破裂

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破裂』(はれつ、RUPTURE)は、久坂部羊による日本小説、及びそれを原作とする2015年テレビドラマ

現役の医師でもある著者の2作目の小説。

刊行された際に、に『医者は3人殺して一人前になる』などと書かれ、話題を呼んだ。また、教授選、医療過誤裁判など、『白い巨塔』を彷彿させるキーワードもテーマになっており、現代版白い巨塔と呼ばれた。

文庫本で巻末解説を寄稿した映画監督大森一樹は、本作を『白い巨塔』+『仁義なき戦い』であると感じたという。また、本作を映画化しようと、自ら企画を映画会社に持ち込んだことを明かしている。

あらすじ

医者は一人前になる過程で必ずミスを犯してしまう、時には命を落とす患者も存在する。麻酔科医江崎峻は、これを“痛恨の症例”と呼び、医者の養成には不可避の仕方のないものだと感じながらも、是正できないかと逡巡していた。

元新聞記者の松野公造は、自分と妻が、医者の誤診で辛い目に遭った経験から、「過失」で済まされてしまう医療ミスを許すことができず、ノンフィクションという形で現在の日本の医療の真の姿を暴こうとする。

美しい人妻・中山枝利子は、3か月前に心臓の手術を受け、5日後に急死した父親の真の死因は、手術針の置き忘れによるものだ、という匿名の告発文を送られ、主治医を告訴することを決意する。

心筋再生」を研究テーマに掲げる医師の香村鷹一郎は、心不全を劇的に回復させる“ペプタイド療法”を開発する。だが、ビーグルを使った動物実験で、時間が経つと、心臓が破裂するというとんでもない副作用があることが分かり、愕然とする。

厚生労働省の役人・佐久間和尚は、進歩ばかりする医療のせいで超高齢社会となった日本の未来を憂え、医療のシビリアン・コントロールを目論む。佐久間が目を付けたのが、香村が研究する、心臓が破裂する副作用を持つペプタイド療法だった。老人に苦痛のない死を、と考えた彼は、老人抹殺計画とも取れる大規模な治験、通称・プロジェクト《天寿》を行っていく。

江崎、松野、枝利子、香村、佐久間、5人の運命が複雑に絡み始める。

登場人物

主要人物

江崎 峻(えざき しゅん)
阪都大学病院麻酔科の医師。35歳。生まれは横須賀。医者が一人前になる過程で死なせてしまう患者を“痛恨の症例”として、松野に協力する形で医療過誤内部告発する。精神を落ち着けるために吸入麻酔を常用している。
事故か事件か分からない麻酔薬中毒で亡くなった父親もかつて麻酔医だった。母親は元看護師だが、認知症がひどく、施設に預けている。枝利子の裁判に関わった懲罰人事とも取れる異動で、茨木市の国立療養所・阿武山病院に転勤した後、麻薬乱用がマスコミにバレてホームレスになる。最後は枝利子との再会によって麻薬中毒を克服し社会復帰する。
松野 公造(まつの こうぞう)
「天籟ノンフィクション大賞」で最終候補に残り、受賞は逃したが、選考委員の一人から「今後を期待する」旨の手紙を貰い、本格的にノンフィクション作家になる決意をし、22年間勤めた新聞社を退社し、個人事務所を立ち上げた。自身と妻が過去に体験した医師の不適切な対応に憤り、“医療ノンフィクション”という題材を選択した。
江崎の異動の直前に佐久間の息が掛かっていると見られる何者かによって殺される。
中山 枝利子(なかやま えりこ)
手術後に急死した父親の死因は心臓への手術針の置き忘れによる医療ミスが原因だという告発文を送られる。女優と言われても納得してしまうような美貌の持ち主。ヘルパーの資格を持っている。江崎のことを好きになってしまう。
香村 鷹一郎(かむら よういちろう)
阪都大学病院心臓外科助教授。神経質で短気。出石の田舎出身であることをコンプレックスに思っている。自分に厳しいが、他人にはより厳しい。峰丘の執刀医を務めた。
ジョンズ・ホプキンス大学留学して以来、心筋保護の研究に取り組んでいる。研究に時間を取られるため、手術の件数をこなすことができず、手術は下手と評判だった。阪都大学病院心臓外科の教授になることだけを目標に生きてきた。心機能を劇的に回復させるペプタイド療法を開発し意気揚々としていたが、その後の動物実験で、劇的な回復の代償として、しばらくすると心筋が壊死し、急性心筋梗塞を起こすことが判明する。研究費のために不本意ながらネオ医療センターに移籍する。
物語の最後は彼が作中とは関係ない彼が起こした医療事故の遺族が差し向けた暗殺者に、その患者と同じ症状で殺されるところで終わる。
佐久間 和尚(さくま かずひさ)
厚生労働省主任企画官。短躯で猪首、外斜視の大きな目。39歳。“厚労省のマキャベリ”の異名を取り、医療の国家統制を目論んでいる。自分の計画にペプタイド療法を利用するために、長野に新しく出来る国立ネオ医療センターの副センター長に香村を誘う。風変わりな行動が多く、同期の中でも浮いた存在だった。
25歳の時に、林田の紹介で、事務次官の娘と結婚し、婿養子に入った。子どもが2人いるが、全く愛情が沸かず、現在は別居状態。入省10年目の年に、ウィーン外務省の機関に2年間出向し、その間に様々な人脈作りをした。手足となって働く内務諜報部《内諜》と呼ばれる部下がいる。PPP《ぴんぴんポックリ》を国策として根付かせようと、プロジェクト《天寿》を発動し、人口ピラミッドの正常化を計ろうとする。
最後は賄賂疑惑で警察に逮捕され尋問中に過労から閉じ込め症候群(脳梗塞の一種)を発症し、意識はあるのに体が全く動かせず声を出すことすらできない、という状態になる。

主要人物の親族・関係者

峰丘 茂(みねおか しげる)
中山枝利子の父親。職業は郵便局長。妻を事故で喪ってからは男手一つで娘を育てた。3カ月前に阪都大学病院で僧帽弁置換術の心臓手術を受け、術後の経過も順調だったが、5日後に出血性の心タンポナーデを起こし急死した。享年58。
金子 さおり(かねこ さおり)
松野公造事務所のアルバイト学生。江崎が提供してくれた証言者のテープ起こしをする。
上川 裕一(かみかわ ゆういち)
松野の新聞社時代の後輩。社会部記者。松野の計画を知り、高校の同級生である江崎を紹介した。小太りの体格。
中山 孝太(なかやま こうた)
枝利子の夫。丸顔の平凡な外見。印刷会社勤務。枝利子とは母親同士が姉妹のいとこ。枝利子の役に立ちたくて、会社の取引先に紹介してもらった大沢に相談する。
露木 雅彦(つゆき まさひこ)
在日外国人地方参政権や女性の権利保障など、多くの人権問題に関わってきた弁護士。40代前半。松野の紹介。枝利子の弁護士を快く引き受けてくれた。医学知識も豊富。
大沢 惣介(おおさわ そうすけ)
大沢綜合法律事務所の代表。弁護士。医療訴訟も良く扱うが、ほとんど病院側の弁護に就く。後に香村の弁護士になる。
堂之上 洋一(どうのうえ よういち)
被告(香村)代理人。弁護士。ヤクザっぽい。
江崎 志津子(えざき しづこ)
江崎の母親。60歳。羽曳野市特別養護老人ホーム「もえぎ苑」に入所している。認知症。

阪都大学病院

安倍 洋子(あべ ようこ)
中央手術部看護師。“痛恨の症例”の証言者でもある。29歳。訴訟に関わったとして、葛西から当直の日でもヘビーな手術ばかり担当させられる嫌がらせを受ける。江崎のことが好き。
滝沢 啓治(たきざわ けいじ)
峰丘の手術の第一助手。講師。江崎の5年先輩。40歳。神戸御影で4代続く医師の家系。
廚 忠彦(くりや ただひこ)
峰丘の手術の第二助手。助手。江崎の3年先輩。38歳。香村の腰巾着。
瀬田 昇(せた のぼる)
峰丘の主治医で手術では第三助手だった。大学を卒業したばかりの研修医。仕事には熱心だが、自分の仕事が一番重要だと思い込んでいる。権力者には従順で、自分こそが未来の教授だと信じ、香村には絶対忠誠を誓っている。
鶴田 平三郎(つるた へいざぶろう)
臨床病理学教室教授。峰丘の病理解剖を担当した。62歳。来年には退官予定。
平 晴夫(たいら はるお)
麻酔科医。峰丘の手術の麻酔を担当した。江崎より5年先輩で、講師になっていてもおかしくない年齢だが、本人にやる気がないため万年助手に甘んじている。ずぼらな性格。江崎からは“ペイさん”と呼ばれる。
須山 明(すやま あきら)
臨床病理部。臨床検査技師。33歳。細胞検査士の資格も持つ。異様に丁寧な物腰で対応する、人の頼みを断れないタイプ。峰丘の病理解剖のシュライバー(記録係)を務めた。その際、鶴田に針を見た、と進言するも無視されたと証言する。
葛西 充子(かさい みつこ)
中央手術部の主任看護師。手術場勤務15年のベテラン。42歳、既婚者。
宮原 早苗(みやはら さなえ)
中央手術部2年目の看護師。童顔の割に仕事ができると評判で、同期の中で一番早く器械出しを担当するようになった。峰丘の手術では外回りを担当した。看護記録を書いた時に、針の数が合わなかったが、葛西にOKにしろと言われ、そうしてしまった。
川邊 久雄(かわべ ひさお)
心臓外科教授。退官間近。退官後は国立心臓病センターの総長になる予定。
岡森 圭一(おかもり けいいち)
麻酔科教授。
小阪 大輔(こさか だいすけ)
ICUスタッフ。江崎の2年後輩。半年前に助手に昇格したばかり。1年前まで麻酔科に所属していたため、江崎とは親しい。
松井 康夫(まつい やすお)
人工心肺技師長。49歳。牛乳瓶の底のような度の強い眼鏡をかけている。人工心肺技師は麻酔医と共に手術の縁の下の力持ち的存在のため、江崎とはウマが合い、普段から親しくしている。
庄司 真(しょうじ まこと)
助手。香村チームの一員。香村と同じくジョンズ・ホプキンス大学に留学し、同じ教授に師事した。廚より3年次下だが、研究者としての実力は彼以上と評判。
種田 功(たねだ いさお)
医局長。44歳。
香 宥邦(こう ゆうほう)
香村チームの中国人留学生。
児玉 克也(こだま かつや)
呼吸器外科。江崎の大学の同級生。“痛恨の症例”の証言者。

官僚・議員

林田 博史(はやしだ ひろふみ)
厚生労働省事務次官。佐久間のことは、彼が厚生省(当時)の入省面接の時から気になっていた。官房長だった時に息子が起こした追突事故を、佐久間が間に入り解決したため、恩を感じていたが、全ては佐久間の計画通りだった。
伊達 伸吾(だて しんご)
内閣官房副長官。厚生族議員。かつて、視察名目でウィーンを訪れた際に、出向していた佐久間の世話になり、以後何かと助力する。
黒田 有朋(くろだ ありとも)
防衛庁情報本部特殊調査課長。一等陸佐防衛大学校卒業後、陸自レンジャー課程、指揮幕僚課程修了、北部方面通信群統合幕僚会議事務局勤務などを経て、37歳の若さで在ユーゴスラビア日本大使館防衛駐在官に抜擢された。当時、クーリエ出張のためにウィーンへ行った際に佐久間と知り合った。佐久間に《内務諜報員》を提供する。
城 貞彦(じょう )
厚労省老健局長。冷酷な切れ者として知られる。
渡辺 一秀(わたなべ かずひで)
厚労省老健局審議官。省内では、グループホームの生みの親的存在。グループホームは姥捨て山同然であるとして廃止を訴える佐久間と対立し、福岡九州厚生局へ異動させられる。
浅野 正一(あさの しょういち)
厚労省社会援護局の地域福祉課総務係長。入省以来26年ずっと福祉畑を歩いてきた。日本の保険制度は世界一素晴らしいと思っており、施策は常に国民本意ではなくてはならないと思っている。佐久間に不自然な点を指摘するが、取り合ってもらえなかった。

その他の医師

南 聖一郎(みなみ せいいちろう)
大阪中央総合病院心臓外科部長。教授選の候補者の一人。温厚な人柄で人望も厚い。52歳。
三崎 孝(みさき たかし)
アメリカコロラド大学心臓外科部長。教授選の候補者の一人。オフポンプ手術の第一人者。44歳。
左近 勝士(さこん かつじ)
阿武山病院の麻酔医。定年間近。アルコール使用障害
清河 二郎(きよかわ じろう)
医師。長寿がもてはやされるのは幻想という考えの持ち主。佐久間によって、プロジェクト《天寿》を国民に受け入れさせるためのトリックスターに仕立て上げられる。
出崎 義行(でさき よしゆき)
神戸で在宅訪問診療を行い、寝たきり老人末期癌患者を専門に診ていた。オランダ安楽死法に照らし合わせて、条件に合致した32人の患者を安楽死させ、逮捕された。“ドクター・デス”の異名を取った。
遠藤 悟(えんどう さとる)
京帝大学医学部放射線科助手。江崎の高校時代の同級生。江崎に峰丘のレントゲン写真の解析を依頼され、サブトラクション処理を行う。
菊森 忠夫(きくもり ただお)
松原ハートセンター外科部長。遠藤のサブトラクション画像の鑑定を依頼される。
沖本 慎二(おきもと しんじ)
神戸白鳳会病院内科医長。“痛恨の症例”の証言者。江崎が麻酔科で最初に指導した研修医。現在は血液疾患専門。
綿貫 宣武(わたぬき のぶたけ)
京都府医師会常任理事。「過去の医療ミスをほじくり返す」行為を非難する内容のコラムを医事報に載せた。
藤見 元就(ふじみ もとなり)
藤見クリニック院長。江崎の3年先輩(年齢は5歳上)。金持ちのボンボン。
藤見 惟親(ふじみ これちか)
藤見クリニック名誉院長。元就の父親。72歳。
下垣 毅(しもがき つよし)
開業医。江崎の同級生。“痛恨の症例”を尋ねたところ、尋常な様子でなくなったため、中止された。以後は、藤見の入れ知恵で強硬な態度になる。心臓に先天性疾患を持つ子どもを救いたいという夢を持っていた。

その他

小池 清(こいけ きよし)
福祉グループ「寿会」の代表。参議院議員秘書をしていたこともある。54歳。現在は複数の介護福祉施設を経営している。
芹沢 直(せりざわ ただし)
国立ネオ医療センター・プロテオミクス医科学部次長に就任予定。30代半ば。俳優のように美形で、優秀そうな顔立ち。循環器内科の専門医。
仲倉 蓮太郎(なかくら れんたろう)
国民的俳優。72歳。心不全で療養中だったが、突然死の副作用のことを理解した上でペプタイド療法を受け、一時的に回復。「蓮さん、奇跡の復活」と大々的に報じられ、《PPP》の良さを世間に広めるのに一役買った。
吉沢 百合子(よしざわ ゆりこ)
大女優。《PPP》の宣伝キャラクターに選ばれる。
尾島 修一(おじま しゅういち)
阿武山病院の事務員。

テレビドラマ

出典

外部リンク

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