パンとシュリンクス (ブーシェ)
From Wikipedia, the free encyclopedia
| スペイン語: Pan y Siringa 英語: Pan and Syrinx | |
| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1760-1765年 |
| 種類 | キャンバス上に油彩 |
| 寸法 | 95 cm × 79 cm (37 in × 31 in) |
| 所蔵 | プラド美術館、マドリード |
『パンとシュリンクス』(西: Pan y Siringa、英: Pan and Syrinx)は、18世紀フランス・ロココ期の巨匠フランソワ・ブーシェが1760-1765年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1985年に購入されて以来[1][2]、マドリードのプラド美術館に所蔵されている[1][2][3]。ブーシェが描いた数点の同主題作の1点で、そのうち現存している作品がロンドン・ナショナル・ギャラリーにも収蔵されている[1][2]。
本作の主題は、オウィディウスの『変身物語』から採られている[1][2]。ニンフのパンパイプは牧神パンにつきまとわれ、ラドン川まで追いかけられた[3]。彼女は川の水に足を取られたとき、父であるラドン川の神と姉妹たちによって葦の沼に変えられてしまう[2][3]。そして、パンが胸のうちに捕らえたのは、シュリンクスではなく一束の葦の草だったのである。パンは、その水辺の葦を蝋でまとめ、古代の牧人たちが奏でた笛を創ったとされる[1][2][3]。この笛は、その由来からシュリンクスと呼ばれるようになった[1][2]。なお、本作には、この物語に特徴的ないくつかの要素が詳細に描き込まれていないため、場面はより一般的な「ニンフとサテュロス」に分類する余地があるかもしれない[1][2]。
作品

ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵の同主題作のほかに、現存しない同主題作がジャン・ドレのエングレービングによって知られているが、それらは方形のキャンバスに描かれている。それに対し、本作は楕円形のキャンバスに描かれている唯一の作品である[1][2]。
本作は、神話の主題を官能的に表現している点、奔放な画法、色使いなどすべてにおいてブーシェの特徴を表している[3]。画面では、筋肉質で暗色の肌のパンが、柔らかく明るい色調の身体を持つシュリンクスたちと対照されている。また、パンの乱暴な態度とシュリンクスたちの繊細な身振りも対照的されている。闊達な技術や活力にあふれた線描、リズミカルな構図から、この作品は画家の円熟期となる生涯最後の時期 (1760-1765年) に描かれたことがわかる[1][2]。
当時、ブーシェはゴブラン織工場のために多数の作品、特に「変身物語」という題名で知られるタピストリー用の連作を制作していた。この時、画家は、本作とは別のメダル型の『パンとシュリンクス』 (現存しない) を『イルカに乗ったアリオン』の対作品として描いている。ちなみに、ほかの連作作品はすべて楕円形で描かれており、空間の配置も概ねプラド美術館の本作と同じである。ブーシェは以前用いた構図を変えることで新しい構図を生み出していったが、本作はこの連作作品のための習作であったと考えられる[1][2]。