ハムネット (映画)

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脚本
原作 マギー・オファーレル
ハムネット
製作
ハムネット
Hamnet
『ハムネット』のポスター
監督 クロエ・ジャオ
脚本
原作 マギー・オファーレル
ハムネット
製作
製作総指揮
出演者
音楽 マックス・リヒター
撮影 ウカシュ・ジャル
編集
製作会社
配給
公開
上映時間 126分[1]
製作国
言語 英語
製作費 $30-35 million[2]
興行収入 $102 million[3][4]
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ハムネット』(Hamnet)は、クロエ・ジャオが監督を務め、マギー・オファーレル2020年の同名小説を基にジャオとオファーレルが共同で脚本を執筆した2025年の歴史ドラマ映画である。この映画はウィリアム・シェイクスピアとその妻のアグネス・ハサウェイ[注釈 1]が、11歳の息子ハムネットの死と向き合う家庭生活を劇化したものである[6]ジェシー・バックリーポール・メスカルがアグネスとウィリアムを演じ、エミリー・ワトソンジョー・アルウィンノア・ジュープらが脇を固めている。

『ハムネット』のワールド・プレミアは2025年8月29日に第52回テルライド映画祭英語版で実施され、11月26日にアメリカ合衆国およびカナダでフォーカス・フィーチャーズ配給により限定公開された。12月5日には拡大公開され、さらに2026年1月9日にはイギリスでユニバーサル・ピクチャーズ配給により公開された。批評家の反応は概ね好意的であり、特にバックリーの演技が高く評価された。この映画は多数の賞を受賞しており、第83回ゴールデングローブ賞英語版ではドラマ映画賞ドラマ映画主演女優賞(バックリー)を受賞し、また第98回アカデミー賞では作品賞監督賞を含む8部門で候補に挙がり、バックリーは主演女優賞を獲得した。

序文には、イングランドのストラトフォードでは「ハムネット」と「ハムレット」は同じ名前だと考えられていたと書かれている。

アグネスは、神秘的な洞窟の近くの森にいて、鷹狩り用の手袋で鷹を呼び出し、薬草を集めていた。ウィリアム・シェイクスピアは家庭教師として働き、家族の借金を返済していた。彼はアグネスに会った後、生徒たちのもとを離れ、二人はしばしの間、心を通わせる。ウィリアムの母メアリーは、アグネスが森の魔女の娘で、その魔女から薬草の知識を教わったという噂を彼に伝える。アグネスは後に、その知識を使ってウィリアムの額の傷を癒す。

ウィリアムは森でアグネスを訪ねる。アグネスは彼に物語を尋ね、ウィリアムはオルフェウスとエウリュディケの伝説を語り、彼女を喜ばせる。アグネスは臨終の床でウィリアムの手相を見て、彼の将来が成功し、二人の子供を授かることを予言する。二人は関係を深め、アグネスは妊娠する。そのため、アグネスの家族は彼女を勘当し、彼女はシェイクスピア一家と同居せざるを得なくなる。二人は急いで結婚し、アグネスは森の中で スザンナを出産する。

ウィリアムは、肉体労働を拒否したことで父親のジョンに殴られたため、反撃する。ウィリアムが執筆に苦労しているのを見たアグネスは、兄のバーソロミューに、ウィリアムを演劇の道に進ませるためにロンドンへ送り、自分とスザンナをストラトフォードに残すことを提案する。しばらくして、妊娠したアグネスは出産のために外に出ようとするが、ウィリアムの家族に家の中に留め置かれ、そこで双子のハムネットとジュディスを出産する。ジュディスは死産と思われた。母親の臨終に立ち会えなかったことを思い出し、迷信にも関わらず赤ん坊を抱かせてほしいと要求すると、ジュディスは目を覚ます。

11年後、成功を収めたウィリアムは時折帰郷し、子供たちはとても仲良く成長する。双子は自分たちが似ていると信じており、お互いの服を着て家族をだまそうとすることも多い。アグネスの飼っていた鷹が死んで埋葬される。アグネスは子供たちに、鷹の魂に願い事をするように言う。鷹の魂は子供たちを心に抱いて運んでくれるという。アグネスは、父親の劇団に入りたいと願うハムネットが成功するだろうと予言する。

ロンドンに戻ったウィリアムは、腺ペストの流行中に街をさまよい歩き、ペストが人々を死へと連れ去る様子を描いた人形劇を目にする。ストラトフォードでは、ジュディスがペストに感染する。ハムネットは彼女を励ますために鷹の話を語り、彼女の傍らに横たわり、死を欺くために自分が彼女の身代わりになりたいと宣言する。ジュディスは回復するが、ハムネットは重病に陥り亡くなる。臨終の床で、彼は舞台の上で母親を呼ぶ自分の姿を幻視し、そこにアグネスの鷹が現れる。

ウィリアムは急いで家に帰るが、ハムネットが横たわっているのを見て悲嘆に暮れる。ハムネットの死に向き合う中で、ウィリアムの不在はアグネスとの結婚生活にひずみをもたらす。ウィリアムはストラトフォードで一番大きな家を購入し、再びロンドンへ旅立つ。アグネスは彼の手を握り、今は何も見えないと言う。ウィリアムはロンドンでハムレットの稽古をするが、出演者たちの平板な演技に苛立ちを覚える。絶望した彼は、テムズ川の桟橋の端に身を乗り出し、劇中の 「生きるべきか、死ぬべきか」という独白を暗唱する。

アグネスの継母ジョーンは、ロンドンで上演されるハムレットのプログラムを見せて、ウィリアムと結婚したことを非難するが、アグネスはそれを否定する。アグネスとバーソロミューはウィリアムに会うためにロンドンへ行く。ウィリアムが家にいないのを見て、二人はグローブ座で上演されるハムレットの初演を観に行くことにする。最初は息子の名前が冒涜されていると思い、アグネスは憤慨する。しかし、ウィリアムがハムレットの父の亡霊として登場するのを見て、この劇がハムレットへのオマージュであることを悟り、ハムレットと父の 場面に感動して涙を流す。

舞台裏で、アグネスに気づいたウィリアムは、劇を聴きながら涙を流し、舞台袖からアグネスの様子を見に戻る。劇は剣戟の場面へと進み、ハムネットが夢見ていた役を演じることになる。ハムレットの死の場面で、アグネスは初めてウィリアムと出会った時と同じように俳優の手を握り、観客も次々と彼に手を伸ばす。彼女は舞台上のハムネットを、以前彼が臨終の際に見た幻影として思い浮かべる。ハムネットは悲しみから微笑みへと変わり、森の洞窟に似た穴を通って舞台裏へと消えていく。ハムネットの死後初めて、アグネスは笑い、微笑む。

キャスト

製作

マギー・オファーレルの小説の舞台化は2022年11月に発表されたが[7]、映画化権は出版前にロンドンを拠点とするリザ・マーシャルと彼女の会社であるヘラ・ピクチャーズが取得し、その後にニール・ストリート・プロダクションズ英語版と提携した[8]。2023年4月にはクロエ・ジャオが監督として雇われ、オファーレルと共に脚本も執筆することとなった[9]

2023年5月、ポール・メスカルジェシー・バックリーへの出演交渉が始まった[10]。メスカルは2024年1月のインタビューで、自身とバックリーの出演を認めた[11]

主要撮影は当初、2024年6月3日にロンドンでの開始が予定されていた[12]。製作は2024年7月29日にウェールズで開始され、9月30日に終了した。映画の大部分はイングランドのヘレフォードシャー、特にウェブリー英語版で撮影された。また、ロンドンのチャーターハウスでも撮影が行われたが、ここはこの映画におけるロンドン最大のロケ地となった[13][14]グローブ座の場面はシェイクスピアズ・グローブではなく、プロダクションデザイナーのフィオナ・クロンビー英語版エルストリー・スタジオ英語版のバックロットに建てたレプリカで撮影された(チャオとクロンビーはシェイクスピアズ・グローブはこの映画には装飾が過剰であると感じていた)[15][16][17]ジョー・アルウィンエミリー・ワトソンは8月にキャストに加わり、またスティーヴン・スピルバーグもプロデューサーとしてこの映画に加わった[18]。またウカシュ・ジャルが撮影監督を務めた[19]。映画音楽の作曲はマックス・リヒターが担当しており[20]、2004年の彼の曲「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト英語版」がこの映画でも使用されている[21]

文学的引用

この映画はオファーレルの原作小説を脚色しただけではなく、アングロ・サクソン・イングランド英語版に伝わる頭韻を踏んだ呪文(ガルドル英語版)である古英語の九つの薬草の呪文を繰り返し引用している。映画では、このテキストの文献学者のジョセフ・S・ホプキンスとスティーヴン・ポリントンによるものの2つの翻訳が引用されている。映画で自身の翻訳が使われたことについて、ホプキンスは「現代においてこれほど多くの観客に九つの薬草の呪文を紹介する一助となれたことは大きな喜びであり、これは間違いなく、アングロ・サクソン・イングランド以来この呪文が受けた中で最も大きな注目と言えるだろう」と述べた[22]

公開

フォーカス・フィーチャーズは2024年8月に『ハムネット』の全世界配給権を獲得し、その親会社であるユニバーサル・ピクチャーズが国際配給を担当することとなった。ただし、インド国内での配給権はアンブリン・エンターテインメントとの既存の配給契約に基づき、リライアンス・エンターテインメントが獲得した[18][23]。ワールド・プレミアは2025年8月29日に第52回テルライド映画祭英語版で実施された[24]。2025年7月、この映画は第50回トロント国際映画祭英語版のガラ・プレゼンテーション部門に選出され[25][26]、この映画祭で最高賞にあたる観客賞を獲得した[27]。一般公開に先立ち、2025年10月に第20回ローマ映画祭英語版の非コンペティブ部門である「グラン・パブリック」で上映され[28]、10月27日には第70回バリャドリッド国際映画祭英語版の公式セクションで上映され[29]、さらに11月5日は第38回東京国際映画祭英語版でクロージング作品として上映された[30]

アメリカ合衆国では2025年11月26日に限定公開され、その1週間後の12月5日に拡大公開された[31]。2026年1月24日時点でアメリカ合衆国では1276劇場まで拡大され、その週末に180万ドルを売り上げて10位になり、国内総収入は1800万ドルに迫った[32]。2026年1月9日にイギリス、1月15日にオーストラリアで公開された[33]

評価

批評家の反応

アグネス役を務めたバックリーの演技は批評家から広く称賛され、アカデミー主演女優賞を獲得した。

レビュー収集サイトRotten Tomatoesによれば、342件の評論のうち高評価は87%で、批評家の一致した見解は「一瞬にして人々の心を打ち砕き、そして癒す『ハムネット』は、ジェシー・バックリーとポール・メスカルの驚異的な演技のおかげで、シェイクスピアの傑作の着想の源泉を、はっきりと感じられるほどの感情的な力強さで探求している。」となっている[34]Metacriticによれば、54件の評論に基づく加重平均英語版は100点満点中84点で「世界的な絶賛(universal acclaim)」となっている[35]

バックリーの演技は広く称賛された。『ローリング・ストーン』のデヴィッド・フィアーは、「ジェシー・バックリーの演技については今後何年も語り続けられるだろう」と評した[36]。『スクリーン・デイリー英語版』のティム・グリアソンは、メスカルの役柄はこれまでの作品と似ていると感じたものの、「常に素晴らしい演技を見せるバックリーは、母となる喜びと喪失の悲しみを動じに味わう野性的な存在として、驚くべき演技を披露している」と評した[37]。『ニューヨーク・ポスト』のジョニー・オレキンスキーは、「バックリーこそが、まさに信じがたいほど希有な演技を披露している。彼女は、鉄のように頑なな一面と、陶器のように繊細な一面を自在に行き来している。その演技は雷鳴のように響き、遊び心に溢れ、地に足をつけつつもどこか幻想的である」と評した[38]。『バラエティ』のピーター・デブルージュは、この映画を「感情があまりにも生々しく、時にほとんど耐えがたいほどだ」と評し、「ジェシー・バックリーのヒロイックな演技が光っている」と述べた[39]

ヴァルチャー英語版』のビルジ・エビリは『ハムネット』について、「衝撃的であり、ここ数年で私が鑑賞した中で最も感情を揺さぶる映画かもしれない」と評した[40]。『ハリウッド・リポーター』のアンジー・ハンはこの映画を、「圧倒的な演技で描かれる、心揺さぶる作品」と総括した[41]。『Deadline Hollywood』のピート・ハモンドは『ハムネット』について、「人生が芸術にどのような影響を与えるかを静かに語りかけるその姿勢は、他に類を見ない」と評した[42]。『IndieWire』のデヴィッド・エーリック英語版は『ハムネット』について、「シェイクスピアの最も広く解釈されてきた戯曲に対する、これ以上の賛辞は考えにくい」と断じた。エーリックは演技について、アグネスというキャラクターが定型的な表現には頼らず、「バックリーの驚くべき演技が持つ根源的な生々しさによって支えられている」と評した。彼はメスカルの演技について、「ウィルが生と死の狭間で息子を探し始め、(中略)その探究がついに報われるため、カタルシスをもたらす超越的なものとなっている」と評した[43]

ガーディアン』のリチャード・ローソンはこの映画に4ツ星を与え、「心揺さぶる涙を誘う結末を迎える、マギー・オファーレルの2020年の小説の感動的な翻案作」と評した[33]BBCの映画評論家のニコラス・ハーバートキャリン・ジェームズは、この作品の豊かで感情に訴えかけるキャラクター、テーマ、そして映像美を高く評価し、2025年のベスト映画と位置づけた[44]。一方、『ウォール・ストリート・ジャーナル』のカイル・スミス英語版は、この映画を「典型的なオスカー狙い作品英語版(高尚なテーマを基調とし、涙と感情表現を極限まで盛り上げている)だが、知的なアナクロニズムに悩まされている」と評した[45]

受賞とノミネート

『ハムネット』は、演出、演技、脚本、音楽、撮影、衣裳、美術などに関して多くの受賞とノミネーションを獲得した。

この映画は、第50回トロント国際映画祭英語版でプレミア上映され、観客賞を獲得した[46]第98回アカデミー賞では8部門にノミネート(1部門受賞)[47][48]第83回ゴールデングローブ賞英語版では6部門にノミネート(ドラマ映画賞を含む2部門受賞)[49][50]第79回英国アカデミー賞英語版で11部門にノミネート(英国作品賞を含む2部門受賞)[51][52]第31回クリティクス・チョイス・アワードで11部門にノミネートされた[53][54]。バックリーはこの映画での演技により、ゴールデングローブ賞ドラマ映画主演女優賞[50]、クリティクス・チョイス・アワード主演女優賞[54]アクター賞主演女優賞[55]英国アカデミー賞主演女優賞[52]アカデミー主演女優賞を獲得した[48]。また、アメリカン・フィルム・インスティチュートにより2025年のトップ10映画の1本に選ばれた[56]

脚注

参考文献

外部リンク

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