組織市民行動

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組織市民行動(そしきしみんこうどう、英: Organizational citizenship behavior、略称:OCB)は、産業・組織心理学において、契約上の業務の一部ではない、組織または企業内における個人の自発的な関与を指す[1]。組織市民行動は1970年代後半から研究されており、過去30年間でこれらの行動への関心は大幅に高まっている。

組織行動は組織全体の有効性と結びついているため、この種の従業員の行動は職場において重要な結果をもたらす。オーガン(Organ)は、カッツ(Katz、1964年)の初期の研究をさらに発展させた[2]

オーガン(1988年)は、OCBを「個人の自由裁量による行動であり、公式の報酬体系によって直接的または明示的に認識されるものではないが、集約されることで組織の有効な機能を促進するもの」と定義している[3]。オーガンによるOCBの定義には、この構成概念の中核となる3つの重要な側面が含まれている。

  1. 第一に、OCBは職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の一部ではない自由裁量による行動と考えられ、個人の選択の結果として従業員によって行われる。
  2. 第二に、OCBは職務記述書の強制的な要件を超えたものである。
  3. 最後に、OCBは組織全体の有効性に肯定的な貢献をする。

一方で、オーガンの定義は多くの批判も生んできた。この構成概念の性質上、操作的な定義が困難であるためである。批判者たちは、オーガンが定義したOCBが本当に自由裁量によるものなのか疑問を呈し始めた。オーガン(1997年)はこれらの批判に対し、初期の定義以降、職務は明確に定義されたタスクや責任のセットから離れ、より曖昧な役割へと進化したと指摘している[4]。定義された役割がなければ、何が自由裁量であるかを定義することは急速に困難になる。

類似の構成概念

文脈的パフォーマンス

OCBはしばしば文脈的パフォーマンス(contextual performance)と比較される。OCBと同様に、この概念も、職務特有の作業行動のみに注目することは職務領域の大部分を無視しているという認識から生まれた。元来、この分野の専門家は組織のアウトプットを直接支える活動のみに焦点を当てていた。しかし、労働市場の競争が激化するにつれ、従業員が競争力を維持するために職務記述書で正式に要求される以上のことを行う必要が生じた。文脈的パフォーマンスは、組織の社会的・心理的側面に寄与する、タスクに関連しない作業行動および活動と定義される[5]

文脈的パフォーマンスは、熱意の持続、他者への援助、規則や規定された手順の遵守、組織の目標の公然とした擁護という4つの要素からなる[5]。OCBと文脈的パフォーマンスは、どちらも日常的な職務機能を実行するために必要な行動以外の行動で構成されているという定義上の属性を共有している。また、両者ともこれらの行動が組織全体の成功に寄与することを要求している。さらに、これらの行動が自由裁量であり、各従業員がそれを行う量や程度を選択するという点でも一致している。しかし、文脈的パフォーマンスとOCBは内容領域の大部分を共有しているものの、いくつかの重要な違いがある。OCBの主な要件の一つは「正式に報酬を与えられないこと」であるが、文脈的パフォーマンスではそうではない。オーガン(1997年)は、OCBがいずれ何らかの報酬を促す可能性はあるが、それらの報酬は間接的で不確実なものであると主張している。また、文脈的パフォーマンスは行動が役割外であることを要求せず、タスク外であればよい。

向社会的組織行動

OCBは向社会的行動(prosocial organizational behavior, POB)とも比較される。POBは、個人、グループ、または組織の福祉を向上させることを目的とした組織内の行動と定義される[6]。ここでの重要な違いは、この種の行動がOCBとは異なり、組織とは無関係である可能性がある点である。したがって、向社会的な行動を示す人は、同僚の個人的な問題を助けているだけかもしれない。

役割外行動

ヴァン・ダイン、カミングス、マクリーン=パークス(1995年)によって最初に定義された役割外行動(Extra-role behavior, ERB)も、OCBに類似した構成概念である。ERBは「組織に利益をもたらそうとする行動であり、既存の役割期待を超えるもの」と定義される。多くの点で類似しているが、OCBとERBにはいくつかの重要な違いがある。ERBには、OCBには含まれない2つの概念が含まれている。内部告発と、原則に基づいた組織的反対である。内部告発は、非倫理的または違法な慣行を当局の注意を引くために、ある従業員が別の従業員を報告することを伴う。原則に基づいた組織的反対は、何らかの不正を理由に従業員が組織に抗議することである。

利他主義と一般的遵守

スミス、オーガン、ニアー(1983年)は、OCBが利他主義と一般的遵守で構成されていると最初に提案した。これら2つの次元は、異なる方法で組織の有効性を向上させる。

職場における利他主義は、本質的に援助行動で構成される。これらの行動は組織の内外に向けられる可能性がある。個々の援助行動と組織の特定の利益との間に直接的な関連性はないが、長期的には従業員の援助行動の積み重ねが組織にとって有利になるという考え方である。

一般的遵守は、いくつかの方法で組織に利益をもたらす。低い欠勤率や規則の遵守は、組織を効率的に運営し続けるのに役立つ。遵守心の高い従業員は、過度な休憩を取ったり、勤務時間を個人的な事柄に費やしたりすることはない。

その後、オーガン(1988年)は一般的遵守の次元を解体し、OCBの次元を追加した。この結果、利他主義礼儀誠実性、市民的徳目、スポーツマンシップからなる5因子モデルが誕生した。

誠実性は、組織の最小限の役割要件をはるかに超える行動で構成される。

市民的徳目は、従業員の組織生活に対する深い関心を示す行動によって特徴づけられる。例えば、会議への出席や、組織全般で何が起きているかを把握することなどが挙げられる。

礼儀は、他者との仕事上の衝突を防ぐことを目的とした自由裁量の行動と定義される。これは援助行動の一種であるが、問題が発生するのを未然に防ぐように機能する。

最後に、スポーツマンシップは、理想的とは言えない組織の状況を、不平を言ったり問題を誇張したりすることなく耐える従業員の意欲として定義される。

行動

ウィリアムズとアンダーソン(1991年)は、行動が誰に向けられているかに基づいてOCBを2つのタイプに分類した。

個人に向けられた組織市民行動(OCBI)には、職場の他の個人を対象とした行動が含まれ、組織に向けられた組織市民行動(OCBO)には、組織全体を対象とした行動が含まれる。利他主義や礼儀は他の従業員に向けられた行動であるためOCBIに分類され、誠実性、市民的徳目、スポーツマンシップは組織の利益を目的とした行動であるためOCBOとみなされる。

組織市民行動の動機

モチベーションは、個人がOCBに従事する上で重要な役割を果たす。

動機づけ理論

心理学や組織行動論のいくつかの理論が、OCBの背後にある動機の洞察を提供している。一つはアブラハム・マズローの自己実現理論である[7]。マズローによれば、基本的な欲求が満たされると、個人は帰属意識や自尊心などの高次の欲求によって動機づけられる。

フレデリック・ハーズバーグの二要因理論も関連している[8]。ハーズバーグは、給与などの外的な「衛生要因」と、承認や達成などの「動機づけ要因」を区別した。

内発的動機と外発的動機

動機づけは内発的と外発的に分類できる。内発的動機は、個人の内部から生じる満足感や充足感に起因する。自分の役割において卓越することに内発的に動機づけられている従業員は、基本的な職務要件を超えて貢献することに満足感を覚えるため、OCBに従事する可能性が高くなる。対照的に、外発的動機は報酬や罰などの外部刺激から生じる[9]

公共部門とOCB

公共部門はOCBにおいて独自の文脈を持つ。研究によると、公共部門の従業員は民間部門の従業員に比べて高いレベルのOCBを示すことが多い。これは、公共サービスという側面から得られる内発的動機に一部起因している。公共部門の労働者は、公益に対する強い義務感とコミットメントを持っていることが多い[10]

先行要因

OCBの一般的な先行要因は、職務満足感、組織公正の認識、組織コミットメント、性格特性、タスク特性、およびリーダーシップ行動である。

最も直感的な先行要因の一つは職務満足感である。オーガンとライアン(1995年)は、職務満足感とOCBの間に緩やかな関係があることを見出した。この関係は、職務満足感と役割内パフォーマンスの関係よりも強かった[11]。性格特性の面では、誠実性、協調性、およびポジティブな感情性がOCBの先行要因として支持を集めている。特に誠実性は、OCBの一般的遵守要素と強い関係があることが示されている。

結果

OCBの結果に関する実証研究は、主に組織のパフォーマンスとコストの2つの領域に焦点を当てている。

パフォーマンス

多くの研究がOCBと組織の有効性の間の正の相関を示している。例えば、援助行動は製品の品質や売上ノルマの達成率、顧客満足度と有意に関連していることがわかっている。ポドサコフら(2009年)は、OCBがユニットレベルのパフォーマンスと顧客満足度に正の影響を与えることを見出した[12]

コスト

OCBには従業員にとってのコストも存在する。誠実な従業員ほど情緒的消耗やワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の葛藤)が高くなる傾向がある。市民的疲労は、OCB活動によって従業員が「疲れ果て、消耗し、神経が過敏になっている」と感じることで発生し、将来のOCB活動の減少につながる[13]。組織からのサポートが不足していると感じるほど、この疲労は相関して高まる。

測定

OCBを測定するために、研究者はさまざまな尺度を開発してきた。ベイトマンとオーガン(1983年)は、協力、利他主義、遵守、時間厳守などを測定する30項目の尺度を構築した。また、スミスら(1983年)は16項目の尺度を開発し、因子分析を通じて「利他主義」と「一般化された遵守」という2つの明確な次元を初めて特定した。

1990年にポドサコフらは、利他主義、誠実性、スポーツマンシップ、礼儀、市民的徳目の5次元を用いた24項目の尺度を開発した。この5因子構造は、その後の多くのOCB研究の基礎となっている。

関連項目

脚注

参考文献

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