集団肖像画の本作は、スコットランドの商人で政治家であったジェームズ・ベイリー(英語版)の家族を描いている[1][2]。西インド諸島のプランテーション経営と奴隷の所有によって富裕であった一家は、当時、ミドルセックスにあったイーリング・グローヴ(英語版)邸に住んでいた[1]。
一家は、青々とした木々のある風景を背にして、溝のある柱の前に集まっている。17世紀のアンソニー・ヴァン・ダイク様式の服を着ている立ち姿の少年を除き、全員が当時流行した服を身に着けている。古典的な柱と重たげな赤いカーテンは壮大様式の家族肖像の伝統的特徴で、社会的地位と個人の尊厳を表すカントリーハウスを示唆する[1]。
ヴァン・ダイク様式の服を着た少年は一家の跡継ぎである長男アレクサンダー (Alexander) で、彼を除く家族全員が鑑賞者の方を見つめている。アレクサンダーは上を向き、赤ん坊である三女のコリン・キャンベル (Collin Campbell) にピンク色のバラを手渡そうとしている。18世紀の家族肖像のジェンダー的慣例に則り、一家の男性の長であるジェームズ・ベイリーは立っており、画面で一番高い位置を占めている。アレクサンダーは最も動きのある姿勢で表され、鑑賞者の注意を集めるべく計算されている一方、長女のジャネット (Janet) と次女のアミーリア (Amelia) 、そして母親コリン・キャンベル・オブ・グレヌア (Colin Campbell of Glenure) は比較的動きのない姿勢で描かれている[1]。
作品は、あまり評価されていない、ゲインズバラの精緻で調和のある構図を制作する能力を示している[1]。ジェームズ・ベイリーのゆったりとした姿勢はカーテンとともに対角線を形作る。一方、彼から左下の次女アミーリアまでの人物たちの頭部をつなぐ線は、この対角線と交わる下降線となっている。その下降線は、長女ジャネットの帽子の作る斜めの線によって繰り返されている。また、画面中央では、アレクサンダーがコリン・キャンベルにバラを渡すために自身の腕を母親の腕の下に入れているが、彼の腕の線は前述の下降線とX字型に交差する[1]。
本作は、ゲインズバラがロンドンのサマセット・ハウスで開催された1784年のロイヤル・アカデミー展(英語版)で出品することになっていた18点のうちの1点であった。別の作品『三人の最年長の王女たち』 (ロイヤル・コレクション、ロンドン) の掛け方にまつわる論争のため、本作を含むゲインズバラのすべての作品は展示から取り下げられた。彼は、以降の生涯を通じロイヤル・アカデミーで作品を展示することはなかった[1][3]。