ユピテルとカリスト
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| ロシア語: Юпитер в облике Дианы и Каллисто 英語: Jupiter and Callisto | |
| 作者 | フランソワ・ブーシェ |
|---|---|
| 製作年 | 1744年[1] |
| 種類 | 油彩、カンヴァス |
| 寸法 | 98 cm × 72 cm (39 in × 28 in) |
| 所蔵 | プーシキン美術館、モスクワ |
『ユピテルとカリスト』(露: Юпитер в облике Дианы и Каллисто, 英: Jupiter and Callisto)は、フランス・ロココ時代の巨匠フランソワ・ブーシェが1744年にキャンバス上に油彩で制作した絵画である。オウィディウスの『変身物語』の逸話を主題としている。ロココ美術を愛好したフェリックス・ユスポフ公が所有していた作品で、現在はモスクワのプーシキン美術館に所蔵されている[2]。
本作は、ニンフのカリストが女神ディアーナへ変身したユピテルと睦みあう姿を描いている。女神ディアナの従者であったカリストが森の木陰でくつろいでいつところに彼女の主人がやってくる。「お前には特別に目をかけている」と甘言をささやいて近づく女神の正体は、ディアナに扮したユピテルであった[2]。
ディアナのアトリビュート (人物を特定する事物) である月の冠をつけた女神の背後では、ユピテルのアトリビュートである鷲が翼を広げており、この場面が誘惑の瞬間であることを物語る[2]。カリストの肩を抱き寄せ、その顎にやさしく指をかける女神を、カリストはうっとりと見上げている。左右に広がる2人の脚は安定した三角形構図を作り、その上空でプットたちが描く曲線と対照をなす。そばには愛を象徴するバラの花が咲き乱れ、樹木の暗い色調が真珠のような肌を際立たせる。白、赤、青、黄色の冷たい布地の光沢も、乙女たちの肉体の柔らかさ、紅潮した肌のぬくもりを想像させる[2]。

ブーシェにとって、神話的主題は、女性美とエロティシズムを表現するための舞台装置にほかならなかった。本作でも、画家はカリストへの凌辱へと続くユピテルの暴力を背後に追いやることで、作品を可憐で上品で、それでいて蠱惑的なものにしている。場面設定を曖昧にしたこの絵画が、時に「ディアナとカリスト」と呼ばれたのも故なきことではなかった[2]。
画中に描かれたユピテルは、容姿・肉体とも完全に女性であり女神と化している。その一方で、ブーシェはこの作品に意図的に「ユピテルとカリスト」と名づけ、カリストと睦みあう美しい貴婦人・女神が本来は男性・男神であるユピテルであり、彼が女性化してこの姿になったことを明示した。つまりこの絵画は、同性愛レズビアン的要素と同時に女性化・女体化譚TSF的要素も併せ持つ官能的な作品であるといえる。
なお、ロンドンのウォレス・コレクションには、ブーシェが死の前年にあたる1769年に描いた別の同主題作『ユピテルとカリスト』が所蔵されている[3]。