、MOF-5骨格に担持されると複数の反応で触媒活性を示す[92]。このルテニウム担持型MOFはベンジルアルコールベンズアルデヒドへの酸化を触媒するが、MOFの分解が生じる。同触媒はベンゼンシクロヘキサンへの水素化にも用いられた。別の例では、欠陥を有するHKUST-1骨格内に埋め込まれたパラジウムナノ粒子が、調整可能なルイス塩基性サイトをつくる[93] 。したがって、この多機能性Pd/MOF複合体は、段階的なベンジルアルコール酸化とクネーフェナーゲル縮合を行うことができる。

サイズ選択性を有する反応ホスト

MOFは、その細孔のサイズと形状を調整可能な特性から、光化学反応重合反応の両方に有用である可能性がある。Liらは3次元MOF{[Co(bpdc)3(bpy)] • 4dmf • H2O} (bpdc: biphenyldicarboxylate, bpy: 4,4-bipyridine)を合成した[94]。このMOFを用いてo-メチルジベンジルケトン(o-MeDBK)の光化学が詳細に研究された。この分子はシクロペンタノールの生成を含む多様な光化学反応特性を有することが判明した。また、MOFは、その細孔という閉じ込められた空間内での重合反応の研究に用いられてきた。閉じ込められた空間での重合反応は、開放空間での重合とは異なる特性を示す可能性がある。北川らにより、ラジカル重合の活性化モノマー候補として、スチレンジビニルベンゼン、置換アセチレンメタクリル酸メチル酢酸ビニルが検討されてきた[95][96]。リンカーサイズの違いにより、MOFチャネルサイズは概ね25~100Å2のオーダーで調整可能である。これらのチャネルはラジカル重合サイトとして使用された場合、ラジカルを安定化させ停止反応を抑制することが示された。

キラル触媒

ホモキラルMOFを構築するいくつかの戦略が存在する。アキラルなリンカー配位子の自己分解によってホモキラルMOFの結晶を得る方法は、その目標を達成する方法の一つである。しかし、得られたバルク試料には両方の鏡像体が含まれており、ラセミ体となる。青山らは、結晶成長過程における核生成を精密に制御することで、アキラル配位子からバルク状態のホモキラルMOFの取得に成功した[97] 。Zhengらは、結晶のエナンチオマー対形成における統計的揺らぎを化学的に操作することで、アキラル配位子からのホモキラルMOF合成を報告している[98]。キラルな影響下でのMOF結晶成長は、アキラルリンカー配位子を用いてホモキラルMOFを得るための別アプローチである。Rosseinskyらは、結晶成長時のらせん構造のキラル性を制御することでホモキラルMOF形成を誘導するため、キラルな共配位子を導入した[99][100]。Morrisらは、キラルカチオンを含むイオン性液体反応を用いてMOFを合成し、ホモキラルMOFを得た[101]。しかしホモキラルMOF合成において最も直接的かつ合理的な戦略は、入手容易なキラルリンカー配位子を用いた構築法である。

興味深い機能性と試薬アクセス可能なチャネルを有するホモキラルMOF

Linらは、キラル配位子として2,2-bis(diphenylphosphino)-1,1-binaphthyl (BINAP)と1,1-bi-2,2-naphthol (BINOL)を用いてホモキラルMOFを合成した[102]。これらの配位子は触媒活性金属サイトと配位し、エナンチオ選択性を向上させる。1,1-ビナフチル骨格の3,3、4,4、6,6位置には、ピリジンホスホン酸カルボン酸など様々な連結基を選択的に導入できる。さらに、リンカー配位子の長さを変えることで、MOFの多孔性と骨格構造を選択的に調整できる。

ホモキラルMOFの反応後修飾

Linらは、MOFの反応後修飾により、触媒として使用可能なエナンチオ選択的ホモキラルMOFを生成できることを示した[103]。得られた3次元ホモキラルMOF{[Cd3(L)3Cl6] • 4DMF • 6MeOH • 3H2O} (L=(R)-6,6'-dichloro-2,2'-dihydroxyl-1,1'-binaphthyl-bipyridine) は、Ti(OiPr)4による前処理でグラフト化Ti-BINOL酸塩種を生成させた場合、ジエチル亜鉛付加反応において均一系の類似物と同等の触媒効率を示すことが確認された。MOFの触媒活性は骨格構造によって異なる。Linらは、同一材料から合成されたMOFであっても、骨格構造によって触媒活性が大きく異なることを発見した[104]

前駆体触媒を構成要素とするホモキラルMOF

触媒活性を持つホモキラルMOFを構築する別のアプローチとして、活性触媒または前駆体触媒であるキラル金属錯体を直接骨格構造に組み込む方法がある。例えばHuppらは、キラル配位子とbpdc(ビフェニルジカルボン酸塩)をZn(NO
3
)
2
と結合させ、2重相互貫通3次元ネットワークを得た[105]。骨格内のキラル配位子の配向により、すべてのマンガン(III)サイトがチャネルを介してアクセス可能となる。得られた開放骨格は、不斉オレフィンエポキシ化反応に対して触媒活性を示した。反応中に触媒活性の顕著な低下は観察されず、触媒は数回にわたりリサイクル・再利用が可能であった。Linらは、ホスホン酸ジルコニウム由来のRu-BINAP系を報告している[106]。Ru(BINAP)(ジアミン)Cl2前駆体を含むホスホン酸ジルコニウム系キラル多孔質ハイブリッド材料は、芳香族ケトンの不斉水素化において優れたエナンチオ選択性(最大99.2% ee)を示した。

バイオミメティック設計と光触媒

一部のMOF材料は、酵素の特徴である孤立した多核サイト、動的なホスト-ゲスト応答、疎水性キャビティ環境を組み合わせることで酵素に似せられる可能性がある[107]。 生物における2つの金属イオンが関与する協調的触媒作用のよく知られた例には、メタンモノオキシゲナーゼの二鉄サイト、シトクロムcオキシダーゼの二銅サイト、および三銅オキシダーゼがある。これらは、MOP-1に見られる二核Cu2パドルホイールユニット[108][109]やHKUST-1における[Cu3(btc)2] や、MIL-88[110]やIRMOP-51[111]に見られるFe
3
O(CO
2
)
6
などの三核単位と類似性を持つ。したがって、MOFは生体模倣的な触媒中心を有している。酵素はタンパク質を「分子認識」する、すなわち特定の基質に対して高い親和性を示す。分子認識効果は、ゼオライトでは自身の硬直な構造のために制限されているようである[112]。これに対し、MOFは、動的特性とゲスト分子の形状応答により、酵素に比較的似ている。実際、多くの骨格は、光や熱などの刺激によって回転可能な有機部分を含む[113]

MOF構造内の多孔質チャネルは光触媒サイトとして利用可能である。光触媒反応において、単核錯体は通常、単一電子プロセスしか起こさないか、高エネルギー照射を必要とするため用途が制限される。二核系は光触媒の開発において数多くの魅力的な特徴を有する[114]。0次元MOF構造において、ポリカチオン性ノードは半導体量子ドットとして機能し、リンカーが光子アンテナとして働くことで光刺激により活性化される[115]。理論計算によれば、MOFは1.0~5.5電子ボルトバンドギャップを有する半導体または絶縁体であり、配位子の共役度を変化させることで調整可能である[116]。実験結果からも、IRMOF型サンプルのバンドギャップはリンカーの官能基を変化させることで調整可能であることが示されている[117]

応用面では、抗炎症治療を目的としたMOFナノザイムが開発された[118]

機械的特性

産業におけるMOFの実用化には、その機械的特性の徹底的な理解が不可欠である。なぜなら、押出成形やペレット成形といったほとんどの加工技術は、MOFに著しい機械的圧縮応力を加えるからである[119]。多孔質構造の機械的応答は、高圧下で特異的な挙動を示す可能性があるため注目されている。ゼオライト(微細多孔質アルミノケイ酸塩鉱物)はMOFの機械的応答の参考となるが、有機リンカーの存在がゼオライトとは異なる新規な機械的応答をもたらす[120]。MOFの構造は極めて多様なため、その機械的特性を全て分類することは困難である。さらに、MOFのバッチ間ばらつきや極端な実験条件(ダイヤモンドアンビルセル)により、荷重に対する機械的応答の実験的決定は限定的である。しかしながら、構造と特性の関係を決定するための多くの計算モデルが構築されている。これまでに調べられたMOF系には、ゼオライト型イミダゾレート骨格英語版(ZIF)、カルボキシレート系MOF、ジルコニウム系MOFなどがある[120]

一般的に、MOFは圧縮荷重下で3つの過程を経る: アモルファス化、ハイパーフィリング、圧力誘起相転移である。

  1. アモルファス化(amorphization):リンカーが座屈し、MOF内部の多孔性が急激に低下する。
  2. ハイパーフィリング(hyperfilling):液体(通常は溶媒)中で静水圧圧縮されるMOFは、細孔が荷重液体によって充填され、収縮ではなく膨張する。
  3. 圧力誘起相転移(pressure induced phase transition):負荷中に結晶構造が変化する。

MOFの応答は主にリンカーと無機ノードの種類に依存する。ただし、特定のMOFはゲストに依存する結晶多形を示し、ゲスト分子が異なると結晶相や構造も異なるものに誘導される[121] 。この現象により、周囲の気体環境の組成に応じて変化するMOF結晶構造の例がある。

ゼオライト型イミダゾレート骨格(Zeolitic imidazolate frameworks, ZIFs)

ゼオライト型イミダゾレート骨格英語版(ZIF)では、いくつかの異なる機械的性質が報告されている。ZIFはゼオライトと多くの類似点を持つため、金属有機構造体(MOF)の中でも機械的特性に関して最も広く研究されている[120]。ZIFファミリーにおける一般的な傾向として、アクセス可能な細孔体積が増加するにつれて、ヤング率と硬度の低下が認められる[122]。ZIF-62シリーズのバルク弾性率は、ベンゾイミダゾレート(bim)濃度の増加に伴い上昇する。ZIF-62は、bim濃度が式量単位あたり0.35を超えると、開放細孔(open pore, op)相から閉鎖細孔(close pore, cp)相への連続的な相転移を示す。ZIF-62-bim0.35のアクセス可能な細孔サイズと体積は、適切な圧力を加えることで精密に制御可能である[123]

別の研究では、溶媒中での静水圧負荷下において、ZIF-8材料は収縮ではなく膨張することが示されている。これは内部細孔が溶媒でハイパーフィリングされた結果である[124]。理論計算によれば、ZIF-4およびZIF-8材料は静水圧負荷下でせん断軟化メカニズムを示し、材料がアモルファス化(約0.34ギガパスカル)する一方で、依然として6.5ギガパスカルオーダーのバルク弾性率を保つことが示された[125][126]。さらに、ZIF-4およびZIF-8 MOFは多くの圧力依存性相転移を起こす[122][127]

カルボキシレート系MOF(Carboxylate-based MOFs)

脱溶媒和されたHKUST-1のフレームワーク構造。黄色とオレンジ色の球はフレームワーク構造内の2つの異なる細孔(pore)を示す。青色:金属、赤色:酸素、黒色:炭素。
MIL-53 MOFワインラック構造における、ローディング時の異方性を示すイラスト。

カルボキシレート系MOFは多様な形態をとり、広く研究されてきた。カルボキシレート系MOFの代表例としてHKUST-1、MOF-5、およびMILシリーズについて説明する。

HKUST-1

HKUST-1英語版は二量体の銅パドルホイール構造を有し、2種類の細孔を持つ。錠剤成形ではHKUST-1のようなMOFは細孔崩壊を起こす[128]。カルボキシレート系MOFは負の熱膨張(加熱すると密度が増す)を示すが、予想外なことに、硬度とヤング率はリンカーの無秩序化により温度上昇に伴って低下することが判明した[129]。さらに計算上、よりメソポーラスな構造ほど体積弾性率が低いことが判明した。しかし、総細孔容積が同等であっても、多数の微細なメソ細孔を有する系よりも少数の巨大なメソ細孔を有する系で体積弾性率の上昇が観測された[130]。HKUST-1は、静水圧負荷下においてZIF構造と同様の「ハイパーフィリング」現象を示す[131]

MOF-5

MOF-5英語版は八面体構造の四核ノードを有し、全体として立方晶構造を呈する。MOF-5は木材に匹敵する圧縮率とヤング率(約14.9ギガパスカル)を有し、これは密度汎関数理論およびナノインデンテーション英語版法により確認された[132][133]。MOF-5は溶媒の充填媒体中でハイパーフィリング現象を示すことが確認されている一方、圧力に極めて敏感であり、細孔内に流体がない状態では3.5メガパスカルの圧力下で非晶質化/圧力誘起細孔崩壊を起こす[134]

MIL-53

MIL-53英語版 MOFは「ワインラック構造」を有する。これらのMOFは、ローディング時の柔軟性に起因するヤング率の異方性、およびローディング時のワインラック構造の開口に起因する一方向圧縮に対する負の線圧縮率の可能性について研究されている[135][136]

ジルコニウム系MOF(Zirconium-based MOFs)

UiO-66の電子顕微鏡画像。赤色:酸素、茶色:炭素、緑色:ジルコニウム、灰色:水素。

ジルコニウム系MOF(UiO-66など)は、非常に頑強なMOFの一種である(強固な六核Zr6金属ノードに起因)。熱、溶媒、その他の過酷な条件に対する耐性が向上しており、機械的特性において注目されている[137]。せん断弾性率測定と錠剤成形試験により、UiO-66 MOFはZIFやカルボキシレート系MOFと比較して機械的強靭性が極めて高く、細孔崩壊に対する耐性が大きいことが示されている[128][138]。ただし、錠剤成形下では高い安定性が見られるものの、ボールミル処理条件下ではリンカーが配位する無機ノードが破壊されることにより、UiO-66 MOFは比較的速やかに非晶質化することが確認された[139]

応用

関連項目

脚注

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