絵画に描かれているのは、市場へと向かう馬に引かれた荷車が森の小道を通っている場面である[1]。2人の少年と犬が荷車の巨大な車輪の横を歩いている。2人の少女が荷車に積まれた農産物の上に座っているが、籠からニンジンが零れ落ち、カブ、ジャガイモ、キャベツが緩く積み込まれている。荷車が前方の水たまりを過ぎる時に、野菜がいくつか零れ落ちるのはたやすく想像できる。森を通り抜ける最中に射し込む光を避けるためか、あるいは薪にするために落ちた枝を集める樵の姿に反応してか、年長の少女が片方の腕を上げている。道端には、2人の疲れた旅人が籠、包みを置いて、犬とともに休んでいる姿が見える[1]。
ゲインズバラは、馬が荷車につながれている様を正確に表している。手綱がないのは、市場まで何度も行ったことのある年老いた馬で、少年の持つ、切ったばかりの棒で叩かれるだけで進むからである。本来もっと荷車に近かった馬の頭部の位置は、年月とともに透明になった絵具を通して見ることができる[1]。
ゲインズバラ『収穫物の荷車』 (1784年)、アートギャラリー・オブ・オンタリオ
ゲインズバラ『小屋の前でタバコを吸う農民』 (1787年)、カリフォルニア大学、ロサンゼルス
木々の位置、緩やかな勾配のあるでこぼこした道は、自由な筆致によって、おそらく同年度に制作された油彩スケッチ (個人蔵) にもとづいている[1]。油彩スケッチに登場する牛を水飲み場まで追っていく樵の位置は、本作では農産物を積んだ荷車に占められている。ゲインズバラは、『収穫物の荷車』(アートギャラリー・オブ・オンタリオ) [3]に見られるようにしばしばそうした田舎の荷車を描いている。馬と荷車は、おそらく本作より少し前に描かれた黒チョークとグレーウォッシュ (黒インクを水で薄めたもの) の習作にもとづいている。なお、画家は本作を制作してすぐ後の1787年に『小屋の前でタバコを吸う農民』 (カリフォルニア大学、ロサンゼルス) を描いたが、この絵画は本作の対作であったと見なされている[1]。
本作は最初、1786年にペル・メル (ロンドン) にあったゲインズバラの自宅で展示された。翌1787年に、画家は薪を結わいている樵を描き加えている。1901年に刊行された書物で、ウィリアム・ダット(英語版)は、本作は「ゲインズバラ・レーン(英語版)」を描いていると主張した。ゲインズバラ・レーンは、後にイプスウイッチ南東地区(英語版)の一部の名称となった[4]。