パレスチナ料理

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パレスチナ料理のホブズ(パン)、ファラーフェル(ひよこ豆のコロッケ)、フンムス(ひよこ豆のペースト)

パレスチナ料理(パレスチナりょうり)は、パレスチナ人や世界各地に住むディアスポラ・パレスチナ人英語版によって営まれている料理を指す。都市、農村、遊牧民の料理に大きく分かれており、また北部、南部、沿岸部の地域的な違いがある[1]。パレスチナ料理は約100年前の生活様式である農耕と牧畜、そしてオスマン帝国や周辺地域の食文化との関連がある。

オスマン帝国は約400年間ビラード・アル=シャームアラビア語版レバントと呼ばれる東地中海アラビア語圏を統治した経緯があり、パレスチナはオスマン帝国の食文化圏に含まれる[注釈 1][3] [1]。パレスチナはオリーブの原産地にあたり、歴史的にはペルシアの米料理、アラブのナツメヤシ料理、トルコ料理のヨーグルト料理などが影響を与えている[1]

北部パレスチナはヨーグルトベースのソースと酸味のある風味があり、レバノン料理シリア料理英語版と共通点がある[1]。パンは北部では薄く、ヨルダン川西岸地区では大きく分厚いものが好まれる[3]。南部パレスチナはシチューや肉をベースにしてトマトを多用する。沿岸部は海鮮料理や唐辛子とディルを組み合わせるスパイスに特徴があり、内陸の農村部では季節の作物、野草、ラム肉、穀類が主になっている。このように地理的な区別があった食文化は、1948年のナクバ以降の難民の移動によって変化している[4]。ナクバによって世界各地に移り住んだディアスポラ・パレスチナ人によってもパレスチナ料理は継承されている[5]

主な料理

パン

ホブズとチキン

主食のパンは、ホブズと呼ばれる。丸くて平らな形をしており、中空になっていて、この部分に具を入れたりディップをつけて食べる[3]。内陸の農業地域では、伝統的に小麦と大麦を混ぜてパンを作っていた[6]。ホブズの種類には、ホブズ・ターブーン(かまど焼きパン)やホブズ・リーキ、ピタパンにあたるホブズ・クマージュ、薄焼きパンケーキのホブズ・サージュなどがある[3][7]

野菜料理

定番としてはマハシー(Mahshi)がある。くり抜いた野菜に米や肉を詰めてトマトやレモンで味付けをする料理で、ズッキーニ(クーサ)と葡萄の葉(ワラク・ダワーリー)のマハシーが多い[8]。くり抜く野菜として、他にピーマン、ナス、堅めのトマトなども使われる[注釈 2][9]

野菜の煮込み料理はタビーフと呼ばれる。野菜を炒め、スパイスを入れた肉の出し汁で煮込み、米にかけたりホブズとともに食べる[10]

ファーストフードの定番として、ファラーフェルというひよこ豆のコロッケがある[11]。ホブズにファラーフェルと野菜を詰め、唐辛子やゴマのペーストをつけるサンドイッチが人気がある[12]

野菜の下ごしらえでは、どの種類も粗いみじん切りにする。ナスには塩をふり、トマトは旬のものであれば液状にする[13]

肉料理、魚料理

平日は野菜が中心となり、中東料理として有名なケバブは多くて週に一度ほどである。軽食にはコフタという串焼きや、ファッルージュというローストチキンがある[8]。もてなし料理としては、ケバブの他にマンサフがあり、羊肉のスープに乾燥ヨーグルトを溶いて、ホブズや米と食べる[14]。かつてはガザのパレスチナ人がイスラエルで労働をしており、その交流を通してシュニッツェルの店がガザに多数あった。しかしイスラエルが2000年に境界を封鎖し、世代が代わって記憶が失われつつある[15]

地中海に面したガザは、パレスチナのシーフードの伝統を保持する地域でもある[16]。漁港として有名だったヤーファから伝わった魚介類のスープ(ショラビトゥ・ファワーキフ・アル=バハル)や、ガザの名物料理サイヤーディーヤアラビア語版などがある[注釈 3][18]

鶏肉、うさぎ肉、赤身肉、魚の下ごしらえでは、小麦粉、塩、レモン汁を混ぜたものに漬けてから血抜きをする。牛肉やヤギ肉など堅めの肉はホワイトビネガーに漬ける[19]

米料理、穀類

マクルーバ

代表的なもてなし料理のマクルーバは「ひっくり返されたもの」という意味があり、大皿に鍋をひっくり返して提供されるために名付けられた[14]。揚げた野菜と米を鶏のスープで煮込み、肉はラム肉の他に鶏肉や牛肉が使われる[14][20]。 マクルーバの香辛料は地域により異なり、家庭によっても違う。ラーマッラーヘブロンではターメリックを入れ、香りにカルダモンを使う。ベツレヘムではオールスパイスシナモンなど茶色のものが多い[21]

ひよこ豆のスプレッドであるフンムスは、朝食や夕食に並ぶ主食の一つで、フードスタンドでもよく買われる[22]。青麦をあぶって作るフリーカアラビア語版は、スープや肉料理などに使われるもので大量輸送の技術が普及するまでは高級品だった。フリーカは栄養に優れており、欧米ではスーパーフードとして注目されている[23]

甘味

果樹園が広がる農村部では果物、ナッツ、セージティーを食事の締めくくりにしていた。都市部では、ヤーファなどで焼き菓子が作られてきた[24]。ナッツ入りのシロップ漬けのパイであるバクラヴァは、手土産にも使われる高級な菓子に属する。ナーブルスの名物として知られるクナーファは、チーズの上に細長い生地を載せて焼き、シロップをかける[25]

ラマダーンなどの祝日の終わりには、デーツのペースト入りのクッキーであるカイク(kaik)を大量に作る習慣がある[26]

調味料

生の唐辛子を使うフィルフィル・マトゥフーンは、肉、チーズ、パンなどに使う。ニンニクとレモンを使ったダッギトゥ・トゥーマ・ウ・ライムーンは、そら豆やナスのサラダなど多くの料理に添えられる[27]。ニンニク、唐辛子、ディルなどをつぶしたドレッシングのダッギトゥ・サマクは、魚料理や詰め物に使う。タヒーナから作るサルシトゥ・トゥヒーナは、魚にかけたりドレッシング用のソースになる[28]

調理具、食器

パレスチナで最も一般的な調理用具として、ジブディーヤがある。粘土製の陶器のボウルとレモンの木の乳棒のセットで、料理の下ごしらえや仕上げに使われる。すりつぶす時に使う他に、加熱する時の容器としても使われる。ディアスポラ・パレスチナ人にとっても重要な調理具であり、代用としてメキシコのモルカヘテ、南米のバタン、タイのクロックなどが利用される[29]

問題

水資源

ガザでは水不足が深刻な問題となっている。イスラエルは1967年の第三次中東戦争後に占領地の水を管理下に置き、ヘブロンの山地からワーディ・ガザアラビア語版に流れる水流を変更して貯水池を建設した。そのためイスラエルが水の大半を使用し、パレスチナでは地下水が減少し、過剰取水や井戸の建設などが進んでいる。2014年のイスラエルのガザ侵攻では水道網の80%が破壊された。国際的な基準からは水が飲用に適さないため、経済的に余裕がある人々は世帯収入の3分の1ほどを飲料水に費やしている[30]

調理油

オリーブオイルはパレスチナの伝統的なレシピで主な調理油として使われていたが、イスラエルの攻撃によって贅沢品となっている。1967年以降、80万本のパレスチナのオリーブがイスラエルによって破壊された。2010年代から2020年代にかけてガザ地区だけでも2万本が失われ、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの入植者による襲撃の被害を含めると50万本に及ぶ。ガザでは大半の家庭が大豆油かひまわり油を使用している[31]

脚注

参考文献(著者・編者五十音順)

関連文献

関連項目

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